こんにちは。NPO法人「未来をつくるkaigoカフェ」代表の高瀬比左子です。
ケアマネジャー(以下、ケアマネ)は、介護保険制度を支える専門職として広く知られています。しかし近年、全国的なケアマネ不足が大きな課題となっています。
実は今、受験資格を満たしていても、あえてケアマネを目指さない人が増えているのです。背景には、業務量の増加や責任の重さ、更新研修への負担感などがあります。
一方で、高齢化が進む今、利用者さんやご家族を支えるケアマネの役割はますます重要になっています。
今回は、ケアマネになるまでの道のりと、今あらためてケアマネを目指す意味について考えてみたいと思います。
ケアマネになるための第一歩は「受験資格」を満たすこと
ケアマネになるためには、まず「介護支援専門員実務研修受講試験(以下、ケアマネ試験)」に合格しなければなりません。しかし、この試験を受験するために必要な資格(受験資格)があります。
2026年現在、ケアマネ試験を受験するには、保健・医療・福祉分野の国家資格等に基づく業務に5年以上、かつ900日以上従事していることが主な条件となっています。
対象となる資格には、介護福祉士、社会福祉士、看護師、准看護師、理学療法士、作業療法士、精神保健福祉士などがあります。相談援助業務として生活相談員などの経験も対象となります。
以前は介護職としての実務経験だけでも受験できましたが、2018年度の制度改正以降は要件が厳格化されました。そのため、介護福祉士を取得し、現場経験を積んだ上で受験するルートが現在では一般的です。
介護現場では、利用者さんやご家族との関わりにも慣れ後輩の相談に乗るような中堅職員になると「次はケアマネを目指してみたら?」と声を掛けられることがあります。
しかし実際には受験資格を得るためだけでも5年以上の実務経験が必要です。さらに試験勉強や研修もあり、決して簡単な道のりではありません。
ケアマネは介護保険制度を理解するだけでなく、高齢者や家族の人生に寄り添う仕事です。その土台となる現場経験が重視されているのです。
参考資料
私がケアマネ試験を受けた頃
私がケアマネ試験を受験したのは今から10年以上前、訪問介護ヘルパーとして働いていた頃でした。勉強は大変でしたが、「もっと利用者さんやご家族の暮らしそのものを支えたい」「ケアの視点を広げたい」という思いがありました。周囲からも「次はケアマネだね」と言われることが多く、当時は介護職として経験を積んだ先にケアマネというキャリアが自然と見えていたように思います。
当時の介護業界では、介護福祉士の次のステップとしてケアマネを目指すことがごく自然なキャリアパスとして捉えられていました。現場経験を積み、介護福祉士を取得し、その先にケアマネがある。そんなイメージです。介護職として経験を積んだら次に目指す専門職として、多くの人がケアマネを志していたように思います。
なぜケアマネを目指さない人が増えているのか
しかし2026年現在、介護職や相談職の方々と話していると状況は大きく変わってきていることを感じます。受験資格を満たしていても「あえて受験しない」という選択をする人が増えているのです。
理由を尋ねると、「責任が重そう」「業務量が多そう」「書類仕事が大変そう」「利用者さんや家族、事業所との調整が大変そう」「給与がそれほど変わらない」「現場で利用者さんと直接関わる仕事を続けたい」といった声が聞かれます。
実際、近年は介護職員の処遇改善が進み、事業所によっては介護職員とケアマネの給与差が以前ほど大きくないケースもあります。一方で、ケアマネには給付管理やケアプラン作成、多職種との調整、家族支援、制度改正への対応など幅広い役割が求められます。国もケアマネの処遇改善や基本報酬の引き上げに本腰を入れ始めていますが、まだ現場の実感として追いついていない部分もあるのが現状です。
そのため、「大変そうな仕事」というイメージが先行し、受験をためらう人が増えているのではないでしょうか。全国的なケアマネ不足の背景には、こうした現場の実感も少なからず影響していると考えられます。
こうした傾向は、データにも表れています。
「2024年度介護労働実態調査」によると、ケアマネの平均年齢は54.3歳で、50歳以上が全体の66.2%を占めています。さらに、そのうち60歳以上だけでも31.5%に上っており、現役ケアマネの高齢化が進んでいることが分かります。
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◆ケアマネの年齢構成 ・平均年齢:54.3歳 ・50歳未満:33.8% ・50歳以上:66.2%(うち60歳以上:31.5%) |
しかし私は、ケアマネという仕事の価値そのものが下がったとは思っていません。
むしろ、高齢化が進み、独居高齢者や認知症のある方が増え、家族介護のあり方も変化している今だからこそ、地域の中で人と人をつなぎ、その人らしい暮らしを支えるケアマネの役割はますます重要になっていると感じています。
