日々の看護業務の中で、患者さんだけでなくそのご家族が抱える不安や葛藤を目の当たりにして、「もっと専門的な支援ができないか」と悩む看護師は少なくありません。
この記事では、家族支援専門看護師になるための要件や、費用や生活負担を軽減する公的支援制度について解説します。
家族支援専門看護師とは
家族支援専門看護師は、専門看護師制度のうち「家族支援」という分野で高度な看護実践能力を有すると認められた看護師です。公益社団法人日本看護協会(以下、日本看護協会)の制度規程では、専門看護師の役割として「実践」「相談」「調整」「倫理調整」「教育」「研究」の6つの機能が定められています。核家族化や在宅医療の進展に伴い、ご家族にかかる負担が増大している現代において、重要性が増しているといえるでしょう。
※出典:日本看護協会「専門看護師制度規程(p1)」
患者さんのご家族を支える高度な実践者
家族支援分野では、ご家族をひとつのユニットとして捉え、家族間のコミュニケーション促進や意思決定のサポート、つらい気持ちに寄り添う情緒的支援などを行います。ご家族が本来持っている力を引き出し、安定した療養生活を維持できるよう支援することが主な目的です。
登録者数から見る需要と現状
令和7年12月末時点の日本看護協会の統計によると、専門看護師総数は約3,644名であり、そのうち家族支援分野は102名と、他の分野(例:がん看護など)と比べると登録者数は多くないものの、在宅医療の拡大や終末期ケアの高度化により、家族支援を専門とする看護師の必要性は高まっています。
※出典1:日本看護協会「データで見る専門看護師」
※出典2:一般社団法人日本家族看護学会「家族支援専門看護師報告」
専門看護師・認定看護師・民間資格の違い
日本看護協会が認定する資格には、「専門看護師(Certified Nurse Specialist:CNS)」と「認定看護師(Certified Nurse:CN)」があります。専門看護師は大学院修士課程の修了が受験要件で、研究や倫理調整など幅広い役割が求められるのに対し、認定看護師は特定のケア技術や領域を極め、実践・指導・相談の3つの役割を担います。また、日本看護協会とは別団体による民間資格(例:家族ケア専門士など)も存在しますが、制度の位置づけや認定主体が異なります。
| 項目 | 専門看護師 | 認定看護師 | 家族ケア専門士 |
|---|---|---|---|
| 教育課程 | 大学院修士課程 | 認定看護師教育課程 | 指定テキスト・講習 |
| 認定団体 | 日本看護協会 | 日本看護協会 | 一般社団法人日本終末期ケア協会 |
※出典1:日本看護協会「専門看護師」、「認定看護師」
※出典2:一般社団法人日本終末期ケア協会「家族ケア専門士」
家族支援専門看護師になるには
資格取得には、一定の実務研修に加え、日本看護協会が認定する教育課程を有する看護系大学院修士課程での専門教育を修了する必要があります。
必須となる3つの受験資格
日本看護協会が定める認定審査を受けるためには、以下の3つの条件をすべて満たしている必要があります。特に、家族看護の実務研修については、単なる勤続年数ではなく「特定の看護分野」での経験として認められる必要がある点に注意しましょう。
- 日本国の看護師免許を有していること
- 看護系大学院の修士課程を修了し、必要な単位を取得していること
- 実務研修が通算5年以上あり、そのうち3年以上は特定の専門看護分野(患者さんを含むご家族を対象として研修できる病棟、外来、地域、在宅など)での経験であること
※出典:日本看護協会「専門看護師」
資格取得までの流れ
看護系大学院修士課程を修了し、かつ実務研修を通算5年以上(うち3年間以上は専門看護分野)有している場合、毎年1回の認定審査に合格する必要があります。認定審査は、書類審査と筆記試験で行われます。
合格後、専門看護師認定証交付・登録を行い、有資格者となります。ただし、5年ごとの更新審査が必要です。
認定審査の申請方法
認定審査の申請方法は、Web申請で行います。併せて、審査料(51,700円)の振り込み、オンラインもしくは郵送にて審査書類の提出を行います。
- 「資格認定制度 審査申請システム」でWeb申請を行う
- 審査料の51,700円(税込)を振り込む
- 審査書類をオンラインもしくは郵送で提出する
※出典:日本看護協会「専門看護師」
看護師などの求人情報はこちら養成課程のある大学院の選び方
