介護福祉士になるには?試験の難易度・受験資格・年収・仕事内容など総まとめ

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介護福祉士になるには?試験の難易度・受験資格・年収・仕事内容など総まとめ

介護福祉士の資格について、資格を取得するメリットや、受験資格、試験の合格率、平均年収などの情報をまとめてご紹介。現役の介護福祉士に仕事内容や仕事の魅力も聞きました。

「介護福祉士」とは国家資格のこと

介護福祉士とは、介護の資格の中で唯一の国家資格の名称です。この資格を有する人を介護福祉士といいます。介護の専門知識や技術をもとに、利用者の身体的、精神的なケアなどを行います。職場によっては、一緒に働く職員への指示や指導をするなど、現場のリーダー的存在になることもあります。

取得するメリットとして、就職・転職・復職に有利であることや、収入・キャリアアップなどの待遇面で優遇されることがあります。介護のスペシャリストとして認められる資格であり、雇用する側からのニーズが高いためです。

介護福祉士の受験資格・資格取得ルート

介護福祉士になるには、「介護福祉士国家試験」に合格する必要があります。試験は年に1回の実施で、例年1月に筆記試験、3月に実技試験が行われます。

介護福祉士国家試験を受験するための受験資格は複数あり、受験資格によって資格取得までの流れが異なります。

学校に通わず、介護現場での実務経験から受験資格を得る場合は「実務経験ルート」。介護福祉士養成施設を卒業して得る場合は「養成施設ルート」。福祉系高校を卒業して得る場合は「福祉系高校ルート」。その他、EPA介護福祉士候補者(インドネシア人、フィリピン人、ベトナム人)が対象となる「経済連携協定(EPA)ルート」があります。

実務経験ルート

介護福祉士資格取得への流れ

実務経験ルートの場合、実技試験は免除となります。

受験資格

①従業期間3年(1095日)以上かつ従事日数540日以上 + 「実務者研修」を修了

②従業期間3年(1095日)以上かつ従事日数540日以上 + 「介護職員基礎研修」と「喀痰吸引等研修」を修了

チェックポイント

・「介護職員基礎研修」は2012年度末で廃止され、新たに受講できないため、すでに修了している人以外はすべて①の受験資格になります。
・従業期間と従事日数は、試験実施年度の3月31日まで通算することができ、達成見込みで受験することができます。
・従業期間は、実務経験の対象となる施設(事業)・職種での在職期間のことで、産休、育休、病休等の休職期間も日数に含まれます。
・パートやアルバイトとしての雇用でも従業期間、従事日数に含まれます。
・従事日数は実際に介護などの業務に従事した日数のことで、業務時間が短時間の場合も従事日数は「1日」としてカウントされます。
・受験資格に、国籍、年齢、学歴等の制約はありません。

受験資格①の「実務者研修」とは

介護福祉士を目指すために必要な専門知識や技術を学ぶ研修です。「医療的ケア」などの実践的な介護技術を身につけることができます。

実務者研修は、20科目・450時間のカリキュラムを修了する必要がありますが、「介護職員初任者研修」を取得している場合、130時間分が免除され、320時間になります。取得までにかかる期間は、資格保有などで免除がある場合に最短約2か月、通常は約6か月です。介護福祉士試験の受験申し込み時に修了していなくても、「実務者研修修了見込み」で申し込みができます。

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資格なし・未経験から介護福祉士になるまでの最短スケジュール

資格なし・未経験の場合に、「実務経験ルート」で介護福祉士になるための流れについて、一例をご紹介します。

2022年4月1日までに入職した場合、2025年3月31日には、受験資格の従業期間3年間を満たすことができます。その間、540日以上の従事日数が必要です。3年間、週4日勤務を続けた場合で従事日数は約624日。従事日数540日以上は週3~4日勤務で達成できます。また、1日あたりの業務時間が短時間であっても、従事日数は「1日」としてカウントされます。

