就労移行支援とは?対象者・サービス内容・利用料金をわかりやすく解説

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就労移行支援とは?対象者・サービス内容・利用料金をわかりやすく解説

障害を持つ方が一般就労を目指す際に重要な役割を果たすのが就労移行支援です。この制度は障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスの一つで、多くの方が職業訓練や就職活動支援を通じて社会復帰を実現しています。

この記事では、就労移行支援の基本的な仕組みから対象者、サービス内容、利用料金まで詳しく解説します。

就労移行支援とは何か?基本的な仕組み

就労移行支援は、障害のある方が一般企業へ就職するために、職業訓練や就職活動のサポートなどを通じて総合的な支援を提供する障害福祉サービスです。この制度は2006年の障害者自立支援法(現在の障害者総合支援法)の施行とともに開始され、障害者雇用促進の重要な柱として位置づけられています。

就労移行支援の定義と法的根拠

就労移行支援は、「一般就労等への移行に向けて、事業所内や企業における作業や実習、適性に合った職場探し、就労後の職場定着のための支援を行う」事業であると定められています。このサービスは全国の指定事業所で提供されており、厚生労働省の資料によると、2025年1月時点で約2800の事業所が運営されています。

法的根拠としては、障害者総合支援法に基づいて事業者の基準を定めた厚生労働省令により、指定就労移行支援事業者として位置づけられています。厚生労働省が定める人員基準、設備基準、運営基準を満たした事業所のみサービスの提供が可能です。事業所には就労支援員、職業指導員、生活支援員などの専門職員が配置され、利用者一人ひとりの特性に応じた個別支援計画を作成し、段階的な支援を行っています。

また、この制度は障害者権利条約第27条で規定される「労働及び雇用についての権利」の実現を目指しており、国際的な障害者の就労支援の流れとも合致しています。事業所は定期的に都道府県による指導監査を受け、サービスの質の確保と向上に努めなければなりません。

一般就労を目指すための支援体制

就労移行支援の最大の目的は、利用者が一般就労を実現し、継続して働き続けることです。そのために、事業所では多角的な支援体制を構築しています。支援は大きく分けて4つの段階に分かれています。内容は以下の表の通りです。

支援段階 主な内容
職業準備支援 基本的な労働習慣の確立、コミュニケーション能力の向上、ストレス管理・体調管理など社会生活技能の習得を支援
職場実習支援 実際の企業での職場体験を通じ、実践的な職業スキルの習得と職場適応能力向上を支援
求職活動支援 履歴書の作成、面接練習、職場見学の同行など、具体的な就職活動を支援
職場定着支援 職場での人間関係の構築や業務上の課題への対処、体調やメンタル面のセルフマネジメントをサポートし、就職後も安定して働き続けられるよう支援

また、就労移行支援事業所では、ハローワークや障害者職業センター、障害者就業・生活支援センターなどの関係機関と連携を図り、包括的な支援ネットワークを構築しています。この連携により、利用者の特性や希望に最も適した就職先の開拓や、就職後の定着支援まで一貫したサポートが可能となっています。

就労移行支援の対象条件

就労移行支援の対象者は、障害者手帳を持つ方だけでなく、医師の診断書がある方、難病の方など、幅広い範囲に及びます。利用にあたっては年齢制限や利用期間の規定があり、これらの条件を正しく理解することが重要です。

障害種別による対象者の詳細

就労移行支援の対象者は、身体障害、知的障害、精神障害、発達障害、難病等のある方で、一般就労を希望し、それが可能と見込まれる方とされています。具体的には次のような方が対象となります。

障害種別 対象者の詳細
身体障害 身体障害者手帳を持つ方、または肢体不自由、視覚障害、聴覚障害等のある方
知的障害 療育手帳を持つ方、または知的機能の障害がある方
精神障害 精神障害者保健福祉手帳を持つ方、統合失調症、精神作用物質による急性中毒等のある方
発達障害 自閉症、アスペルガー症候群、学習障害等の診断を受けた方
難病 難病法に基づく指定難病の方、障害者総合支援法の対象疾病の方

難病の方については、障害者総合支援法の対象疾病(376疾病)に該当する方が対象です。

利用にあたっては、市町村の窓口に申請します。申請後、「指定特定相談支援事業者」が作成した「サービス等利用計画案」を提出します。市町村は提出された計画書を元に調査し、支給を決定します。支給が決定された後、あらためてサービス等利用計画が作成され、それに基づいたサービスが提供されます。

年齢制限と利用期間の規定

就労移行支援には年齢制限があります。原則として65歳未満の方が対象となっており、これは障害者総合支援法施行規則第6条の9に規定されています。また、65歳以上でも、65歳に達する前5年間(入院その他やむを得ない事由により障害福祉サービスに係る支給決定を受けていなかった期間を除く。)に引き続き障害福祉サービスに係る支給決定を受けていて、65歳に達する前日において就労移行支援に係る支給決定を受けていた方は利用可能です。

