スキマワーカーや外国人技能実習生など多様な人材を受け入れ、人員大幅アップを実現

スキマワーカーや外国人技能実習生など多様な人材を受け入れ、人員大幅アップを実現

秋田県で介護事業を展開する、あきた創生マネジメント。短期入所の介護施設「ショートステイ輪(能代市)」や「ショートステイ縁(大館市)」、認知症対応型通所デイサービスの「ゆいまーるの家(大館市)」など3つの事業所を運営しています。

介護業界全体が課題とする、慢性的な人手不足を解消するため、斬新な発想と行動力で次々と若い世代の人材採用に成功してきた同社。その旗振り役を務める代表取締役の阿波野聖一さんに、具体的な実践内容や採用への考え方について語ってもらいました。

Twitterで介護への想いを発信。若年層に訴求

――御社の採用状況について聞かせてください。

新卒・中途ともに募集を行っていますが、「ショートステイ輪」に関しては昨年から採用数が増え、ありがたいことに必要人員より多く採用できるほど充足してきています。

ただ、ここに至るまでには慢性的な人手不足 に悩み、現場のスタッフに負担をかけていた時期がありました。特に2015年度は、介護の需要が増える中、ハローワークや新聞、Web広告に求人を出しても採用できない状態が続き、どうしたらいいのだろうと考えあぐねていました。人手不足で現場が疲弊していく危機的な状況に直面し、新たな人材の獲得に向けて、「できることはすべてやろう」 とあらゆるチャレンジを試みることにしたんです。

――具体的にはどんなチャレンジを?

まずは認知度を上げるべく、SNSYouTubenoteなどの媒体を使って情報発信することにしました。YouTubeでは当初は行事の風景など動画配信していたのですが、しっかりと会社のことを知ってもらったほうがいいと思い、会社のイメージ動画を作成して配信することに。また、noteでは文章や写真を入れてブログ記事のように投稿できるので、私自身の考えや会社としてどういう方向を目指しているのかなど、コラムにして発信していきました。

SNSに関しては、TwitterFacebookInstagramを活用しています。それぞれ媒体の特性も見ている層も違うので、手間はかかりますが、発信内容を変えるようにしていますね。 たとえばFacebookでは、ホームページの最新情報をはじめ、事業所での日常生活の風景を綴ったり、Instagramであれば利用者様やスタッフの表情を中心にアップし、現場の雰囲気が一目でわかるような見せ方を心がけています。

Twitterに関しては2年前から強化し始めました。SNSやHP、noteなどの更新情報とともに、私自身の介護に対する想いや「今、こういうことに取り組んでいる」など新しい動きについて、毎日リアルタイムで発信しています。特にTwitterは10代後半~20代の若い層が見てくれていて、思った以上に反応がありますね。

これらのSNSを活用する際に常に意識しているのは、会社や現場の雰囲気を“魅せる”こと。そして、私たちの想いや目的(ビジョン)を発信し続けることです。

――なぜ、想いや目的(ビジョン)を発信し続けることが大切なのでしょうか?

やはり、私たちの想いやビジョンに共感してくれる人にこそ、“仲間”になって欲しいからです。私たちの想いに共感して応募してくる人はそもそも意識が高く、「自分はこうなりたい」「こういう介護を目指したい」という理想を持っている人が多いです。私自身もそんな前向きな人にメンバーとして加わってもらいたいですし、逆に彼らの理想や夢を叶えられるようなサポートができたらと考えています。

ですので、応募者の経験の有無は問いません。むしろ経験がない人のほうが以前のやり方に固執せず、柔軟な発想で行動できる印象があります。弊社の場合、必ずしも即戦力を求めているわけではないので、若い層がユーザーに多いTwitterを使って訴求することは効果的だと感じています。

また、Twitterを通じて新たなスキルシェアサービスと出会いまして。そのことも人手不足を解消する大きなきっかけになったように思います。

多様な経験・スキルを持つ、スキマワーカーを活用

――そのサービスとはどのようなものでしょうか?

