看護師として働く中で、「4年制大学卒と専門学校・短期大学卒で給与にどの程度差があるのか」「専門学校・短期大学卒の場合、昇進や転職で不利になるのではないか」と不安に感じる方もいるでしょう。この記事では、4年制大学卒(以下、大卒)と、3年制の看護専門学校および短期大学卒(以下、専門・短大卒)の違いを整理します。
初任給については、日本看護協会の調査に基づき、大卒と専門・短大卒の初任給の差を確認します。また、学歴とキャリアの関係や、経験・資格を生かして選択肢を広げる方法も解説します。
看護師の学歴は初任給や昇進にどう影響する?
看護師の初任給は、学歴区分によって差が設けられている場合があります。一方、昇進の基準は勤務先によって異なり、学歴だけで決まるものではありません。まずは、大卒と専門・短大卒の初任給の差や、昇進との関係を確認しましょう。
大卒と専門・短大卒の平均基本給与額の差は月5,467円
日本看護協会が全国の病院を対象に実施した2025年の調査によると、新卒看護師の給与額は以下の表のとおりです。大卒と専門・短大卒を比較すると、平均基本給与額で月5,467円、平均税込給与総額で月7,449円の差があります。
ただし、これは病院に勤務する新卒看護師の月額給与を想定して集計したものであり、学歴別の平均年収や生涯賃金を示すデータではありません。
| 給与区分 | 大卒 | 専門・短大卒※ | 差額 |
|---|---|---|---|
| 平均基本給与額 | 221,883円 | 216,416円 | 5,467円 |
| 平均税込給与総額 | 292,527円 | 285,078円 | 7,449円 |
※日本看護協会の調査では「高卒+3年課程新卒」と表記されています。この記事では、3年制の看護専門学校・短期大学などを卒業した新卒看護師を指す区分として、「専門・短大卒」と表記しています。平均税込給与総額には、通勤手当や住宅手当、家族手当、夜勤手当、当直手当などが含まれ、時間外勤務手当は含まれません。新卒者は家族手当なし、単身で民間アパートに居住し、3交代制では月8回、2交代制では月4回の夜勤を行った場合を想定しています。
※出典:日本看護協会「2025年 病院看護実態調査 報告書(p30)」
同じ学歴区分でも病床規模によって2万6,000円以上の差がある
同じ調査では、学歴区分だけでなく、勤務する病院の病床規模によっても平均基本給与額に差が見られます。大卒と専門・短大卒の平均基本給与額の差は月5,467円ですが、同じ学歴区分で99床以下と500床以上を比べると、2万6,000円以上の差があります。
| 学歴区分 | 99床以下 | 500床以上 | 差額 |
|---|---|---|---|
| 大卒 | 216,131円 | 242,720円 | 26,589円 |
| 専門・短大卒 | 210,621円 | 237,713円 | 27,092円 |
学歴区分による差と病床規模による差は、集計条件が異なるため単純には比較できません。ただし、初任給は学歴だけでなく、勤務する病院の規模などによっても異なることがわかります。求人を比較する際は、勤務先の給与表や経験加算、手当も確認しましょう。
※出典:日本看護協会「2025年 病院看護実態調査 報告書(p106、108)」
昇進の基準は勤務先によって異なる
主任や看護師長などへの昇進基準は、勤務先の人事制度によって異なります。学歴だけでなく、経験年数やリーダー業務の実績、マネジメント研修の受講状況などが評価される場合もあります。昇進を目指す場合は、勤務先の人事評価制度や役職者の任用基準を確認しましょう。
大卒看護師と専門・短大卒看護師の違い
初任給や昇進への影響に加えて、大卒と専門・短大卒では、修業年限や卒業時に得られる学位・称号にも違いがあります。それぞれの特徴を確認しましょう。
| 比較項目 | 大卒(4年制) | 専門・短大卒(3年制) |
|---|---|---|
| 卒業時に得られる学位・称号 | 学士 | 専門士(専門学校の場合) または、短期大学士(短大の場合) |
| 取得可能な国家試験受験資格 | 看護師 ※保健師・助産師の教育課程を履修することで、それぞれの国家試験受験資格も取得可能 |
