タスクシフティングとは?医師の働き方改革で変わる現場の役割を解説

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タスクシフティングとは?医師の働き方改革で変わる現場の役割を解説

タスクシフティングとは、医師や特定の専門職が担う業務を他の職種に移管し、現場の役割分担や働き方を見直す取り組みです。しかし、「自分の業務負担が増えるのではないか」「責任の所在はどうなるのか」と不安を感じる方も少なくありません。この記事では、タスクシフティングの定義や背景、現場の役割を職種別にわかりやすく解説します。

タスクシフティングとは?定義とタスクシェアリングとの違い

タスクシフティングは、医療・介護の質を維持しながら効率化を図るための取り組みです。ここでは、タスクシフティングの意味と、よく似た言葉であるタスクシェアリングとの違いを整理します。

タスクシフティングの基本的な定義

タスクシフティング(業務移管)とは、医師をはじめとする特定の職種が行う業務の一部を、他の職種に移管することです。厚生労働省の資料では、医師の負担を軽減し、各職種が専門性を発揮できる環境を整えることが目的として示されています。これにより、医師は診断や治療方針の決定など、医師の専門性が特に求められる業務に集中しやすくなります。

※出典:厚生労働省「医師の働き方改革を進めるためのタスク・シフト/シェアの推進に関する検討会 議論の整理(p3)

タスクシェアリング(業務共有)との違い

タスクシフティングは業務の移管を指します。一方、タスクシェアリングは、1つの業務を複数の職種やチームで分担し、負担を分散することを指します。医療現場では、業務の内容に応じてタスクシフティングとタスクシェアリングを組み合わせて運用されるケースがあります。

項目 タスクシフティング タスクシェアリング
概念 業務の移管(シフト) 業務の分担(シェア)
目的 専門性の発揮、役割分担の最適化 業務負担の分散、労働時間の短縮
主な例 医師から看護師への特定行為の移管 複数人の看護師による夜勤業務の分担

※出典:公益社団法人日本看護協会「看護の専門性の発揮に資するタスク・シフト/シェアに関するガイドライン及び活用ガイド(p7)

なぜ今注目されている?タスクシフティングが必要な背景

タスクシフティングが推進される背景には、日本の医療・介護現場が抱える人手不足や業務負担の増加があります。特に、働き方に関連する法改正が推進のきっかけとなっています。

医師の働き方改革と時間外労働の上限規制

2024年4月から、医師に対しても時間外労働の上限規制が適用されました。いわゆる「医師の働き方改革」です。長時間労働が課題となっている医師の健康維持や、医療安全の確保には、医師が担う事務作業や一部の医行為について、他職種と分担する体制づくりが重要になっています。医師の働き方改革を進める施策の1つとして、タスクシフティングが推進されています

※出典:厚生労働省「医師の働き方改革

医療・介護現場の人手不足と業務効率化の必要性

少子高齢化により、医療・介護の需要は高まる一方で、支え手となる現役世代は減少しています。限られた人員で必要な医療・介護サービスを提供するには、従来の職域を見直し、役割分担を整理することが重要です。

たとえば、専門職でなくても対応できる業務を整理したり、一定の研修を受けた職種が担える業務を明確にしたりすることで、専門職が本来の業務に集中しやすくなります。各職種の役割を整理するタスクシフティングは、業務の効率化や現場の生産性向上につながります。

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職種別に見るタスクシフティングの役割と実施内容

こうした背景を踏まえ、どのような業務が移管・分担の対象になっているのか、医療機関や介護施設での事例を紹介します。

看護師への業務移管:特定行為研修修了者の活用

タスクシフティングの代表的な例が、従来は医師が担っていた業務の看護師への移管です。厚生労働省によると、特定行為とは、診療の補助のうち、看護師が手順書に基づいて行う場合に、高度な知識や判断力が特に必要とされる行為を指します。対象となる特定行為は38行為です。

特定行為研修を修了した看護師は、医師があらかじめ作成した手順書に基づき、患者さんの状態が手順書に示された範囲内にあることを確認したうえで、修了した区分の特定行為に限り実施できます。これにより、これまで医師が行っていた処置の一部を看護師が担えるようになり、患者さんの状態変化に迅速に対応しやすくなるだけでなく、医師の業務負担軽減にもつながります。

※出典:厚生労働省「勤務環境改善に向けた好事例集(p10)」、「特定行為とは

コメディカルへの業務移管:薬剤師や診療放射線技師などの活用

薬剤師については、従来は医師が中心に行っていた薬物療法に関する説明や処方提案、糖尿病の患者さんへの自己注射指導などが、タスクシフティングの例として挙げられます。また、診療放射線技師、臨床検査技師、臨床工学技士についても、法令改正により、一定の研修や条件のもとで担える業務範囲が拡大しています。

