9060問題とは?8050問題との違いやリスク、相談窓口と現場の対応を解説

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9060問題とは?8050問題との違いやリスク、相談窓口と現場の対応を解説

近年、福祉や介護の現場で「9060問題」という言葉が注目されています。社会問題となっている「8050問題」の当事者世帯が、さらに高齢化した状態を指す言葉です。高齢の親が、ひきこもり状態にある中高年の子どもを支えきれなくなる9060問題は、孤立死や世帯の生活破綻など深刻な事態を招くことが指摘されています。

この記事では、9060問題の定義や背景、現場で求められる支援、活用できる関連制度、相談できる窓口について解説します。

9060問題とは?8050問題との違いと定義

9060問題とは、90代の親と、ひきこもり状態にある60代の子どもが同居する世帯が直面する、生活困窮や社会的孤立などの問題を指す言葉です。原則的には6か月以上にわたり社会との接点をもたない子どもは、親の老いや死によって生活の基盤を失うリスクが高いと指摘されています。

高齢化の進行により深刻化する家族の共倒れ

9060問題の背景には、生活を支える側である親自身が、介護や医療を必要とする高齢者になっているという点があります。親が80代でその子どもが50代の8050問題の段階では、親にまだ体力があり、年金収入などで子どもの生活を支えられるケースもみられました。しかし、親が90代に達すると、認知症の発症や身体機能の低下により、自身のセルフケアも困難になる場合があります。結果として、世帯全員が社会から取り残され、公的支援につながらないまま生活が行き詰まる「共倒れ」のリスクが高まる恐れがあります。

ひきこもりの長期化と高年齢化の現状

ひきこもりは、かつては若年層特有の問題と考えられてきましたが、現在は幅広い世代で確認されています。令和4年度に内閣府が実施した調査によると、15歳から64歳までの生産年齢人口におけるひきこもり状態の人は、全国で推計146万人にのぼり、約50人に1人の割合に達していることが明らかになりました。

このうち、40歳から64歳の中高年層におけるひきこもり出現率は2.02%と報告されています。かつて平成30年度の同調査で、40〜64歳のひきこもり状態にある人が全国で推計61.3万人と発表され注目を集めましたが、時を経てこの層がさらに年齢を重ねたことで、8050問題の構図が現在の9060問題へと移行しつつあると考えられています。

※出典1:厚生労働省「ひきこもり支援施策の動向 (p5)」、「「ひきこもり」の定義など(p5)
※出典2:社会福祉法人 全国社会福祉協議会「全社協福祉ビジョン2025(p16)

9060問題が抱える主なリスクと社会課題

9060問題は家庭内の問題にとどまらず、多くのリスクを抱えています。特に経済、福祉、生命維持の観点から、社会全体で解決すべき課題です。

経済的困窮と親の年金への依存

60代の子どもに安定した収入がない場合、世帯収入の大部分は90代の親の年金に依存することになります。親が他界すれば年金は途絶えますが、子どもが社会復帰や生活保護などの公的支援の手続きを自力で行えない場合、光熱費の滞納や食事の枯渇による生活破綻を招く恐れがあります。また、経済的な行き詰まりから親の死を報告できず、結果として年金の不正受給につながってしまう事例も報告されており、深刻な社会問題となっています。

介護とひきこもり支援の制度の隙間

現在の日本の福祉制度は、高齢者向け、障害者向け、生活困窮者向けと分野ごとに分かれています。9060世帯の場合、親は「介護保険法」の対象となる一方で、子どもは「生活困窮者自立支援法」に基づく支援の対象となることがあり、心身の状態によっては「障害者総合支援法」に基づく障害福祉サービスにつながる場合もあります。親と子どもで利用する制度や相談先が異なるため、世帯を1つの単位として包括的に捉えるのが難しく、制度の隙間が生じやすいのが現状です。たとえば、ケアマネジャーが親の介護のために訪問しても、同居する子どもが支援につながっていない場合があり、関係機関との連携が課題となるケースもあります

※出典:厚生労働省「障害者総合支援法が施行されました」、「生活困窮者自立支援法について(p2)」、「重層的支援体制整備事業における具体的な支援フローについて(p2)

孤立死などの深刻な事態を防ぐ難しさ

「世間体が悪い」「外部に知られたくない」という思いから、周囲の助けを拒む傾向が強いのも9060問題の特徴です。社会から孤立した状態で親が病に倒れたり、子どもが将来に絶望したりした結果、孤立死などの深刻な事態へと発展する場合があります。地域社会のつながりが希薄化している現代においては、行政などの相談窓口があっても早期発見が容易ではないため、専門職による訪問支援などが求められています

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9060問題の解決を阻む要因と現場の苦悩

9060問題の解決を阻む要因には、当事者世帯の複雑な心理状況と、支援システムの構造的な限界があります。現場の支援者は日々、このジレンマに向き合っています。

世帯の隠れた課題が表面化しにくい理由

9060問題は家庭内で進行するため、外部からは実態が見えにくいという特徴があります。たとえば、親がデイサービスなどの介護サービスを利用し、支援者が同居する子どもの存在を把握していても、子ども自身が自室から姿を現さないことがあります。家族自身が世間体を気にして事情を伏せるケースもあることから、子どもが支援を必要とする状態にあることが見過ごされやすいため、支援者は家族全体の状況を丁寧に確認することが求められます。

