「株式会社ゆりかご~看護と介護、職種の壁を越えて人生の“物語”に尽くす~」

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「株式会社ゆりかご~看護と介護、職種の壁を越えて人生の“物語”に尽くす~」

茨城県水戸市に根ざし、24時間365日対応の、定期巡回・随時対応型訪問介護看護サービスを提供する、株式会社ゆりかご。居宅介護支援、デイサービス、そして障害福祉サービスや自費での生活支援サービスなど幅広く展開し、高齢者や障害を抱える方々の「住み慣れた場所で、安心して暮らしたい」という想いをサポートしながら、地域のあらゆる困りごとに応え続けています。看護と介護、それぞれのプロフェッショナルが互いを尊重し合いながら、どのように利用者さんと向き合っているのか。その原動力と現場のリアルな声を伺いました。


お話を伺った方

代表:脇 健仁さん

訪問看護 管理者:大内 翼さん

訪問介護 管理者:栗林 雄一さん


のどかな風景が広がる、水戸市飯富町。自然豊かな環境に囲まれたゆりかごの施設では、ショッキングピンクのユニフォームに身を包んだスタッフの皆さんが、明るい活気を生み出しています。事務所では、看護職と介護職が机を並べ、日々密な連携を取りながら利用者さん一人ひとりの生活を支えているといいます。

「このピンク、利用者さんから『元気がもらえる色』だと言われるんです」と笑うのが、同社代表の脇 健仁さん。

「地域で困ったことがあれば、とりあえずゆりかごへ行けばなんとかなる、と思ってもらえる場所にしたい」。

そう語る脇さんの言葉通り、同社は制度の枠組みに捉われない柔軟なサービスと、職種のヒエラルキーをなくしたフラットなチームワークで、地域の厚い信頼を集めてきました。

(弊社共催のイベントにてご講演いただいた脇さん)

 ー まず、皆さんが看護や介護の道に進まれた経緯と、ゆりかごとの出会いを教えてください。

脇さん:もともと異業種にいて、義理の両親が立ち上げた会社を手伝う形でこの世界に入りました。当初は介護を「ビジネスの一つ」と捉えていた部分もあったんです。しかし、ヘルパーの資格を取ってから実際の現場に出てみると、オムツ交換をするだけでも一苦労。他のヘルパーより時間がかかってしまうことも多々ありました。そんなとき、利用者さんからは責められるどころか「汗だくになってまでやってくれて、ありがとうね」と感謝されたんです。そこから真剣に介護に向き合うようになりました。そして自分の手にしっかり技術をつけたいと、さまざまな資格を取得しながら学び続けて、今に至ります。

大内さん:私は、高校卒業後に看護学校に入学し、正看護師を取得してから病院で看護師をしていました。実は、脇とは看護学校の先輩後輩の関係なんです。

脇さん:私は社会人経験を経てから看護師資格を取得しました。実は、看護学校では大内の方が先輩なんです(笑)。

大内さん:そうなんです(笑)。病院で勤務する中で、ベッドで寝たきりだった患者さんが、一時帰宅を経ることで表情が明るくなったり、歩けるようになったりするのを目の当たりにしました。「自分が病院で見ているのは、その人の一部でしかない」と痛感し、「もっと、患者さんの生活に寄り添ってやれることがあるのではないか」とモヤモヤしていたんです。そんな時、食事の席で脇に悩みを相談したら「うちに来てくれないか」と声をかけてもらい、訪問看護の世界に飛び込みました。

訪問看護の現場は、次から次へと新しいことを勉強し、専門性を突き詰めなければならない世界。やりがいがあるなと思ったのを覚えています。

栗林さん:大学3年の時に祖母の介護を経験し、ヘルパー2級の資格を取ったことがきっかけでした。その後、スーパーでアルバイトをしていた時に、同じく資格を取ろうとしていた方からゆりかごを紹介されたんです。電話をしたら、面接のために脇が車で私のバイト先のスーパーまで迎えに来てくれて(笑)。とても驚きましたが、その面接の最後に「卒業後はぜひうちで働いてほしい」と言われた言葉を信じ込み、就職活動を一切せずにそのまま入社しました。私は、ゆりかごの成長を見てきた初期メンバーなんです。

(利用者さんをサポートする栗林さん)

 ー 御社は地域に深く根ざした事業展開をされていますね。その背景にはどのような想いがあるのでしょうか?

