#12 介護現場の連携はなぜ難しい?多職種・家族と支えるケアのあり方

最終更新日
#12 介護現場の連携はなぜ難しい?多職種・家族と支えるケアのあり方

こんにちは。NPO法人「未来をつくるkaigoカフェ」代表の高瀬比左子です。

介護の現場では、「連携が大事」という言葉をよく耳にします。その一方で、多職種で関わるからこそ、考え方や優先順位の違いから話がうまく噛み合わないと感じる場面に出会うことも少なくありません。

今回は、そうした多職種連携の中で生まれるすれ違いの背景に目を向けながら、より良い連携のあり方について考えていきます。

連携の難しさを感じるのは、意図がうまく伝わらないとき

介護の現場にいる私たちは、連携の大切さを感じているからこそ、その難しさに向き合う場面も少なくありません。

たとえば、利用者さんご本人の「自分でやりたい」という思いを大切にしたい介護職と、安全面を優先したい家族や医療職。それぞれが利用者さんを思っているからこそ、考え方や優先順位に違いが生まれ、現場に小さな緊張が生まれることがあります。

あるいは、ケアマネジャーが全体を見て調整しようとしている一方で、現場の介護職は「その情報をもっと早く知りたかった」と感じることもあります。逆に、現場では気づけている変化が、会議の場には十分に届いていないと感じることもあります。

私がグループホームで働いていた頃、夕方になると落ち着かなくなり、「早く洗濯物をしまわないとみんなが困るの」と何度も立ち上がる利用者さんがいらっしゃいました。

職員の中には「転倒が心配だから、まずは座っていてもらおう」という声があり、ご家族も「もう無理しなくていいのに」と話されていました。一方で、ケアマネジャーを通してご家族から詳しくお話をうかがうと、その方は長年、家族の洗濯や身支度を整えることを大切にしてこられた方だったのです。几帳面で、暮らしを支えることに誇りを持って生きてこられました。

そこで、「危ないから止める」のではなく、その方らしい役割を続けられる形を考え、タオルたたみを一緒にお願いする関わりに変えてみました。すると表情がやわらぎ、周囲との会話も増えていったのです。

利用者さんと一緒にタオル畳み

私たちが止めようとしていたのは、“落ち着かない行動”そのものではなく、その方が大切にしてきた役割だったのかもしれない。そう気づいた時、それぞれの専門職が見えているものを持ち寄り、背景を共有することの大切さを改めて感じました。

すれ違いの背景にあるもの

ではなぜ、こうしたすれ違いが起きるのでしょうか。私は、それは個人の努力不足ではなく、それぞれの立場や役割の違いから生まれるものだと感じています。

介護職は利用者さんの暮らしのすぐそばにいます。食事のペースや表情の変化、何気ないひと言、ふとしたしぐさ。生活の流れのなかでその人らしさを受け取っています。

一方で、看護職は医療的な安全や状態の変化に目を向け、リハ職は機能の維持や改善を考えます。ケアマネジャーは全体のバランスを見ながら支援を調整していきます。

また、ご家族は「できるだけ安全に過ごしてほしい」「無理をしてほしくない」と願う一方で、その人らしさをどう支えていくかに悩みながら関わっておられることも少なくありません。

さらに現場には時間の制約があります。本当はもう少し丁寧に話したい、背景まで共有したいと思っていても、目の前のケアに追われてしまうこともあります。そうすると、情報は伝わっても思いまでは伝わらない。結果として連携が「必要事項の伝達」だけになり、支援の意図やその人の物語が抜け落ちてしまうのです。

kaigoカフェでさまざまな職種の方と語り合う中でも、「同じ利用者さんを支えているのにこんなに見え方が違うんですね」という声を何度も聞いてきました。でもそれは分断の理由ではなく、本来は支援を豊かにする多様さでもあるはずです。

