看護師と救急救命士のどちらを目指すべきか迷っていませんか。同じ「命を守る仕事」でも、看護師は療養生活を支え、救急救命士は病院到着前の救急対応(プレホスピタルケア)を担うなど、役割や働く場所に違いがあります。
この記事では、看護師と救急救命士の役割・収入・資格取得方法・適性の違いを整理し、それぞれに向いている人の特徴までわかりやすく解説します。
看護師と救急救命士の役割はどう違うのか
看護師と救急救命士は、どちらも命を守る専門職ですが、活動する場所や求められる役割が異なります。まずはそれぞれの職種がどこで、どのような役割を担って活動しているのか、その立ち位置の違いを整理しましょう。
看護師・救急救命士の根拠法と立ち位置の違い
救急救命士は救急救命士法に基づき、厚生労働大臣の免許を受けて活動する職業です。看護師は保健師助産師看護師法に基づき、同じく厚生労働大臣の免許により活動が認められています。
救急現場と病院内での主な役割と活動範囲
救急救命士の主な活動拠点は、救急車による現場から病院までの搬送過程です。心肺停止などの重症傷病者に対し、医師の指示のもとで高度な救命救急処置を行い、病院へ搬送し、救命につなぐことが任務です。
一方、看護師は病院を中心に、訪問看護や介護施設などでも働き、療養生活の支援から救急対応まで幅広い役割を担います。外来での初期対応から病棟での継続的なケアまで関わる点が特徴です。
実施できる処置と特定行為の具体的な範囲
救急救命士は法律により「特定行為」と呼ばれる救命に直結する処置(気道確保、除細動、静脈路確保など)を、救急現場や搬送中に行うことが可能です。これらは、重症傷病者の生命維持に直結する重要な救命処置に位置づけられています。
看護師は医師の指示のもと診療の補助を行うほか、療養上の世話を担う専門職であり、法律上の定義や目的が異なります。主な違いは以下のとおりです。
看護師と救急救命士の主な違い(役割・活動場所・法的根拠)
| 比較項目 | 救急救命士 | 看護師 |
|---|---|---|
| 主な活動場所 | 救急車内・災害現場・病院(救急外来) | 病院・診療所・介護施設・訪問看護ステーションなど |
| 医療処置の性質 | 救命に特化したプレホスピタルケア | 診療の補助および療養上の世話 |
| 法的根拠 | 救急救命士法 | 保健師助産師看護師法 |
※出典:厚生労働省「救急救命士について(p6)」
年収や給与水準を公的統計データで比較
消防職員として働くケースが多い救急救命士と、病院や施設で働く看護師では、給与体系や手当の仕組みに違いがあります。ここでは、公的統計をもとに両者の収入の特徴を整理します。
厚生労働省の統計(令和6年賃金構造基本統計調査)をもとに算出すると、看護師の年収は約520万円とされています。対する救急救命士は自治体の消防職員として勤務するケースが多く、その給与は各自治体の条例に基づく公務員給与体系に従います。総務省の統計(令和6年4月1日地方公務員給与実態調査結果)から全国平均をもとに算出すると、年収は約652万円とされています。夜勤手当や地域差によっても収入は変化します。
看護師と救急救命士の平均月収・賞与・年収比較(全国平均)
| 職種 | 平均月収 | 平均年間賞与 | 推計年収 |
|---|---|---|---|
| 看護師 | 約36.3万円 | 約83.5万円 | 約520万円 |
| 救急救命士(消防官含む) | 約41万円 | 約160万円 | 約652万円 |
※年収は月収・賞与の全国平均をもとに算出した推計値です。救急救命士の給与は自治体や各種手当により大きく変動します。
※出典1:厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査一般労働者職種」
※出典2:総務省「令和6年4月1日地方公務員給与実態調査結果第5表職種別職員の平均給与額(p253~254)」
地方公務員としての救急救命士と看護師の待遇差
消防署に所属する救急救命士は地方公務員として勤務するケースが多く、各種手当や福利厚生が整っており、安定性が高いのが特徴です。ただし、消防官として採用される必要があり、採用試験には年齢制限が設けられている点に注意が必要です。
一方、看護師は勤務先の選択肢が幅広く、働き方や収入のあり方に柔軟性がある点が特徴です。
夜勤手当による給与への影響
看護師の月収において大きな比重を占めるのが夜勤手当です。3交代制や2交代制により、1回あたり数千円から1万数千円の手当が付きます。
救急救命士には宿日直手当や、救急出動時に支給される手当があります。これらの諸手当が、基本給に加えて収入差を生む要因となっています。
看護師から救急救命士を目指す場合の資格取得ルート
救急救命士になるには、養成校や大学などで指定科目を履修し、国家試験に合格して免許を取得する必要があります。
養成課程は、一般的には高校卒業後に進学するケースが多いほか、大学卒業後や社会人から入学することも可能です。看護師免許を保有している場合でも、養成所で所定の課程を履修する必要がありますが、一部科目が免除されることがあります。
また、消防署で働く場合は、救急救命士資格に加えて消防官採用試験に合格する必要があります。
国家試験の合格率と難易度
救急救命士国家試験の合格率は、令和7年実施の試験では94.4%でした。養成課程を修了した受験者が多く、合格率は高い水準にあります。
令和5~7年の救急救命士国家試験の受験者数・合格者数・合格率
| 実施年 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
|---|---|---|---|
| 令和5年 | 3,255人 | 3,054人 | 93.8% |
| 令和6年 | 3,330人 | 3,137人 | 94.2% |
