看護師は子育てしながらどう働く?|常勤からパートへ…後悔しない選び方のポイント

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看護師は子育てしながらどう働く?|常勤からパートへ…後悔しない選び方のポイント

看護師として働きながら、子育てや家庭との両立に悩む方は多いのではないでしょうか。

「常勤を続けるべきか、それともパートに切り替えるべきか」と迷い、職場や家族に負い目を感じて無理をしがちになる状況も珍しくありません。

筆者は20年ほど常勤で働いた後、子育てや家庭の都合からパート勤務に切り替えた経験があります。

本記事では、子育て中の看護師が直面しやすいリアルな悩みや不安、常勤・パートそれぞれの働き方の特徴や違いを、筆者の経験談も交えながら分かりやすく解説します。

子育て中の看護師が直面する「働き方」の悩み

子育てと看護師の仕事を両立させようとする中で、「今まで通りには働けない」と感じる方も多いでしょう。

育児や家庭の都合で思うように働けないとき、自分のキャリアや職場への影響、日々の体力的・精神的な負担など、さまざまな悩みが生まれやすくなります。

ここでは、子育て中の看護師が特に抱きやすい悩みについて整理します。

時間と体力の壁に直面する

子育てと看護師の仕事を両立させていると、時間や体力のやりくりが大きな課題となります。看護師は突発的なシフト変更や夜勤なども多く、家庭の都合や自分の体力に合わせて柔軟に動くのが難しい職業です。

筆者も、仕事が忙しい時期と子どもの行事や体調不良が重なると十分な休息や家族との時間が取れず、「この働き方をいつまで続けられるだろう」「パートに切り替えたほうが良いのか」と感じることもありました。

家庭も仕事も大切にしたいからこそ、日々の時間と体力のバランスに頭を悩ませる人は多いのではないでしょうか。

精神的なプレッシャーや負い目を感じる

子育て中は、子どもの体調不良や急な予定で仕事を休まざるを得ないケースも珍しくありません。そのたびに、職場や同僚に「また休み?」と思われていないか、迷惑をかけていないかと気にしてしまう人も多いはずです。

チームで働く現場だからこそ、休むたびに謝ったり気を遣ったりする負担も大きく、次第に精神的なストレスが蓄積してしまいます。こうした気持ちから無理をして出勤し、自分や家族の健康に影響が出るケースもあります。

キャリア・将来への不安を感じる

子育てや家庭を優先するために働き方を見直そうと考えたとき、今後のキャリアや将来への不安を感じる方も多いでしょう。

パートに切り替えれば家族との時間は増えますが、「今の働き方でキャリアアップはできるのか」「子どもが成長した後、常勤に戻れるだろうか」といった心配がついて回ります。ライフステージの変化とともに働き方やキャリアをどう両立させていくか、といった悩みを抱える看護師は少なくありません。

子育て中の看護師が知っておきたい、パートと常勤の働き方の違い

パートと常勤の働き方には、収入や待遇、勤務時間、キャリア形成やメンタル面まで、さまざまな違いがあります。

ここでは、子育て中の看護師が知っておきたい、パートと常勤それぞれの特徴や選ぶときに押さえておきたいポイントについて整理します。

収入・待遇

常勤で働く場合は、基本給に加えて各種手当や賞与、社会保険など福利厚生が充実していることが多く、安定した収入を得やすいのが特徴です。

一方、パート勤務に切り替えると、勤務日数や時間が少なくなる分、収入は減少しやすくなります。ボーナスや昇進の機会も限られ、社会保険や福利厚生の内容も職場によって異なるため、あらかじめ確認しておくことが大切です。

特に「扶養内」で働く場合は、手取りや保険・税金の扱いにも注意が必要です。働き方を変えると家計や生活費にどのような影響があるか、事前にシミュレーションしておくと安心です。

