看護師として経験を積み、将来は管理職を目指したいと考えたとき、選択肢の一つとなるのが「認定看護管理者」の資格です。しかし、いざ取得を考えた際、「長い研修期間や高額な費用が必要らしい」「働きながら本当に取得できるのか」といった不安を感じる方は多いのではないでしょうか。
この記事では、認定看護管理者資格の取得を検討している方、または資格更新を控えている現役管理職の方に向けて、資格の定義から取得までのステップ、費用、期間、さらには働きながら取得するコツについて解説します。
認定看護管理者とは?役割と他の資格との違い
認定看護管理者とは、管理者として優れた資質を持ち、組織を発展させる能力を有すると認められた者を指します。この資格は、病院などの組織運営において、質の高い看護サービスを提供し続けるための重要な役割を担っており、キャリアアップを目指す看護師にとって重要な目標の一つです。
ここでは、まず認定看護管理者が具体的にどのような役割を担うのか、また混同されやすい認定看護師・専門看護師との違いや、資格を取得することで得られるメリットについて解説します。
※出典:日本看護協会「認定看護管理者」
認定看護管理者に求められる役割
認定看護管理者の役割は、複雑化する医療現場において、看護組織全体を適切にマネジメントし、質の高い看護サービスを提供することにあります。具体的には、人材育成、看護職員の労働環境改善、組織横断的な問題解決、そして経営層への提言など、多岐にわたります。
認定看護師・専門看護師との違い
同じく日本看護協会が認定する資格として、認定看護師や専門看護師がありますが、認定看護管理者は役割が明確に異なります。主な違いを以下の表にまとめました。
| 資格名 | 役割の焦点 | 求められる能力 |
|---|---|---|
| 認定看護管理者 | 組織運営・部門全体の管理 | 経営管理、人材育成、組織戦略、環境改善 |
| 認定看護師 | 特定の看護分野の実践・指導 | 高度な知識・技術の提供、指導、相談 |
| 専門看護師 | 特定の専門分野の高度な実践・調整 | 実践、相談、調整、倫理調整、教育、研究 |
認定看護管理者になるメリット:キャリアと活動の場の拡大
認定看護管理者の資格を取得する大きなメリットは、キャリアパスと活動の場の拡大です。組織全体を包括的にマネジメントする能力が客観的に証明されるため、看護部長や病院経営層に近いポジションを目指すうえで評価される場合があります。また、組織を横断して調整を行う能力は高く評価され、役割の選択肢が広がります。
実際に、日本看護協会の調査によると、資格取得前後の変化として、全体の約8割(78.3%)が「活動の場が広がった」と回答しています。内訳としては「施設外で広がった(55.5%)」「施設内で広がった(22.8%)」となっており、自施設にとどまらない活躍が期待できます。この調査は2014年のデータであるため、最新の公式統計は別途確認が必要ですが、地域包括ケアシステムの推進により需要拡大が見込まれます。
※出典:日本看護協会「2014年認定看護管理者の活動実態に関する調査結果(p18)」
認定看護管理者の受験資格を得るための3つのステップ
認定看護管理者の資格を取得するには、日本看護協会による「認定看護管理者認定審査(以下、認定審査)」に合格する必要があります。この審査の受験資格を得るための必須条件となるのが、日本看護協会が定める「認定看護管理者教育課程」の修了です。
教育課程は、正式名称として「ファーストレベル」「セカンドレベル」「サードレベル」の3段階に分かれています。ここでは、資格取得に向けて順にクリアしていく必要がある、これら「3つのステップ」について解説します。
ステップ1:ファーストレベル研修の受講
受講資格の主要な要件は「看護師としての実務経験が通算5年以上」であることです。まずは、105時間の研修を通して、ヘルスケアシステムの構造理解や、組織的看護サービス提供上の問題についての客観的な分析など、看護管理者として必要な基礎的な知識・技術・態度を習得します。
※出典:日本看護協会「認定看護管理者カリキュラム基準【ファーストレベル】(2018年3月9日改正)」
ステップ2:セカンドレベル研修の受講
受講要件は「ファーストレベルを修了していること」および「看護師実務経験が通算5年以上」などです。180時間の研修を通して、組織と看護部門の理念の整合性を図りながら目標達成に向けた看護管理を展開する方法や、サービスの質管理について学習し、看護管理者として基本的責務を遂行するために必要な実践能力を習得します。
※出典:日本看護協会「認定看護管理者カリキュラム基準【セカンドレベル】(2018年3月9日改正)」
ステップ3:サードレベル研修の受講
受講要件は「セカンドレベルを修了していること」および「看護師実務経験が通算5年以上」などです。180時間の研修を通して、個人・家族・地域住民・社会に対して質の高い組織的看護サービスを提供するための能力を習得します。そのために、社会や政策の動きが看護管理に与える影響を考え、経営の視点を持ったマネジメントを学びます。
※出典:日本看護協会「認定看護管理者カリキュラム基準【サードレベル】(2018年3月9日改正)」
看護師・准看護師の求人情報はこちら認定審査と資格更新の要件・手続き
教育課程をすべて修了すると、いよいよ資格取得の最終関門である「認定審査」へと進みます。見事合格して「認定看護管理者」となった後も、5年ごとに「再認定審査」を受け、能力を維持し続けるプロセスが待っています。
ここでは、教育課程修了から資格取得、そして取得後の維持に至るまでの全体的な流れと、各段階で必要となる具体的な要件や手続きについて解説します。
認定看護管理者の受験資格と申請方法
