保育士として働くなかで、「仕事量に対して給料が見合っていないのでは」と感じる場面もあるのではないでしょうか。
この記事では、最新の統計データに基づく平均年収や年代別の給料推移をはじめ、給料が上がりにくい構造的な理由、雇用・施設形態による違いから収入アップの具体的な方法までを解説します。
就職・転職先を比較検討したい方は「雇用形態・施設形態で保育士の給料はどう変わる?」の章からご覧ください。現在の職場で収入を増やすヒントを探している方は、「保育士が収入アップを目指す方法」の章を参考にしてみてください。
保育士の平均給料はいくら?
ここでは、厚生労働省の統計データをもとに、保育士の平均年収や手取り額の目安などを解説します。
保育士の平均月収・平均年収・手取り額の目安
保育士の直近2年の平均月収・平均年収などは以下の通りです。
| 年度 | 平均月収 | 賞与など | 平均年収 |
|---|---|---|---|
| 令和7年 | 約28.57万円 | 約84.79万円 | 約427.63万円 |
| 令和6年 | 約27.72万円 | 約74.17万円 | 約406.81万円 |
※表内の「平均月収」は「きまって支給する現金給与額」を指し、各種手当込みの金額です。
※「きまって支給する現金給与額」の12か月分+「年間賞与その他特別給与額」にて算出
前年の令和6年調査と比較すると、保育士の年収は約21万円増加しており、処遇改善の効果もあって給料水準の上昇が続いています。
また、手取り額は総支給額から税金や社会保険料が差し引かれるため、一般に総支給額の7〜8割程度が目安とされています。月収28.57万円のケースであれば、手取りはおおよそ20万円台半ば程度です。ただし、家族構成や加入している保険によって差が生じるため、あくまで概算として理解しておきましょう。
※出典:政府統計の総合窓口(e-Stat)「令和7年賃金構造基本統計調査 職種(小分類)、性別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)」、「令和6年賃金構造基本統計調査 職種(小分類)、性別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)」
保育士の経験0年の給料の相場
保育士を目指す学生や、これから保育業界を目指す方が気になるのが初任給でしょう。厚生労働省の調査によると、 初任給の目安となる「経験年数0年」の保育士の全国的な平均月収(所定内給与額)は、約24.06万円となっています。実際の初任給は、勤務先によって学歴別に設定されている場合があり、さらに施設の種類(認可保育所・認定こども園・企業内保育所など)や公立・私立によっても幅があります。
※出典:政府統計の総合窓口(e-Stat)「令和7年賃金構造基本統計調査 職種(小分類)、性、経験年数階級別所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)」
年代別の平均年収
長く働き続けるうえで、将来的な昇給のイメージを持っておくことも大切です。以下の表で、厚生労働省のデータに基づく年代別の平均年収を確認していきましょう。
| 年代 | 平均年収(目安) |
|---|---|
| 20〜24歳 | 約350.41万円 |
| 25〜29歳 | 約399.58万円 |
| 30〜34歳 | 約422.19万円 |
| 35〜39歳 | 約430.82万円 |
| 40〜44歳 | 約455.03万円 |
| 45〜49歳 | 約475.95万円 |
| 50〜54歳 | 約464.34万円 |
| 55〜59歳 | 約440.77万円 |
| 60〜64歳 | 約443.21万円 |
※「きまって支給する現金給与額」の12か月分+「年間賞与その他特別給与額」にて算出
20代前半で約350.41万円だった年収は、経験を積むにつれて上昇し、45〜49歳で約475.95万円とピークを迎えます。一方で、50代以降はやや下降傾向に転じるなど、必ずしも定年まで右肩上がりに増え続けるわけではない点も特徴です。役職への昇格や勤務先の変更などのタイミングによって、個々の年収には幅が出やすくなります。
※出典:政府統計の総合窓口(e-Stat)「令和7年賃金構造基本統計調査 職種(小分類)、年齢階級別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)」
男女別の給料の違い
厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」に基づく男女別の平均給与データは以下の通りです。
| 性別 | 平均月収 | 賞与など | 平均年収 |
|---|---|---|---|
| 男性保育士 | 約30.03万円 | 約90.11万円 | 約450.47万円 |
| 女性保育士 | 約28.50万円 | 約84.55万円 | 約426.55万円 |
※表内の「平均月収」は「きまって支給する現金給与額」を指し、各種手当込みの金額です。
※「きまって支給する現金給与額」の12か月分+「年間賞与その他特別給与額」にて算出
