採用は“理念への共感”が最優先。ミスマッチを防ぐ鍵は「ホームページ」と「施設見学」

採用は“理念への共感”が最優先。ミスマッチを防ぐ鍵は「ホームページ」と「施設見学」

「採用活動で最も大切なのは、法人理念に共感してくれる人にいかに出会えるか」と語るのは、社会福祉法人きらくえんの採用担当、田中智子さんです。

兵庫県下に5つの施設を運営するきらくえんは、1982年の法人設立時から「高齢者の人権を守る介護」を徹底。利用者の部屋に鍵をかけないなど、高齢者の尊厳を重んじた取り組みが高く評価されています。そのため、きめ細かな対応が求められる職員には、“理念への共感”が欠かせません。

法人の理念を深く理解してくれる候補者と出会うために、きらくえんではどのような工夫を行っているのでしょうか? 田中さんに伺いました。

「高齢者の人権を守る」理念をホームページで表現

――近年の採用状況はいかがですか?

当法人は5つの施設それぞれで150〜200人の職員を雇用しており、定年等で毎年一定数の新規採用が必要となるため、継続的に採用活動を行う必要があります。しかし私が採用担当になった2016年時点の採用人数は、年間の目標人数に達していない状況でした。

そこで、採用活動の活性化と同時に、今いる人たちに長く働いてもらうための取り組みも行ってきました。その結果、職員の定着率は徐々に上がり、現在は採用人数も概ね目標に達している状況です。法人全体として取り組んできたことが、少しずつ実を結びつつあると感じています。

――当時は何が課題だったのでしょうか?

以前は、きらくえんの取り組みを福祉系の大学や専門学校などで紹介していただくこともあり、なんとなくでも、きらくえんのことを知って応募してくださる方が一定数いらっしゃいました。

ところがここ数年は、福祉・介護系ではない学部を卒業した方や他業界の方が介護業界を目指すケースが増えており、きらくえんがどのような法人かなど知らない方のほうが多くなりました。そのため、特に未経験者の方に対する認知を強化する必要がありました。

――業界内での知名度があるからといって、候補者にも知られているとは限らないのですね。

そうなんです。では何をしたら良いかというと、これが難しくて。様々な求人広告やInstagram(インスタグラム)、Facebook(フェイスブック)など色々と試行錯誤していますが、「これさえやれば大丈夫!」というものはなかなかないのが、正直なところです。

ただ、ホームページはしっかり作っておいてよかったですね。当法人は歩んできた歴史そのものが理念を追求してきたプロセスでもあるので、これまでの取り組みを丁寧に紹介しています。

ホームページでは、きらくえん設立時からのコンセプト「高齢者の尊厳を守る」に沿った運営について詳しくご紹介していますので、面接ではホームページを見て感じたことを伺い、理念に共感していただけるかどうかお聞きしています。

――採用ホームページにもこだわりを感じました。職員のリアルな声を集めた「100人アンケート」や「社員インタビュー」など、コンテンツが充実していますね。

採用ホームページは、職員のありのままを知ってもらうことにこだわって2014年にリニューアルしました。経営陣から現場職員まで、みんなが同じ目標に向かって取り組んでいることが伝わっていれば幸いです。

一般的に、法人のホームページにはご利用者向けの情報をまとめていることが多いですが、ご利用者と求職者では求めている情報が異なります。すでに充実した法人のホームページがあったとしても、求職者目線に立った採用コンテンツは作っておいたほうが良いと思いますね。

施設見学の目的は「理念を体感してもらうこと」

――“理念への共感”を重視した採用活動を行なっているのはなぜでしょうか?

理念を追求するがゆえに、実際のケアや業務において手間や労力がかかる場面が少なからずあるからです。人によっては、当法人での仕事に厳しさを感じることもあるかもしれません。

それでも、自分の信念と職場の理念が一致していればやりがいを持って働けるはずですし、私たちもそうした方と一緒に働きたいと思っています。

――理念に共感してくれる人かどうかは、どのように見極めているのでしょうか?