仕事の一部を外注したいという介護施設と、スキマ時間を活用して働きたいという人をマッチングする、「スケッター(Sketter)」というサービスです。いわゆる介護施設の「助っ人」的な存在ですね。

介護業界が抱える人材獲得の難しさを考えると、これからは雇用形態にとらわれず、多様な経験・スキルを持った人にスポット的に関わってもらうことも大切ではないかと常々、思っていました。そのような問題意識を持っていたところ、たまたまTwitterを通じて「スケッター」の存在を知りまして。この事業を立ち上げた代表の鈴木亮平さんの考えにも共感し、導入することを決めました。

ただ、そのサービスの対応範囲は首都圏が中心だったので、まずはオンラインで人材を募ろうと、リモート会議を企画しました。「どうしたら秋田に介護人材が集まるか?」というテーマで語る会を募集したところ、一気に5人集まりました。

そうした意見交換会を毎月開催する中で全国の参加者とのつながりが増え、そろそろリアルな場でも依頼してみようと、昨年、夏祭りのお手伝いを募集したんです。すると、想像以上に反響があって、東京を中心に首都圏から8人もの“スケッター”が秋田に足を運んでくれました。

――“スケッター”にはどのような仕事をお願いしたんですか?

会場の飾りつけや料理の配膳、レクリエーションのサポートなどを担当してもらいました。来てくれたことで物理的にも助かりましたが、それ以上に彼らとの交流によって、利用者様やスタッフの笑顔が増えたように感じました。前日から弊社が運営するシェアハウスに泊まってもらったのですが、事業所のスタッフと皆でお酒を酌み交わし、語り合ったことでお互いいい刺激になりましたし、距離も縮まりましたね。

“スケッター”たちが事業所で体験したことをSNSで発信し、「秋田の介護施設の社長が面白いことをやっている」と話題にしてくれたことで、色々な方から興味を持ってもらえる機会も増えました。

夏祭りの後、秋の敬老会でも5人の“スケッター”が秋田に来てくれましたが、今年に入ってからは行事へのお誘いはコロナの影響で中止に。その代わり、リモート会議を毎月実施して、これまで50人以上の方と意見交換しています。

実は“スケッター”の中で「秋田で一緒に働きたい」と希望してくれた人がいたんです。茨城県に住む若手の男性なのですが、オンライン上でやり取りする中で彼の素直な人柄や介護の対する想いを知るうちに、ぜひメンバーとして加わってもらいたいと思うようになりました。今年7月にこちらに移住して、現場スタッフとして活躍してくれています。

外国人技能実習生を受け入れ、化学反応を起こす

――御社には外国人技能実習生もいらっしゃるそうですね。

はい。人手不足の課題が深刻になる中で、今いるスタッフの頑張りだけでは将来的に厳しくなると思い、3年ほど前から外国人技能実習制度に目を向け、動き始めました。当初、ベトナム人の実習生を採用して受け入れるはずだったのですが、国の問題で急きょ日本に来られなくなってしまったんです。

でも、私自身諦めきれず、今度はインドネシアに赴き、日本での実習を希望する学生たちと面談しました。現地の学校に求人票を出したのですが、15人もの学生が応募してくれて、その中から3人の女子学生を採用しました。昨年11月に来日し、現場で実地訓練を受けながら働いてもらっています。

――日本に来た実習生たちの反応はいかがでしたか?