年収ベースで見ると、その差は約24万円となっています。ただし、この差は単純な性別の違いによるものというよりも、勤続年数の長さや役職者の比率が影響していると考えられます。したがって、男女別の給料差を見る際は、性別そのものの違いだけでなく、働き方や雇用形態の分布にも目を向ける必要があります。
※出典:政府統計の総合窓口(e-Stat)「令和7年賃金構造基本統計調査 職種(小分類)、性別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)」
保育士の給料はなぜ安い?業界構造と処遇改善の動向
ここでは、保育士の給料が上がりにくい構造的な背景と、国が進めている処遇改善制度の最新動向について解説します。
他業種と比較した保育士の給料水準
厚生労働省のデータによると、全産業の平均月収(男女計)は約34.1万円となっています。これと比較すると、保育士の平均月収は約28.57万円となっており、やや控えめな水準にあるといえます。こうした具体的なデータが、「保育士の給料は安いのでは」という声につながっていると考えられます。
ただし、これはあくまで業界全体の平均値です。施設形態や勤続年数、資格・役職の有無によって個人の給料額には幅が出るため、「保育士だから一律に給料が低い」というわけではなく、勤務先や働き方次第で状況は変わるという視点も持っておきましょう。
※出典:厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 結果の概況 一般労働者の賃金」
公定価格に依存する業界構造
保育士の給料を考えるうえで重要なのが、保育業界特有の収入構造です。認可保育所などの教育・保育施設では、教育・保育に通常必要となる費用を基に国が定める「公定価格」が、施設への給付・委託費の算定の基礎となっています。
こども家庭庁によると、公定価格は施設の種類や定員、地域、子どもの年齢などを踏まえて、子ども1人当たりの単価として設定されています。その算定には「人件費・事業費・管理費」が含まれ、公定価格に基づく基本分単価に加算・減算を反映し、施設型給付費や委託費として支払われる仕組みです。
つまり、一般企業のように販売価格を自由に設定して売上を伸ばす事業モデルとは異なり、保育施設の収入には国が定める公定価格という制度上の枠組みが関わっています。
また、厚生労働省は保育士の処遇改善についても、公定価格における処遇改善加算を通じて実施してきました。このことからも、保育士の賃金・処遇は、各施設の経営努力だけでなく、公定価格の改定や加算制度などの政策・制度変更の影響を受ける構造にあるといえます。
※出典:こども家庭庁「基礎資料(公定価格)(p3〜4)」
保育士の処遇改善制度の仕組み
保育士の処遇改善を目的として、国は「処遇改善等加算」という制度を設けています。令和7年度(2025年度)からは、従来の処遇改善等加算Ⅰ・Ⅱ・Ⅲが一本化され、「基礎分」「賃金改善分」「質の向上分」の3区分に整理されました。
- 基礎分:職員の平均経験年数に応じた昇給など、基本的な賃金水準の改善に関する加算
- 賃金改善分:ベースアップなど、職員の賃金を継続的に引き上げるための加算
- 質の向上分:職員の技能・経験の向上や、リーダー層の職責に応じた追加的な賃金改善を行うための加算
特に「質の向上分」では、「副主任保育士等や職務分野別リーダー等」に対して、役職手当・職務手当など、職位・職責・職務内容に応じた追加的な賃金改善を行う仕組みが設けられています。
そのため、キャリアアップ研修などを通じて必要な技能・経験を身につけ、リーダーなどの職位に就くことは、処遇改善につながるキャリア形成の1つのルートとなっています。
※出典:こども家庭庁「施設型給付費等に係る処遇改善等加算について(令和7年度以降)(p3〜 5)」、「令和7年度以降の処遇改善等加算について(p12)」、「施設型給付費等に係る処遇改善等加算について(p2〜4)」
2026年度の保育士の賃上げ・処遇改善の動向
こども家庭庁の令和7年度補正予算では、公定価格上の人件費を5.3%改善する措置が講じられました。こども家庭庁の資料では、令和5年度5.2%、令和6年度10.7%、令和7年度5.3%の改善を積み重ね、こども家庭庁発足後の処遇改善は累計21.2%に達したとされています。
ただし、ここで注意したいのは、この「5.3%」や「21.2%」が、すべての保育士の給料が一律にその割合で上がることを意味するものではない点です。こども家庭庁が示しているのは、あくまで公定価格上の人件費の改善です。実際の職員への賃金の支給方法や配分については、処遇改善等加算の要件に基づき、各施設で対応することになります。
現在の処遇改善等加算については、こども家庭庁が令和8年度の通知やFAQを公開しており、加算の算定要件や賃金改善の考え方などが示されています。自分の勤務先でどのような処遇改善が行われているかを確認する際には、給与明細だけでなく、園からの説明資料や運営者への確認、こども家庭庁・自治体が公表する資料などを確認するとよいでしょう。
※出典:こども家庭庁「令和7年度こども家庭庁補正予算案主要施策集(p9)」、「令和7年度以降の処遇改善等加算について(p3)」
雇用形態・施設形態で保育士の給料はどう変わる?
