入職して間もない新人看護師にとって、勤務開始時の「情報収集」は最初の大きな壁です。受け持ち患者さんの状態を把握しようとするあまり、電子カルテのどこを確認すればよいかわからず、情報収集に時間がかかる方も多いのではないでしょうか。
情報収集は、単なるデータ集めではなく、安全なケアを提供するための準備です。この記事では、新人看護師が短時間で的確に情報を集めるための具体的なコツと、重症度・状態変化・当日の予定をもとに優先順位を付ける方法を解説します。
新人看護師が情報収集を効率化すべき理由
情報収集を効率化することは、単に時間を節約するだけではありません。患者さんの安全を守り、患者さんや多職種と円滑に関わるためにも重要です。効率化の目的を理解することで、優先して確認すべき情報が整理しやすくなります。
医療事故やインシデントを未然に防ぐため
看護における情報収集の重要な目的の1つは、患者さんの安全を守ることです。前勤務帯からのバイタルサインや症状の変化、最新の検査結果、医師の指示変更を把握できていないと、必要な観察や処置の遅れ、指示の見落としにつながるおそれがあります。
医療事故を防ぐためには、患者さんの状態や指示内容を正確に把握し、事故につながる可能性のある変化や問題点を早期に捉えることが重要です。厚生労働省の医療安全推進総合対策でも、事故事例などの情報を活用し、事故につながる可能性のある問題点を把握して安全対策を講じる必要性が示されています。
※出典:厚生労働省「医療安全推進総合対策~医療事故を未然に防止するために~」
患者さんの安心感と多職種との円滑な連携につなげるため
的確な情報収集は、患者さんの安心感や信頼につながります。患者さんの前で電子カルテばかりを見たり、すでに確認されている内容を何度も質問したりすると、「この看護師さんは私のことをわかっていない」と不安を感じさせる可能性があります。
事前に必要な情報を把握しておくことで、患者さんとの会話やケアに落ち着いて対応しやすくなります。また、患者さんの状態を整理して医師やリハビリ職などへ伝えることで、多職種間での円滑な情報共有にもつながります。
新人看護師が押さえておきたい情報収集の基本項目
効率的な情報収集のために、確認しておきたい基本項目を整理しました。
| カテゴリー | 主な確認項目 | チェックのポイント |
|---|---|---|
| 疾患・身体状態 | 現病歴、既往歴、バイタルサイン | 入院の経緯と、直近のバイタルサインや症状の推移を確認する |
| 治療・指示 | 点滴・内服の指示、検査・処置の予定 | 新しく開始・変更・中止された指示や、食事・行動などの制限を確認する |
| 看護ケア | 看護計画、ADL(日常生活動作) | 食事や排泄の介助レベル、安静度の変更を確認する |
| 社会的背景 | 家族構成、生活環境、退院後の希望 | キーパーソンや支援体制、退院後の生活上の課題を確認する |
疾患の経過と現在の状態
まず把握すべきは、患者さんがなぜ入院し、現在どのような状態にあるかです。現病歴や既往歴を確認した上で、バイタルサインや症状が前勤務帯からどのように変化しているかを確認します。
たとえば、高血圧の患者さんでは、現在の血圧だけでなく、前勤務帯から現在までの推移や症状、内服状況などを併せて確認します。数値を単独で見るのではなく、患者さんの状態や治療経過と関連付けて捉えることが大切です。
治療の方向性と医師の指示
治療方針や医師の指示は、その日の看護業務を組み立てる上で欠かせない情報です。点滴や内服の変更、採血や画像検査の予定、処置の有無、食事制限などを確認しましょう。
併せて、指示の開始・変更・中止の有無を確認し、患者さんの状態や治療の進行に応じて、どのような観察やケアが必要かを整理します。不明点や判断に迷う指示がある場合は、自己判断で進めず、医師や先輩看護師へ確認することが大切です。
看護計画とケアのポイント
看護計画やADL(日常生活動作)を確認し、その日に必要なケアや観察項目を把握します。食事形態、移動方法、排泄や清潔ケアの介助レベル、安静度などは、患者さんの安全を守り、適切なケアを行うために欠かせない情報です。
また、看護計画の目標や継続して評価する項目を確認しておくと、勤務中にどのような変化を観察すべきかが明確になります。患者さんの希望や不安、意欲なども把握し、身体面だけでなく心理面のニーズにも配慮しましょう。
家族構成や退院後の生活などの社会的背景
患者さんに必要な看護を考えるためには、身体状態だけでなく、家族構成や生活環境、退院後の希望なども確認します。たとえば、退院後に同居するご家族がいるか、日常生活を支援できる人がいるかによって、必要な退院支援は異なります。
キーパーソンや住環境、介護サービスの利用状況、患者さん本人とご家族の意向などを把握し、支援に必要な範囲で多職種と共有することで、退院後の生活を見据えた看護につなげられます。ただし、社会的背景にはプライバシーに関わる情報も含まれるため、看護に必要な範囲で確認し、適切に取り扱うことが大切です。
新人看護師が情報収集を進める流れ
情報収集を短時間で終えるには、確認すべき項目を明確にし、毎回同じ順番で確認することが大切です。ここでは、事前のカルテ確認から、申し送りやベッドサイドで不足する情報を補うまでの一連の流れを紹介します。
- ステップ1:重症度と当日の予定を確認する
- ステップ2:患者さんの状態と継続して観察すべき点を把握する
- ステップ3:指示変更や時間指定のある検査・処置・内服を整理する
- 情報収集後:申し送りと患者さんへの確認で情報を補う