| 令和7年 | 3,436人 | 3,242人 | 94.4% |
※出典:厚生労働省「第46回救急救命士国家試験の合格発表」、「第47回救急救命士国家試験の合格発表」、「第48回救急救命士国家試験の合格発表」
試験は筆記試験で実施され、基礎医学や臨床救急医学などの幅広い分野から出題されます。主な出題科目は以下の通りです。
救急救命士国家試験の主な出題科目
| 科目区分 | 内容 |
|---|---|
| 基礎医学 | 人体の構造・機能、病理学、社会保障制度、患者搬送など |
| 臨床救急医学総論 | 救急対応の基本、特定行為の適応判断 |
| 臨床救急医学各論(一) | 臓器・器官別の疾患理解 |
| 臨床救急医学各論(二) | 病態別の救急対応 |
| 臨床救急医学各論(三) | 特殊病態や災害医療への対応 |
※出典:厚生労働省「第48回救急救命士国家試験の合格発表」、「救急救命士国家試験の概要」
看護師から救急救命士になる強みとは
看護師から救急救命士を目指すことで、病院内での臨床経験に加えて、救急現場での判断力や対応力を身につけることができます。病態理解や観察力といった看護師としての経験は、救急現場での判断や処置にも活かせます。
看護師と救急救命士どっちが自分に合う?適性とキャリアの違い
救急現場の最前線で働く救急救命士と、外来・病棟で患者さんに寄り添う看護師では、ストレスのかかり方や判断のスピード感が異なります。以下に適性の違いを整理します。自分の強みがどちらで活きるのかを確認しましょう。
救急救命士は現場での瞬発力が求められる
救急救命士には、現場の状況に応じて優先順位を判断し、迅速に行動する力が求められます。また、交通事故現場や高所、悪天候下など、状況によっては危険を伴う環境で活動することがあります。こうした物理的・精神的な環境の厳しさに耐えうるタフさやチームで連携する力が求められます。
継続的なケアと回復を支える看護師に要求される資質
看護師には、患者さんの変化に気づく観察力や、療養を支える継続的な関わりが求められます。処置だけでなく、患者さんの心理的ケアや家族への対応など、コミュニケーションを重視する方に向いています。また、医師や他職種と連携し、治療計画を遂行する調整力や継続的な対応力も求められます。
キャリアの柔軟性と働き方の違い
救急救命士は消防官として働くケースが多く、24時間体制の交替勤務(当直・非番)で勤務するのが一般的です。出動の有無にかかわらず待機時間も含めた勤務となるため、生活リズムが不規則になりやすい特徴があります。一方で地域に根ざした安定性があり、長期的に働きやすい環境といえます。近年は、病院内で医師を補助する「病院内救急救命士」として日勤中心で働くケースも見られます。
看護師は求人数が多く、病院や診療所、訪問看護、介護施設など多様な勤務先から働き方を選べる特徴があります。病棟では夜勤を含む交代勤務が一般的ですが、日勤のみの職場も選択可能で、勤務形態の幅があります。
ダブルライセンスを取得するメリットと需要
看護師と救急救命士のダブルライセンスは、救命医療の現場で専門性を高める選択肢の一つです。制度改正の影響もあり、この二つの資格を併せ持つ人材の活躍の場は広がりつつあります。
2021年の救急救命士法改正により、一定の条件下で、傷病者が医療機関に到着した後も、入院または帰宅に至るまでの間に救急救命士が救急救命処置を行えるようになりました。これにより、救急現場から病院内までの対応が連続しやすくなり、ダブルライセンスを持つ人材の活躍の場も広がっています。
※出典:厚生労働省「医療機関に所属する救急救命士に対する研修体制整備について」
救急外来やドクターカーでの看護師救命士の活躍
ドクターカーでの出動時、看護師としての医療知識と救急救命士としての現場対応力があれば、医師の指示のもとで円滑な対応が可能になります。救急外来においても、プレホスピタルケアの経過を理解していることで、搬送受け入れの判断や初期対応に活かされる場面があります。
| メリット | 効果と価値 |
|---|---|
| 現場対応力 | 救急現場でのトリアージや迅速な処置判断が可能になる |
| 医療的判断力 | 看護師としての深い病態知識をもとに臨床推論を行える |
| キャリアの幅 | 消防官、病院の救急外来、ドクターカー、災害医療などで活躍できる |
病院内救急救命士という新しい働き方の可能性
病院内で勤務する「病院内救急救命士」は、タスク・シフト(業務移管)の観点から導入が進んでいます。単独の救急救命士として採用されるケースもありますが、看護師免許を併せ持つことで、対応できる業務の幅が広がるため、より柔軟な配置が可能になります。
消防官採用試験におけるメリットとキャリアへの影響
消防官採用試験において、看護師免許と救急救命士免許の両方を持っている場合、救急現場に関する知識や医療対応力を備えた人材として評価されることがあります。配属後も救急隊員として早期に実務に関わりやすく、専門性を活かした役割を担うことが期待されます。
この記事では、看護師と救急救命士の役割や収入、資格取得ルート、適性の違いについて解説しました。看護師は病院内を中心に療養生活を支える役割を担い、救急救命士は現場から病院までの搬送過程で救命処置を行います。それぞれ働く場所や求められる役割が異なるため、自分がどのような場面で力を発揮したいのかを基準に選ぶことが重要です。この記事を参考に、志向に合ったキャリアを検討してみてください。
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執筆者:ウェルミーマガジン編集部
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