児童虐待防止法とは?目的と4つの定義、早期発見・通告、法改正から対応と相談窓口まで解説

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児童虐待防止法とは?目的と4つの定義、早期発見・通告、法改正から対応と相談窓口まで解説

保育や福祉、医療の現場で働いていると、子どもの不自然なあざや情緒の不安定さを感じ「もしかして虐待では?」と思う場面があるかもしれません。虐待は、子どもの心身に深い傷を残すだけでなく、その後の人生にも影響を及ぼす権利侵害です。

この記事では、児童虐待の防止等に関する法律(以下、児童虐待防止法)の定義から、現場の職員に求められる役割、法改正の内容まで、実務に役立つ知識を解説します。

児童虐待防止法とは?法律の目的と定義を解説

児童虐待防止法は、児童に対する虐待を禁止し、虐待の予防および早期発見、さらには虐待を受けた児童の保護と自立支援を目的とした法律です。この法律の特徴は、虐待を「社会全体で解決すべき問題」と位置づけている点にあります。

子どもの権利と安全を守る「児童虐待防止法」

児童虐待防止法は、児童の権利に関する条約の精神にのっとり、すべての子どもが健やかに成長し、発達を保障される権利を守るのが目的です。虐待は児童の心身の成長や人格形成に重大な影響を与えるため、社会全体で取り組むべき重要な課題とされています。

※出典:こども家庭庁「児童虐待防止対策

法律が定める「児童」の対象範囲と年齢

児童虐待防止法において、児童とは満18歳に満たない者を指し、児童福祉法における定義と同じです。乳幼児から高校生世代まで、広く保護の対象となっています。保護者(親、里親、養育者など)の児童に対する行為が法の対象に含まれます。

※出典:e-Gov法令検索「児童虐待の防止等に関する法律(第2条)

児童虐待防止法と児童福祉法の違いと関係性

児童虐待防止法は、虐待に対する「禁止・予防・早期発見」や、虐待を受けた児童への「保護・支援」などに特化した法律です。一方、児童福祉法は、児童の福祉全般を支える「基本法」としての役割をもちます。虐待が発生した際の一時保護や施設入所などの具体的な措置は、主に児童福祉法の規定に基づいて実行されます。このように、両法はそれぞれの役割を持ちながら、互いに補完し合う関係です。

※出典:e-Gov法令検索「児童虐待の防止等に関する法律(第1条)」、「児童福祉法(第1条~第3条、第11条)

児童虐待防止法で定義される「4つの虐待」と具体例

児童虐待防止法では、虐待を大きく4つの種類に分類しています。「これくらいなら虐待ではないかも」といった主観的な判断を防ぐためにも、それぞれの定義を正しく理解することが必要です。これらの虐待は単独で起こるだけでなく、複数が重なり合って発生することもあります。各類型の定義と具体的な行為の例については、以下の表にまとめました。

虐待の種類 定義 具体的な行為の例
身体的虐待 児童の身体に外傷が生じる、または生じるおそれのある暴行を加えること 殴る、蹴る、投げ飛ばす、激しく揺さぶる、やけどを負わせる、戸外に締め出す
性的虐待 児童にわいせつな行為をすること、またはわいせつな行為をさせること 子どもへの性的行為、性的暴行、わいせつな写真の被写体にする、性器を見せる
ネグレクト 児童の心身の正常な発達を妨げるような著しい減食または長時間の放置など 食事を与えない、不潔な環境で生活させる、必要な医療を受けさせない、学校に行かせない
心理的虐待 児童に対する暴言、拒絶的対応、または児童の前での配偶者への暴力(面前DV) 言葉による脅し、無視、きょうだい間での差別、子どもの前で家族に暴力を振るう

※出典:こども家庭庁「児童虐待防止対策

身体的虐待:暴行や身体に危害を加える行為

身体的虐待は、目に見える「あざ」や「傷」として現れやすいのが特徴です。しかし、衣服に隠れた部分のけがや、「転んだ」という説明と実際の傷の状態が一致しないなど、見過ごされやすい不自然なサインにも注意しなければなりません。たとえしつけのつもりであっても、子どもへの体罰や身体に危害を加える行為は法律で明確に禁止されています。

性的虐待:子どもへのわいせつな行為やその強要

性的虐待は密室で行われることが多く、子ども自身が被害を言葉にしにくいため、発見が困難な虐待の1つです。特定の大人を異常に怖がる、年齢に見合わない性的な知識や関心を示すなど、行動にサインが現れるケースがあります。本人の証言が得られにくい場合もあるため、専門機関との連携が必要です。

ネグレクト:心身の発達を妨げる養育や保護の放棄

ネグレクトは、直接的な暴力がないために周囲に見過ごされやすい傾向があります。季節外れの服装、深刻な虫歯の放置、慢性的な空腹などはネグレクトのサインです。また、乳幼児を家に残して外出したり、自動車内に放置したりする「置き去り」も、子どもの命に関わる重大なネグレクトに該当します。

心理的虐待:暴言や無視、配偶者間暴力の目撃

こども家庭庁の資料によると、児童虐待の件数の中で約6割と多くを占めているのが心理的虐待です。特に、子どもの前で親同士が暴力を振るう「面前DV」は、子ども自身が直接暴力を受けていなくても、心理的虐待に該当します。また、暴言や無視、きょうだい間の差別による自尊心の破壊も、子どもの心に、目に見えない深い傷を残します。

※出典:こども家庭庁「令和6年度 児童相談所における児童虐待相談対応件数(p3)

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医療・福祉・教育従事者に課せられる「早期発見」と「通告」の義務