試験は簡単ではない
ケアマネ試験は毎年10月に実施されます。近年の合格率を見ると、その難しさがわかります。
2025年度の試験の合格率は約25%でした。4人受験して1人しか合格できない計算になります。かつては合格率が10%台だった時代もありましたが、現在でも決して簡単な試験ではありません。
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◆ケアマネ試験の合格率推移 2021年度:23.3% 2022年度:19.0% 2023年度:21.0% 2024年度:32.1% 2025年度:25.6% ※出典: 第28回介護支援専門員実務研修受講試験の実施状況について(厚生労働省) |
現場で働きながら勉強を続けることは容易ではありません。私自身、ケアマネ試験に挑戦した多くの介護職や相談職の方と出会ってきましたが、「介護の経験があるから大丈夫」と考えている人ほど苦戦する傾向があるように感じます。
というのも、試験で問われるのは現場経験だけではなく、制度への理解だからです。介護保険法や各種サービスの仕組み、医療や福祉に関する知識など、幅広い内容が出題されます。
現場経験は大きな強みになります。しかし、それを制度やサービスの仕組みと結び付けて理解するための学習が欠かせません。
資格取得はスタートライン
試験に合格すると、「介護支援専門員実務研修」を受講することになります。実務研修では、ケアマネジメントの基礎からアセスメント、ケアプラン作成、多職種連携まで体系的に学びます。研修修了後に都道府県へ登録申請を行い、介護支援専門員証の交付を受けて初めてケアマネとして働くことができます。
多くの人が驚くのは、資格取得後も学び続ける必要があることです。介護保険制度は3年ごとに改正され、社会保障制度や医療制度も変化し続けています。
そのため、ケアマネは一度資格を取得したら終わりではありません。制度や地域資源に関する知識を更新しながら、継続的に学び続けることが求められる専門職なのです。
更新研修をめぐる現実とこれからの変化
ケアマネ資格には有効期間があります。「介護支援専門員証」は原則5年ごとの更新制となっており、更新のためには法定研修の受講が必要です。
更新研修は、ケアマネとして必要な知識や技術を学び直す大切な機会でもあります。一方で現場からは「仕事を休まなければ受講できない」「研修時間が長い」「受講費用の負担が大きい」といった声も長年聞かれてきました。実際に、更新研修への負担感を理由に更新を見送る人もいます。
こうした状況やケアマネ不足への危機感を背景に、国では更新研修の見直しが進められています。近年は研修内容の簡略化やオンライン化(eラーニング)の推進など、受講者の負担軽減に向けた取り組みも進んでいます。
専門職として学び続ける意義は変わりません。しかし今後は、働きながらでも学びやすく、資格を維持しやすい環境づくりが求められていくのではないでしょうか。
それでもケアマネを目指す価値
ここまで読むと「大変そうだな」「やめておこうかな」と感じる方もいるかもしれません。確かにケアマネへの道のりは決して簡単ではありません。しかし、その先には他の職種では得難いやりがいがあります。
介護職として利用者さんの日常生活を支えてきた経験が、ケアマネになることで地域全体を見る視点へと広がります。本人や家族の思いを聴き、医療や介護、地域資源をつなぎながらその人らしい暮らしを支えていく。それはケアマネだからこそできる役割です。
私がこれまで出会った多くのケアマネは、「利用者さんの人生に深く関われること」にやりがいを感じていました。もちろん制度の狭間で悩むこともあります。支援の限界を感じることもあります。それでも「この人らしい暮らしを支えたい」という思いを形にできる仕事であることは間違いありません。
今は、ケアマネを単なるキャリアアップのために目指す時代ではなくなったのかもしれません。だからこそ、「どんなケアマネになりたいのか」「どんな暮らしを支えたいのか」がより重要になっています。
もし今、受験を考えている方がいるなら、試験合格だけを目標にするのではなく、その先でどんな支援を実現したいのかを考えてみてください。その問いこそが、長い受験勉強や研修を乗り越え、ケアマネとして成長し続けるための原動力になるはずです。
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執筆者:高瀬 比左子(たかせ ひさこ)
特定非営利活動法人未来をつくるkaigoカフェ主宰。介護福祉士・社会福祉士・ケアマネジャー。2000年に介護職を始め、2012年にkaigoカフェを設立。全国で語り合いの場を展開し、講演・執筆などを通じ介護の魅力を発信中。