認知症の帰宅願望で「家に帰りたい」と言われた時、どう対応すべきかわかりません【介護職のお悩みQ&A】

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認知症の帰宅願望で「家に帰りたい」と言われた時、どう対応すべきかわかりません【介護職のお悩みQ&A】

介護職の働く悩みや疑問に、介護現場で働く人達がリアルに答えるQ&A。「こんなとき、他のみんなはどうしているの?」といった疑問に、介護職歴10年以上の経験者が答えます。

Q 認知症の帰宅願望で「家に帰りたい」と言われた時、どう対応すべきかわかりません。

認知症のある利用者様で「家に帰りたい」「お迎えがそろそろ来るから」と言って帰る準備を始めてしまう場面がよくあります。

「今日はお泊まりなんですよ~」とお伝えしても、何回も同じことをおっしゃり、そわそわされます。こんな時、毎回同じ返答でいいものなんでしょうか?

「お泊まり」という言葉を出すから、帰りたいという気持ちにさせてしまうのでしょうか…。認知症の方の心理がわからず、何と言ってあげるのがいいのか難しいです。

A 帰宅願望に対してやってはいけないこと&対処法をお伝えします。

お家に帰りたいとおっしゃる方の対応は、とても難しいですよね。経験年数が長くても、適切に対応できていない職員が多くいると感じています。

適切でない対応の代表例としては、以下のようなものがあります。
①誤魔化したり、嘘をついてその場にいてもらうようにする
②「お泊りと決まっているので帰らせる訳にはいかない」など事務的に対応する
③対応が面倒になり、ご本人が訴えても無視してしまう

これらの対応は「帰りたい」と思う気持ちを助長するだけなので、その後の対応にさらに時間がかかり、職員の負担を大きくしてしまいます。

そして、人生の先輩である高齢者の方々は、認知症を発症していても、介護職員が嘘をついていると見抜くと、その嘘を切り抜ける回答を考え、言葉巧みに何としても帰ろうとされます。頼りないと思われると「もっと偉い人に言う」と言って、その職員の言葉を聞いてくれなくなってしまいます。

では、どう対処すればいいのか。2つのポイントをお伝えします。
①普段から「ここは安心できる場所」「楽しい場所」「私が必要な場所」という思いを持ってもらう
②ご本人にやっていただきたい役割を持ってもらう

「安心してお泊まりできる場所」というイメージをご本人に持ってもらうことができれば、帰りたいと申し出る方は少なくなります。帰りたいと申し出る方のほとんどが、不安を抱えているという事でもあります。日々のコミュニケーションの中で、ご本人の不安を取り除き、安心してお泊まりできる環境を整える事が大切です。

また、ご本人に何か施設内での役割を持ってもらい、帰りたいと思う前に、そのことに注意を向けてもらうことも効果的です。

一朝一夕ではいかない対応なので、ご本人としっかり向き合いながら、対応をチームで共有してみてください。(介護職歴15年/介護福祉士)

Q 帰宅願望にどう声かけしていいかわからず、かなり怒っている状態でした…。

帰宅願望のある方が数名いて、「どうして私はここに居るの」「家に帰りたい」「ひどい、刑務所から出して」など、5分置きに言われていたのですが、上手く声かけができませんでした。どのように声かけをしたら良かったのでしょうか? かなり怒っている状態でした…。

A 帰宅したい気持ちは受け止めつつ、話題をそらす対応をしています。

私は帰宅願望に対して、歩ける方なら近くで見守りながら施設内を歩いていただいたり、「自宅はどこですか?」からふるさとの話に発展させて「帰りたい」から話題を離したりしています。

ほかに、「バスと電車で帰るの?遠いから車で送るよ。準備するから待っててね」「待っている間にちょっと手伝って貰いたいことがあるんだけどいいかしら?」…という感じで、お願いごとをしたりと、帰宅したい気持ちは受けとめつつ話題を逸らす、という方法をよくとっています。

最初のそわそわした気持ちの時に鎮火させると、炎上までの時間を少しずつ延ばすことができますよ。(介護職歴10年/介護福祉士)

認知症の基本知識

認知症は、脳細胞の死滅や活動の低下によって認知機能に障害が起き、日常生活や社会生活が困難になる状態の総称です。「認知症=物忘れ」とイメージする人もいますが、記憶の消失だけでなく、理解力や判断力の低下も生じます。

記憶障害においては、「昨日食べた夕食が思い出せない」といった物忘れとは根本的に異なり、「夕飯を食べた」という体験そのものを忘れてしまいます。

認知症を引き起こす原因は様々で、その発症過程により「アルツハイマー型認知症」「脳血管性認知症」「レビー小体型認知症」などの種類に分類されます。

三大認知症とは

アルツハイマー型認知症(アルツハイマー病)

認知症のうち最も多いとされているのがアルツハイマー型認知症で、全体の半数以上ともいわれています。

主な症状は、記憶障害、時間や場所などの認識が低下する見当識障害、計画を立てる・こなすが困難になる実行機能障害です。ただし個人差も大きいため、この症状が全員一律に出るわけではありません。

レビー小体型認知症

アルツハイマー型認知症に次いで多いとされているのがレビー小体型認知症です。レビー小体という特殊なたんぱく質が脳内に生じることで脳神経細胞が破壊され、それに伴い発症します。

他の認知症と同じく記憶障害や見当識障害、実行機能障害がみられます。さらにパーキンソン症状や幻視、自律神経症状、薬剤への過敏症などがあげられます。

個人差はありますが、初期は認知機能の低下よりも手足の震えや動きが遅くなったりと、パーキンソン症候群特有の症状が表れるようです。

脳血管性認知症

脳卒中(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血など)による、脳の血管の詰まりや破れから生じる病気を脳血管障害といいます。この障害により脳細胞が死滅することで発症する認知症を、脳血管性認知症と呼んでいます。

他の認知症と同じく記憶障害や見当識障害などがみられますが、脳細胞の損傷によって身体麻痺や言語障害を伴うこともあります。また、症状に対して本人の自覚も強く、抑うつや、感情のコントロールができないため投げやりな態度になりやすい、といった傾向もあります。

ひとくくりに認知症と言ってもいくつかの種類があり、個々人で症状も異なります。行動を制限されると怒る場合、孤独を感じると落ち着かなくなる場合、脳機能障害で感情のコントロールが難しい場合、常に思考や記憶が現在ではなく過去の一時期に戻ってしまう場合など様々です。

肝心なことは、暴れてしまうなど症状がでたときに、個々人の原因として考えられるものが何かを、しっかり情報共有しておくことです。病歴や現在の疾患、生活歴、最近の体調(水分や食事がとれているか、排便はしっかりあるか、バイタルに異常ないか等)の情報などです。その上でどのように対応するか職員間で確認し、ケアに入ることです。

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