一都三県で34拠点77事業所を展開している、ケアサポート株式会社。デイサービス、ショートステイ、グループホームなど、主に地域密着型の施設を運営しています。今回取材させていただいたケアサポートいちかわは、千葉県市川市にある施設で、1階はデイサービス、2・3階でショートステイのサービスを提供しています。サービスの特徴と、職員の皆さんの働き方について、お話を伺いました。
お話を伺った方
千葉エリア / スーパーバイザー:稲村 友希恵さん
ケアサポートいちかわ / チーフ:吉岡 早苗さん
ケアサポートいちかわ / 職員:篠塚 あやめさん
ショートステイのフロアに足を踏み入れると、インカムをつけた職員の皆さんが行き交っています。その手にあるのはタブレット。画面をチェックしながら「今日は少し水分が足りないようですね。麦茶でも飲みませんか?」と利用者様に声をかけていて……。
一見何気ないこのやり取りにこそ、ケアサポートが大切にする「自立支援」と「ICT活用」の取り組みが凝縮されています。
データという客観的なエビデンスに基づき、一人ひとりに最適なケアを導き出すこと。そして、ICT機器を導入することで職員の負担を軽減し、利用者様と向き合う時間を創出すること。
チーフの吉岡さんは、ご家族から「ショートステイに行くと、元気になって帰ってくる」と言われる瞬間が何よりもうれしい、と顔をほころばせます。
利用者様の「できること」を増やし、日々の生活に活力を生み出すケアとは。そして、それを支えるスマートな働き方の工夫とは、一体どのようなものなのでしょうか。その舞台裏に迫ります。
(インカムをつけて利用者様と笑顔で接する篠塚さん)
ー 御社の特徴として、自立支援介護サービス「ReLIFE」(リライフ)があると伺いました。まず、この「ReLIFE」について教えてください。
稲村さん:「ReLIFE」は「愛着ある場所で、いつまでも自分らしく過ごしたい」という利用者様の想いを叶えるため、ケアサポート株式会社が独自に行うサービスです。自立支援介護理論に基づき、「水分」「栄養」「運動」「排泄」の4つの基本ケアを行います。単に身体機能を維持するだけでなく、歩けるようになる、認知症の症状が落ち着く、というように「できること」を増やし、自分らしく動ける状態を目指しています。
これは、私たちの理念である、一人ひとりの「その人らしく、ゆったり、のびのびと・・・」を実現するための手段でもあります。ご自身で好きなものを選んだり、決めたりできる選択の幅を広げ、在宅での生活をその人らしく続けていただく。そのために提供しているサービスです。
(明るい雰囲気で語ってくださる稲村さん)
ー 具体的に、現場ではどのようなアプローチが行われているのでしょうか?
吉岡さん:第一に取り組むのが「水分摂取」です。高齢になるとどうしても水分が不足しがちですが、しっかり摂取していただくことで、お手洗いでの自立排泄につながったり、認知面に良い影響が出たりと、さまざまな変化が生まれます。「ReLIFE」では、1日あたり1,500ml以上の水分摂取を目標としています。ただ、「飲んでください」と言うだけではなかなか飲んでいただけません。そこをどう工夫するかが、現場職員の腕の見せ所です。
篠塚さん:例えば、ある利用者様は、温かい飲み物をお勧めしても、あまり進まない様子でした。そこで「冷たい麦茶やお水もありますよ」と声をかけたところ、冷たい麦茶なら好んで飲んでくれたんです。それからは職員間で共有し、こまめに麦茶をお勧めするようにしました。さらに、別の方は以前、牛乳の代わりにジュースを提供した際によく飲まれていたので「甘い飲み物だと飲みやすいのかもしれない」と考えました。そこでカルピスをお出ししたところ、とても喜んで飲んでくださいました。このように、その方の様子をよく観察し、好みに合わせて楽しみながら飲んでいただける工夫を重ねています。
吉岡さん:そうした積み重ねの結果、午前中にしっかり水分を摂ることができると、明らかに表情や会話が鮮明になるのを感じます。ご自宅ではなかなか水分が摂れない方も、ここに来てしっかり摂ることを継続すると、歩行の状態まで良くなっていく方も多いんですよ。
(穏やかな雰囲気で語ってくださる吉岡さん(左)と真剣に聞き入る篠塚さん(右))
ー まさに、オーダーメイドのケアですね!
篠塚さん:お一人おひとりのデータを見ながら「何が足りないか」「どうすればより良い状態を目指せるか」を全員で議論するカンファレンスを行っています。これは私にとって学びの場でもあり、先輩や同僚から「〇〇をもう少し増やしてみれば?」「こんな視点からアプローチしてみたら?」といった具体的なアドバイスをもらえる機会にもなっています。
ー 運動面ではどのような取り組みをされていますか?
篠塚さん:活動量を増やすために、最近「日本地図」を使った取り組みを始めました。どれくらい運動したかを可視化するために、立ち上がり運動や足の体操を1セット行うごとにシールを貼り、地図上の県を進んでいく仕組みです。「これくらい進んだよ」と達成感を持ってもらったり、例えば北海道にシールを貼ったら「北海道に行ったことありますか?」と会話のきっかけにしたり。
(実際に使用されている日本地図)
吉岡さん:何事も、楽しくないと続かないと思います。利用者様のモチベーションを上げるためにどうしたらいいか、職員みんなで話し合い、さまざまなアイデアを試しているところです。
ー インカムやタブレットなど、デジタル機器の活用が進んでいる印象を受けました。その背景には何があるのでしょうか?
