訪問介護の現場で働きながら「このまま訪問介護員(ホームヘルパー)を続けていて給与は上がるのだろうか」「将来のために国家資格を取るべきか」と悩む方も多いでしょう。
この記事では、訪問介護員と介護福祉士の違いから、資格を取得するメリットや手順などを解説します。
訪問介護員と介護福祉士の違い
大前提として、訪問介護員は「職種の名前」であり、介護福祉士は「資格の名前」です。その点を踏まえて、二つの違いについて解説します。
資格の種類と難易度の違い
訪問介護員として働くためには、介護職員初任者研修(以下、初任者研修)以上の資格を保有している必要があります。これは数か月の講習と評価を経て修了するため、難易度は比較的低めです。
一方、介護福祉士は国が認める国家資格です。実務経験ルートで目指す場合は、初任者研修の上位資格である介護福祉士実務者研修(以下、実務者研修)を修了し、かつ実務経験を3年以上積むことにより、受験資格が得られます。その後、国家試験に合格して初めて資格を取得できるため、取得までには一定期間の実務と学習が必要になります。
※出典:公益財団法人社会福祉振興・試験センター「介護福祉士国家試験」
求められる役割の差
現場での直接的な身体介護や生活援助の内容に大きな違いはありませんが、介護福祉士には「介護に関する専門的知識および技術をもって介護を行うとともに、他の介護者に対して指導を行うこと」が期待されています。単にケアを行うだけでなく、利用者さんの状態を評価し、適切なケア内容の提案や家族への助言を行うなど、より多角的な視点での関わりが求められます。
※出典:厚生労働省「介護福祉士の概要について」
給与水準と処遇改善加算による影響
厚生労働省の調査によると、介護福祉士の平均給与額は、無資格者や初任者研修修了者と比較して高い傾向にあります。
また、令和6年度の介護報酬改定では、処遇改善加算が一本化されました。この制度では、経験・技能のある介護職員(介護福祉士資格を有する職員)を一定割合以上配置している事業所ほど、より高い区分の加算を算定できる仕組みとなっています。
そのため、介護福祉士の資格を取得することで、資格手当にとどまらず、基本給や賞与などの処遇面で評価される場合があります。ただし、実際の賃金への配分方法や金額は、各事業所の賃金規程や運用方針によって異なります。
| 資格・区分 | 平均給与額(常勤・月給) |
|---|---|
| 介護福祉士 | 350,050円 |
| 実務者研修 | 327,260円 |
| 初任者研修 | 324,830円 |
| 無資格 | 290,620円 |
※出典:厚生労働省「令和6年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要(p17)」、「介護職員等処遇改善加算の全体像」
訪問介護の現場で介護福祉士が求められる理由
訪問介護において、介護福祉士の存在は重要です。ここでは、現場でなぜ介護福祉士が必要とされるのか、その背景を説明します。
サービス提供責任者へのキャリアパス
訪問介護事業所には必ず配置しなければならない「サービス提供責任者」という役職があります。このサービス提供責任者になるには、実務者研修修了者または介護福祉士などが要件となる場合が一般的です。キャリアアップを目指す上で、事業所の中心的存在であるサービス提供責任者への道が開けることは、介護福祉士を取得する大きな利点でしょう。
※出典:職業情報提供サイトjob tag「訪問介護のサービス提供責任者」
専門的なケアと判断力が求められる背景
訪問介護は施設と異なり、訪問介護員が主に一人で利用者さんの自宅を訪問します。緊急時の対応や、利用者さんの細かな変化に気づく力が不可欠です。専門的な知識や技術を学んでいる介護福祉士は、現場での的確な判断が期待できるため、重症度の高い利用者さんや複雑な事情を抱える世帯の担当として優先的に配置される可能性もあります。
他職種連携やチームケアにおける立ち位置
在宅ケアでは、医師、看護師、ケアマネジャーなど多くの専門職が連携します。介護福祉士は、介護の専門家としてこれらの他職種と意見を交わす役割を担います。専門用語を正しく理解し、根拠に基づいた報告や連絡ができる能力は、チーム全体で利用者さんを支える「チームケア」の質を高めるために欠かせない要素といえます。
