看護師として働く中で、同僚の離職や増え続ける業務量に「このまま今の職場で働き続けて大丈夫なのだろうか」と不安を抱く方もいるでしょう。看護師不足は、患者さんに対するケアの質や看護師自身の健康にも大きな影響を及ぼします。
この記事では、データに基づいた看護師不足の現状と原因、適切な職場の選び方などについて解説します。
データから見る看護師不足の現状
日本の医療現場において、看護師不足は依然として深刻な課題です。まずは客観的なデータから、現状を正しく把握しましょう。
有効求人倍率からわかる看護師不足の深刻さ
厚生労働省が発表した令和7年11月の統計によると、看護職員(看護師・保健師・助産師)の有効求人倍率は2.14倍に達し、全産業平均の1.12倍と比較して高い水準で推移しています。一人の看護師に対して2件以上の求人がある「売り手市場」を表している一方で、慢性的な看護師不足を示すデータともいえます。
※出典:厚生労働省「一般職業紹介状況(令和7年11月分)について(参考統計表7-1)」
2025年問題で懸念される看護師不足
「2025年問題」を経て、団塊世代が75歳以上の後期高齢者となった現在、看護師の需要がさらに高まると予測されています。厚生労働省による試算では、2025年時点で最大約27万人の看護職員が不足する可能性があると指摘されてきました。このように、需要に対し供給が追いつかない状況は、今後も続くと見込まれています。
※出典:厚生労働省「医療従事者の需給に関する検討会 看護職員需給分科会 中間とりまとめ(p10)」
看護師不足が続く原因
看護師の就業者数は増加傾向にありますが、それでも現場の看護師不足が解消されない背景には、複数の要因があると考えられます。
少子高齢化による医療・看護ニーズの増加
日本では少子高齢化が進んでおり、医療や看護の支援を必要とする高齢者の数が増えています。一方で、今後の医療を支える現役世代の人口は減少していくと見込まれています。
そのため、看護の現場では患者さんの重症度やケアの内容が複雑化する場面も増えており、看護師に求められる役割はより多様になっています。看護師数の確保に加え、業務効率化やチーム医療の推進も課題です。
不規則な勤務形態と業務負担増大による離職
夜勤を伴う不規則なシフト勤務や、看護師不足による業務負担の増大が、看護師の心身を疲弊させている側面もあると考えられます。特に出産・育児などのライフイベントに伴う中堅層の離職は、教育リソースの不足に直結するため、新人看護師の育成が困難になるという悪循環も生じるでしょう。
実際に、日本看護協会の調査においても、離職理由の上位が「子育て」「夜勤の負担が大きい」「超過勤務が多い」などとなっています。
※出典:公益社団法人日本看護協会「2024年度 ナースセンター登録データに基づく看護職の求職・求人・就職に関する分析結果(p10)」
資格を持ちながら働いていない潜在看護師の存在
看護師・准看護師の免許を持ちながら現在は就業していない、いわゆる「潜在看護師」は全国に約80万人いると推計されています。こうした人材が現場で活用されていない点は、看護師不足を考えるうえで注目すべき要素の一つです。
出産や育児などをきっかけに医療現場を離れるケースもあり、復職にあたっては再研修や働き方の調整が必要になる場合もあります。そのため、潜在看護師が現場に戻りやすい環境づくりが、人材の確保に向けた課題として挙げられています。
※出典:厚生労働科学研究成果データベース「令和2年度 潜在看護職員数の推計(p20)」
看護師不足が医療現場や職員に与える影響
看護師不足は、患者さんの安全や看護師の健康、病院運営に影響を及ぼします。適切な人員配置がなされていない環境では、良質な看護を提供することが難しくなり、結果として看護師自身のモチベーションを下げる可能性も高まります。
医療ミスリスクの増大と患者さんの安全性低下
過密なスケジュールによる疲労の蓄積は、判断力の低下や確認ミスを招きます。ダブルチェックが機能しにくくなるなど、重大なトラブルにつながるおそれがあります。安全な医療を提供するためには、看護師一人ひとりの余裕が不可欠ですが、その余裕を確保できていない職場が多いのが現状です。
業務負担の増加によるメンタルヘルスへの影響
看護師不足が続くと、「理想とする看護が十分に実践できない」と感じるケースもあり、精神的な負担につながることもあります。
こうした状態が長く続くと、強い疲労感や意欲の低下などがみられる「バーンアウト(燃え尽き症候群)」につながる可能性も指摘されています。看護師が長く働き続けるためには、適切な休息の確保や業務体制の見直しなど、職場全体での取り組みが重要です。
病床削減や経営縮小などを招くリスク
