今回取材させていただいたのは、設立から26年、地域に根ざした介護を続ける「岩槻ライトケア」(医療法人ひかり会/さいたま市岩槻区)。
事務長の中村さんには運営のこだわりやキャリアについて、松井さんと市川さんには現場目線で施設の魅力について語ってもらいました。
お話を伺った方
事務長:中村浩美さん
主任:松井桃子さん
副主任:市川千夏さん
(左:松井さん 中央:中村さん 右:市川さん)
― 介護老人保健施設「岩槻ライトケア」の特徴を教えてください。
中村さん:「岩槻ライトケア」は、老健の中では比較的小さい規模です。そのため、利用者様や職員の人数も、他の施設に比べると少人数であり、法人の経営理念である「温かい心の地域医療」を体現しやすい環境だと言えます。小規模だからこそ一人ひとりに寄り添うようなケアができるのが、当施設の特徴なんです。
― 一人ひとりに寄り添うケア、素敵ですね。中村さんはその運営を担われていますが、介護の道に進む前はまったく違う業界だったと伺いました。
中村さん: はい、実は、介護の世界に入る前は自動車整備士として十数年働いていたんです。その後、整備士を退職して1年ほど休んでいたときに、東日本大震災が起こり、人の役に立つ仕事がしたいと思い立って医療法人ひかり会の病院事務職に転職しました。
それ以来、医療法人ひかり会には、もう14年もお世話になっています。最初は同じ法人内の別の施設で事務員として経験を積み、「岩槻ライトケア」に来たのが3年前。前任の事務長の後任としてお話をいただき、まずは事務課長を務めた後、事務長に就きました。事務長というと堅いイメージかもしれませんが、実際は職員の採用や相談に乗ったり、利用者様のご家族とやりとりをしたりと、施設が円滑に回るための役割です。
(医療福祉業界を目指すきっかけについて語ってくださる中村さん)
― 事務長として、施設を円滑に運営するために意識されていることはありますか?
中村さん:「職員が楽しくないと利用者様も楽しくない」ということを普段から意識しています。職員は、プライベートの時間を大切にできてこそ、仕事に一生懸命打ち込める。そのため、職員がプライベートも大事にできるよう、しっかり寄り添うようにしたいと常に心がけています。
― 業務もプライベートも大事にする、両立させる。その考えに至ったきっかけはありますか?
中村さん:医療法人ひかり会に勤めてから子どもが二人生まれ、お休みもいただきました。そういった経験が大きいと思います。家族から「具合が悪い」と連絡がきたときに、帰らせてもらえなかったらどうだろう?とか、単純に自分の身に置き換えて考えるようにしています。
この考えは役職に関係なく徹底しています。私も小学生の子どもがいて、学校から呼ばれることがあるんです。なので、私も休む姿を見せることで、「事務長だって休むんだから、自分たちも休んでいいんだ」と思ってもらえたら嬉しいですね。
― 続いて、現場で活躍されているお二人にもお話を伺いたいと思います。「働きやすさ」を実感されたエピソードはありますか?
松井さん:以前、子どもの運動会のために、休みを申請するのを忘れていたことがあったんです。もういいやって諦めていたんですけど、休憩中にその話をしたら、話を聞いた職員が急いで、中村さんに言いに行ってくれて。中村さんからは「それは行きなさい!」「業務命令よ」と後押しされたことがありました(笑)。
中村さん:ほかの職員が気にかけて、看護師長さんまでもが言いに来てくれたんです。松井さんは、周りのスタッフが「休みなさい」と言っても、「いや、ちょっと…」と遠慮するタイプなので、業務命令でした(笑)。
松井さん:本当に「やさしさの連鎖」ですよね、無事に運動会に行けました。
市川さん:以前の職場では、「お休みをいただけますか」と伝えると、「え、有給使うの?」といった空気を感じてしまうことがあってプレッシャーでした。でも今はまったく違っていて、「休んで大丈夫だよ」「行ってきて」と、すぐに声をかけてもらえるんです。保育園から連絡があったときも、「あ、そうなんだ!行っておいで!」と、周りが自然に送り出してくれます。
中村さん:各自、電話は事務所で受けることになっているので、保育園からの連絡だとこちらもすぐ気付きます。そのときはすぐに「早く迎えに行ってあげて」と職員に声をかけるようにしています。
(エピソードを思い出し笑顔があふれるお二人松井さん(左)と市川さん(右))
― なぜ、それほど温かい施設文化が生まれるのでしょうか?
