介護・福祉の現場でパート・アルバイトとして働く際、「扶養の範囲内で働くか」は悩ましいポイントです。この記事では、混同されやすい「配偶者控除」と「扶養控除」の違いをわかりやすく整理し、2025年・2026年の制度改正に基づいた働き方のポイントを解説します。
配偶者控除と扶養控除とは?対象者や社会保険上の扶養との違いを整理
「扶養」は、広義には親族などの生活を支えることを指しますが、所得税の制度では「配偶者」を対象とする控除と「配偶者以外の親族」を対象とする控除に分けられています。両者は対象となる親族や控除額が異なるため、世帯にどの制度が適用されるかを正しく理解することが重要です。
また、2025年・2026年には所得税に関する「年収の壁」の引き上げなど大規模な改正が行われましたが、税法上の扶養と社会保険上の扶養では判定基準が異なるため、まずはそれぞれの制度の前提を整理します。
配偶者控除は「妻や夫」が対象の制度
配偶者控除とは、納税者に所得税法上の「配偶者」がいる場合に、一定の金額を所得から差し引ける制度です。ここでいう配偶者とは、民法の規定による婚姻関係にある人を指し、内縁関係は含まれません。配偶者の合計所得金額が、2025年分は58万円以下、2026年分以後は62万円以下であることなど、一定の要件を満たす場合に適用され、納税者本人の所得税の負担が軽減されることがあります。
また、配偶者の所得が配偶者控除の要件を超えた場合でも、所得金額に応じて段階的に控除を受けられる「配偶者特別控除」が設けられています。
※出典:国税庁「No.1191 配偶者控除」、「No.1195 配偶者特別控除」、「令和8年4月 源泉所得税の改正のあらまし(p2)」
扶養控除は「子どもや親」が対象の制度
扶養控除は、一定の所得要件などを満たす16歳以上の扶養親族がいる場合に適用される制度です。対象となる親族には、6親等内の血族および3親等内の姻族などが挙げられます。たとえば、仕送りをして生活を支えている大学生の子どもや、同居・別居を問わず生計を一にしている高齢の親などです。
※出典:国税庁「No.1180 扶養控除」
税法上の扶養と社会保険上の扶養の違い
「扶養内」には、所得税の負担を軽減する「税法上の扶養」と、健康保険の被扶養者認定などに関わる「社会保険上の扶養」があります。税法上は原則として1月〜12月の合計所得金額など、社会保険上は認定時点から見込まれる年間収入などを基準に判定されます。
それぞれ制度や判定基準が異なるため、税法上の扶養に該当しても、社会保険上の扶養から外れる場合があります。扶養の範囲内で働く場合は、両方の要件を確認しましょう。
※出典:厚生労働省「「年収の壁」への対応」
【比較表】配偶者控除・配偶者特別控除と扶養控除の条件・控除額一覧
次の表では、2026年分の所得税に適用される要件を基準に、配偶者控除・配偶者特別控除と扶養控除を比較します。これらの制度は、配偶者や扶養親族の所得・年齢・同居状況、納税者本人の合計所得金額などによって、適用の可否や控除額が変わります。
表で配偶者や扶養親族がどの制度の対象となるか、主な控除額と、表のあとに続く各項目の詳細な適用要件を併せて確認しましょう(下記の情報は、国税庁の「No.1191 配偶者控除」、「No.1195 配偶者特別控除」、「No.1180 扶養控除」、「No.1182 高齢者を扶養している人が受けられる配偶者控除や扶養控除」、「令和8年4月 源泉所得税の改正のあらまし(p2)」を参照しています)。
| 項目 | 配偶者控除・配偶者特別控除 | 扶養控除 |
|---|---|---|
| 主な対象者 | 妻、夫(民法上の配偶者) | 子ども(16歳以上)、親、親族 |
| 対象者の所得要件 | 配偶者控除:合計所得金額62万円以下(給与収入のみの場合136万円以下) 配偶者特別控除:合計所得金額62万円超133万円以下(給与収入のみの場合136万円超207万円以下) |
合計所得金額62万円以下(給与収入のみの場合136万円以下) |
| 所得控除額(所得税) | 配偶者控除:原則最大38万円(70歳以上の配偶者は最大48万円) 配偶者特別控除:最大38万円 |
38万円〜63万円(年齢・同居状況による) |
| 納税者本人の所得制限 | あり(合計所得金額1,000万円超は適用外) | なし(ただし所得により税率が変わる) |
配偶者控除・扶養控除の主な適用要件
配偶者控除は、生計を一にする配偶者の合計所得金額が、2025年分は58万円以下、2026年分以後は62万円以下であることなどが主な要件です。給与収入のみの場合は、2025年分は123万円以下、2026年分・2027年分は136万円以下が目安となります。
扶養控除は、同様の所得要件などを満たす16歳以上の扶養親族が対象です。そのため、16歳未満の子どもは所得税の扶養控除の対象にはなりません。