介護職員・ヘルパーの求人情報はこちら訪問介護員が介護福祉士を取得するメリット
訪問介護員が介護福祉士を取得するメリットは多くあります。経済的な恩恵はもちろんのこと、将来的なキャリアの選択肢が広がる可能性があります。
資格手当などによる年収アップの可能性
多くの事業所では、介護福祉士に対して月額数千円~数万円程度の資格手当を設定しています。これに加え、処遇改善加算の配分に影響を与える場合もあるため、年収アップにつながるでしょう。長期的に介護業界で働くのであれば、早めに取得することで生涯賃金にプラスの影響を与えます。
転職市場での評価と将来的な安定性
介護業界は慢性的な人手不足であり、介護福祉士などの国家資格を持つ人材の需要は高いといえるでしょう。そのため、転職を考えた際、勤務条件や待遇面での交渉の材料として活用できるケースもあります。また、年齢を重ねても専門職として働き続けられる安定性は、大きな安心材料となります。
ケアマネジャーの受験資格に関係する
将来的にケアプランを作成する「ケアマネジャー」を目指す場合、介護福祉士などの国家資格を保有し、5年以上(かつ従事した日数が900日以上)の実務経験を積むことが一般的な受験要件となります。まずは介護福祉士を取得することが、更なるステップアップにおいて重要な要素であるといえます。
実務経験ルートで介護福祉士を目指す手順
働きながら介護福祉士を目指す方の多くは「実務経験ルート」を選択します。このルートには「3年以上の実務経験」と「実務者研修の修了」の2つの要件が必要です。計画的に準備を進めるために、必要な期間や手続きの流れを正しく理解しておきましょう。
受験資格に必要な従事期間と日数
実務経験として認められるには、試験実施年度の3月31日までに、従業期間が「3年以上(1,095日以上)」かつ、実際に業務に従事した日数が「540日以上」である必要があります。この「日数」において、1日の勤務時間は問わないとされています。複数の事業所で働いた期間を合算することも可能ですが、証明書の発行依頼が必要になるため、手続きが煩雑になることが予想されます。
※出典:公益財団法人社会福祉振興・試験センター「介護福祉士国家試験」
実務者研修の修了に要する期間
実務経験に加え、実務者研修の修了が必要です。この研修は通信課題とスクーリング(通学)で構成され、保有資格により異なりますが、無資格からの場合は半年程度の期間を要するのが一般的です。そのため、国家試験の受験時期から逆算して、余裕をもったスケジュールを立てることが大切です。保有資格(初任者研修など)によって受講科目が免除される制度もあります。
※出典:厚生労働省「介護福祉士の資格取得方法の見直しの延期について(p5~6)」
試験申し込みから合格・登録までのスケジュール
介護福祉士国家試験は例年1月下旬に筆記試験が行われます。受験申し込みの受付は前年の8月上旬から9月上旬頃に締め切られるため、注意が必要です。合格発表は3月中旬から下旬に行われ、合格後に登録手続きを済ませることで、初めて「介護福祉士」として正式に名乗ることができます。
※出典:公益財団法人社会福祉振興・試験センター「介護福祉士国家試験」
資格取得を支援する制度の活用
自治体や事業所によっては、実務者研修の受講費用を補助したり、貸付制度を設けたりしている場合があります。また、ハローワークを通じて利用できる「教育訓練給付制度」では、講座の種類や雇用保険の加入期間などの条件を満たすことで、受講費用の20%〜80%が支給される場合もあります。制度の詳細や適用条件を、事前に確認することが大切です。
※出典:厚生労働省「教育訓練給付金のご案内(p1)」
この記事では、訪問介護員と介護福祉士の違い、そして介護福祉士取得までの流れなどを解説しました。訪問介護の現場において、介護福祉士は高い専門性と判断力を持つ大切な存在です。ぜひ、今後のキャリアアップを考えるうえでの参考にしてください。
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執筆者:ウェルミーマガジン編集部
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