看護師は50代からどう働く?定年後も見据えた「自分らしい働き方」

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看護師は50代からどう働く?定年後も見据えた「自分らしい働き方」

気がつけば定年が視野に入る50代。「あと〇年だから頑張らなきゃ」と踏ん張るべきか、「自分や家庭を優先して働き方を変えるべきか」と迷う方も多いのではないでしょうか。

50代の看護師は、長年の経験と技術がある一方で、更年期による体調の波、親の介護、そして定年後の収入や生活について少しずつ意識し始める時期です。

看護師経験28年の筆者も、更年期による動悸やめまいなど、体調変化を経験しました。身近には、親の介護のために休職や転職をした同僚もいます。

本記事では、50代看護師が直面しやすい悩みや、定年後を見据えた働き方をお伝えします。

50代の看護師が直面しやすい悩みと変化

50代の看護師が直面する悩みや不安は、単なる「体力的な衰え」に留まりません。定年までの残り時間を意識し始め、複雑な葛藤や不安があります。

1.体調不良や更年期症状による不安

年齢を重ねるにつれ、夜勤後のふらつきや疲労感、集中力の低下を感じやすくなります。

50代特有の更年期症状は、医療現場での集中力や判断力に直接影響します。ほてりやめまい、不眠といった不調は、特に緊張感の高い急性期病棟ではインシデントのリスクにつながりかねません。

こうした不調が続くと「このままで患者さんに迷惑をかけないか」「もう現場に立てないのでは」と不安を抱く方も少なくないでしょう。

2.若い世代とのジェネレーションギャップ

経験が増える一方で、若い世代との距離を感じる場面も増えてきます。技術習得のスピード、ICTツールの使いこなし、スマートフォンを使った情報収集など、価値観や習慣の違いから戸惑うこともあるでしょう。

ときに「経験が長いからできて(知っていて)当たり前」とみなされる場面があるかもしれません。新しい知識や業務の習得に戸惑う自分に、自信をなくしてしまうケースも考えられます。

3.家庭と仕事の両立の難しさ

50代は、仕事だけでなく家庭の課題も増えてきます。親の介護や通院同行、配偶者の健康不安、あるいは孫の世話など、急な予定変更が必要になることもあるでしょう。

介護は短期で終わるものではなく、長期的な時間の確保と柔軟な勤務調整が不可欠になります。「いつでもフルで働ける」状況が難しくなり、「無理して働き続けていいのか」と自問する方も多いのではないでしょうか。

4.定年を控えた「先の見通し」への不安

60歳、65歳という定年年齢が視野に入ることで、「定年まであと少しだから…」と思いつつも、体や気力に無理がきかなくなり、働き方に迷いが生じる場合もあるでしょう。

また、定年後も看護師として働き続けたいと考える一方で、再雇用では年収が大幅に減るケースもあります。「定年後の生活設計をどうするか」ということも、50代の大きな悩みです。

50代からの看護師キャリアの整え方

このように、50代の看護師は、体調・世代間ギャップ・家庭事情・定年後への不安などの課題が重なります。ここからは、50代からの看護キャリアを整えるための具体的なポイントを紹介します。

1.体調管理をする

看護師キャリアを整えるための基本となるのは、自分の体調と向き合い健康を維持することです。

筆者も40代後半からめまいや動悸、高血圧で悩まされ、婦人科を受診しながら、生活リズムの見直しや軽い運動習慣などで更年期と向き合ってきました。

体調管理の具体例として、毎朝血圧や基礎体温などを記録し、体調の波や小さな変化を客観的に把握する習慣をつけたり、ストレッチやヨガなどを日常生活に取り入れたりするのも有効です。

睡眠や食事、ストレスケアといった基本的な生活習慣を整えることは、看護師として働き続ける上でも土台になります。

2.これまでの経験を棚おろしする

これまでのキャリアで培ったスキルを冷静に評価してみましょう。長年の経験を振り返ることで、自分の「強み」や「できること」が見えてきます。

たとえば、どんな分野の知識や技術を深く習得してきたか、他職種との調整力、危機管理能力、患者・家族への傾聴力など、ベテランならではの強みがあるはずです。

また、どんな時に最もやりがいを感じたかを考えてみると、自分が本当にやりたいことが見出しやすく、定年後の働き方の指針にもつながるでしょう。

3.定年後を見据え、新しい役割にチャレンジする

50代のうちは、定年までの残り時間を準備期間と捉え、新たな収入源やスキルを習得するのも有効です。

たとえば、看護補助者や介護職への教育係、退院調整看護師、安全管理や感染対策リーダーなど、体力より知識や経験を活かす役割もあります。

年金や退職金の見通しを確認し、今の働き方をいつまで続けるべきかという具体的な指標を持つことも大切です。

看護師が50代から転職するのは難しい?

50代からの転職は「不可能ではないが、条件がある」のが実情です。

特に急性期や大規模病院では、若年層の採用が優先され、年齢制限があるケースが大半です。新しい業務への対応や、機器の活用方法の習得にも柔軟さが求められるでしょう。

一方、慢性期病院や療養型、訪問看護、介護施設などでは、50代以上の看護師が活躍している職場も多く存在します。これまでの経験や判断力が重視され、「即戦力」として評価されやすいでしょう。

50代看護師が自分らしく働き続けられる選択肢は?