たとえば、診療放射線技師は造影剤を使用した検査などに関連する業務、臨床検査技師は採血や検査に関連する業務、臨床工学技士は生命維持管理装置などに関連する業務が、タスクシフティングの対象として整理されています。各職種が専門知識を活かして役割を担うことで、これまで医師に集中していた業務が分散され、医療の質の向上につながるとされています。

※出典:厚生労働省「医師の働き方改革を進めるためのタスク・シフティングに関するヒアリング(p4)」、「医師の働き方改革を進めるためのタスク・シフト/シェアの推進に関する検討会 議論の整理(p11〜12)」、「勤務環境改善に向けた好事例集(p10)

介護職員・看護補助者への業務移管:医療・介護現場での連携

タスクシフティングは、医療機関だけでなく、介護施設や在宅の現場にも関係します。介護施設や在宅の現場では、医師や看護師などとの連携のもとで、一部の業務を介護職員が担える制度が整備されています。

たとえば、たんの吸引や経管栄養は本来医行為ですが、介護福祉士や一定の研修を修了した介護職員などは、対象となる介護施設や在宅などで、医師の指示や実地研修の修了、本人やご家族の同意などの条件を満たしたうえで実施できます。

また、医療機関では、これまで看護師が担うことも多かった清掃、食事の配膳、移送、夜勤帯の見守りや体位変換などを看護補助者が担うことで、看護師がより専門性を発揮しやすい体制を整える取り組みが進められています。

※出典:厚生労働省「介護職員等によるたんの吸引等の実施のための制度について(社会福祉士及び介護福祉士法)」、「勤務環境改善に向けた好事例集(p9)

タスクシフティング導入のメリットと課題・注意点

タスクシフティングにはメリットがある一方で、現場レベルでは解決すべき課題もあります。メリットと課題・注意点を整理します。

区分 メリット 課題・注意点
業務負担 専門職の負担軽減と残業削減 移管先職種の業務量増加
専門性・責任 各職種の専門性とスキルの向上 責任範囲や法的リスクの確認が必要
ケアの質 専門職が本来の業務に集中できることによるケアの質の向上 業務範囲や判断基準の共有不足による安全面のリスク
導入・連携体制 多職種連携の強化とチームの一体感 教育に必要な時間・費用の確保

医療・ケアの質向上と労働時間の短縮

タスクシフティングのメリットの1つは、患者さんや利用者さんに対するケアの質の向上です。医師や看護師などの専門職が、本来の専門性が求められる業務に集中できる環境が整うことで、より充実した医療・ケアの提供につながります。

また、業務が他職種に分散されると、職場全体における長時間労働の抑制や、職員の心身の負担軽減にもつながります。さらに、各職種が専門性を発揮する場面が増えることで、スキルアップや多職種連携の強化にもつながります。

移管先の負担増と安全確保・責任範囲の明確化

タスクシフティングの課題として、移管を受ける側の負担増が挙げられます。医師の業務負担が軽減される一方で、看護師やコメディカル、介護職員の業務量が過度に増えると、職場全体の負担軽減にはつながりにくくなります。

また、業務を移管する際は、医師の指示や手順書に基づいて安全に実施できる体制づくりが重要です。業務範囲や判断基準の共有が不足していると安全面のリスクにつながるため、万が一トラブルが発生した際の責任の所在をあらかじめ明確にしておく必要もあります。こうした課題に対応するためには、安全に実施するための教育やマニュアルを整備し、組織全体でバックアップする体制を築くことが求められます。

タスクシフティングを円滑に進めるためのポイント

タスクシフティングを安全に進めるには、制度やマニュアルだけでなく、現場で働く一人ひとりの理解と行動も重要です。ここでは、現場のスタッフが押さえておきたい実践のポイントを紹介します。

多職種連携をスムーズにするコミュニケーション

業務を職種間で分担する場面が増えると、日々の申し送りや記録など、これまで以上に情報共有が重要になります。医師、看護師、薬剤師、介護職員がそれぞれの立場から意見を出し合い、尊重し合う姿勢が求められます。小さな状態変化でも報告・連絡・相談を徹底し、お互いの専門領域に対する理解を深めることで、タスクシフティングを円滑に進めやすくなります。

スキルアップと専門性の再確認

タスクシフティングは、自分の職域や専門性を広げるきっかけにもなります。新しい知識や技術の習得は、専門職としての価値を高め、キャリアの拡大にもつながります。今の職場でどのようなタスクシフティングが進んでいるのか、自分の職種で担える業務と担えない業務の境界はどこかを確認し、必要に応じて、研修の受講や資格取得も検討しましょう。

この記事では、タスクシフティングの定義と背景、具体的な事例や課題について解説しました。タスクシフティングは、医療・介護現場に関わる職種が専門性を発揮し、無理のない体制で働き続けるための取り組みです。自分の職種で担える業務と担えない業務を確認しながら、チームで安全かつ適切なケアを提供できる体制づくりにつなげていきましょう。

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ウェルミーマガジン編集部

執筆者:ウェルミーマガジン編集部

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