勤務時間・生活リズム

常勤は勤務時間が固定で調整しづらく、夜勤や残業が発生しやすく、家庭の都合や子どもの行事に合わせて動くのが難しい場合もあります。急な残業や休日出勤が必要になると、家族や自分の時間を確保するのが大変です。

その点、パート勤務は勤務日数や時間を自分や家庭の状況に合わせて調整しやすく、子どもの送り迎えや家事・育児との両立がしやすくなります。特に小さなお子さんがいる場合や家族のサポートが得にくい環境では、パートの柔軟さが大きなメリットとなります。

キャリア・職場での役割

常勤は責任ある業務やリーダー業務を通じ、キャリアアップを目指す機会が得やすい一方で、パート勤務の場合は担当できる業務が限定され、リーダーや新人指導など責任の重い役割を任されにくい傾向があります。

筆者もパートになりたての頃は清潔ケアや補助的な業務が中心となり、「やりがいを感じにくい」と感じた時期がありました。しかし職場によっては、パートでも研修や勉強会に参加できたり、得意分野を活かしてチームの一員として活躍できる環境もあります。

自分が目指したいキャリアや仕事への思いに合わせて、働き方や職場を選ぶことが重要です。

メンタル・人間関係

常勤はチームの中心として一体感や責任ある業務へのやりがいを感じやすい反面、子育て中であっても急には休めないというプレッシャーや、休むことへの負い目から精神的なストレスを抱えやすい側面もあります 。

一方、パート勤務に切り替えると、時間的・体力的な余裕ができる反面、職場での人間関係やチームの一体感に悩む場面もあります。

常勤スタッフと比べて職場にいる時間が短いため、情報共有の遅れや業務内容への疎外感を感じる場面も出てきます。また、責任ある業務を任されないと「自分はサポート役に徹するだけでいいのか」とやりがいを感じられない場面も少なくありません。

無理のないペースで働くと心身の負担が減り、家庭や自分の時間に余裕を持つことができます。

子育て中の看護師が自分らしい働き方を選ぶコツ

子育て中の看護師が自分らしい働き方を選ぶための具体的なコツには、以下のようなものがあります。

  • 自分や家族にとって大事なものを整理する
  • 常勤とパート、それぞれの優先ポイントを比較する
  • 家族や職場とオープンに話し合う
  • 働き方を切り替えた看護師の体験から学ぶ

ここでは、働き方を選ぶコツを紹介します。

自分や家族にとって大事なものを整理する

働き方を見直す際には、まず「自分や家族が今一番大切にしたいことは何か」をじっくり考えてみましょう。

たとえば、収入を重視するのか、子どもや家族との時間を優先したいのか、健康や心の余裕を守りたいのか。紙に書き出して整理してみると、自分の本音や優先順位が見えてきます。納得できる選択をするために、家族の意見も取り入れてみましょう。

常勤とパート、それぞれの優先ポイントを比較する

どちらの働き方が自分たちの生活に合うのかを考えるときは、収入・勤務時間・キャリア・家族のサポート体制など、項目ごとに具体的に比較するのがおすすめです。

シミュレーションをしながら、理想だけでなく「現実的に無理なく続けられるのはどちらか」を検討すると、後悔の少ない選択ができるでしょう。

筆者も、パート勤務に切り替える際は「この時給で週何時間働けば、生活や家計にどのくらい余裕があるか」と何度もシミュレーションしました。こうした現実的な計算や家族との相談を重ねると、自分に合った働き方を選びやすくなります。

働き方は一度決めたら終わりではなく、生活環境や家族の状況に応じて見直しましょう。柔軟な選択肢を持っておくと、ライフステージに合わせた働き方がしやすくなります。

家族や職場とオープンに話し合う

悩みや希望、今後の働き方については、一人で抱え込まずに家族や職場の上司とも率直に話し合いましょう。家庭内では協力体制や分担を見直すきっかけになり、職場でも希望や不安を伝えると、理解や配慮を得やすくなります。