年齢や同居状況で変わる扶養控除額
扶養控除の金額は、扶養親族の年齢や同居状況によって異なります。主な区分と控除額は、次のとおりです。
- 一般の控除対象扶養親族:38万円
- 特定扶養親族(19歳以上23歳未満):63万円
- 老人扶養親族(70歳以上)で、同居老親等に該当する場合:58万円
- 老人扶養親族(70歳以上)で、上記以外の場合:48万円
老人ホームなどに入所している親族は、原則として同居老親等には該当しないため、控除額は48万円となります。
配偶者控除・配偶者特別控除における納税者本人の所得制限
配偶者控除と配偶者特別控除には、控除を受ける納税者本人にも所得制限が設けられています。納税者本人の合計所得金額が900万円を超えると控除額が段階的に減少し、1,000万円を超えると配偶者控除・配偶者特別控除のいずれも受けられなくなります。
これに対し、一般的な扶養控除には納税者本人の合計所得金額による制限はありません。ただし、実際に軽減される税額は、納税者本人の課税所得や適用される税率によって異なります。
介護職員・ヘルパーの求人情報はこちら2025・2026年改正で「年収の壁」はどう変わった?所得税・社会保険への影響
2025年と2026年の税制改正により、所得税の基礎控除や給与所得控除が見直され、扶養親族などの所得要件も段階的に引き上げられました。一方、社会保険の加入基準や被扶養者認定は税制とは別に定められており、今後の制度変更も予定されています。
ここでは、所得税と社会保険に関する主な「年収の壁」を整理します(下記の情報は、国税庁の「No.1800 パート収入はいくらまで所得税がかからないか」、「令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について(源泉所得税関係)(p2〜4)」、財務省の「令和8年度税制改正の大綱」、国税庁の「令和8年4月 源泉所得税の改正のあらまし(p1〜2)」を参照しています)。
所得税がかからない「160万円・178万円の壁」
給与収入のみでほかに所得がない場合、所得税がかからない年収の目安は、2025年分の160万円から、2026年分・2027年分は178万円に引き上げられます。
ただし、178万円は給与を受け取る人の所得税に関する目安であり、配偶者控除・扶養控除や社会保険上の扶養の判定基準とは異なります。住民税や勤務先の家族手当にも別の基準があるため、併せて確認しましょう。
19歳以上23歳未満の親族に関する「123万円・136万円などの壁」
19歳以上23歳未満の親族を扶養している場合、親族の収入が扶養控除の要件を超えてしまっても、扶養している納税者は「特定親族特別控除」を受けられることがあります。
2025年分と、2026年分・2027年分では、適用される給与収入の基準が引き上げられます。親族の収入が給与のみの場合の目安と控除額は、以下の表のとおりです。
| 適用される制度と控除額 | 2025年分(親族の給与収入) | 2026年・2027年分(親族の給与収入) |
|---|---|---|
| 扶養控除(63万円) | 123万円以下 | 136万円以下 |
| 特定親族特別控除(63万円) | 123万円超〜150万円以下 | 136万円超〜159万円以下 |
| 特定親族特別控除(段階的に減少) | 150万円超〜188万円以下 | 159万円超〜197万円以下 |
なお、これらの控除を受けるために、大学などへの在学は要件ではありません。あくまで年齢や親族関係、所得などによって判定されます。
勤務先の社会保険に加入する「106万円の壁」と今後の改正
社会保険における「年収の壁」には、自身が勤務先の社会保険に加入する基準である「106万円」と、ご家族の健康保険の被扶養者でいられる基準である「130万円・150万円」があります。これらは全く異なる制度の基準です。
「106万円の壁」は、パートやアルバイトなどの短時間労働者が、勤務先の健康保険・厚生年金保険に加入する基準を指します。2026年7月時点では、以下の要件をすべて満たすと、原則として加入対象となります。
- 厚生年金保険の被保険者数が51人以上の企業などで働いている
- 週の所定労働時間が20時間以上である
- 所定内賃金が月額8万8,000円以上である(年収換算で約106万円)
- 2か月を超える雇用の見込みがある
- 学生ではない
【今後の法改正のポイント】
上記の加入要件は今後変更が予定されています。2026年10月には「月額8万8,000円以上」という賃金要件が撤廃される予定です。さらに、2027年10月以降は企業規模の要件(51人以上)も段階的に縮小されるため、より多くの方が社会保険の加入対象となります。
