【イベントレポート】もしも介護保険がなくなったらケアはどうなる?~制度のこれからと保険外サービスの可能性を考える~

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【イベントレポート】もしも介護保険がなくなったらケアはどうなる?~制度のこれからと保険外サービスの可能性を考える~

2026年4月28日、「もしも介護保険がなくなったらケアはどうなる?~制度のこれからと保険外サービスの可能性を考える~」をテーマにした、NPO法人「未来をつくるkaigoカフェ」との共催イベントが開催されました。登壇したのは、在宅医療の現場で多くの患者さんの暮らしを支えてきた佐々木淳先生です。

介護・医療の現場では、介護保険や医療保険があることを前提に、日々のケアやサービス提供が成り立っています。一方で、少子高齢化や介護・医療の担い手不足、社会保障費の増加などを背景に、これまでと同じ仕組みだけで現場を支え続けることは難しくなりつつあります。

今回のテーマである「もしも介護保険がなくなったら」という問いは、制度の廃止を前提にするものではなく、「本当に必要なケアとは何か」「利用者さんはどのような暮らしを望んでいるのか」「介護職や看護師はこれからどのような役割を担うのか」を考えるきっかけになるものでした。

▼登壇の様子はこちら▼

イベント概要

日時:2026年4月28日(火)19:00~21:00

会場:株式会社エス・エム・エス 本社

主催:NPO法人「未来をつくるkaigoカフェ」(代表:高瀬 比左子さん)

共催:株式会社エス・エム・エス

プログラム:

  • ゲストスピーチ:「もしも介護保険がなくなったら、ケアはどうなる?」 ~制度のこれからと保険外サービスの可能性を考える~

【登壇者プロフィール】

佐々木 淳先生

医療法人社団悠翔会理事長・診療部長。2006年、東京都心・千代田区に最初の在宅医療クリニックを開設。在宅総合診療や24時間対応を通じ、患者さんの人生観を大切にした地域医療に取り組んでいる。

講演内容のポイント

介護保険がなくなることと、介護サービスがなくなることは同義ではない

佐々木先生は冒頭で、「介護保険はあったほうがいい」としながらも、「介護保険がなくなることと、介護サービスがなくなることは同義ではない」と話しました。世界を見渡すと、日本のように介護保険制度を持つ国は決して多数派ではなく、税金、自費サービス、家族による支援などを組み合わせながら、高齢者の暮らしを支えている国も多くあります。

そのうえで、介護や医療を考える際には「質」「アクセス」「コスト」の3つのバランスが重要だと説明しました。日本ではこれまで、必要な人に介護・医療が届き、自己負担をできるだけ抑えることが重視されてきました。一方で、医療費を含む社会保障費は増え続けており、その費用を保険料や税金で支え続けることへの負担も大きくなっています。佐々木先生は、今後は、医療費を保険料や税金で賄い、国民全体の負担を抑えることばかりを追求してきた従来の考え方を見直していく必要があると、財務省の資料を用いて説明しました。

(介護・医療における質・アクセス・コストのバランスを示すイメージ画像)

※出典:財務省「持続可能な社会保障制度の構築(財政各論Ⅱ)」
※財務省の資料を基に、イベントレポート掲載用に再構成

入院に頼りすぎない医療・ケアのあり方

講演では、「もし入院ができなくなったら」という視点から、日本の病床数や病院経営の課題についても話が展開されました。佐々木先生は、日本は他国に比べて人口1,000人当たりの総病床数が多いというデータを示した一方で、医師数が十分に多いわけではなく、1床当たりの医療資源が薄くなりやすいと指摘しました。

また、病床数が多いことで、本来入院しなくてもよい人も入院が許容されてしまう状況が生まれ、医療費の増加につながっている可能性にも触れました。今後は「何でも入院で対応する」のではなく、自宅や施設で治療・療養を支える仕組みを広げていく必要があると話しました。

(病床数・医師数の比較)

(出所)「OECD Health Statistics 2022」、「OECD.Stat」より作成(2020年データ。※は2019年のデータ)
※佐々木先生の投影資料を基に、イベントレポート掲載用に再構成

海外では自宅で治療する選択肢が広がっている

佐々木先生は、フランス、台湾、シンガポール、インドなどの事例を交えながら、海外では日本とは異なる介護・医療の選択が行われていると紹介しました。たとえば、台湾では肺炎を自宅で治療する仕組みが整えられ、訪問看護や酸素、薬剤などを含めた包括的な医療サービスが在宅医療として行われていると説明しました。

日本では「急性期=入院」という発想が一般的ですが、海外では入院費が高額であることもあり、医師や看護師が自宅に関わりながら治療を進める選択肢が設けられていると言います。

保険外サービスやテクノロジーが選択肢を広げる

講演では、介護保険外サービスについても多くの示唆がありました。日本では、介護保険サービスの枠組みの中で生活支援が組み立てられますが、その枠内だけで暮らしを考えると、本人が本当に望む生活や柔軟な支援の選択肢が見えにくくなる場合もあります。

また、睡眠や心拍、呼吸数、活動量などをモニタリングできる機器、AI、ロボットなどの活用により、体調変化の早期発見や身体介助の一部を機械が担う可能性にも触れました。そのうえで、おむつ交換や移乗などの一部が機械に置き換わっていく時代に、人間に求められるのは「その人らしい生活を継続するにはどうすべきか」に向き合ってケアをする力ではないかと投げかけました。

介護保険の有無よりも、必要な人に必要なケアが届くことが大切

佐々木先生は、介護保険があるかどうかそのものよりも、「必要な人に必要なケアが届くこと」が重要だと話しました。介護保険制度は、日本の介護の質を高め、多くの人の暮らしを支えてきました。一方で、制度の枠内だけで考えると、自費サービスなどを含めた選択肢が見えにくくなり、利用者さんが自分に合った支援を自由に選びにくくなる面もあります。

日本の介護の質は世界的に見ても高いと評価したうえで、これからは介護保険の枠の中だけでなく、制度の外側も含めて新しいケアの形を考えることがチャンスになると締めくくりました。

(笑顔で語りかけてくださる佐々木先生)

編集後記

今回の講演を聞いて最も印象に残ったのは、介護・医療の仕事を「制度の中で提供するサービス」としてだけでなく、「その人の暮らしをどう支えるか」という視点から捉え直す必要があるということです。

現場で働く介護職・看護師にとって、介護保険や医療保険は日々の業務と切り離せない存在です。しかし、利用者さんや患者さんの生活は、制度の枠内だけで成り立っているわけではありません。家族との関係、住まい、食事、趣味、地域とのつながり、本人の価値観など、暮らしを形づくる要素は多岐にわたります。

また、テクノロジーが進化しても、その人の表情の変化に気づくこと、本人が言葉にしきれない不安を受け止めること、最期までその人らしく過ごせるよう生活の細部に目を向けることは、人にしか担えないのではないかと思います。身体介助や医療処置だけでなく、「その人を理解しようとする姿勢」こそが、これからのケアにおいてさらに重要になるのではないでしょうか。

ウェルミージョブでは、介護・医療に携わる皆さんが、自分らしく働ける職場や、これからのケアに前向きに向き合える環境と出会えるよう、今後もさまざまな情報をお届けしていきます。

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ウェルミーマガジン編集部

執筆者:ウェルミーマガジン編集部

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