受け持ち患者さんの人数や重症度、勤務先のルールによって必要な時間は異なるため、時間の短縮だけを優先せず、安全な看護に必要な情報を漏れなく確認しましょう。
ステップ1:重症度と当日の予定を確認する
情報収集では、「患者さんの生命や安全に関わる情報」「状態変化がみられる情報」「実施時刻が決まっている予定」の順に優先度を考えます。
- 急変リスクや状態変化の有無
- 手術・検査・処置などの予定
- 食事・内服・行動などの制限
予定がある場合は、実施時刻や事前指示も併せて整理しましょう。安定している患者さんについても確認を省略せず、前勤務帯からの変化や新しい指示の有無を確認します。優先順位に迷った場合は、早めに先輩看護師へ相談することが大切です。
ステップ2:患者さんの状態と継続して観察すべき点を把握する
次に、直近の看護記録を確認し、アセスメントや看護計画、経過記録などから、患者さんの現在の状態や継続して観察すべき点を把握します。先に確認しておくことで、その後にバイタルサインや検査結果を見る目的が明確になり、必要な情報を探しやすくなります。記録方法は勤務先によって異なるため、最新のバイタルサインや検査結果も併せて確認しましょう。
担当する診療科でよくみられる疾患の経過や観察項目を理解しておくと、看護記録や検査結果から必要な情報を見つけやすくなります。
ステップ3:指示変更や時間指定のある検査・処置・内服を整理する
患者さんの状態と継続して観察すべき点を把握したら、新しく開始・変更・中止された指示と、実施時刻が決まっている検査・処置・内服を確認します。点滴、採血、検査、手術、内服、食事制限などを時系列で整理しましょう。
予定・指示を時系列で整理する例
| 時間帯・タイミング | 予定・指示 | 確認事項 |
|---|---|---|
| 朝食前 | 採血、血糖測定 | 実施時刻や食事・内服に関する指示を確認する |
| 10:00 | CT検査 | 移動方法や検査前後の指示を確認する |
| 昼食後 | 内服変更 | 新しく開始・変更・中止された薬剤を確認する |
※実際に確認する内容や手順は、検査・処置の種類や勤務先のルールによって異なります。
メモする場合は電子カルテの内容をすべて書き写すのではなく、「10:00 CT検査」「昼食後に内服変更」など、行動につながる情報を簡潔に記載します。指示の内容や実施方法に不明点がある場合は、自己判断で進めず、医師や先輩看護師へ確認してください。
情報収集後:不足する情報を申し送りと患者さんへの確認で補う
事前の電子カルテ確認だけでは把握しにくい患者さんの反応や、前勤務帯でみられた変化については、申し送りやリーダー看護師からの情報共有で補います。特に、前勤務帯からの状態変化や、継続して観察すべき点を確認しましょう。
勤務開始後にベッドサイドを訪れた際は、意識状態や呼吸状態、点滴ルートなどを自分の目で確認します。必要に応じて、「昨晩は眠れましたか」「痛みはありませんか」などと尋ね、患者さんの症状や体調も確認しましょう。
電子カルテに記録された情報と、患者さんの訴えや現在の状態を照らし合わせることで、より安全で個別性に配慮した看護につながります。記録と現在の状態に違いがある場合や、不明点がある場合は、速やかに先輩看護師へ報告・相談してください。
看護師・准看護師の求人情報はこちら新人看護師によくある情報収集の悩みと解決策
情報収集に慣れないうちは、確認する範囲がわからなかったり、勤務開始時の情報収集に時間がかかったりすることがあります。ここでは、新人看護師が抱えやすい悩みと対処法を解説します。
どこまで情報を確認すればよいかわからない場合
情報を漏らさないように意識するあまり、過去の記録を最初からすべて読み返すと、現在の看護に必要な情報が見えにくくなります。まずは、患者さんの現在の状態、前勤務帯からの変化、当日の指示・予定、安全上の注意点を優先して確認しましょう。
どの期間までさかのぼるべきかは、患者さんの状態や入院経過によって異なります。判断に迷う場合は、「この患者さんについて、まず何を確認すればよいですか」と先輩看護師へ相談し、必要な情報の範囲を具体的に教えてもらうことが大切です。
情報収集のための前残業が常態化している場合
情報収集に時間がかかり、始業前の対応が習慣になっている場合は、その時間が労働時間に当たる可能性があります。勤務先から明示的に求められている場合だけでなく、実質的に行わなければ業務を開始できず、黙示の指示があると判断される場合も対象になり得ます。
労働時間に当たるかどうかは、使用者の指揮命令下に置かれていたかをもとに、個別の状況に応じて判断されます。使用者には、始業・終業時刻を確認・記録し、労働時間を適正に把握する責務があるため、前残業が続いている場合は、勤務実態を整理した上で上司や勤務先の相談窓口へ確認しましょう。
※出典:厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン(p1~2)」
この記事では、新人看護師が効率的に情報収集を行うためのコツや基本項目について解説しました。情報収集に時間がかかる場合は、重症度や当日の予定を先に確認し、患者さんの状態や継続して観察すべき点、指示変更や時間指定のある検査・処置・内服という順番で整理してみましょう。確認する項目と順番を固定すると、必要な情報を探しやすくなります。迷った点は先輩看護師へ相談しながら、自分に合った情報収集の方法を身に付けていきましょう。
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執筆者:ウェルミーマガジン編集部
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