被扶養者でいられる「130万円・150万円の壁」
一方、「130万円」と「150万円」はどちらも、ご家族の健康保険の被扶養者となるための年間収入要件です。
- 原則(130万円の壁):年間収入の見込みが130万円未満であること
- 特例(150万円の壁):被保険者の配偶者を除く「19歳以上23歳未満の親族」については、2025年10月から要件が150万円未満に引き上げられました
なお、収入要件を満たしていても、被保険者によって生計が維持されているかなど、別途審査が行われます。
※出典:厚生労働省「社会保険加入の要件」、「短時間労働者の社会保険の加入拡大のポイント」、「19歳以上23歳未満の被扶養者に係る認定に関するQ&A(p1、4)」
介護・福祉現場で働く人が知っておきたい働き方と申告のポイント
扶養の範囲内で働くかを検討する際は、税金や社会保険の基準に加え、給与や手当の内訳も把握しておく必要があります。介護・福祉職では、基本給に加えて処遇改善手当や夜勤手当などが支給される場合も少なくありません。ここでは、手当の扱い、社会保険に加入した場合の影響、年末調整・確定申告の手続きを確認していきましょう。
処遇改善手当や夜勤手当は「年収」に含まれるか
処遇改善加算を原資として支給される基本給の上乗せや処遇改善手当、夜勤手当などは、原則として給与収入に含まれます。ただし、通勤手当は、公共交通機関を利用する場合は原則として月額15万円まで、自動車や自転車などの交通用具を使用して通勤する場合は距離などに応じた限度額までが非課税となり、所得税の計算対象に含まれません。
一方、配偶者控除や扶養控除の要件は合計所得金額で定められているため、給与収入から給与所得控除を差し引いた所得金額も確認しましょう。なお、社会保険では、基準によって年収の判定方法が異なります。
※出典:国税庁「No.2508 給与所得となるもの」、「通勤手当の非課税限度額の改正について」、「No.1410 給与所得控除」
扶養を外れて勤務先の社会保険に加入するメリットとデメリット
扶養を外れて勤務先の健康保険・厚生年金保険に加入すると、社会保険料の負担が発生するため、加入直後は手取りが減る場合があります。一方、厚生年金保険の加入期間や給与額に応じて将来受け取る年金額が増えるほか、一定の要件を満たせば、病気やけがで働けなくなった際の傷病手当金や、出産のために仕事を休んだ際の出産手当金を受けられます。
ただし、扶養を外れて国民健康保険・国民年金に加入する場合には、同じ保障を受けられるとは限りません。配偶者の勤務先から支給される家族手当が停止される場合もあるため、保険料負担や勤務先の制度を含めて検討しましょう。
※出典:厚生労働省「社会保険の加入対象の拡大について」
年末調整に必要な書類・提出期限と申告を忘れた場合の対応
控除を受けるためには、勤務先へ申告書を提出する必要があります。主な書類と原則的な提出期限は以下のとおりですが、実際には勤務先が早めの期限を設定することが多いため、指定された社内の案内を確認しましょう。
-
給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
提出期限:その年最初の給与を受ける日の前日まで(年の途中で扶養親族などに異動があった場合は、その後最初の給与を受ける日の前日まで) -
給与所得者の配偶者控除等申告書・特定親族特別控除申告書
提出期限:その年最後の給与を受ける日の前日まで
なお、年末調整で控除を申告し忘れた場合でも、確定申告によって控除を受けられます。確定申告の義務がない人が所得税の還付を受けるために行う還付申告は、原則として翌年1月1日から5年間提出可能です。
※出典:国税庁「給与所得者の扶養控除等の(異動)申告」、「給与所得者の基礎控除、配偶者(特別)控除、特定親族特別控除及び所得金額調整控除の申告」、「No.2030 還付申告」
この記事では、配偶者控除と扶養控除の違い、そして2025年・2026年の税制改正による「年収の壁」の変化について解説しました。配偶者控除は一定の所得要件を満たす配偶者、扶養控除は一定の所得・年齢要件を満たす配偶者以外の親族などが対象です。それぞれの適用要件や控除額は、配偶者や扶養親族の所得・年齢・同居状況などによって異なります。扶養の範囲内で働くかを考える際は、所得税だけでなく、社会保険料や将来の保障、勤務先の家族手当なども併せて確認することが大切です。世帯内の収入や、配偶者・扶養親族の状況を整理したうえで、関係する基準を確認しましょう。
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執筆者:ウェルミーマガジン編集部
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