初めての外国暮らしで戸惑いや不安は大きかったと思います。来日した時はちょうど冬のシーズンでしたので、現地の温暖な気候からいきなり東北の寒い地域にやって来て、急激な変化に身体的な負担もあったのではと思います。

まずは彼女たちの生活基盤を整えることが先決だと考え、社宅の提供はもちろん、スーパーやドラッグストア、病院への道のりを教えたり、町内会の人にも挨拶をして面倒を見てもらえるよう、関係作りのサポートをしたりしました。3人とも愛嬌があって、誰と会っても笑顔で挨拶をするので、地元のおじいちゃん、おばあちゃんたちに可愛がられているようです。秋田弁の訛りがわかりづらいようなのでうちのスタッフが日本語と方言を両方教えて、少しずつ会話ができるようになってきています。

――実際に受け入れてみてどんな点が良かったですか?

3人が真剣に覚えようとしてくれるので、その姿にスタッフも心を動かされ、一生懸命教えようと努力するようになりました。言葉もカルチャーも違う彼女たちに、一から教えることは苦労も多いですが、その分「人に教える・伝える」といった部分での成長も大きい。日本人のスタッフが一番変化を遂げているかもしれません。

実習が始まってから1年間は先輩スタッフが付いて教えていますが、今年の11月からはいよいよ独り立ちして働いてもらう予定です。仕事覚えも早く、心優しい3人なので、利用者様から愛されるスタッフに育ってくれると思います。実は第2期生がこの11月から来る予定だったのですが、今はコロナの関係でペンディングになっています。ただ、現地とのパイプはできたので、今後もスムーズな受け入れが可能になっていくと思います。

外国人実習生を受け入れたことでもう一つ良かったことがあります。それは地域の人たちからの注目度が上がり、特に若い層から「なんだかこの会社って面白そう!」と関心を持ってもらえたことです。今年、3年ぶりに地元の高校を卒業した新入社員が入ってくれて、さらに活気づいています。多様な人材を受け入れたことが様々な好影響を生んでいると感じますね。

採用が成功している事業所は新しい取り組みに積極的

――外国人の実習生にしても、スケッターの活用にしても、新しい人材を受け入れるには、現場のスタッフの協力が欠かせないと思いますが、そのあたりはいかがでしょうか?

おっしゃる通り、スタッフの協力は不可欠です。たとえば、夏祭りだけのために他の地域から人材を受け入れるのは、現場にとっては相当労力がいることだと思います。でも、特に若いスタッフが多い事業所は、「面白そうですね! ぜひやりましょう!」と素直に受け止めて、新しい取り組みにもウェルカムな姿勢で臨んでくれています。

実際にやってみて結果が出ると、「また次もやってみよう」という気持ちになれる。そうした成功経験を積み重ねることで、新しい物事を受け入れたり、チャレンジしたりする土壌が生まれている気がします。実際、採用が上手く行って人員が増えている事業所は、新しい物事や変革を拒まず、積極的に受け入れていく風土があります。

――御社の採用への取り組みについて色々と伺ってきましたが、単に採用数を増やすことを目的とせず、「多様な人材との交流を増やす」ことで、それが結果的に採用の成功につながっていると感じました。

私たちは必ずしも正社員の採用を増やすことにこだわっていません。多様な経験・スキルを持った人が一時的にでも力やアイデアを貸してくれたり、業務の一部を担ってくれたりすることで、組織にいい刺激やプラスの影響を与えてくれると考えています。

そうやって弊社との関わりを持つ中で私たちの想いに共感し、「ここでコアメンバーとして働きたい!」と思ってくれたら、それが一番嬉しいですね。一見、遠回りに思えるかもしれませんが、これまで地道に種まきをし続けてきたことが、今ようやく実ってきていると感じています。

【プロフィール】
株式会社あきた創生マネジメント 代表取締役
阿波野聖一(あわの・しょういち)さん

地元・秋田の病院で介護助手として就職し、現場経験を積みながら介護福祉士、介護支援専門員の資格を取得。その後、介護事業所で現場リーダーや介護事業の立ち上げ・運営を経験する。2011年、東日本大震災をきっかけに一念発起し、独立。現在は2つのショートステイとデイサービスの運営を手がける。

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取材・文/伯耆原良子

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