介護求人の倍率「11倍以上」の採用激戦区で約90名のオープニングスタッフ採用に成功した理由

介護求人の倍率「11倍以上」の採用激戦区で約90名のオープニングスタッフ採用に成功した理由

東京都の介護サービスの有効求人倍率は「6.66倍※」。その中でも渋谷管内(世田谷、渋谷、目黒)は「11.63倍※」と突出して採用が難しい地域です。ところが東京都世田谷区にある社会福祉法人楽晴会の世田谷希望丘ホーム(特別養護老人ホーム)では2018年4月、オープニングスタッフ約90名の採用に成功しています。

同法人理事で世田谷希望丘ホーム総合施設長の渡辺博明さんは、7年間にわたり1000人以上の応募者との面接を経験してきたといいます。今回は採用活動のベテランである総合施設長の渡辺博明さんに、介護人材の激戦区において大量のスタッフ採用を可能にした採用ノウハウを伺いました。

※令和2年4月開催「第2回 高齢者福祉・介護保険部会(東京都世田谷区)」資料3「福祉・介護人材の確保と育成・定着支援について」より

求人サイトや合同説明会は「介護特化型」が効果あり

――渡辺さんは世田谷希望丘ホームのオープン時に約90名ものスタッフを採用されたとのことですが、その後の採用状況はいかがですか?

毎月3~4人の採用を継続しています。正職員は1〜2人、非常勤職員は2~3人ですね。オープニングでは一定の人数を集められたとはいえ、流動性のある職種ですし、1人を12社近くで取り合っている状態は変わりません。採用活動には引き続き気合いを入れて取り組んでいます。

――有効求人倍率11倍以上の採用激戦区でそれだけの人数を継続的に採用していくには、何かノウハウがあるのでしょうか?

いくつか気をつけていることはあります。1つは求人サイトの選び方です。以前、介護以外の業界の求人も掲載している大手求人サイトを使ったことがあるのですが、月に1人くらいしか応募がありませんでした。せっかく何十万円もかけて掲載するのに、それでは割に合いませんよね。

そこで、介護特化型の転職サイトに求人掲載を絞ったところ、安定した応募者数を費用に見合う形で確保できるようになりました。実際、カイゴジョブからは毎月20人以上の応募が来ています。

ところが残念ながら、応募しても面接に来ない人は一定数います。安定的に採用を継続するには、常に一定の応募数をキープできる転職サイトを選び、候補者の裾野を広げることが非常に大切だと思います。

――他業種も含む転職サイトの方が幅広い方にリーチできそうですが、実際は介護特化型の方がコストパフォーマンスが高いのですね。

そう思います。同じことが合同面接会にも当てはまります。大手人材企業が開催する説明会に登壇しても、正直なところ興味を持ってくれる方は少ないです。ところが介護業界特化型の説明会ではきちんと人が集まりますし、説明が終わったあとに十数名の候補者と直接会話することができます。

――合同面接会ではどんなことをお話しになるのですか?

まだ新しい施設なので、これから入ってくる人も含めて「一緒に施設を作り上げていける」とお話します。言われたことをやるだけではなく、マニュアルを一から作るなどの積極的な動きがしたい方には響いていると感じます。

現在、世田谷希望ヶ丘ホームの建物内では特別養護老人ホーム、小規模多機能型居宅介護(通所、訪問、ショートステイを取り扱い)や、都市型軽費老人ホームの3事業を行っています。居宅介護支援事業所、訪問介護、ショートステイ事業も追って開業予定です。大きな施設なので、さまざまな分野にチャレンジできることも併せてお伝えしています。

――主体的に動けることや、経験できることの幅の広さを重点的にアピールしているのですね。

そうですね。他には、地域との交流についてもお話します。今はコロナで全て中止になってしまいましたが、普段は隣の青少年交流センターで活動しているボランティアの方や、職業体験に来る小中学生や高校生で施設内は賑わっています。

保育園の子どもも毎月50人ぐらい来て、歌を歌ってくれたり、一緒に折り紙をしたりするんです。おじいちゃんおばあちゃんは当然喜びますし、職員も楽しいですよね。そんな施設全体の賑やかな雰囲気を、パワーポイントを使ってうまく伝えるようにしています。

オープニングスタッフ採用は「開始時期」が最大のポイント

――オープニングスタッフを多く採用するコツはあるのでしょうか?

