慢性的な人手不足のために業務の負担が大きく「いつまでこの状況が続くのだろう」と不安を感じていませんか。現場の保育士や運営に携わる方が抱く悩みは、個人の努力だけでは解決できない構造的問題が要因となっているケースもあります。この記事では、公的データに基づいた現状と保育士不足の原因、国や園が進める対策について解説します。
公的データで見る保育士不足の深刻な現状
保育業界の人手不足は、数字で見ても非常に深刻な状況が続いています。全職種の平均と比較しても、保育士は求人倍率が高い状況が続いています。まずは、公的データで実態を見ていきます。
有効求人倍率と採用難の現状
保育士の有効求人倍率は全職種平均を大きく上回っています。令和7年7月では、全職種平均の1.18倍に対し保育士の有効求人倍率は2.77倍となっています。
保育士の有効求人倍率は時期によってさらに上昇し、全職種平均の約3倍近い水準に達することもあります。採用が困難な「売り手市場」の状態が続いていることがわかります。
※出典:こども家庭庁「保育士の有効求人倍率の推移(全国)(p1)」
地域差から見る保育士不足の実態
保育士不足の度合いは地域によって異なります。令和7年7月時点の有効求人倍率は東京都で4.28倍と高く、人材獲得の競争が激化しています。一方で、最も低い高知県でも1.35倍と1倍を上回っています。地域によって差は見られるものの、すべての地域で有効求人倍率が1倍を上回っており、人手不足の傾向が共通しています。
※出典:こども家庭庁「令和6年及び令和7年における保育士の各都道府県別有効求人倍率等の比較(各年7月時点)(p2)」
潜在保育士が増え続ける背景
厚生労働省の資料によると、保育士資格を持ちながら、保育現場で働いていない「潜在保育士」の数は年々増加傾向にあることが示されています。一度現場を離れ、復職せずにいる人の割合が高いことが要因のひとつと考えられます。その背景には、子育てとの両立の難しさや、責任の重さと賃金が見合わないことに対する不満などが指摘されており、離職を防ぐための支援が急務となっています。
※出典:厚生労働省「保育士の現状と主な取組(p22)」
なぜ保育士は不足するのか主な原因を解説
保育士不足の背景には、給与水準の低さや労働負担の大きさなど複数の要因があります。公的データで確認できる賃金格差に加え、現場の業務実態も踏まえながら、主な原因を整理します。
保育士の平均年収と他職種との賃金格差の実態
保育士の平均年収は改善傾向にありますが、依然として全産業平均と比較すると低い水準にあります。
厚生労働省の資料によると、保育士の平均年収は約363.5万円、月収は約30.3万円であるのに対し、全職種平均は年収約500.7万円、月収約41.7万円となっており、両者の間には明確な差があります。
保育士の平均年収・月収と全職種の比較
| 職種 | 年収換算 | 月収換算 |
|---|---|---|
| 保育士 | 363.5万円 | 30.3万円 |
| 全職種 | 500.7万円 | 41.7万円 |
※令和元年賃金構造基本統計調査をもとにした資料より引用
※出典:厚生労働省「保育士の現状と主な取組(p39)」
業務負担の増大と長時間労働の構造
保育現場では、子どもの保育以外に膨大な事務作業があります。連絡帳の記入、指導案の作成、行事の準備などは休憩時間や閉園後に行われることもあり、持ち帰り業務も発生している実態があります。労働時間が長くなるため心身ともに疲弊し、離職に至る原因となっています。
人間関係や責任の重さが招く早期離職
保育士は子どもの命を預かる仕事です。その責任は重く、大きなプレッシャーとなっています。さらに、保育士同士の人間関係や、保護者対応の難しさから、経験が浅く対応に慣れない保育士が早期離職するケースもあります。
保育士などの求人情報はこちら国が進める保育士不足解消策
こうした状況を改善するため、国は処遇改善や環境整備に力を入れています。給与の上乗せや生活支援など、保育士として長く働き続けられるための制度について解説します。
処遇改善等加算による給与引き上げの仕組み
国は「処遇改善等加算」を導入し、保育士の経験年数や役職に応じて給与を上乗せする仕組みを強化しています。2022年以降も、月額平均9千円相当の引き上げが行われるなど、賃金底上げのための予算措置が継続されています。ただし、処遇改善等加算は園を経由して支給されるため、園の手続きや配分方法により実際の支給額は異なります。
※出典:こども家庭庁「令和7年度以降の処遇改善等加算について(p5)」
宿舎借り上げや奨学金返済の支援制度
特に都市部で導入されている「保育士宿舎借り上げ支援事業」は、国の補助上限として月額最大7万5千円程度の家賃補助が出る制度です。また、自治体によっては保育士として一定期間働くことを条件に、奨学金の返済を免除する制度も実施されています。ただし、自治体や園によって導入状況や条件が異なるため、事前の確認が必要です。
※出典:こども家庭庁「保育士宿舎借り上げ支援事業(p5)」、「保育士修学資金貸付等事業(p12)」
働きやすさを整える保育士確保プランの主な内容
厚生労働省の資料によると、「保育士確保プラン」では、人材育成、就業継続支援、再就職支援、働く職場の環境改善の4つの柱を軸に施策が進められています。関係機関との連携強化や施策の普及啓発も含め、保育士の確保に向けた取り組みが引き続き推進されています。
※出典:厚生労働省「保育士確保プラン」
現場の負担を減らす園側の具体的な取り組み
国による制度だけでなく、園独自に働きやすさを追求する動きが広がっています。ICTの活用やサポート体制などの取り組みについて解説します。
ICT導入による事務作業の削減と効率化
登降園管理や連絡帳のデジタル化、指導案作成ソフトの導入などにより、手書き作業の削減が進んでいます。ICTの活用は事務作業の効率化を促し、持ち帰り業務の負担軽減にもつながるとされています。
こども家庭庁の資料でも、ICTを活用した業務システムの導入費用の一部を補助するなど、保育士の業務負担軽減と働きやすい環境整備に向けた支援が進められています。
※出典:こども家庭庁「保育所等におけるICT化推進等事業」
メンター制度や研修による定着率の向上
新卒や経験の浅い保育士に対して先輩保育士が相談に乗る「メンター制度」を導入する園も増えています。メンターが精神的な支えとなり、業務内容や人間関係の悩みによる離職防止に効果的です。また、体系的なキャリア研修の実施により、保育士のモチベーション維持を図っています。
※出典:厚生労働省沖縄労働局「定着に向けた取組事例」
福利厚生の充実と柔軟な勤務形態の導入
保育士不足が続く中で、ライフステージに合わせた柔軟な働き方を認める園が選ばれやすくなっています。週休2日制の徹底や、短時間勤務制度の活用、さらには勤務先の園における子どもの優先入園など、福利厚生の充実により保育士に選ばれやすい環境づくりを進めている園もあります。求人倍率が高い中でも優秀な人材を確保するために、園側による魅力的な職場環境づくりが求められています。
この記事では、最新の公的データに基づき、保育士不足の現状、原因、国や現場が進める具体的な対策について解説しました。現在の深刻な人手不足には、賃金・労働環境・責任の重さなど複数の要因がありますが、処遇改善やICT活用といった対応も進められています。まずはご自身の職場や希望する園が、どのような取り組みをしているかを確認してみましょう。
関連キーワード
執筆者:ウェルミーマガジン編集部
介護・医療・障害福祉・保育に関連するお役立ち情報や楽しいコンテンツを随時発信中!みなさんの『自分に合った「ここで働きたい!」に出会える』を目指します。求人サイト<ウェルミージョブ>は会員登録数180万!