体調管理やキャリアの棚おろしを進めながら、自分らしく働き続けるために次に考えたいのは「どんな働き方を選ぶか」です。いまの職場で調整するか、働き方を変えるか、働き方の軸を地域に移していく。もしくは、副業を新たな収入の柱にするなど、50代には多様な選択肢があります。

1. 今の職場で働き方を整える

転職せず、今の職場でできる範囲の工夫をすることも選択肢の1つです。夜勤免除、勤務日数の調整、非常勤・時短勤務の活用などで負担を軽くできます。

また、重症患者や急変対応のある業務から、退院支援や家族対応といった「サポート業務」への移行も、体調やライフスタイルに合わせた働き方です。

2. リーダー経験を活かして管理職として働く

長年の現場経験やリーダー経験を活かして、管理職として働き続ける道もあります。主任や師長などの役職は、体力よりも判断力や調整力、チームマネジメントが求められます。

一方で、精神的な負担や家庭との両立の難しさを感じる場面もあるため、「自分はどのような形で組織に関わりたいか」を明確にし、検討してみましょう。

3. 勤務先を変えて体の負担を減らす

体への負担を減らしたい場合は、職場環境を変える選択肢もあります。訪問看護やデイサービスなどの介護施設・健診センターでは、夜勤がなく患者の急変も少ないため、心身の負担が比較的軽い傾向にあります。

筆者の知人にも、週3日の訪問看護で無理なく働きながら、家族の介護と両立している方がいます。

4. 地域の現場で看護師資格を活かす

病院を離れ、地域社会でこれまでの経験を活かすことも可能です。

地域包括支援センターや自治体の保健センターなどでは、相談支援や保健指導など、これまでの看護師経験を活かした働き方ができます。

また、ケアマネジャーや認定看護師などの資格を活かして、在宅支援や地域医療の現場で専門性を発揮することもできるでしょう。

加えて、感染症対策や救急対応などの知識や経験を活かし、「災害支援ナース」として地域活動に参加するなど、現在の仕事にプラスして活動の幅を広げるのも1つの方法です。

参照元:災害支援ナースとは

5. 資格や経験を活かして起業・独立する

自分の強みを活かした働き方として、起業や独立という選択肢もあります。訪問看護ステーションの開業や、助産院の設立、看護相談サロンや健康講座など、これまでの経験と資格を活かした事業を展開する方もいます。

たとえば、日本看護協会も推進する「まちの保健室」のように、看護師の経験を地域に還元する形での起業も注目されています。一例として、栃木県の宇都宮市では「学校に保健室があるように、街中に誰でも気軽に立ち寄れる保健室をつくりたい」という思いから、「サロンみんなの保健室」といった、地域を巻き込んだ起業の事例がありました。

一方で、起業や独立は安定した収入や働き方が得られるまで時間や労力がかかることも多く、計画的な準備や資金調達などが欠かせません。「無理なく働き続けたい」という方は、まずは副業や非常勤・パート勤務などから新しい働き方を試してみるのもよいでしょう。

地域のニーズと自分の強みが合致する点を見つけることができれば、看護師としての新しい役割を築ける可能性があります。

参照元:公益社団法人日本看護協会|ナースストリート,まちの保健室

6. 看護の知識を活かして副業・兼業する

体力や家庭の事情から、これまでのようにフルタイム勤務を続けるのが難しくなったとき、「看護師の資格を活かした副業・兼業」という選択肢があります。

たとえば、医療ライターや監修業務、講師活動、SNSでの情報発信など、臨床以外での活躍の場もあります。こうした仕事は、時間や場所の制約が少ないものも多く、無理なく働き続ける手段の1つです。

筆者も医療系Webライターとして、看護経験をもとに記事執筆や編集、インタビューなどの仕事を行っています。オンラインで完結できるため、体調や家庭の状況に合わせて柔軟に働くことが可能です。

50代からは、看護師としての経験を活かして自分らしく働き続けよう

50代の看護師は、体力的な限界を感じやすくなる一方で、経験や信頼、視野の広さといった強みを多く持っています。

「もう無理かもしれない」と感じたときは、自分の働き方を整え直すタイミングです。無理に続けるのではなく「50代以降も看護師の資格を活かして自分らしく働くためにどうしたら良いか」という視点が必要です。

働き方は一つではありません。看護師として培ってきた経験を活かしながら、自分に合ったスタイルを見つけていきましょう。

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髙橋麻紀(たかはしまき)

執筆者:髙橋麻紀(たかはしまき)

看護師歴28年。認定フェムテックシニアエキスパート(日本フェムテック協会1級資格)。
都内の総合病院で脳外科・ICU・循環器内科などを経験し、急性期から慢性期まで幅広い看護に携わる。出産・育児・引っ越しを機に、フルタイム勤務からパート勤務へシフト。
現在は月4〜5回の看護師パートを続けながら、在宅で医療系Webライターとして活動中。医療・健康・フェムテック・美容を中心に、複数のメディアで執筆を行っている。

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