もうひとつ受験資格として必須の実務者研修の修了には、未経験の場合6か月程度の期間が必要です。実務者研修に受講の条件はないので、入職してすぐ受講を開始することもできます。2025年3月31日までに修了見込みであれば介護福祉士試験の受験申込みが可能ですが、試験勉強の時間を考えると、2024年9月頃までには修了しておきたいところです。

2025年3月31日までに受験資格を満たす見込みとして、2024年に受験申込み(例年8~9月頃)、2025年1月に筆記試験を受け、3月の合格発表で見事合格となれば、2025年の3月に介護福祉士の資格を取得することができます。

養成施設ルート

介護福祉士資格取得への流れ

養成施設ルートの場合、実技試験は免除となります。2017~2026年度までに卒業した場合、筆記試験を受けて不合格でも、卒業から5年間は介護福祉士資格を取得した状態を維持できます。

受験資格

①2年制以上の介護福祉士養成施設を卒業(修了)

②福祉系大学・社会福祉士養成施設・保育士養成施設のいずれかを卒業後、1年制以上の介護福祉士養成施設を卒業(修了)

介護福祉士養成施設とは

4年制大学、短期大学、専門学校など、厚生労働大臣が指定する「指定養成施設」となっている学校を指します。2~4年制の養成施設がほとんどで、一部、1~2年制もあります。

入学するには、高校卒業もしくは、高等学校卒業程度認定試験(旧大学入学資格検定)の合格者である必要があります。年齢などの制限はありません。

養成施設ルートの特例

2016年度までは、養成施設を卒業すると、国家試験を受けなくても介護福祉士の資格を取得することができました。しかし法改正によって、国家試験の合格が必須となりました。

2017~2026年度までは法改正の経過措置期間になっています。2017~2026年度までに卒業した場合は、卒業後5年間の期限付きで、暫定的に介護福祉士資格を取得できます。その間に国家試験に合格するか、5年間継続的に実務経験を重ねることで、6年目以降も介護福祉士の資格を維持することができます。

2027年度以降に卒業する場合は、このような特例はなく、介護福祉士の資格を得るには国家試験に合格する必要があります。

福祉系高校ルート

介護福祉士資格取得への流れ

2009年度以降に福祉系高等学校に入学し、新カリキュラムを修めている場合は実技試験が免除となります。2008年度以前の入学で、新カリキュラムを修めて卒業していない場合や、特例高等学校の場合は、介護技術講習を受講して実技試験免除となるか、介護福祉士国家試験で実技試験を受けるか、受験申込時に選択します。

受験資格

①福祉系高等学校に2009年度以降に入学し、新カリキュラムを修めて卒業

②福祉系高等学校に2008年度以前に入学し、旧カリキュラムを修めて卒業

③特例高等学校に入学し、必須単位を取得して卒業+9か月以上の実務経験(従業期間273日以上かつ従事日数135日以上)

チェックポイント

②か③の受験資格に該当する場合、介護福祉士国家試験の実技試験の免除を申請するには、「介護技術講習」を修了する必要があります。介護技術講習は合計32時間で、4日間(8時間×4日)で行うのが一般的です(実施施設により異なる)。

経済連携協定(EPA)ルート

日本で介護福祉士資格の取得を目的に就労する、EPA介護福祉士候補者(インドネシア人、フィリピン人、ベトナム人)が対象です。3年以上の実務経験で受験資格が得られます。

介護福祉士試験の難易度・合格率

第34回介護福祉士国家試験の合格率は72.3%

2022年に行われた第34回介護福祉士国家試験は、受験者数8万3,082人に対して、合格者数は6万0,099人となり、合格率は72.3%でした。過去の合格率をみてみると、70%前後で推移しています。国家資格の中では合格率が高い資格です。

介護福祉士国家試験の合格率・受験者数・合格者数

出典:厚生労働省「介護福祉士国家試験の受験者・合格者の推移」より作成

第34回介護福祉士国家試験では、総受験者数8万3,082人のうち88.4%を占める7万3,054人が、介護施設などで働きながら試験を受けた人たちでした。養成施設は7,144人で全体の7.8%、福祉系高等学校は2,816人で全体の3.8%でした。