ここでは、正社員やパートといった雇用形態、公立と私立などの施設形態などによる給料水準の違いについて整理して解説します。
正社員とパート・非正規保育士の給料差
正社員として働く保育士は月給制が中心で、前述の平均年収のデータが1つの目安となります。一方、パートや非正規雇用として働く場合は時給制が中心となるため、勤務時間や日数によって収入に幅が出ます。
厚生労働省の職業情報提供サイト(job tag)によると、パートなど短時間で働く保育士の平均時給は1,419円です(令和7年基準)。実際の時給は、地域や施設、資格の有無によって幅が生じます。また、一定の条件を満たせばパートでも「処遇改善等加算」の対象になるため、勤務を検討する際は事前に運営者へ適用状況を確認するとよいでしょう。
※出典:厚生労働省 職業情報提供サイト(job tag)「保育士」
公立保育所と私立保育所、給料が高いのはどちら?
公立保育所の保育士は地方公務員として採用され、給与体系は各自治体の給与条例に基づきます。一方、私立保育所の保育士は、運営法人の給与規程や処遇改善等加算の活用状況によって給料が決まります。
こども家庭庁の令和6年度「幼稚園・保育所・認定こども園等の経営実態調査」によると、常勤保育士の賞与を含めた平均給与月額は、公立が363,315円、私立が341,468円となっており、公立のほうがやや高い水準にあります。
ただし、私立保育所は法人ごとに給料水準の幅が広く、処遇改善等加算に積極的に取り組む施設では、手当が給料に反映されやすくなります。就職や転職を検討する際は、募集要項の給料欄だけでなく、昇給モデルや手当の配分方針も併せて確認するとよいでしょう。
※出典:こども家庭庁「令和6年度 幼稚園・保育所・認定こども園等の経営実態調査集計結果(p11)」
保育士と幼稚園教諭、給料が高いのはどちら?
厚生労働省による令和7年の「賃金構造基本統計調査」のデータで比較すると、以下のようになります。
| 職種 | 平均月収 | 賞与など | 平均年収 |
|---|---|---|---|
| 保育士 | 28.57万円 | 84.79万円 | 427.63万円 |
| 幼稚園教員、保育教諭 | 29.15万円 | 92.82万円 | 442.62万円 |
※表内の「平均月収」は「きまって支給する現金給与額」を指し、各種手当込みの金額です。
※「きまって支給する現金給与額」の12か月分+「年間賞与その他特別給与額」にて算出
上記のように、保育士と比較すると「幼稚園教員、保育教諭」のほうが平均年収はやや高い水準にあります。ただし、公立や私立といった施設形態や勤務地、各種手当の適用状況によって給料には幅が出るため、一概にどちらが高いとは言えません。資格をどう活かすかという観点に加え、それぞれの給料体系や制度の違いも比較材料に含めて検討することをおすすめします。
※出典:政府統計の総合窓口(e-Stat)「令和7年賃金構造基本統計調査 職種(小分類)、性別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)」
保育士などの求人情報はこちら保育士が収入アップを目指す方法
ここでは、制度を活用した昇格や資格取得、そして転職といった具体的な収入アップの方法を解説します。
キャリアアップ研修を活用して役職・処遇改善につなげる
国の処遇改善等加算には、保育士の技能や経験に応じて追加的な賃金改善を行う仕組みがあります。令和7年度以降の制度では、以下の職位に就くことで処遇改善の手当が見込めます。
- 副主任保育士・専門リーダーなど:月額4万円以内の処遇改善
- 職務分野別リーダーなど:月額5,000円を基本とした処遇改善
ただし、上記の金額が対象となる保育士1人ひとりに一律で支給されるわけではありません。実際の賃金改善額や配分方法は、施設の人員配置や賃金体系などによって異なります。
