#7 介護職の給与・待遇のリアル~「介護=低賃金」はもう昔。やりがいも収入も伸ばせる時代に

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#7 介護職の給与・待遇のリアル~「介護=低賃金」はもう昔。やりがいも収入も伸ばせる時代に

こんにちは。NPO法人「未来をつくるkaigoカフェ」代表の高瀬比左子です。

「介護はやりがいがあるけれど、給与は低い」というイメージを持つ方は、まだ少なくありません。

ところが、実際の現場で働く方々のお話を聞くとその印象は少しずつ変わってきています。資格取得やキャリアアップの道筋が整備され、また、ライフステージに合わせた柔軟な働き方が選べるようになった今、介護職は“やりがい”と“安定した生活”を両立できる仕事へと進化を遂げているのです。

他職種から介護職へ。転職で見えた“収入と働き方”のリアル

「前職の営業職では残業が多く、心身ともに疲弊していました。
介護職に転職して収入はやや下がりましたが、夜勤手当や資格手当もあり、思っていたより安定しています」

─特別養護老人ホーム勤務 Aさん(30代)

Aさんは続けます。

「収入だけでなく、休みの取りやすさや人間関係の良さも大きいです。
前職より“自分の時間”を大切にできるようになりました

厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」によると、介護職の平均年収はおよそ360万〜400万円(※)。全産業平均の約460万円(令和5年民間給与実態統計調査・国税庁)と比べると控えめな水準ですが、夜勤を含む常勤では400万円を超える例も見られます。
※職種別に「きまって支給する現金給与額」「所定内給与額」「年間賞与その他特別給与額」が異なるため、あくまで年間賞与なども足した額の総計に近い額で算出しています。

特に介護福祉士などの資格を取得した場合、平均月収が数万円高くなる傾向があり、経験とともに収入が伸びていく働き方が広がっています。

食事介助の様子

「ここ数年で年収が上がった」という声も、現場では少なくありません。働きがいだけでなく、“働きやすさ”という面でも、介護職は確かな変化が生まれています

「介護=低賃金」ではない。キャリアアップが支える安定

介護職は、経験や資格に応じて収入が段階的に上がるのが特徴です。無資格・未経験からスタートしても、初任者研修 → 実務者研修 → 介護福祉士 → ケアマネジャー → 施設長・管理職とステップを重ねることで、着実に収入アップを目指せます。

例えば、ある中規模法人では次のような例があります。

職位/資格 月給目安
無資格・入職1年目 20〜23万円前後
介護福祉士・入職5年目 27〜30万円前後
ケアマネジャー 32〜35万円前後
管理職 40万円台〜(賞与含め年収500万円超の例も)
※法人や地域、勤務形態により異なります

「資格を取れば評価される」「続ければ報われる」。そう実感する介護職の方が、確実に増えています。

また、パート勤務や短時間正社員など働き方の選択肢も広がり、子育てや家族の介護と両立しながら、自分らしいペースで働く方も多くなっています。一歩ずつ経験を積み、資格を重ねていくことで、暮らしもキャリアも安定していく─それが今の介護職です。

続けることで広がる、介護職のキャリア

介護職の魅力は、キャリアが「線」でつながっていくことにあります。介護の現場で培われる観察力、対人スキル、チーム連携力は、どの施設や地域でも求められる普遍的な力です。

「入職したころは、ただ一生懸命ケアすることで精いっぱいでした。でも、数年経つとチームで支える視点が持てるようになり、後輩の育成も楽しくなってきました」

5年、10年と続けることで、自分の強みや得意分野が見えてきます。最初は“介護職で食べていけるのか”と不安でしたが、今では“この仕事で生きていく”という覚悟が持てました」

─グループホーム勤務 Bさん(40代)

Bさんは、パートからスタートし、実務者研修を経て介護福祉士を取得。現在はユニットリーダーとして勤務しています。

介護は、年齢を重ねるほど「味」が出る職業です。主に20代から60代まで、幅広い世代が同じ現場で働き、お互いの経験や知恵を共有できる。その多様さこそが、介護の現場の豊かさを支えています。

送迎する介護士

kaigoカフェを通じて見える賃金事情

私はこれまで全国各地で介護職の方々と対話を重ねてきました。その中で感じるのは、介護の価値が“低く見積もられすぎている”という現実です。

たしかに、給与水準だけを切り取れば、他産業に比べて見劣りする部分もあります。けれど、介護職の本当の魅力は、続けるほどに磨かれていく専門性にあります。利用者一人ひとりの人生に寄り添い、最期までその人らしさを支える、これほど深く、尊い仕事はそう多くありません。

そして今、介護職の報酬体系も確実に変わりつつあります。処遇改善加算やキャリアパス制度の充実により、「続ければ報われる」仕組みが整い始めています。

常勤介護職員:338,200円/月
前年同月比:+13,960円(+4.3%)
厚生労働省「令和6年度介護従事者処遇状況等調査結果のポイント」

私がカフェで出会う介護職の方々も、「入職時より年収が30万〜50万円ほど増えた」「主任やケアマネジャーにステップアップして、仕事の幅や視野が広がった」と語る人が増えています。

大切なのは、最初から完璧を求めすぎないことです。介護職のキャリアは、現場での経験を積み重ねることで少しずつ育っていきます。失敗や迷いを重ねながらも、「誰かの笑顔を支えたい」という思いを持ち続けることが、やがて確かな専門性へとつながっていきます。

介護の仕事は、「人の暮らし」を支えると同時に、「自分の人生」を豊かにしてくれる仕事です。やりがいも生活の安定も、両方大切にできる働き方が、今の介護業界には確実に広がっています。

これからの介護職に期待したいこと

これからの介護現場では、より多様なキャリアの形が求められていくでしょう。現場でのケアだけでなく、教育、地域連携、経営、ICT活用など、専門性を広げる方向は無限にあります。

介護職のイメージを変えるのは、誰かが決めた制度だけでなく、現場で日々働く一人ひとりの声と行動です。「続けることで力になる」それを証明してくれる介護職の方々こそ、これからの日本のケアをつくっていく主役だと、私は信じています。

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高瀬 比左子(たかせ ひさこ)

執筆者:高瀬 比左子(たかせ ひさこ)

特定非営利活動法人未来をつくるkaigoカフェ主宰。介護福祉士・社会福祉士・ケアマネジャー。2000年に介護職を始め、2012年にkaigoカフェを設立。全国で語り合いの場を展開し、講演・執筆などを通じ介護の魅力を発信中。

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