移乗・移動介助の時、「持ち上げ方」のコツはありますか?【介護職のお悩みQ&A】

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移乗・移動介助の時、「持ち上げ方」のコツはありますか?【介護職のお悩みQ&A】

介護職の働く悩みや疑問に、介護現場で働く人達がリアルに答えるQ&A。「こんなとき、他のみんなはどうしているの?」といった疑問に、介護職歴10年以上の経験者が答えます。

Q 移乗・移動介助の時、「持ち上げ方」のコツはありますか?

移乗や移動介助の際に、利用者様を持ち上げるときのコツがあれば知りたいです。

A 「持ち上げる」より「下におろす」方が簡単です。

介護は「持ち上げる」より「下におろす」方が簡単です。そして「押す」より「引く」方が力を使いません。

これはベッド上で実践していただくと良くわかるかと思うのですが、まずベッドから車いすに移乗する際に、ベッドを車いすより高くして「持ち上げず」に「下ろす」ことを意識すると重力に逆らわないため楽です。

ベッド上で身体を左右に移動する際は、「押す」のではなく手前に「引く」ようにします。押す力よりも引く力の方が、少しの力で移動することができます。これらをボディメカニクスと言います。(介護職歴13年/介護福祉士)

ボディメカニクスとは?

ボディメカニクスとは、最小限の力で、介護される人を支えたり、動かしたりすることのできる介護技術。人間の筋肉や関節などが動くときの力学的関係を活かすことで、最小限の力で介助が可能になります。ボディメカニクスを活用すれば、介助する側だけでなく、介助される側の身体的負担も軽減することができます。

ボディメカニクス9つの基本

①介助者の「支持基底面」を広くする

支持基底面とは、身体を支える(支持)ための基礎となる、床と接している部分を結んだ範囲のことです。介助者が足幅を前後・左右に開き、支持基底面を広くとることで、立位姿勢の安定性を高めます。

②介助者の重心を低くする

介助者が膝を曲げて、腰を落とす(重心を低くする)ことで、姿勢が安定します。また、腰への負荷が小さくなります。

③介助者と介助される者の身体をできるかぎり近づける

双方の重心を近づけることで、移動の方向性がぶれずに一方向に力が働き、身体も安定するため、無理なく力を入れやすくなります。

④てこの原理を活用する

てこの原理とは、動かすものとの間に支点をおくことで、小さな力で重いものを動かすという原理です。例えば、介助される者の肘や膝、おしりなどを支点にして、遠心力で身体を起こすなど、てこの原理を活用して、介助される者の身体を動かします。

⑤大きな筋群を使う

腕や手先だけではなく、足腰の大きな筋肉を意識しながら介助しましょう。腹筋・背筋・大腿四頭筋・大殿筋などの大きな筋肉を同時に使うことで1つの筋肉にかかる負荷が小さくなり、大きな力で介助することができます。

⑥介助者は身体をねじらない

身体をねじると重心がぐらついて、不安定になります。また腰痛の原因にもなるため注意が必要です。介助者の足先を動作の方向に向けると、身体をねじらずに姿勢が安定します。

⑦水平に移動する

ベッド上で移動するときなどには、身体を持ち上げずに横に滑らせると、容易に移動できるので、水平にスライドすることを意識します。身体を持ち上げなくてはならない場合は、腰痛予防のために、腰だけではなく膝の屈伸を利用しましょう。

⑧介助される者の身体をコンパクトにまとめる

介助される者の腕を胸の前で組む、膝を曲げるなどして、身体をできるかぎりコンパクトにまとめ介助を行います 。 コンパクトにまとめると、摩擦面が少なくなり、介助がしやすくなります 。

⑨ベクトルの法則を用いる

人間は立ち上がる時、まず前方へ傾き、その後上へ向かって立ち上がります。座位から立位になるとき、介助される者に前方にもたれかかるように傾いてもらうことで、介助者はその力を利用して楽に立位へと介助することができます。

ボディメカニクスの実践例~ベッド上の移動~

水平移動

①介助される者の両腕を腹部の上(または胸のあたり)で組み、膝を立てる。体をコンパクトにすることで移動時の摩擦を小さく。
②肘関節で首を支えながら、その手のひらで肩甲骨を支える。介助者の反対側の腕を支点にし、てこの原理を使って 利用者の上半身を持ち上げ、手前に移動する。
③下半身は手前の足で向こう側の足を乗せる。介助者は片手を腰の下に入れ、もう一方の手を大腿部に入れ、手前に引く。

上方移動

①ベッドの上部に枕を置く。(移動時に頭を打たないようにする)
②介助される者の腕を組み、体を小さくする。体をコンパクトにすることで移動時の摩擦を小さく。
③介助される者の両膝を立てる。
④介助者の頭部側の腕は、肩甲骨、頭部を支え、足側の手は大腿部(臀部の近く)を支え、介助される者に協力してもらいながら、息を合わせて上方へ移動する。

出典:「介護キャリアアップ応援プログラム 介護基礎知識・介護技術 テキスト」(厚生労働省)

関連Q&A

Q ボディメカニクス、頭にはあるのですが実践できません…。

ボディメカニクスについて、知識として頭にはあるのですが、実際にやるとなると、介助にいっぱいいっぱいで使えているのかわかりません…。

A まずは自分の重心と、介助対象との距離を意識するといいです。

実践で回数をこなせば、自然とできるようになるので大丈夫ですよ。まずは以下2つから意識するといいです。

①重心を低くする
②利用者様を抱える時(移乗時など)は自分と利用者を密着気味にする

利用者様の脇の下あたりに自分の手を入れるとお互いに負担がかかるので、利用者の背中まで自分の腕を回すと小さい力で抱えることができます。

この2点だけでも気にかけてみてください。(介護職歴15年/介護福祉士)

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