これらの役職に就くためには、一定の経験年数に加え、乳児保育や幼児教育をはじめとする専門分野の「キャリアアップ研修」の修了が要件となる場合があります。キャリアアップ研修を修了することで、役職への昇格や処遇改善につながる可能性があります。
※出典:東京都「研修の目的・概要」
民間資格取得などを通じて専門性を高めて手当を増やす
国の制度とは別に、保育の専門性を高める民間資格を取得することで、施設独自の資格手当を受けられるケースもあります。専門性を高める資格の例として、絵本専門士やリトミック指導員、こども環境管理士などがあります。
ただし、資格手当の有無や支給額は施設ごとに異なります。取得を目指す際は、現在の勤務先や転職を希望する施設において、その資格がどのように評価されるかを事前に確認しておくとよいでしょう。
※出典1:国立青少年教育振興機構「絵本専門士」
※出典2:特定非営利活動法人 リトミック研究センター「指導法を学びたい方へ」
※出典3:公益財団法人日本生態系協会 こども環境管理士「こども環境管理士ってなに??」
福利厚生・待遇の良い職場へ転職する
現在の勤務先で昇給や昇格の機会が限られている場合は、処遇改善等加算に積極的に取り組む施設や、独自の手当が充実した施設への転職も有効な選択肢となります。
転職先を検討する際は、基本給の額だけでなく、加算の配分方針、賞与の実績、借上げ宿舎制度をはじめとする住宅補助の有無など、総合的な待遇を確認することが大切です。また、残業や持ち帰り業務の実態、休暇の取りやすさといった働きやすさの面も重要になります。募集要項だけで判断が難しい場合は、保育士専門の転職エージェントなどを活用し、複数の施設を比較検討することをおすすめします。
保育士の給料に関するよくある質問(FAQ)
ここでは、保育士の給料に関して特に検索されることがある疑問を、Q&A形式でまとめて解消します。本文で解説した内容の振り返りとして活用してください。
Q.保育士の給料が安いのは当たり前ですか?
A.一概に当たり前とは言えません。公定価格に依存する業界構造が主な要因であり、単純に個人の努力不足や諦めるべき問題ではないからです。現在は国による処遇改善等加算などの制度により、段階的な改善が進められています。
Q.2026年度、保育士の給料は本当に上がりましたか?
A.全体として水準は上がっていますが、個々の給料が一律で上がるとは限りません。令和7年度補正予算では、公定価格上の人件費を5.3%改善する措置が講じられ、令和8年度もその改善が引き続き確保されているためです。ただし、実際の配分方法は各施設によって異なります。
Q.保育士の給料が下がることはありますか?
A.条件や状況によっては下がるケースもあります。具体的には、役職からの離脱や勤務時間の短縮、あるいは施設自体が処遇改善加算の要件を満たさなくなった場合などが該当します。日頃から給与明細や勤務先の案内を確認しておくと安心です。
Q.パートでも処遇改善手当は支給されますか?
A.支給される可能性があります。処遇改善等加算は、一定の条件を満たせば非正規雇用の職員にも適用できる仕組みとなっているためです。ただし、配分方法や対象範囲は施設ごとに異なるため、勤務先への事前確認をおすすめします。
Q.公立と私立、保育士の給料はどちらが高いですか?
A.一概にどちらが高いとは言い切れません。公立は地方公務員の給料表に基づき平均が高めな傾向にありますが、私立も法人の規程や処遇改善加算への取り組みによって給料水準に幅があるためです。
この記事では、令和7年のデータに基づく保育士の平均年収をはじめ、給料が上がりにくい業界構造や処遇改善制度の最新動向について解説しました。年代や施設形態によっても待遇は異なるため、今後の制度動向を把握しつつ、資格取得や昇格、転職といった選択肢から、ご自身に合った収入アップの方法を検討してみてください。
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執筆者:ウェルミーマガジン編集部
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