介護福祉士国家試験の合格ライン

試験は、1問1点の125点満点です。合格ラインは総得点の60%で、75点以上が目安となります。(問題の難易度により補正する場合あり)

75点以上を満たした上で、11科目ある試験科目群のすべてにおいて、1点以上の得点がある必要があります。合計点が75点以上でも、0点の科目群があると、不合格になります。

第35回(令和4年度)介護福祉士国家試験の概要

筆記試験:2023年1月29日(日)
実技試験:2023年3月5日(日)
受験申込の受付期間:2022年8月10日(水)~9月9日(金)まで(消印有効)
受験料:18,380円
合格発表:2023年3月24日(金)

介護福祉士の年収

2020年4月に、1万以上の施設や事業所を対象に行われた調査によると、介護福祉士(月給・常勤)の平均給与は、32万9,250円となっています。年収にして約395万円です。

資格なしの介護職員の場合、平均給与は27万5,920円、年収にして約331万円となりました。介護福祉士の資格がある場合と、無資格の場合では、年収にして約64万円の差があるという結果でした。

多くの施設・事業所が、介護福祉士に資格手当を設けていることや、有資格者であることでキャリアアップの機会に恵まれることなどが、理由としてあげられます。

また、2019年の調査と比べると、介護福祉士の平均給与は1万5,660円増加しています。年あたり約19万円増です。介護職員処遇改善加算※の取得率があがるとともに、介護福祉士に限らず、介護職の平均給与は上昇傾向にあります。

出典:厚生労働省「令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要」より作成

※介護職員処遇改善加算とは…介護職員の賃金改善や職場環境整備を目的とした加算です。2019年には経験や技能のある職員の処遇改善を強化する特定処遇改善加算も創設されました。

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介護福祉士の仕事内容

介護福祉士の仕事内容としては、食事・入浴・排泄介助などの身体介護、メンタル面のケア、利用者家族を含めた介護上の相談対応や助言、介護記録(事務作業)などがあります。

介護施設勤務の場合はレクリエーションの実施や夜間勤務、デイサービス勤務の場合はレクリエーションの実施や利用者の送迎、訪問介護勤務の場合は調理や部屋の掃除など家事全般をサポートする生活援助なども行います。

介護福祉士と介護職員(ヘルパー)との違い

身体介護・生活援助など基本的な仕事内容としては、介護福祉士資格を持たない介護職員との違いはありません。介護職員との大きな違いは、高度な専門スキルや知識があることの証明となる国家資格を持っていることで、人材としてのニーズが高まり、給与やキャリアアップなど待遇面で有利になることです。

1日のスケジュール(デイサービス勤務の場合)

デイサービスで働く介護福祉士に、1日の仕事の流れと仕事内容、気を付けているポイントなどを聞きました。

8:00 出勤

8:20~9:30 送迎

送迎時に気をつけているポイントは、第一に事故なく安全に送迎すること、第二に車内トラブルを避けること。利用者さま同士でどうしても性格が合わない方もいるので、車内でトラブルにならないよう、席を前後にして座ってもらったり、ときどき話をふって関心をこちらに向けたりしています。

9:30~11:40 入浴介助&ホール内見守り

入浴介助をする人数は、1日で多くても7~8人ほど。私の職場では、自分で対応できる利用者さまが多いので、介助も1対1で頭や背中を洗うといった内容です。着替えについても見守りが基本で、あまり手を出さないようにしています。

12:00 食事介助&見守り

食事介助時の動きとしては、食事をこぼしてしまっていないか、むせ混んでいないかなどを見つつ、ときどき「美味しいですか?」など、食事を邪魔しない程度の声かけをしたりします。声かけや、見られて食事をするのがいやな利用者さまもいるので、その場合は少し離れた所から見守りしています。

12:30~13:30 休憩

14:00 レクリエーションor体操

レクは、身体を動かすレク(ボーリング、輪投げ、風船バレーなど)と、頭を使うレク(パズル、間違い探し、点つなぎなど)をやっています。サポートとしては、身体を動かすレクなら楽しんでもらえるように盛り上げる声かけをしたり、頭を使うレクなら解けない問題を一緒に解いたり、ヒントを出したりします。