多職種連携

大切なのは違いをなくすことではなく、その違いを持ち寄れる場があることだと思います。

介護職だからこそ担える役割

私は、介護職には連携の真ん中を支える大切な役割があると思っています。なぜなら介護職は利用者さんの生活と感情に、いちばん近い場所にいるからです。

介護職が日々見ているのは病気や課題だけではありません。その人がどんな言葉に安心するのか、どんな場面で表情がやわらぐのか、何を奪われるとつらいのか、逆に何があるとその人らしさが戻ってくるのか。そうした日常の細部に触れているからこそ「この方にとって大事なのは何か」を他職種に伝えることができます。

介護の専門性はできないことを補うことだけではありません。その人ができること、続けたいこと、守りたい役割を見つけ、それを支えることにあります。認知症ケアでも、ただ困った行動として捉えるのではなく、その背景にある不安や願いに目を向けることが大切だと私はこれまで何度も感じてきました。

問い続けること、その人らしさをあきらめないこと。それが介護職だからこそ担える専門性であり、チームに還元できる視点なのだと思います。

利用者さんを支える介護職

連携がうまくいくチームに共通していること

では、連携がうまくいくチームにはどんな共通点があるのでしょうか。私は、大きく3つあると感じています。

①正しさより先に「本人の背景」を共有している

たとえば「転倒リスクがあるので注意してください」という共有だけでは、どうしても“指示”として伝わってしまうことがあります。でも、「ご本人は“自分でやりたい”という思いが強く、役割を取り上げられると不安が強くなりやすい方です」と、その人の背景まで共有されると、支援の意図が伝わりやすくなります。情報だけではなく、「その人がどんな思いを持っているのか」が共有されることで、チームの動きは大きく変わっていくのです。

②小さな気づきや違和感を言葉にしている

うまくいくチームは、“結論”だけではなく、現場で感じた小さな変化も共有されています。

たとえば、「最近少し気になります」だけではなく、「以前より表情が硬く感じていて、食事中の会話も減っているのが気になっています」と伝える。すると、単なる印象ではなく、“なぜそう感じたのか”が相手にも伝わりやすくなります。現場では忙しさから結論だけを共有してしまうこともありますが、小さな感覚や違和感を言葉にすることで、支援の見え方が変わることも少なくありません。

③誰かひとりが抱え込まない

また、誰かひとりが抱え込まないことも共通しています。介護の仕事は人の人生に深く関わる分、喜びもある一方で、迷いや感情の揺れも大きい仕事です。

「わかっていても、うまくできない」
「つい感情的になってしまう」

そんな悩みを口にできる関係性があるだけで、現場の空気は変わっていきます。支える人にも支えが必要であり、仲間との対話はその大きな力になります。

話し合う介護職と看護職

kaigoカフェでも、立場を超えて対話することで「わかってくれない相手」だと思っていた人が「違う場所から同じ人を支えている仲間」だったと気づく場面がたくさんありました。

連携は仕組みだけでは育ちません。人と人との関係の中で少しずつ育っていくものなのだと思います。

これからの介護を支える視点

これからの介護現場では、専門職同士が「正しさ」をぶつけ合うのではなく、それぞれの立場から見えているものを持ち寄りながら対話を重ねていくことがますます大切になっていくのだと思います。

介護職だから見えること。医療職だから気づけること。ご家族だからこそ知っている、その人らしさやこれまでの暮らし。それぞれの視点が重なり合った時、支援はよりその人らしいものに近づいていきます。

連携とは役割分担をすることではなく、その人らしい暮らしをチームで支えていくことなのかもしれません。

この連載では「ケア」を出発点に人と関わることや支え合うことについて考えてきました。12回にわたりお読みいただき、本当にありがとうございました。

そして次回からは、新たに「ケアマネジャー」をテーマにした連載もスタート予定です。

介護現場と多職種をつなぐ存在でもあるケアマネジャーの仕事や葛藤、現場で感じてきたことについても、これからお届けしていけたらと思っています。

関連キーワード

高瀬 比左子(たかせ ひさこ)

執筆者:高瀬 比左子(たかせ ひさこ)

特定非営利活動法人未来をつくるkaigoカフェ主宰。介護福祉士・社会福祉士・ケアマネジャー。2000年に介護職を始め、2012年にkaigoカフェを設立。全国で語り合いの場を展開し、講演・執筆などを通じ介護の魅力を発信中。

関連記事