病院での夜勤や忙しさから、ワークライフバランスを見直したいと考えている看護師の方も多いのではないでしょうか。老人ホームへの転職を検討するなかで、「仕事内容はどう違うのか」「スキルに影響はないのか」と不安に感じることもあるでしょう。
この記事では、老人ホームで働く看護師の仕事内容や施設の種類、1日の流れ、給与の特徴について具体的に解説します。
老人ホームで働く看護師の役割と仕事内容
まず施設の種類ごとの特徴を把握しておきましょう。ここでは、施設の違いと役割や仕事内容を整理します。
老人ホームの種類と特徴
老人ホームには複数の種類があり、施設ごとに入居者さんの要介護度やサービス内容、看護師の仕事内容や配置基準が異なります。ここでは、代表的な施設の特徴を整理します。
| 施設種類 | 特徴 | 看護師の関わり方 | 配置基準 |
|---|---|---|---|
| 介護付き有料老人ホーム | 要介護者を対象に施設内で介護サービスを提供 | 健康管理と医療処置を施設内で担当 | 入居者数に応じて必要数を配置(30人以下で1人以上、以降は入居者数に応じて増員) |
| 住宅型有料老人ホーム | 生活支援中心で介護は外部サービスを利用 | 訪問看護として個別に医療ケアを提供 | 配置義務なし(訪問看護で対応) |
| 特別養護老人ホーム(以下、特養) | 要介護3以上が対象の長期入所施設 | 慢性期管理や看取り対応を担う | 常勤換算で1人以上、入居者数に応じて必要数を配置 |
※出典1:e-Gov法令検索「指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準第二条」
※出典2:厚生労働省「医療・介護施設の機能分化と連携の推進(p11)」、「特定施設入居者生活介護(p2)」
なお、一般病院から高齢者施設への看護師の転職先としては、老人ホームとともに介護老人保健施設(老健)も検討されることが多いですが、老健は在宅復帰を目的とした施設であり、一般的に「老人ホーム」には含まれません。
老人ホームの看護師に求められる健康管理と役割
老人ホームでの看護師の主な役割は、入居者さんのバイタルチェックや服薬管理、経管栄養の対応といった日常的な健康管理です。病院のように次々と処置を行うのではなく、一人ひとりの疾患や生活リズムに合わせた継続的なケアが中心となります。入居者さんが自分らしく穏やかに過ごせるよう、心身の両面からサポートする役割を担います。
病院勤務とはここが違う!老人ホームの看護師ならではの特徴
病院と老人ホームの大きな違いの一つは、医療の優先度と判断の基準にあります。病院は治療が最優先ですが、老人ホームは「生活の場」であるため、医療行為は生活の一部として位置づけられます。また、緊急時の対応を除き、高度な医療機器を使用する機会は少なく、インスリン注射や褥瘡処置、吸引などの処置が主な医療業務となります。
※出典:厚生労働省「医療・介護施設の機能分化と連携の推進(p15)」、「高齢者施設・障害者施設等における医療参考資料(p25)」
医師不在時の判断と多職種連携のポイント
介護付き有料老人ホームや、住宅型有料老人ホームなどでは医師が常駐していないため、入居者さんの体調変化が生じた際に、受診の必要性や緊急性を判断するのは看護師の役割になります。その際、介護職員やケアマネジャーと情報を共有し、チームで方針を決定します。介護職と専門性を尊重し合いながら連携することが、円滑な業務遂行につながります。
老人ホーム看護師の1日のスケジュール例
施設の種類や勤務体制によって1日の流れは異なりますが、ここでは、介護付き有料老人ホームを例にタイムスケジュールと夜間対応を紹介します。
日勤帯の具体的なタイムスケジュール
多くの施設では、朝の申し送りから始まり、午前のバイタルチェックや医療処置、昼食時の配薬や状態観察、午後の記録作成という流れになります。
介護付き有料老人ホームにおける1日のタイムスケジュール例
| 時間 | 主な業務内容 |
|---|---|
| 09:00 | 出勤、夜勤スタッフからの申し送り、入居者さんの状態確認 |
| 10:00 | バイタルチェック、インスリン注射、軟膏処置、入浴前後の皮膚観察 |
| 12:00 | 昼食前の配薬準備、服薬介助、経管栄養の対応、食事時の状態観察 |
| 13:00 | 休憩 |
| 14:00 | 嘱託医の回診対応、処置の実施、記録入力、多職種カンファレンス |
| 16:00 | 入居者さんの状態再確認、必要時の医師への報告・指示受け |
| 17:00 | 夕食前の配薬準備、記録整理、申し送り準備 |
| 18:00 | 申し送り、退勤 |
※一例であり、施設の種類や入居者さんの状態、勤務体制によって業務内容や時間帯は異なります。
夜勤はある?オンコール対応との違い
特養や介護付き有料老人ホームでは、看護師の夜勤配置が義務付けられていないため、夜間はオンコール体制(待機)で対応するのが一般的です。ただし、施設の方針や入居者さんの状態によっては、夜勤体制をとっている場合もあります。
オンコールでは、夜間対応を行う介護職員からの連絡を受け、電話で対応方法を伝えます。必要に応じて施設へ駆けつけて対応する場合もあります。手当が支給される場合もありますが、金額や支給条件は施設によって大きく異なります。実際の負担感は呼び出しの頻度や対応内容によって左右されるため、求人情報や面接時に確認しておくことが大切です。
※出典:厚生労働省「高齢者施設・障害者施設等における医療参考資料(p37)」
看護師などの求人情報はこちら老人ホームの看護師の給与相場は?