利用期間は、原則として2年間(24ヶ月)です。この期間は、就労に必要な知識や能力の向上を図り、実際の就職活動を行い、職場定着を図るために設定されています。利用開始から24ヶ月以内に一般就労への移行を目指すことが期待されており、事業所は就労移行率の向上に努めています。また、特別な事情がある場合には、市町村の判断により最大12ヶ月(1年間)の延長が可能です。

就労移行支援のサービス内容

就労移行支援では、利用者の障害特性や能力、希望に応じて多様なサービスが提供されています。職業訓練から就職活動支援、職場定着支援まで、段階的かつ包括的な支援プログラムが展開されています。

職業訓練と就職活動支援の具体的内容

職業訓練では、一般就労に必要な基本的なスキルから専門的な技能まで幅広い内容が提供されています。基本的な職業訓練には、パソコン操作、データ入力、文書作成、電話応対、接客マナーなどの事務系スキルが含まれます。また、軽作業、清掃、調理補助、製造業務などの実務的なスキルも習得可能です。

近年では、IT関連の職種への就労を目指すプログラムも充実しており、プログラミング、ウェブデザイン、データ分析などの専門技能を学べる事業所も増えています。これらの訓練は、利用者の適性や希望を考慮して個別に計画され、段階的にスキルアップを図ることが可能です。

また、職場実習では、実務経験が積めるとともに、企業側に利用者の能力を理解してもらう機会にもなります。実習先企業がそのまま就職先となることもあり、就労移行の重要なステップとなっています。

定着支援と個別支援計画の策定

職場定着支援は、就職後も安定して働き続けるための重要な支援です。就労移行支援事業所では、就職後6ヶ月間は職場定着支援を提供することが義務付けられており、必要に応じてより長期間の支援も行われます。定着支援では、職場訪問による労働状況の確認、企業の人事担当者や上司との連絡調整、職場での課題解決の助言などを行います。また、体調管理や職場の人間関係に関する相談支援も実施されます。

個別支援計画は、利用者一人ひとりの特性、能力、希望を踏まえて作成される支援の設計図です。計画策定にあたっては、サービス管理責任者が中心となり、就労支援員、職業指導員、生活支援員などの多職種チームで検討されます。個別支援計画は、必要に応じて見直しが行われます。計画の要素は以下にまとめました。

  1. アセスメント結果:能力評価、適性評価、課題の整理
  2. 支援目標:就労に向けた具体的な目標設定
  3. 支援内容:提供する訓練内容、支援方法の詳細
  4. 訓練プログラム:段階的な訓練プログラムの時系列計画
  5. 就労実現の可能性と必要な配慮:就労を目指す時期の目標と就労後に必要となる課題と配慮

この計画に基づいて、利用者は着実にステップアップを図り、最終的な一般就労の実現を目指します。また、計画は利用者本人や家族とも共有され、全員が同じ目標に向かって取り組める体制が構築されています。

就労移行支援の費用負担

就労移行支援の利用料金は、障害者総合支援法に基づく福祉サービスとして、利用者の所得に応じた負担軽減措置が講じられています。多くの方が経済的負担を抑えながら質の高い支援を受けることができる仕組みとなっています。

利用料金の仕組みと自己負担額

就労移行支援の利用料金は、所得水準に応じて月額の自己負担上限額が設定され、それを超える部分は公費で賄われます。自己負担上限月額は下記の通りです。

所得水準 対象者 自己負担上限月額
生活保護 生活保護受給世帯 0円
低所得 市町村民税非課税世帯(注1) 0円
一般1 市町村民税課税世帯(所得割16万円(注2)未満)
※入所施設利用者(20歳以上)、グループホーム利用者を除きます(注3)
9,300円
一般2 上記以外 37,200円

(注1)3人世帯で障害者基礎年金1級受給の場合、収入が概ね300万円以下の世帯が対象となります。

(注2)収入が概ね670万円以下の世帯が対象になります。

(注3)入所施設利用者(20歳以上)、グループホーム利用者は、市町村民税課税世帯の場合、「一般2」となります。

なお、交通費や昼食代、作業に必要な道具代などは原則として自己負担となりますが、自治体や事業所によっては交通費の一部補助などを行っている場合もあります。利用前に確認することをお勧めします。

減免制度と経済的支援について

就労移行支援では、さまざまな減免制度や経済的支援が用意されており、より多くの方が利用しやすい環境が整備されています。主な減免制度について以下にまとめました。

  • 高額障害福祉サービス等給付費:月額負担が基準額を超えた場合の払い戻し
  • 補足給付:食材料費等の実費負担部分の軽減措置
  • 家賃助成:グループホーム利用者が負担する家賃を一部補助

また、利用中も障害基礎年金や障害厚生年金を受給できます。さらに、一部の自治体では独自の支援制度を設けており、通所交通費の助成や就職時の支度金支給などがあります。

この記事では、就労移行支援とは何か、その対象者や利用条件、具体的なサービス内容、そして利用料金について詳しく解説しました。就労移行支援は障害者総合支援法に基づく重要な福祉サービスで、多くの方が一般就労を実現し、社会参加を果たすための強力な支援制度となっています。

ウェルミーマガジン編集部

執筆者:ウェルミーマガジン編集部

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