保育士、教師、医師、保健師、ケースワーカーなどの「児童の福祉に職務上関係のある者」には、一般市民よりも早期の対応が求められています。児童虐待防止法第6条では、虐待を受けたと思われる児童を発見した者は、速やかに児童相談所などに通告しなければならないと定めています。

※出典:e-Gov法令検索「児童虐待の防止等に関する法律(第6条)

虐待を早期に発見するための専門職別チェックポイント

学校や幼稚園、保育所などの現場で働く職員は、子どもの生活を近くで見守る立場にあります。以下のようなサインが見られる場合は組織内で情報を共有し、速やかな対応を検討することが大切です。

視点 子どものサイン 保護者のサイン
外見・体調 不自然な傷やあざ、衣服の汚れ、体臭、極端な痩せ、未治療の病気 身なりが極端に不潔、季節外れの服装、極度の疲労感や無気力な様子、アルコールや薬物の影響が疑われる不自然な様子
行動・態度 大人への異常な怯え、攻撃的な行動、表情が乏しい、過度なスキンシップや甘え 子どもを厳しく叱責する、人前で子どもを貶める、家庭訪問を拒む、子どものけがに無関心、不自然な説明、健診の未受診、予防接種の拒否

虐待の疑い段階でも義務化されている「通告」の重要性

通告は、確証がある場合に限られません。「虐待かもしれない」という疑いの段階での通告も法律上求められています。これは、確証を得るまで調査を待つことで、子どもの命が危険にさらされるのを防ぐためです。通告は単なる報告や非難ではなく、家庭を支援につなぐための重要なステップとなります。

※出典:e-Gov法令検索「児童虐待の防止等に関する法律(第5条)

守秘義務よりも優先される通告の法的根拠

専門職には業務上の守秘義務がありますが、児童虐待防止法における通告は守秘義務よりも優先されると規定されています。そのため、通告によって守秘義務違反に問われることはないとされています。また、通告者の秘密は厳守され、原則として誰が連絡したかが知られない仕組みになっています。

※出典:e-Gov法令検索「児童虐待の防止等に関する法律(第6条、第7条)

法改正による児童虐待防止対策の強化

児童虐待防止法や児童福祉法は、深刻な虐待死事件などの教訓を活かし、子どもの命を守るために継続的に強化されてきました。ここでは、子どもに関わる実務において必要となる、法改正の重要なポイントを解説します。

体罰禁止の明文化と親権者などによる懲戒権の廃止

改正法により、親権者などによる「体罰」が法律で明確に禁止されました。さらに、民法に規定されていた「懲戒権」も削除され、しつけを名目とした暴力や過度な罰は法的に禁じられています。「愛の鞭」という考え方は、現在の法律では通用しません。

※出典:厚生労働省「民法等改正に伴う児童福祉法等の改正について(p1~2)

改正児童福祉法と「こども家庭センター」の役割

児童福祉法の改正により、市区町村において「こども家庭センター」の設置が努力義務化され、妊産婦から子育て世帯までを切れ目なく支援する体制づくりが進められています。虐待の予防段階からの支援が自治体レベルで強化されています。

※出典:こども家庭庁「こども家庭センターガイドライン(p2)

介入機能の強化と児童相談所・警察の連携体制

虐待の疑いがある家庭への立入調査において、保護者が拒否する場合の裁判所による許可状制度や、警察との連携が強化されています。児童相談所の「支援」の役割と「介入」の役割を分離・並行する体制の整備が進み、より迅速に子どもの安全を確保できるようになっています。

※出典:e-Gov法令検索「児童虐待の防止等に関する法律(第9条、第10条)

虐待が疑われる場合の対応と主な相談窓口

もし虐待の疑いを感じたら、迷わず専門機関に連絡しましょう。通告は、子どもの命と未来を守るための大切な第一歩です。主な通告先は、お住まいの「市区町村の窓口(こども家庭センターなど)」または「児童相談所」です。

児童相談所虐待対応ダイヤル「189(いちはやく)」の仕組み

「189」は、24時間365日対応の全国共通ダイヤルです。電話をかけるとお近くの児童相談所につながります。通話料は無料で、匿名での通告も可能です。緊急性が高いと感じた場合や、どこに連絡すべきか迷った場合は、まず「189」へ連絡しましょう。

※出典:こども家庭庁「児童相談所虐待対応ダイヤル「189」について

市区町村の窓口や「親子のための相談LINE」の活用方法

育児の悩みや不安を抱える保護者自身への支援も重要です。自治体のこども家庭センターのほか、「親子のための相談LINE」などSNSを活用した相談窓口もあります。保護者が「つい子どもを叩いてしまう」とSOSを出せる場所を周囲が案内することも、虐待予防につながります。

※出典:こども家庭庁「親子のための相談LINEについて

通告後に子どもと家庭が受ける支援の流れ

通告があると、児童相談所などが原則として48時間以内に子どもの安全確認を実施します。子どもの安全確保を最優先とし、必要に応じて一時保護などの措置がとられます。その後、家庭復帰に向けた保護者への支援や指導、あるいは施設入所や里親委託など、子どもにとって最善の利益を考慮した支援計画が立てられます。

※出典:厚生労働省「児童虐待防止対策におけるルールの徹底について(p2)

この記事では、児童虐待防止法の目的や4つの定義、専門職に求められる通告の役割、法改正のポイント、そして虐待が疑われる場合の対応の流れについて解説しました。現場で働く私たちが法律を正しく理解し、小さなサインを見逃さずに専門機関へつなぐことが、子どもたちの命と未来を守る第一歩となります。

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ウェルミーマガジン編集部

執筆者:ウェルミーマガジン編集部

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