認定審査を受験するには、以下の要件を満たす必要があります。看護師免許を有し、実務経験が通算5年以上あることに加え、日本看護協会が定めるファーストレベル・セカンドレベル・サードレベルの教育課程をすべて修了している、または看護管理に関連する学問領域の修士以上の学位を取得していることが必要です。「資格認定制度 審査申請システム」でのWeb申請後、審査書類の郵送と審査料の振込を行うことで手続きが完了します。
認定審査の概要と合格率(難易度)
認定審査は、書類審査と筆記試験で構成されています。筆記試験は、四肢択一のマークシート方式による一般問題と論述問題で構成されています。日本看護協会の協会ニュースによると、2024年の認定審査の合格率は80.3%です。受験者は3段階の教育課程を修了した層に限られています。一定水準以上の知識と実践力が前提となるため、十分な準備が不可欠です。
※出典:井部俊子「看護のアジェンダ(230)2024年の始動――認定看護管理者制度構想」(医学界新聞 第3555号、2024年2月26日、医学書院)
再認定審査(資格更新)の要件と手順
認定看護管理者の資格は5年ごとに更新が必要です。再認定審査の申請資格は、5年間の認定期間中における研修や学会への参加による50点以上の自己研鑽が要件となります。所定の期間内に申請手続き、審査料の振込を行い、審査を受けることで資格を更新できます。これは、認定看護管理者としての資質と能力を常に最新の状態に保つために不可欠なプロセスです。
資格取得にかかる費用と期間の目安
認定看護管理者の資格取得にあたり、大きな壁となるのが「費用」と「期間」です。ここでは、ファーストレベルからサードレベルまでにかかる総費用(東京都看護協会の例)と、資格取得に必要な期間の目安について詳しく解説します。
資格取得にかかる費用の目安(東京都看護協会の例)
教育課程の受講料だけでなく、認定審査料、交通費やテキスト代など、資格取得には金銭面での計画的な準備が必要です。
費用は受講する教育機関によって異なりますが、ここでは一例として「東京都看護協会」で受講した場合の目安を紹介します。
【ファースト〜サードレベル研修の総費用イメージ】
東京都看護協会の教育課程を受講し、資格取得に至るまでの費用の目安は以下の通りです。(※2026年度会員価格の概算)
- 受講料(3レベル合計):674,500円(ファースト138,500円、セカンド238,000円、サード298,000円)
- 修了証明申請料:17,500円
- 総額の目安:692,000円
上記に加え、テキスト代や、遠方の場合は交通費・宿泊費が別途発生します。大学などの教育機関で受講する場合は100万円を超えるケースもあるため、ご自身が受講予定の機関の募集要項を必ず確認しましょう。
※出典:東京都看護協会「認定看護管理者教育課程 募集要項(2026年度版)」
資格取得に必要な総期間と学習時間
ファーストレベルからサードレベルまでの教育課程をすべて修了するには、多くの場合1年半から2年程度を要します。各レベルの研修は数十日間にわたり、レポート作成や演習など、研修時間外の学習も相当量求められます。働きながら資格取得を目指す場合、職場と調整しながらこの学習時間をいかに確保するかが鍵となります。
資格取得の費用に関する助成制度の活用
決して小さくない研修費用を支援するため、病院によっては資格取得支援制度を設けている場合があります。受講費用の一部・全額負担や、研修日の勤務扱いなど、支援内容は医療機関によりさまざまです。まずは勤務先の病院に、認定看護管理者教育課程に対する支援制度の有無を確認してみましょう。
働きながら認定看護管理者を目指す成功のコツ
認定看護管理者の資格取得には、長期にわたる研修受講が必要なため、「仕事を続けながら資格取得はできるのか」という不安もあるでしょう。しかし、適切な計画と周囲の理解を得ることで、両立は可能です。
ここでは、仕事と学習を成功させるための3つのポイントと、職場の協力を得るためのコツを解説します。
研修受講と業務を両立させるための3つのポイント
研修と通常業務を無理なく両立させるためには、事前の準備と周囲の協力が欠かせません。計画を立てる際は、以下の3つのポイントを意識しましょう。
- 職場との綿密な調整:事前に年間スケジュールを共有し、研修日の業務調整(免除など)について上司や部署としっかり相談する。
- 計画的な学習時間の確保:研修のない日や休日、勤務後の時間を活用し、レポート作成や自主学習の時間をあらかじめスケジュールに組み込む。
- 先輩へのヒアリング:院内で資格を持つ先輩に、実務と研修を両立させた際の具体的な工夫や体験談を聞く。
上司や病院の理解を得るためのコツ
認定看護管理者の資格取得を成功させるには、職場の協力が不可欠です。以下のコツを意識して相談してみましょう。
- 病院側のメリットを強調する:資格取得の目的が「個人のキャリアアップ」だけでなく、「病院の看護の質向上」や「組織全体のマネジメント強化」にどう貢献できるかを具体的に説明する。
- 現場への還元を伝える:研修で学んだ知識やスキルを、自部署や病院全体に積極的に還元していく姿勢を明確に示す。
- チームとしての意識を共有する:資格取得が自分一人の目標ではなく、チームや病院全体の課題解決につながるという意義を共有する。
この記事では、認定看護管理者の資格取得を目指す方が抱える疑問と不安を解消するため、資格の役割から、ファーストレベルからサードレベルまでの受講、認定審査の概要、そして費用例や期間、働きながら成功させるためのコツを解説しました。
認定看護管理者を目指すための具体的なステップが整理できたのではないでしょうか。あとは行動に移すだけです。まずは、資格取得に向けた第一歩を踏み出してみてはいかがでしょう。
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執筆者:ウェルミーマガジン編集部
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