とても難しいのですが、大切にしているのは施設見学です。私たちの考え方を時間をかけてお伝えしています。

例えば、きらくえんでは施設の玄関やエレベーターに暗証キーなどの鍵をかけず、ご利用者にお散歩(当法人では徘徊のことを「お散歩」と呼んでいます)など自由にしていただいています。お散歩を鍵をかけて規制したり管理するのではなく、ケアや落ち着ける環境を作ることで対応しています。

もし「この方はお散歩に出かけられるかも」と気づいたら、その情報を介護職員だけでなく施設全体で共有します。実際にご利用者がお散歩に出掛けようとしているのを事務員が発見したら、「どちらにお出かけですか?」と声をかけてもらう。引き返しそうになければ、担当職員に連絡しお迎えに来てもらうまで一緒に歩きながら寄り添います。連絡を受けた介護職員は「今日は暑いですね」「お茶でも飲みに帰りませんか?」とお話しながら、さりげなく戻るよう促します。高齢者の尊厳を重んじているので、無理やり連れて帰ったり、鍵をかけて閉じ込めるようなことはしません。

――見学した候補者の方の反応はいかがですか?

私たちのケアに共感してくださる方がほとんどですが、中には「自分にできるのだろうか」と不安を感じる方もいると思うんです。その場で「私にはできそうもありません!」とは言いにくいと思うので、あとで面接のときに「施設見学ではどのような感想を持たれましたか?」と聞いて、ミスマッチを防ぐようにしています。

――他に、理念に共感する方を採用するためにこだわっている点はありますか?

採用試験で小論文(作文)を課しています。思ったことをきちんと文章にできる力があるかを確かめるほかに、「面接で緊張して話せなかった方に思いの丈を書いてもらいたい」という目的もあります。喋るのが上手な方かどうかよりも、仕事やケアに対してどのような信念をお持ちの方なのかが大事ですからね。

「人事考課制度」と「待遇」の見直しで定着率アップ

――定着率を高める取り組みも行ったとのことですが、どのような対策を取ったのですか?

人事考課制度を見直しました。以前は組織管理のリーダーを目指す「マネジメントコース」しかなかったのですが、必ずしもそうした展望を持つ人ばかりではありません。そこで、専門職や現場志向の方のために「スペシャリストコース」を新設しました。職員1人ひとりが自分に合った目標を目指し、やりがいを感じて長く働いてもらえればと思います。

他には、処遇改善加算の配分について、法人で裁量を持てる範囲内で、夜勤をする職員への手当を手厚くしたり、特定処遇改善加算を業務内容や経験、技能に合わせて支給するなど待遇面の改善を行いました。制度や待遇の改善は時間がかかりますが、それだけの効果はあったと実感しています。

――最後に、今後の展望を教えてください。

介護は「大変な仕事だ」と敬遠される傾向がありますが、コロナ禍でご自身の仕事を見つめ直し、介護業界に挑戦したいと考える人は増えていると感じます。

確かに、介護の仕事は大変です。でも世の中からこんなに必要とされる仕事はないですし、将来的に全てがAIやロボットに置き換わることも考えられません。これから先も確実にニーズがあるというのは、介護業界で働く魅力の一つです。

そんな介護業界に興味を持ってくださった方が安心して入ってきてくれるよう、当法人の魅力をもっと発信して、私たちのことを広く知ってもらえるように働きかけていきたいと思います。

【プロフィール】
社会福祉法人きらくえん
法人事務局 田中智子(たなか ともこ)さん

看護師として大学病院に勤務した後、1997年社会福祉法人きらくえんに入職。居宅介護支援事業所、特別養護老人ホームけま喜楽苑の責任者、法人本部での研修担当、訪問看護ステーション、特別養護老人ホームKOBE須磨きらくえん立ち上げ時に特養部長として参画。2016年より法人本部にて研修及び採用を担当。

取材・文/一本麻衣

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