転職を検討するうえで気になる給与水準について、看護師全体との違いも含めて整理します。
介護施設の看護師と看護師全体の年収比較
老人ホームで働く看護師の給与水準は単独の統計が限られるため、参考値として、看護師全体の賃金データと介護施設に勤務する看護職員のデータを比較します。厚生労働省の「令和6年賃金構造基本統計調査」によると、看護師全体の平均月収は約36.3万円で、年収に換算すると約519万円とされています。
一方、介護施設に勤務する看護職員(常勤)は「令和6年度介護従事者処遇状況等調査結果」によると月収は約32.6万円、年収では約461万円となり、看護師全体と比較するとやや低水準となる傾向があります。
看護師全体と介護施設勤務の給与比較
| 区分 | 月収 | 年収目安 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 看護師全体 | 約36.3万円 | 約519万円 | 夜勤や急性期手当を含む |
| 介護施設の看護職員 | 約32.6万円 | 約461万円 | 夜勤が少なく手当が抑えられる傾向 |
※本表は全国平均のデータをもとに作成しています。地域や施設の種類、勤務形態によって給与には差があります。看護師全体と介護施設の看護職員の傾向を把握するための参考としてご覧ください。
※出典:厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」、「令和6年度介護従事者処遇状況等調査結果(p126)」
老人ホーム勤務のメリットとデメリット
環境を変える際には、働きやすさだけでなく負担になりやすい点も把握しておく必要があります。ここでは、病院勤務との違いを踏まえて整理します。
| 比較項目 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| 働き方 | 日勤メインで残業が少ない傾向、休みが固定しやすい | オンコール対応による精神的な負担が発生する場合もある |
| 業務内容 | 一人ひとりの入居者さんと長く深く関わることができる アセスメント能力や看取りのスキルを深められる |
病院特有の手技に触れる機会が減る |
| 人間関係 | 介護職との連携を通じて多角的な視点が身につく | 看護師の数が少なく、現場で判断に迷うことがある |
生活に寄り添う看護と日勤中心で働けるメリット
最大の魅力は、入居者さんの「生活」に寄り添えることです。病院では退院までの短い期間の関わりですが、施設では数年単位でその方の人生に伴走できます。また、急患対応がない限り、スケジュール通りに業務が進みやすく、子育て中の方やプライベートを重視したい方などにとって働きやすい環境です。
処置スキルを活用する機会の減少
ルート確保や挿管介助のような手技を実施する機会は限られるため、将来的に急性期病院へ戻ることを考えている場合は注意が必要です。一方で、入居者さんの疾患をトータルに診るアセスメント能力や看取りのスキルを深められるという新たな側面もあります。
自分に合う老人ホームを見極めるポイント
後悔しない転職のために、自分のキャリアプランや適性と、施設の環境がマッチしているかを確認しておきましょう。
施設看護師に向いている人とは?
最新の医療技術を追い求めるよりも、入居者さんとのコミュニケーションを楽しめる方や、ゆったりとした時間の流れの中でケアをしたい方に適しています。また、周囲の状況を見て柔軟に動ける「調整役」が得意な方も、老人ホームで重宝されます。
復職や未経験でも安心して働ける環境とは
ブランクがある方は、研修制度が整っている大手運営の施設や、複数の看護師が配置されている施設を選ぶと安心です。バイタルチェックや服薬管理といった看護の基礎があれば、十分に即戦力として活躍できます。
施設見学で確認しておきたいポイント
見学時には、看護師の配置人数だけでなく「介護職員との会話の雰囲気」や「ナースコールの頻度」を確認しましょう。また、オンコールの実働頻度や、緊急時の病院搬送のルールが明確になっているかを確認することで、入職後のギャップを防ぐことができます。
この記事では、老人ホームで働く看護師の仕事内容やスケジュール、給与、メリット・デメリットについて解説しました。日勤メインで働きながら、一人ひとりに寄り添う看護を実践できるのは、施設勤務ならではの大きな魅力です。まずは気になる施設の求人情報をチェックし、実際の現場の雰囲気を感じることから始めてみましょう。
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執筆者:ウェルミーマガジン編集部
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