自分だけで判断せず、周囲とコミュニケーションを取りながら柔軟に働き方を選んでいくことが、長く看護師を続けるポイントです。

働き方を切り替えた看護師の体験から学ぶ

常勤からパートへ切り替えた看護師や、逆に常勤を続けている看護師にも話を聞くのも有効です。

筆者が常勤からパートへ切り替えるのを迷っていた際、看護師として働きながら子育てを経験している同僚たちにヒアリングをしたことがあります。

結果はさまざまで、たとえば、「子どもが4人いるので、塾代や習い事、日々の生活費を考えると、常勤の安定した収入が必要」と割り切って常勤として働き続けている看護師もいました。

また、「子どもとの時間が増えると、思い通りに家事や自分の予定が進まずストレスが溜まる。自分には適度に仕事との距離が必要」という意見もありました。

一方で、「子どもから手が離れるのはあっという間。子どもとの時間を優先させたい」「精神的に余裕を持って子育てをしたい」と、子育てのためにパートに切り替えたスタッフもいます。

このように、子育てと仕事の両立に正解はありません。身近な人や同僚の体験談も参考にしつつ、自分や家族に合う働き方を探してみましょう。

子育て中の看護師が「常勤からパートへ」切り替えるときに知っておきたいこと

常勤からパートへ働き方を変えるときは、気になる疑問や不安もあるでしょう。ここでは、よくある質問や悩みについて解説します。

Q1.パートから常勤に戻るのは難しい?

A. 看護師は専門職として需要が高く、パートから常勤への復帰は難しくないでしょう。ただし、ブランク期間が長くなると最新の医療現場の流れや業務内容にギャップを感じる場合もあります。

復帰を希望する場合は、パートのうちから学び直しや研修に積極的に参加する、少しずつ担当する業務範囲を広げておく、働く時間を徐々に延長するなど、小さな準備を重ねておくと、再スタートの不安解消につながります。

Q2.常勤からパート勤務にして後悔しない?

A. パート勤務に切り替えると、「責任のある仕事を任されにくくなった」「想定していたよりも収入が減った」といった変化に戸惑う方もいます。

ライフステージや家族の状況に合わせて、柔軟に働き方を選ぶ意識を持つと、後悔のない選択につながります。

Q3.パート勤務でやりがいを感じられなくなったときの対処法は?

A. パート勤務でやりがいを感じられなくなったときは、自分の強みや興味を改めて振り返り、本当に自分に合った職場や働き方を見直すのがおすすめです。

筆者は訪問看護やクリニック、療養病棟などさまざまな職場でパート勤務を経験しました。これまで病棟での常勤経験が長かったこともあり、最終的には病棟パートで患者さんと関わる仕事にやりがいを感じられることに気づきました。

迷ったときは、「働く場所や内容を少し変えるだけでも、新たな気持ちで仕事に取り組める場合があります。

子育て中の働き方に迷ったら、自分や家族に合った選択をしよう

看護師として子育てと仕事の両立を考えるとき、常勤とパート、どちらが正解ということはなく、家族や生活環境、そして自分自身の価値観によって最適な選択肢は変わります。

一度キャリアを止めても、子育てがひと段落してから新たなスタートを切ることも可能です。大切なのは、今の自分と家族にとって無理なく続けられる働き方を選び、必要に応じて見直していくことです。情報を集めて整理し、家族や職場と相談しながら、「自分らしい働き方」を見つけていきましょう。

髙橋麻紀(たかはしまき)

執筆者:髙橋麻紀(たかはしまき)

看護師歴28年。認定フェムテックシニアエキスパート(日本フェムテック協会1級資格)。
都内の総合病院で脳外科・ICU・循環器内科などを経験し、急性期から慢性期まで幅広い看護に携わる。出産・育児・引っ越しを機に、フルタイム勤務からパート勤務へシフト。
現在は月4〜5回の看護師パートを続けながら、在宅で医療系Webライターとして活動中。医療・健康・フェムテック・美容を中心に、複数のメディアで執筆を行っている。

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