とにかく早く始めることですね。私は前職でもオープニングスタッフの採用経験があるのですが、1年前くらいから採用活動をスタートできるとベストです。候補者にとって検討期間が十分にあると、募集期間中にコンタクトを取れる確率が高まるからです。

ただ、人間関係を築くのがどうしても苦手な方で、オープニングを狙って動く方も一定数います。そうした方を面接で全て見抜くのはなかなか難しいと感じます。そのため、オープニングスタッフは最初の半年くらいでどうしても一定数はやめてしまうものです。

幸い、世田谷希望丘ホームでは半分程度のオープニングスタッフが今も残ってくれています。そのメンバーがコアになって活動してくれているおかげで、今は施設全体の離職率はかなり下がりましたね。

――スタッフ定着のために工夫していることはありますか?

当法人では正職員になると、ほぼ費用負担なく介護福祉士の資格を取ることができます。実務者研修はテキスト代を除き無料で受けられますし、介護福祉士取得に関する通信教育費も負担は発生しません。受験料もゼロです。この補助を受けて資格試験を受けた方は、離職せず定着してくれる傾向にあります。

――資格取得補助は働く側にとってかなり魅力的な制度だと思います。他に定着のために取り組まれていることはありますか?

国が推進している「キャリア段位制度」の導入を進めています。これは、今まで企業や事業所ごとにバラバラに行われてきた介護職員の評価を、介護教育の専門家の目線で共通の物差しで行うものです。

この制度に基づきスタッフの評価を行う人のことをアセッサーと言い、当施設ではこのアセッサーを施設内に増やすべく、対象者に所定の研修を受けてもらっています。「キャリア段位制度」を導入できれば、OJTもワンランク上のものができますし、スタッフのモチベーション向上にもつながると期待しています。

経験者も未経験者も、面接で見るべきは「素直さ」

――これまで1000人以上の応募者と面接されてきた中で、面接で最も重視するべきと思うポイントは何ですか?

素直さですね。特に決まった質問をして確認しているわけではないのですが、話しているとわかります。例えばこちらの話を遮ったり、聞く姿勢がなかったりする方は、素直さがあるとは言えないので残念ながらお見送りしています。

他に多いのは、教科書通りのかしこまった回答をする方です。その場合は本人が想定していないであろう質問をして、双方向のコミュニケーションがとれる方なのかを確かめます。会話ができなければ、どんな考えの方なのかもわかりませんからね。

――経験者の方を面接する際に、特に意識していることはありますか?

これまでどんな業務をしてきたのかを聞いた時に、「全部1人でやってきた」というようなことをおっしゃる方は少し心配ですね。そこまで頑張ったのに辞めてしまった理由は何だろうと思いますし、周りの人たちへの感謝の気持ちを持っているのかなと考えてしまいます。

それよりも、「前の職場ではこういうことに失敗してしまったので、ここでもう一度チャレンジしたい」と正直に仰る方のほうがずっといいですね。リーダーを任せる人であるならなおさら、素直さや謙虚さは必要だと思います。

――確かに、素直さは業務経験の有無を問わず大事な要素だと思います。渡辺さんは、採用活動をする上で何を一番大切にしていますか?

誠実さです。面接では真剣に向き合っていることをしっかりアピールするようにしています。良い方であれば一緒に働きたいという気持ちになりこちらも自然と力が入って1時間ぐらいはお話してしまいますし、今はコロナの影響で中止していますが、施設見学も1人に対して1時間半ほどかけることもありましたね。

――最後に、今後の展望について教えてください。

最近は無資格・未経験の応募者が増え始めています。育成には時間がかかるかもしれませんが、素直な方であれば積極的に採用していくつもりです。

今後も採用は果てしなく続きますが、着実に取り組めば成果は付いてくると信じて、介護特化型の求人サイトや合同説明会などをうまく利用しながら地道に取り組んでいきたいと思います。

取材・文/一本麻衣

【プロフィール】
社会福祉法人楽晴会
理事・世田谷希望丘ホーム総合施設長
渡辺博明(わたなべ ひろあき)さん

大学卒業後20年間のメーカー勤務を経て、介護業界に転職。介護福祉士、介護支援専門員を取得し、2017年12月1日より社会福祉法人楽晴会に入職。現在同法人理事、世田谷希望丘ホーム総合施設⻑。世田谷、府中エリアの施設の採用を担当。介護業界12年目。

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