脇さん:むやみな拡大路線をとらず、水戸という地域でどこまで深みを追求できるかを大切にしています。私が代表になって改めて考えたのは「人間が生まれてから死ぬまでの間に、目が合う人の数は知れている」ということです。だからこそ、自分の目が届く範囲、ご縁があって目が合った人には、ベストを尽くしたいという想いが根底にあります。

私は愛媛の出身で、水戸の皆様にとっては「よそ者」。一方で、地域の慣習に捉われず、新しい提案ができる強みもあると思っています。地元のお祭りにもブースを出店しているのですが、スタッフたちが率先して心から楽しんで地域の方々と関わってくれているのも嬉しいですね。

栗林さん:水戸市、特に私たちの拠点がある周辺は、交通機関が不便な地域でもあり、ご高齢の利用者さんにとっては、通院のハードルが高い場合もあります。そこでゆりかごでは自費の介護タクシーサービスを提供し、地域のニーズにしっかり応えられる体制をとっています。

大内さん:看護の視点で言うと、水戸市は「住み慣れた我が家で、最期を迎えたい」というニーズが高い地域です。訪問診療を行う先生の割合も、他の地方に比べて多い傾向があります。一方で、すぐ隣の町には訪問診療を行う先生がお一人もいないという極端な状況もあります。私たちは、そのどちらの状況にも対応できるよう、医療資源の有無に関わらず柔軟に動ける体制を整えたいと思っています。

 ー 看護と介護に携わる方たちが同じ事務所にいることで、どのようなメリットを感じていますか?

大内さん:ゆりかごには訪問看護のみならず、訪問介護やデイサービスなど多様な部門があるので、関わった方お一人おひとりに対して、多様な視点から最善のケアを考え、すぐに実施できるのが最大の強みです。スタッフに急な休みが出た時や、急な呼び出しがあった時も、職種を越えてフォローし合い、サービスを途切れさせない連携ができています。

栗林さん:介護スタッフとしては、利用者さんの体調に小さな変化やサインがあったとき、現場からオフィスにいる看護師に、すぐに電話で相談できる環境があるのは本当に心強いです。「今こういう症状が出ています」と写真を送ってアドバイスをもらうなど、現場での不安が大きく軽減され、的確な判断につながっています。

脇さん:看護職と介護職がフラットな関係性を築くことを非常に意識しています。採用の段階でも、看護職の方には「介護職を下に見るなど、対等な関係が築けない方はお断りします」と明確に伝えています。

また、この心理的安全性を保つために、アンケートなどでチームワークを「見える化」する取り組みも行いました。管理者である大内や栗林も、スタッフからの評価を正面から受け止め、自身の行動やリーダーシップの改善につなげてくれました。そうした一緒に成長してきた時間と経験の積み重ねが、今の強固な信頼関係を作っているのだと思います。

(利用者さんの体調を丁寧に確認するスタッフさん)

 ー 従来の看護・介護の慣習や枠組みにとらわれない柔軟な対応、多様な働き方も強みだと伺いました。

脇さん:介護保険や医療保険の枠組みやコンプライアンスは当然守りますが、実際の現場では、他分野にまたがるような困りごともたくさん起きます。そういう時は「できない」と諦めるのではなく、自費サービスを組み合わせるなどして、やり方を工夫できないかを考えています。

たとえば過去には、訪問看護の利用者さんが海外の方で、言葉の壁からなかなか本心を引き出せなかった際、デイサービスにいる語学が堪能なスタッフに、通訳として同行してもらったこともありました。母国語で話せる安心感からケアが大きく前進した良い事例です。社長の仕事は「責任を取ること」だと言い切っていますので、スタッフには失敗を恐れず、利用者さんのためになると思ったことはどんどん提案してほしいと伝えています。また多様性という点では、85歳の介護福祉士が現役で頑張ってくれているなど、さまざまな方が働ける仕組みづくりにも挑戦しています。資格取得も全面的に応援しており、大内は「遺品整理士」や「特定看護師」の資格も取得しました。引き出しの多いスタッフが集まることで、より質の高いケアが提供できています。