15:00 おやつの時間

おやつの時間には、テレビでYouTube動画を見ています。動画は時代劇や、懐かしい演歌動画など、リクエストを聞いて選びます。職員は一緒に動画を見ていることが多いです。途中、トイレ介助を頼まれたりもするので、ずっと一緒にいる訳ではありませんが、一部の職員がトイレ介助などではずした時は、他の職員が見守りしています。

16:00 送迎

送迎から戻り次第、片付けや次の日の準備をします。職員間の情報連携は、グループチャットでリアルタイムに行います。記録は当日の担当者がパソコンに入力し、各職員があいている時間に確認する形なので、情報連携や記録のための残業などはありません。

17:00退社

介護福祉士のキャリアパス

介護職としては、介護職員初任者研修→実務者研修→介護福祉士と資格を取得していくと、給与など待遇面でも、確実にステップアップしていくことができます。

介護福祉士として着実に勤続年数を重ねてキャリアを積んでいく人が多い中、上位資格としては民間資格の「認定介護福祉士」があります。「認定介護福祉士」とは、一般社団法人認定介護福祉士認証・認定機構が2015年12月に認証・認定を開始した民間資格です。国家資格の介護福祉士とは違い、試験の合格で得られる資格ではなく、養成研修の全過程を修了した介護福祉士が申請して受理されることで、資格取得となります。

また、ケアマネジャーの資格を目指したり、介護福祉士養成校や、実務者研修、介護職員初任者研修の講師として活躍する人もいます。

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現役介護福祉士に聞きました

介護福祉士歴8年の現役介護福祉士に、仕事の魅力や資格取得のメリット、試験の勉強方法などを聞きました。

Q.介護福祉士の仕事のやりがい・魅力は?

利用者様から感謝の言葉をいただいたり、楽しそうな笑顔を見た時にやりがいを感じます。仕事の魅力は、誰かに頼られること、その人たちにとって信頼のおける存在になれることです。

Q.介護福祉士の資格を取得してよかったことは?

私の場合ですが、転職の際に、すぐに転職先が見つかったことです。介護福祉士の資格保有者であることで、経験と知識を持っていると判断され、選考にいい影響があったと思います。

資格を取得する前には、採用面接の際に「資格取得はこれから考えていますか?」と聞かれることもありました。介護の仕事を長く続けるなら、ぜひ取得しておいた方が良いと思います。

Q.どの資格取得ルートでしたか?

「実務経験ルート」です。高校生の時、1度試験にチャレンジしたものの取得する事ができませんでした。それから介護職員として3年働き、その翌年に試験を受けて取得しました。

Q.筆記試験について、おすすめの勉強法やアドバイスはありますか?

私の場合は、過去問を繰り返しやりました。個人的には自動車教習所の試験勉強のような感覚でした。

試験当日は、筆記用具以外は持っていきませんでした。勉強してきたノートや教科書を持って行って当日見返してしまうと、試験の緊張から今まで解けていた問題に対して疑問や迷いが生まれて、解答ミスに繋がることが過去にありました。

なので、当日は音楽を聴いたり、小説を読んだりして気持ちを落ち着かせました。リラックスすることで、試験に迷いなく挑むことができたと思っています。

まとめ

この記事では、介護福祉士になるための道のりから、国家試験の難易度、年収、仕事内容などをまとめてご紹介しました。

日本の総人口に占める高齢者の割合は1950年代から増え続け、2020年には28.7%になり、2040年には35.3%になると推計されています。介護の専門知識と技術を持つ介護福祉士の人材ニーズは、今後ますます高まるでしょう。

介護福祉士は、介護職員として働きはじめ、実務経験を積むことで受験資格が得られる国家資格です。介護業界で働くなら、介護福祉士の資格取得を目指してみてはいかがでしょうか。

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監修者 カイゴジョブ編集部

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