保育所や幼稚園、認定こども園など、子どもに関わる施設が増える中で「自分はどの資格でどこまで働けるのか」と不安を感じている方も多いのではないでしょうか。特に求人票で見かける保育教諭という言葉は、保育士と何が違うのか混乱しがちです。
この記事では、保育教諭と保育士の定義や役割・資格要件・給与の違い、向き不向きを判断するためのポイント、そして効率的に免許・資格を取得できる特例制度などについて解説します。
保育教諭と保育士の違い
保育教諭と保育士は、どちらも子どもの成長を支える専門職ですが、基本的な定義や働く場所に違いがあります。特に認定こども園の普及に伴い、保育教諭という役割の重要性は高いといえます。ここでは、それぞれの基本的な定義や、保育教諭が求められる理由、そして給与の違いについて解説します。
保育教諭とは何か
保育教諭とは、主に幼保連携型認定こども園で働く職員です。大きな特徴は、児童福祉法に基づく保育士資格と、学校教育法に基づく幼稚園教諭免許の両方を併せ持っている点にあります。0歳児から就学前までの子どもに対し、保育と教育を一体的に提供する専門家として位置づけられています。
※出典:こども家庭庁「認定こども園概要」
保育士との違い
保育士は主に保育所などで子どもの生活を支え、保護者に対して保育に関する指導を行うことを目的としています。一方、保育教諭は認定こども園で教育と保育の両方を担います。特に、幼保連携型認定こども園では、原則として保育教諭の配置が必要とされています。施設の形態や対応する子どもの年齢によって、求められる資格の組み合わせも異なる点に注意が必要です。
※出典1:e-Gov「児童福祉法(第十八条の四)」
※出典2:こども家庭庁「認定こども園概要」
認定こども園で保育教諭が求められる理由
近年、保護者の就労状況に関わらず、すべての子どもに質の高い幼児教育と保育を提供するため、認定こども園の数が増加傾向にあります。認定こども園では、幼稚園の機能と保育所の機能を併せ持つため、両方の専門知識を備えた保育教諭の存在が重要となっています。
ただし、認定こども園の種類によっては、保育教諭でなくても、いずれか一方の資格で勤務できる場合があります。たとえば、幼稚園型認定こども園では、満3歳以上の子どもを担当する場合に、幼稚園教諭免許のみで対応できるケースがあります。
※出典:こども家庭庁「認定こども園4類型の比較(p1)」
データで見る給与の違い
前提として、厚生労働省の調査では、保育教諭と幼稚園教諭が区分されていないため、以下の給与データは「保育教諭・幼稚園教諭」を含む参考値として記載しています。
この調査によると、認定こども園で働く保育教諭の平均給与は、一般的な保育所の保育士と比較して大きな差はないものの、年収に換算するとやや高い傾向にあります。幼稚園教諭免許を併せ持つことによる手当や、処遇改善加算などの影響も考えられますが、勤務先によって変動するため、個別の求人票を確認することが重要です。
| 比較項目 | 保育士 | 保育教諭・幼稚園教諭 |
|---|---|---|
| 必要資格 | 保育士資格 | 保育士資格 + 幼稚園教諭免許 |
| 主な勤務先 | 保育所(認可・認可外) | 認定こども園 |
| 平均月収(目安) | 約27.7万円 | 約27.6万円 |
| 年間賞与(目安) | 約74.1万円 | 約80.8万円 |
※出典:厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種」
※あくまで平均値であり、地域や勤務先の規定によって大きく異なります。
保育士から保育教諭になるメリットと注意点
すでに保育士として働いている方が保育教諭を目指す場合、どのような変化があるのでしょうか。資格を増やすことでキャリアの幅が広がる一方で、業務範囲に変化が生じることも理解しておく必要があります。
キャリアの選択肢が広がる
保育士資格と幼稚園教諭免許の両方を持つことで、国内にある多くの未就学児向け施設への応募が可能になります。認定こども園の数は年々増加傾向にあり、両資格保有者は活躍できる職場の選択肢が広がる可能性があります。ライフステージの変化に合わせて、教育重視の園や保育重視の園を選び直すことができる自由度は魅力に感じられるでしょう。
幼稚園教諭のスキルが加わり専門性が高まる
保育教諭は、生活習慣の自立を助ける保育だけでなく、小学校教育への円滑な接続を目指した幼児教育も担います。言葉、表現、人間関係などの領域について、教育的なねらいを持って子どもと関わるスキルが向上します。これにより、一人の保育者としての専門性が深まり、保護者への助言や指導の質も高まるでしょう。
追加資格の取得や業務の幅広さに留意が必要
一方で、保育士から保育教諭を目指す場合、原則として幼稚園教諭免許の取得が必要となるため、学習にかかる時間や費用が発生します。また、認定こども園では教育と保育の両方を担うことから、子どもへの関わり方や指導計画の立て方など、多面的な視点が求められます。業務の内容や量は施設によって異なりますが、幅広い役割に対応する必要がある点にも留意しておきましょう。
保育士・幼稚園教諭の求人情報はこちら幼稚園教諭免許を効率的に取得する特例制度