 ー 現場では「ナラティブアプローチ」を大切にされていると伺いました。詳しく教えてください。

脇さん:利用者さん自身の人生や物語を語っていただき、ご自身で今の状況に意味づけができるようにする関わり方です。富山県砺波市で「ものがたり診療所」の所長を務める佐藤伸彦先生が、患者さんに対して「なんかやり残したことはないか、食べたいものはないか」と医師自ら寄り添って聞いている姿に衝撃を受け、このアプローチを大切にしています。ただ、利用者さんにご自身のことを語っていただくためには、まず私たち自身の「誠実な態度や姿勢」が不可欠です。語ってもらえないのは相手のせいではなく、こちらの姿勢の問題だと捉え、常に自問自答しながら向き合うことを徹底しています。

大内さん:「ナラティブアプローチ」の大切さを現場で感じた場面は、たくさんあります。たとえば、がんの末期でご自宅に帰られる方は、最初は不安だらけです。しかし私たちが関わっていく中で、「この人が来てくれるから安心だ」「ここで最期を迎えてもいいかな」と気持ちが変化していくことに寄り添えたと思う瞬間は、大きなやりがいがあります。亡くなられた後、ご家族から「ゆりかごさんに関わってもらって本当によかった」と言っていただけることで、私たち自身のケアにも意味づけができていると感じます。

栗林さん:以前、がんの末期でご自宅に戻られた利用者さんがいらっしゃいました。その方からは「どんな理由があっても、夕方の訪問スケジュールだけは絶対に遅れないでほしい。遅れるくらいなら、他のスタッフさんに来てもらいたい」と強くご要望をいただきました。というのもその方は、隣に住む妹さんとの夕食の時間を何よりも大切にされていたんですね。ですから、私たちも夕方の訪問時間は厳守して、最期までその方の大切な時間を守り抜きました。亡くなられた後、妹さんから「ゆりかごさんのおかげで、姉と素敵な時間を過ごすことができました。ありがとう」と言っていただけたことは、今でも深く印象に残っています。

(利用者さんと笑顔で接するスタッフさん)

 ー 最後に、これからどんな方と一緒に働きたいと思いますか?

栗林さん:会社の理念を大切にし、何事にも全力を尽くしてくれる方です。できない理由を挙げるのではなく、「どうすればできるか」というできる理由を探して一緒に取り組んでくれる方と働きたいですね。

大内さん:私は面接で、訪問看護のリアルな大変さや忙しさを、包み隠さずお伝えしています。決して楽な仕事ではありませんし、終末期医療に携わる過酷な面もあります。しかし、だからこそのやりがいがあるのも事実です。訪問看護に新たな価値を見出し、本気で取り組みたいという向上心を持って飛び込んできてくれる方をお待ちしています。

脇さん:とにかく「諦めない人」ですね。未経験であったり、一人で訪問することに不安を感じたりする方もいるかもしれませんが、ゆりかごでは約1か月の手厚い同行期間を設け、独り立ち後も定期的な面談でサポートします。その後ろには、多職種が連携する強固な「チーム」がついています。決して一人ではありませんので、安心して飛び込んできてください。

編集後記

「一生で目が合う人の数は限られている。その人たちにはベストを尽くす」。脇代表のこの言葉に、ゆりかごという組織の温かさと強さが凝縮されているように感じました。看護と介護のヒエラルキーをなくし、同じ事務所でシームレスに連携する体制。そして、スタッフ同士の率直な評価も組織の力に変えていく、心理的安全性の高さ。これらが、地域の困難なケースにも真っ直ぐに向き合う基盤となっています。さまざまな垣根を超えて「できない理由」より「できる方法」を模索し続ける現場。利用者さんの人生の物語(ナラティブ)に耳を傾け、共に歩むチームケアの姿を見た取材でした。

【お知らせ】

本インタビューにご協力いただいた株式会社ゆりかご代表の脇 健仁さんの著書『プレイングマネジャーの流儀 語り合いでつくる最高の介護事業』が出版されました。

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塚田 智恵美(つかだ ちえみ)

執筆者:塚田 智恵美(つかだ ちえみ)

1988年、神奈川県横須賀生まれ。大学卒業後、教育系出版社に入社し、編集者として勤務。2016年フリーランスの編集者・インタビューライターに。現在は教育業界に限らず、幅広く人物インタビューと執筆を行う。

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