中村さん:多様な個性の方が集まっているからかもしれません。レクリエーションがすごく得意な方もいれば「レクは地獄だ…朝から帰りたい」と感じる人もいる(笑)。それぞれ得意なことと苦手なことがあって、それでいいよね、という施設です。もちろん、業務のルールはしっかりありますが、根本には個性を尊重する自由でやりやすい雰囲気が作られていると思います。
松井さん:他の施設に比べると、男性職員が多いのも理由としてあるかもしれません。最初に働いた特養で、女性ばかりで派閥があった施設を経験したので、「男性がいるとこんなにギスギスしないんだ」と思いました。
(ボール投げで盛り上がるレクリエーション)
― 働きやすい環境は、ケアの質にもつながっていますか?
松井さん:はい。以前は入浴日が限られていて、1日に入浴される利用者様の人数が多くなってしまっていました。そのため、どうしても流れ作業のようになりがちで、お一人おひとりとじっくり向き合う時間が取りづらかったんです。これではいけないと現場で相談して入浴日を増やすことができました。
― 現場からの提案が、スムーズに受け入れられた背景には何があったのでしょうか?
松井さん:それは、施設全体に「利用者様ファースト」という考えが浸透していて、中村さんからよく「安全で、平等で、楽しいことなら、みんなのやりたいことをやっていいよ」と言われていたことが大きいですね。私たちの「利用者様にもっと快適に過ごしてほしい」という思いと一致していたからできたと思います。
こうした改善を現場主導で進められる自由さこそが、私たちの働きがいや施設のケアの質を高めていると感じています。
(当時の様子を、丁寧に教えてくれる松井さん)
― 利用者様ファーストの姿勢が印象的です。その想いを実現するために、どのように多職種連携を実現されていますか?
中村さん:私たちは、組織の形を「ドーナツ型」と呼んでいます。病院のようなピラミッド型ではなく、医師、介護士、看護師、リハビリスタッフ、相談員、ケアマネジャー、栄養士、事務員といった全員が横並びで手をつないでいるイメージです。
会議の場でも「看護師さんが言っているから」ではなく、一人の利用者様に対して、それぞれの専門職が対等に意見を出し合います。イベントのときなども、事務員や看護師が当たり前のようにお手伝いをしますし、職種の垣根はほとんど感じませんね。
松井さん:相談はしやすいですね。お食事のことだったら栄養士さん、利用者様の体のことはリハビリの先生など、結構こまめにコミュニケーションを取っています。
― コミュニケーションが活発なんですね。日頃からどんな工夫をされていますか?
松井さん:中村さんがコミュニケーションモンスターというか……モンスターって言っちゃった(笑)。
中村さん:私の席の前にタイムカードがあるので、席にいるときは職員の皆さんに声をかけています。「調子はどう?」「こないだどうだった?」体調不良でお休みした職員には、出勤した日に「無理しないでね」と声をかけています。みんなとお話ししたいんです。大切な職員なので長くお仕事してほしいと思っています。嫌だな~と思うことを溜め続けた結果、「退職します」と言われるのは避けたい。
だから、気軽に話せて小さなことでも相談できる環境は作っておこうと肝に銘じています。それもあって、私が採用した人に対しては、入職記念日には感謝を伝えるようにしているんです。 たとえば、「入職2年、これからもよろしくね」って声をかけています。
松井さん:今まで他の職場では言われたこともなくてびっくりして(笑)。
市川さん:私もこれまでの職場では言われたこともないし、自分でも忘れているところに声をかけていただいて(笑)。
(時折冗談を交わすなど、終始和やかな雰囲気の3人。(左から松井さん、市川さん、中村さん))
― 最後に、介護業界への転職を考えている方、岩槻ライトケアで働いてみたいと考えている方へメッセージをお願いします。
市川さん:やはり、「人が好き」という気持ちを持っている方と働けると嬉しいなと思います。
松井さん:そうですね。根っこの部分に「人が好き」、「おじいちゃんおばあちゃんが大好き」という方と一緒に働きたいです。「この仕事が大好きなんです」と言ってくださるような、温かい気持ちを持った方なら、きっと楽しく働けると思います。
(終始笑顔で受け答えをしてくださった松井さん(左)、中村さん(中央)、市川さん(右))
編集後記
施設に足を踏み入れると、そこには手作りのお神輿や提灯が飾られていました。先日行われたお祭りのものだ、と中村事務長は本当に楽しそうに話してくれました。お話の中でひときわ強く胸に響いたのが、「一人でも『できない』人がいるなら、そのやり方は選ばない。全員が『できる』方法を考える」という言葉です。
日々のケアも、きっと同じなのだと思います。利用者様一人ひとりはもちろん、働く仲間のことも「置いていかない」。その温かい眼差しが、この施設の働きやすさと、質の高いケアの両方を支えているのだと、強く感じさせられました。
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執筆者:ウェルミーマガジン編集部
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