家族支援専門看護師を目指す場合、日本看護協会が認定した専門看護師教育課程を有する看護系大学院を選ぶ必要があります。大学院選びは、その後の研究テーマや仕事との両立に大きく影響するため、制度要件と自身のキャリアプランの両面から検討することが重要です。
家族看護学を学べる大学院について
令和7年度の一覧では、家族支援分野の専門看護師教育課程を有する大学院として、以下が掲載されています。
- 東海大学大学院(神奈川県)
- 愛知県立大学大学院(愛知県)
- 大阪公立大学大学院(大阪府)
- 神戸大学大学院(兵庫県)
- 高知県立大学大学院(高知県)
大学院によって、がん看護や小児看護と組み合わせて家族支援を学べる場合もあり、自分の興味関心に近い大学院を選ぶことが大切です。ただし、最新の認定状況については、必ず日本看護協会の公式サイトで確認するようにしましょう。
※出典:日本看護協会「2025年度専門看護師教育機関・課程一覧」
仕事と学業を両立させるための視点
2年間の通学期間中、完全に休職するのか、働きながら通うのかは大きな悩みどころです。大学院によっては長期履修制度を導入し、3年から4年かけて計画的に学ぶことが可能な場合もあります。職場が専門看護師の育成に理解があるか、奨学金や休職制度が整っているかを事前に確認・相談しておくことが重要です。
費用負担を軽くする公的支援制度
大学院進学における懸念の一つは学費と生活費でしょう。しかし、国が実施する教育訓練給付制度や各種奨学金制度を活用することで、費用負担を軽減できる可能性があります。
専門実践教育訓練給付金
厚生労働省の雇用保険制度に基づく「専門実践教育訓練給付金」は、中長期的なキャリア形成を支援する制度です。受講中は教育訓練経費の50%(年間上限40万円)が支給され、修了後に資格取得や就職、賃金上昇などの要件を満たすと、支給割合が70%(年間上限56万円)、さらに条件によって最大80%(年間上限64万円)まで支給額が引き上げられます。
※出典:厚生労働省「専門実践教育訓練の「教育訓練給付金」のご案内(p3)」
教育訓練支援給付金
専門実践教育訓練給付金を受給中に離職している場合、雇用保険の基本手当(失業手当)の支給に加えて、受講中の一定期間について「教育訓練支援給付金」として、基本手当日額の約60%相当額が支給される場合があります。詳しい要件などは、専門機関に問い合わせてみましょう。
※出典:厚生労働省「専門実践教育訓練の「教育訓練給付金」のご案内(p1)」
看護協会や自治体の奨学金制度
各都道府県の看護協会や自治体などでは、専門看護師を目指す方を対象とした奨学金制度を設けているところもあります。また、返済免除付きの制度などもあり、制度内容や併用可否は各募集要項で確認が必要です。
※出典:日本看護協会「助成金等」
資格取得後のキャリアと市場価値
専門看護師は、特定分野において高度な専門性を発揮し、医療現場における実践・調整・倫理支援などを担う存在です。
家族支援専門看護師が活躍する主な職場
主な活躍の場は、病院(病棟・外来・入退院支援部門・看護管理部など)、訪問看護ステーション、教育機関などです。患者さんのみならず、そのご家族に寄り添い、医療・療養相談や退院支援など、多様な業務を担当することが多いです。ご家族が強く自宅退院を希望した場合は、院内外の多職種と連携し、その願いを叶えられるように活動します。このように、家族支援専門看護師は、幅広い領域で活躍できるといえるでしょう。
給与手当や昇進への影響
資格取得後の手当や処遇、昇進への影響は、勤務先の方針によって異なります。ただし、勤務先によっては、資格取得による直接的な年収アップや役職者への就任も目指しやすくなるでしょう。転職時においても「高度な調整能力を持つ人材」として評価される場合があります。
この記事では、家族支援専門看護師になるための要件、大学院選び、そして費用負担を軽減するための支援制度について解説しました。家族支援専門看護師は、患者さんとご家族の絆を支え、より良い医療環境を築くための貴重な資格です。ぜひ、今後のキャリアを考えるうえでの参考にしてください。
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執筆者:ウェルミーマガジン編集部
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