稲村さん:介護業界全体の人手不足が、社会課題になっています。だからこそ、頼れる部分は機械やデジタルに任せ、私たちはあくまで「人にしかできないケア」に集中できる環境を作りたいと考えています。DXを推進することで、サービスの質を高める狙いです。
ー 具体的にどのような場面で効果を感じていますか?
吉岡さん:特に、インカムの効果は絶大です。ショートステイは2階と3階にフロアが分かれていますが、インカムがあれば、離れた場所にいる看護師やスタッフともハンズフリーで即座に連携が取れます。これまでは誰かを探しに行ったり、確認のために階段を往復したりする時間がありましたが、それが解消されました。例えば1日30分の移動時間が削減できたとしたら、その分、利用者様と関わる時間を増やせるんです。
それから、利用者様の睡眠状態などを遠隔で確認できる「見守りシステム」が導入されたことも大きな変化です。夜間の見守り業務の負担軽減や、利用者様の睡眠の質の向上に役立てることができるようになりました。
篠塚さん:私は「記録の電子化」がありがたいですね。以前は手書きでしたが、今はタブレットで入力すればReLIFEに必要なデータも自動で集計されます。「この方は水分が足りていない」「排泄の間隔が空いている」といった状況が一目でわかるので、チームでの情報共有や対策が非常にスムーズになりました。
吉岡さん:また、シフト作成も自動化されました。これまで、希望休や職員の組み合わせなどを考慮してシフトを組むのは、管理者にとって心理的な負担が大きい業務でした。それをAIやシステムが自動で行ってくれることで、管理者の悩みやストレスが大幅に緩和されています。
(実際の現場でタブレットを使いこなす篠塚さん)
ー DXの推進にあたっては、よく「ツールを導入したものの現場でうまく使いこなせない」といった悩みを聞きます。現場の混乱はなかったのでしょうか?
稲村さん:本社でDXを推進する担当者も、現場を経験していることが大きいですね。現場のオペレーションを理解し、導入にあたっても現場に丸投げするのではなく、それぞれの拠点に足を運んで一緒に設定を行うなど、伴走してくれています。「利用者様に、より良いサービスを提供したい」という共通の目的があるので、会社全体で同じ方向を向いて進められていると感じます。
ー コミュニケーションツールも導入されていると伺いました。
稲村さん:はい。「LINE WORKS」を導入し、全社員がつながれるようになっています。本社と拠点、あるいは上司と部下の間でも、チャット形式でフランクに連絡が取り合えます。スタンプ一つで返信できたりと、堅苦しい壁がなく、リードタイムのないスムーズな連携が実現できています。こうした風通しの良さも、DX推進の恩恵の一つかもしれません。
ー DXを進める狙いは「人にしかできないケア」に集中できるように、とのことでしたが、皆さんがこの仕事で特にやりがいを感じるのはどのような瞬間ですか?
吉岡さん:私はかつて家族の介護を経験し、「もっと何かできたのではないか」という思いからこの世界に入りました。今はチーフとして、車椅子で全介助が必要だった方が歩行器で移動できるようになったり、認知症の症状が改善したりといった具体的な変化を目の当たりにできることや、それをご家族の方が喜んでくださるのが何より嬉しいです。
また、職員が子育てしながらでも働き続けられるよう、環境を整えるマネジメントにもやりがいを感じています。職員に余裕がないと、どうしてもケアの質に影響してしまいますから、ICTの力も借りて、みんなが笑顔で働ける職場作りを大切にしています。
篠塚さん:私は就活中にたまたま担当者の人柄に惹かれて入社しましたが、今ではここが「当たり」だったと思っています(笑)。自分が工夫したことで、利用者様に水分を摂っていただけたり、笑顔が増えたりするのを見ると、介護に「人」が関わる意味を感じます。この仕事を選んでよかったと心から思います。
稲村さん:私は「その人らしい在宅生活の継続」を支えることに、責任とやりがいを感じています。利用者様が望む生活を実現できるチームを作っていきたいと思っています。
(終始笑顔の絶えない稲村さん(左)、吉岡さん(中央)、篠塚さん(右))
ー 最後に、ここで働いてみたい方へメッセージをお願いします。
稲村さん:人のために何かしたいと考えていらっしゃる方と、一緒に働きたいですね。何よりも「利用者様のためにどうすればいいか」を考えてくださる方は、ケアサポートにはすごく向いていると思います。
篠塚さん:ReLIFEのような専門知識は、入社後の動画研修や、毎月のデータカンファレンスを通じて自然と身につきます。先輩たちも「次はこうしてみたら?」とアドバイスをくれるので、未経験でも安心して飛び込んでほしいです。
吉岡さん:思いやりがあり、相手をよく観察できる方なら、きっと活躍できると思います。変化を恐れず、私たちと一緒に楽しく働いてくれる方をお待ちしています。
(お話を伺った稲村さん(左)、篠塚さん(中央)、吉岡さん(右))
編集後記
取材を通じて印象的だったのは、ICTの導入が単なる効率化ではなく、利用者様と真に向き合うために機能している点でした。「データやデジタルデバイスを通じた科学的な介護」と「人にしかできない温かな関わり」。この両輪が揃うことで、住み慣れた自宅でその人らしい生活を送り続けるための確かな糧となる。スマートかつ情熱的な現場の姿に触れることのできた取材でした。
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執筆者:塚田 智恵美(つかだ ちえみ)
1988年、神奈川県横須賀生まれ。大学卒業後、教育系出版社に入社し、編集者として勤務。2016年フリーランスの編集者・インタビューライターに。現在は教育業界に限らず、幅広く人物インタビューと執筆を行う。