看護師 |
| 看護師として働き始める時期 | 一般的に専門・短大卒より1年遅い | 大卒より1年早い |
※出典1:日本看護協会「看護職になるには」
※出典2:文部科学省「大学・短大・専門学校と専門職大学・専門職短大の比較」
大卒看護師は卒業時に学士を取得できる
大学では、看護師国家試験の受験資格に加えて、卒業時に学士を取得できます。学士を取得できるため、大学院への進学や研究・教育分野を目指す際の選択肢が広がる点が特徴です。また、保健師・助産師の教育課程がある大学では、所定の課程を履修することで、それぞれの国家試験受験資格を得られる場合があります。
専門・短大卒は大卒より1年早く働き始められる
3年制の専門学校や短大を卒業し、看護師国家試験に合格して就職する場合、大卒より1年早く看護師として働き始めることができます。また、修業年限が短いため、在学期間や学費の負担を抑えられる場合があります。ただし、学費や教育内容は学校によって異なるため、進学先ごとに確認しましょう。
看護師・准看護師の求人情報はこちら学歴にかかわらず看護師のキャリアを広げる方法
大卒と専門・短大卒では修業年限や取得できる学位・称号に違いがありますが、転職や入職後のキャリアでは、経験や看護スキル、リーダー業務や後輩指導などの実績、取得資格なども評価材料となる場合があります。まずは自分の経験を整理したうえで、資格取得や学び直し、自分に合った職場選びを検討しましょう。
経験・看護スキル・担当した役割を整理する
今後のキャリアを考える際や転職活動では、勤務年数だけでなく、担当した疾患や領域、経験した処置、急変対応、多職種との連携、後輩指導、リーダー業務、委員会活動などを具体的に振り返ることが大切です。「急性期病棟で5年間勤務した」といった経歴に加えて、どのような看護を行ってきたかまで深掘りすると、自分の強みや応募先で生かせる経験を整理しやすくなります。
資格取得で専門性を高める
専門看護師や認定看護師をはじめ、特定の分野に関する資格・認定の取得は、専門性や学び続ける姿勢を示す方法の1つです。資格を生かした役割を担える職場では、業務の幅やキャリアの選択肢が広がる可能性があります。
ただし、資格を取得しても、必ずしも昇給や希望する条件での転職につながるとは限りません。取得を検討する際は、受験・受講要件や費用、教育期間だけでなく、勤務先に資格を生かせる役割や手当があるかも確認しましょう。
学士取得などの学び直しを検討する
専門学校や短大を修了した方のうち所定の要件を満たす場合は、大学などで必要な単位を修得し、学修成果の提出や試験・審査を経て、大学改革支援・学位授与機構から学士を取得する方法があります。必要な単位数や学修期間は、修了した課程などによって異なります。
なお、この制度で学士を取得しても、大学を卒業したことにはなりません。学士取得が給与に反映されるかは勤務先によって異なるため、取得目的や給与規定を確認したうえで検討しましょう。
※出典:大学改革支援・学位授与機構「新しい学士への途 令和8年度版(p1~5)」、「学士の学位とは?大学卒業と異なるのか?(p4)」
経験や実績を評価してもらえる職場を選ぶ
学歴や経験の評価方法は職場によって異なります。転職時には、給与表に学歴区分があるか、経験年数がどのように加算されるか、役職や資格・スキルに対する手当・評価制度があるかを確認しましょう。求人情報だけではわからない場合は、面接時に昇給・評価制度や入職後のキャリアパスを確認することが大切です。
この記事では、看護師の学歴と初任給・キャリアの関係を解説しました。日本看護協会が全国の病院を対象に実施した調査では、大卒と専門・短大卒の平均基本給与額には差がある一方、同じ学歴区分でも病床規模によって2万6,000円以上の差が見られます。転職や昇進では、学歴だけでなく経験や専門性、リーダー業務や後輩指導などの実績、勤務先の評価制度も確認し、自分に合うキャリアを考えましょう。
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執筆者:ウェルミーマガジン編集部
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