保育士資格のみを持つ方が保育教諭を目指す際、最大の壁となるのが幼稚園教諭免許の取得です。しかし、現在は実務経験を持つ保育士を対象とした、単位免除を受けられる特例制度が用意されています。この制度の期限や利用条件などについて解説します。
令和11年度末まで延長された特例制度の概要
保育教諭の配置を促進するため、保育士資格を持つ人が幼稚園教諭免許を取得しやすくする特例制度が実施されています。当初の期限から延長され、現在は令和11年度末まで利用可能です。この制度を利用すると、大学などでの修得単位数が軽減され、効率的に免許取得が目指せます。なお、幼稚園教諭免許のみを持つ人が保育士資格を取得しやすくする特例制度も、同様に令和11年度末まで延長されています。
※出典:文部科学省「幼稚園教諭の普通免許状に係る所要資格の期限付き特例」
特例制度の利用条件と免許取得までの流れ
特例制度を利用するには、保育士としての実務経験(原則3年以上かつ4,320時間以上)が必要です。この要件を満たせば、指定された大学などの通信教育などで8単位を取得するだけで済みます。その後、各都道府県の教育委員会に申請することで幼稚園教諭一種または二種免許が授与される流れとなります。
※出典:文部科学省「幼稚園教諭の普通免許状に係る所要資格の期限付き特例」
どちらが自分に向いているか判断するためのポイント
保育教諭と保育士、どちらの道を進むべきか迷ったときは、自分の得意分野や将来のビジョンに照らし合わせて考えることが大切です。ここでは、適性を判断するためのポイントについて解説します。
自分が重視したい関わり方から適性を考える
乳児期の子どもに関わり、日々の生活を丁寧に支えることにやりがいを感じるなら、保育所を中心とした保育士の働き方が向いていると考えられます。一方で、工作や音楽、運動などの活動を通じて子どもの学びや成長を引き出したいという意欲が強い方は、保育教諭としての働き方に満足感を得やすいでしょう。
なお、認定こども園でも0歳児から受け入れている場合があり、保育教諭も乳児保育に関わることがあります。そのため、実際の業務内容は施設の方針や担当クラスによって異なる点に留意が必要です。
多様な職員と連携して働く現場で求められる適性
幼稚園出身の職員と保育所出身の職員が一緒に働くケースも多く、これまでの考え方や保育観の違いに触れる場面もあるでしょう。そのため、異なる立場や価値観を尊重しながら連携できる柔軟なコミュニケーション力は、こうした環境で働くうえで重要な適性といえます。
将来のキャリアプランに合わせた職種選び
地域によっては、教育と保育の両面から子どもをサポートできる認定こども園への移行が進んでいます。将来的に主任や園長といった管理職を目指す場合、両方の免許・資格を持つ保育教諭になっておく方が、キャリアの選択肢が広がる可能性があります。今の自分ができることだけでなく、長期的な目線を持って選択するとよいでしょう。
理想のキャリアを実現するために確認すべきこと
進むべき道が見えてきたら、次は情報収集を進めていきましょう。理想の職場を見極めるためにチェックしておくべきポイントを紹介します。
希望する施設が求める資格要件をチェック
同じ認定こども園でも、幼保連携型、幼稚園型、保育所型などの種類によって、求められる資格要件は異なります。求人票に保育士資格のみ可と記載されている場合でも、施設の方針によっては、入職後に幼稚園教諭免許の取得を推奨されたり、将来的な取得を前提とした配置が検討されたりするケースもあるでしょう。
ただし、こうした条件や運用は施設ごとに異なるため、自分の現在の保有資格でどのような業務や役割に就けるのかは、事前に求人票や採用担当者へ確認しておくことが重要です。
※出典:こども家庭庁「認定こども園4類型の比較(p1)」
公的な補助金や資格取得支援制度の有無
持っていない資格や免許を取得しようとする際には、まず国や自治体による補助制度の有無を確認しておくと安心です。資格取得に関する費用の一部助成や、条件を満たすことで利用できる支援制度が設けられている場合があります。
また、施設によっては、資格取得に関する費用補助や学習時間への配慮などを行っているケースもあるため、事前に具体的な支援内容を確認しておくことが重要です。
ライフステージに合わせた柔軟な働き方の検討
保育教諭として働く場合、教育活動への注力が必要な分、持ち帰り仕事や残業の発生しやすさは考慮すべきでしょう。ICTツールの導入で事務負担を軽減しているか、有給休暇の取得率はどの程度かなど、働きやすさの指標も併せて確認することが大切です。長く働き続けるためには、専門性だけでなく労働環境の質も無視できません。
この記事では、保育教諭と保育士の定義や役割・資格要件・給与の違いから、向き不向きを判断するためのポイント、効率的に免許・資格を取得できる特例制度まで解説しました。保育士資格に加え、幼稚園教諭免許を持つ保育教諭は、認定こども園の増加に伴い、今後も需要が見込まれる分野の一つです。この記事を参考に、自分に合ったキャリアパスを見つけましょう。
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執筆者:ウェルミーマガジン編集部
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