看護配置などの施設基準を満たせなくなった場合、入院基本料などの届出変更が必要になり、算定区分の見直しが生じる場合があります。これは地域の医療提供体制に影響を与えるだけでなく、病院経営そのものを圧迫する可能性があります。看護師不足による経営悪化が、看護師の待遇をさらに低下させるという悪循環が懸念されるでしょう。
看護師・准看護師の求人情報はこちら看護師不足を解消するための国と現場の対策
こうした状況に対し、国もさまざまな対策を講じており、処遇改善やDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進など、現場の負担を軽減するための取り組みが始まっています。転職先を検討する際は、こうした制度や業務効率化の取り組みが実際に運用されているか確認しましょう。
処遇改善に向けた賃金制度の見直し
看護師を含む医療従事者の確保に向けて、国では賃金改善に関する制度が整備されています。例えば、令和4年には看護師の賃上げを目的とした「看護職員処遇改善評価料」が診療報酬に新設されました。
さらに、令和6年度の診療報酬改定では、医療従事者の賃上げを目的とした「ベースアップ評価料」が導入されています。こうした制度は、医療機関が職員の賃金改善を進めるための財源として活用されることが想定されています。
※出典:厚生労働省「個別改定項目について」、「ベースアップ評価料等について」
医療DXの推進による業務効率化
電子カルテの共有や音声入力システムの導入により、記録業務に費やす時間を大幅に短縮する医療機関が増えています。また、ナースコールとスマートフォンの連携や、バイタル測定データの自動転送など、IT技術を活用することで「直接ケア」に専念できる環境づくりが進められています。
※出典:厚生労働省「医療機関の業務効率化・職場環境改善の推進に関する論点(p33~37)」
潜在看護師の復職支援と多様な働き方の導入
各都道府県の看護協会や地域の医療機関では、復職支援の講習会が実施されています。また、現場では短時間勤務制度や日勤中心の勤務など、多様な勤務形態を導入している施設もあります。こうした取り組みにより、離職防止と人材確保を同時に進める動きも見られます。
看護師が働きやすい職場の選び方
看護師不足の現状を理解したうえで、「自分に合った環境をどう選ぶか」が大切です。ここでは看護師が働きやすい職場のポイントを解説します。
離職率が低く、教育体制が整った職場
職場の状態を見る指標の一つが離職率です。離職率が低い職場は、人間関係や労働条件に納得している職員が多い可能性があります。また、中途採用者に対しても丁寧なオリエンテーションやフォローアップ制度があるかを入念に確認しましょう。見学時に職員の表情やあいさつの様子を見ることも重要です。
主な施設形態ごとの特徴比較
どの職場が適しているかは、働き方やキャリアで重視するポイントによって異なります。代表的な施設形態の特徴を比較すると、次のような傾向があります。
| 施設タイプ | 特徴・メリット | 注意点 |
|---|---|---|
| 大規模病院 | 教育体制や研修制度が整っている場合が多く、専門的な経験を積みやすい | 夜勤や委員会活動など、業務の幅が広くなることがある |
| クリニック | 日勤中心の勤務形態が多く、生活リズムを整えやすい場合がある | 職員数が少ないため、人間関係が密になりやすい |
| 訪問看護 | 利用者さんの生活環境に合わせた看護を提供できる | オンコール対応や単独訪問など、判断を求められる場面がある |
長く働くための職場チェック項目
新しい職場を検討する際や、現在の働き方を見直す際には、勤務条件や職場環境について代表的な項目を確認しておくと安心です。転職を検討する場合は、求人情報だけでなく、職場見学や面接の際に具体的な運用を質問してみることも有効な手段です。
- 年間休日数が明示されており、有給休暇を計画的に取得できる仕組みがあるか
- 有給休暇の取得率など、休暇の取得状況に関する情報が公開されているか
- 勤務時間や残業時間の管理方法が明確で、実際の残業時間の目安を確認できるか
- 産休・育休制度が整備されており、制度を利用して復職している職員の事例があるか
- 院内研修やeラーニングなど、継続的に学べる研修制度や学習支援が用意されているか
この記事では、看護師不足の現状とその原因、現場への影響や対策などについて解説しました。現状を正しく理解し、自分に合う職場環境を見極めることが大切です。まずは、今の職場環境を客観的に見直してみましょう。
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執筆者:ウェルミーマガジン編集部
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