介入を拒否する家族へのアプローチの限界

ひきこもり状態の子どもを長年支えてきた親は、心身ともに疲弊していることが少なくありません。支援に対して消極的になっていたり、子ども自身が外部との接触に強い不安を感じていたりすることもあります。福祉の現場では本人の同意が前提となることが多く、支援を拒否された場合の介入には難しさが伴います。関係構築に時間がかかる中で、事態が進行してしまうことも現場の課題となっています。

専門職間の連携不足と縦割り行政の課題

分野ごとの支援機関における情報共有や連携の難しさも要因の1つです。親の介護を担う事業所と、子どもの自立支援を行う機関の間で連携体制が十分に構築されていない地域も存在します。相談者が窓口を訪れても、適切な支援機関へスムーズにつながらないことで、相談自体を諦めてしまう恐れがあります。こうした課題に対応するため、現在では国や自治体主導で、年齢や抱える課題を問わず包括的に支援する「重層的支援体制整備事業」などの取り組みが進められています

※出典:厚生労働省「重層的支援体制整備事業における具体的な支援フローについて(p2)

9060問題に直面した際の相談窓口と支援制度

9060問題の解決には分野を超えた連携が必要となります。世帯の状況に合わせて適切に支援を求められるよう、主な専門機関とその役割をまとめました。

相談機関名 主な役割・対象 期待できるサポート内容
地域包括支援センター 65歳以上の高齢者とその家族 親の介護相談、ケアプランの調整、権利擁護、虐待対応など
ひきこもり地域支援センター ひきこもり当事者とその家族 専門相談員によるカウンセリング、居場所の提供、就労支援
精神保健福祉センター 心の健康や精神疾患に関する相談 医師や保健師による専門相談、家族向けの学習会、デイケア
自立相談支援機関 生活困窮や仕事に関する悩み 家計改善のアドバイス、住居確保給付金の申請、就労準備支援
福祉事務所 経済的に最低限度の生活が困難な世帯 生活保護の申請受付、自立に向けた生活指導、医療費の補助

まずは、いずれかの窓口とつながり、状況を共有することが大切です。たとえば、地域包括支援センターへの相談を起点として他の専門機関と連携すれば、世帯全体を支えるチームを編成することも可能です。相談は本人からだけでなく、家族や近隣住民からでも受け付けています。

※出典1:厚生労働省「地域包括支援センターについて(p1)」、「全国の相談窓口はこちら」、「精神保健福祉センター運営要領(p1)」、「福祉事務所
※出典2:困窮者支援情報共有サイト「生活困窮者自立支援制度について

福祉・介護職として9060問題にどう向き合うか

介護現場や福祉相談の最前線に立つ専門職にとって、9060問題への対応は重要なテーマとなっています。制度の枠組みを超えた、柔軟な視点と行動が求められます。

積極的な訪問支援と多職種連携の重要性

9060問題の解決において、支援を必要としながらも自ら声を上げられない方々へ向けて、支援者側からアプローチする積極的な訪問支援が重要視されています。ケアマネジャーや保健師、民生委員などが定期的に関わりを持ち、少しずつ信頼関係を築いていくことが大切です。介護サービスの提供時などに感じた小さな違和感や気付きを多職種で共有し、チームで支える体制が、深刻な事態の予防につながります

家族全体を支える世帯まるごとの視点

高齢者本人への介護という目的だけでなく、同居する家族を含めた世帯まるごとを視野に入れるアプローチも注目されています。家族がどのような背景や不安を抱えているかに配慮することが、支援の手がかりになることもあります。親の介護が必要になるときは、世帯のバランスが変化しやすい時期であると同時に、外部からの支援を受け入れるきっかけになる可能性もあります。現代の福祉・介護職には、将来の生活設計を家族と共に考え、必要な制度へ橋渡しをするコーディネートの視点が期待されています。

専門性を高めて複雑な社会課題に対応するキャリア

9060問題のような複合的な課題に対応できる視点を持つことは、これからの福祉業界において1つの強みになると考えられます。介護保険だけでなく、精神保健福祉、生活保護制度、就労支援など、関連する分野の基礎知識を幅広く持っておくことで、関係機関との連携がよりスムーズになる傾向があります。社会の構造変化に関心を持ち、多角的な視点を養うことは、支援の質を高め、専門職としてのキャリアを深めることにもつながります。

この記事では、8050問題から移行しつつある9060問題の現状とリスク、現場で求められる包括的な支援や相談窓口について解説しました。9060問題は個人の問題ではなく、社会構造の変化に伴って生じた課題であり、高齢者とその家族を地域全体で支える仕組みづくりへの関心が高まっています。本記事の内容が、福祉や介護の現場に携わる皆様の実務や、今後のキャリアへの理解を深める一助となれば幸いです。

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ウェルミーマガジン編集部

執筆者:ウェルミーマガジン編集部

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