北アルプスを望む小さな総合病院を舞台に、看護師と医師が、患者一人ひとりの人生と真剣に向き合う姿を丁寧に描くヒューマンドラマ『勿忘草の咲く町で ~安曇野診療記~』が6月28日より放送をスタートさせます。今回は、患者に寄り添おうと奮闘する若手看護師・月岡美琴役の福本莉子さんと、花を愛する少し不器用な研修医・桂正太郎役の菅生新樹さんにインタビュー。看取りの現場、厳しい病状説明、そして患者や家族の葛藤と向き合うという役を通して感じたことを中心に話を聞きました。
看護師、研修医という目線から感じた医療現場で働くということ
おふたりは今回、看護師と研修医として、患者やその家族のさまざまな葛藤と向き合う役を演じられました。役作りにおいて意識したことを教えてください。
福本さん:看護師という役が初めてだったので、まず皆さんで実際に病院にお伺いをし、看護師さんたちが普段どういうお仕事をされているのかを見学させていただきました。それから日々のルーティンを教えてもらい、細かい動きについては現場で監修してくださる看護師の方や、お医者さんからお伺いしながら、役作りをしていきました。
菅生さん:僕は作中でインフォームドコンセントをするシーンがあるのですが、その場できちんと患者さん役の方と向き合えるように、自分なりに症例について調べてみたり、図を描く練習を重ねたりしました。出てこない症例については、現場で聞くことしかできなかったのですが、実際にどういうことが行われるかをイメージするのはもちろん、話を聴く側の立場に立って、監修の医師の方に症状の伝え方をどう組み立てていくかを尋ねました。
役を通じて、医療現場で働くことの難しさや魅力をどのように感じましたか?
福本さん:患者さんが元気に退院していくシーンでは、演じていてもとても嬉しくなりました。それから、お医者さんも看護師さんも、命を預かっているお仕事なので、日々気を張りながら生活しているのだろうなと実感しました。その中でも、一人ひとりの患者さんと向き合って、納得する形をみんなで目指していくことによって一体感も感じたので、実際の医療現場に携わっている方々には頭が下がる思いです。
菅生さん:先ほど、福本さんがおっしゃっていたように、現場に入る前に実際の病院を見学させていただき、その時に「どの瞬間に、やりがいを感じますか?嬉しいですか?」と質問をさせていただきました。そうしたら、皆さん口を揃えて「患者さんが元気に帰ってくれた時」っておっしゃっていて、その言葉が素敵だなと思いました。少し冷たい言い方かもしれませんが、他人なはずなのに、みんなが同じ方向を向いて、一人のために奮闘しているのってすごいと思うと同時に尊敬してしまいました。絶対に誰でもできるような仕事じゃないなって。
“人生会議”を通して感じたこと
本作のテーマの一つでもある“人生会議”(アドバンス・ケア・プランニング=ACP)は、原作小説にはなかったものの制作統括の石井満梨奈さんがこだわって入れた要素と聞いています。作中で描かれる“人生会議”を通じて考えたことはありますか?
福本さん:いつか自分や家族が患者さんの立場になったらと、置き換えて考えることはたくさんありました。もし家族と意思疎通ができなくなったらと考えると、将来について話し合っておくことは、今からでも誰にでもできることなんじゃないかなと思いました。
菅生さん:実は亡くなった祖母の人生会議のようなものに参加したことがあります。当時、両親が祖母の面倒を見ていたのですが、学生だったこともあり時間があったので、僕も同行したんです。その頃の祖母は寝たきりの状態で、僕自身も何をしていいのかわからず、「これでいいのだろうか」と自問自答していました。そんな中で、両親と一緒に祖母のこれからについて話し合う機会があり、今振り返ると、それが人生会議だったのだと思います。
この作品を通して、あのときの経験って本当に大事だったなと改めて感じています。人生会議という言葉を一人でも多くの方に知っていただき、自分のことだけでなく、大切な家族と向き合うきっかけにしてもらえたらと思っています。
福本さん:患者さんによって、病状も違いますし、家族の形も年代もさまざまで一人ひとりの納得する形が違って当然かと思います。大切なのは、一人ひとりとちゃんと向き合うということ。作品自体は、少し重いテーマのように捉えられるかもしれないのですが、そこまで後ろ向きにならない作品だと思っていますので、ぜひそれぞれにとって納得できる形をみんなで見つけていくきっかけになれば嬉しいです。
菅生さん:お医者さんである以前に、人としての素直な気持ちが出てくる役でした。見ていただく方には、正太郎の素直な部分を感じてもらえたらいいなと思っています。美しい景色もあり、自然豊かな安曇野で成長していく2人を応援して頂きたいですし、まずは見ていただいて、家族で話し合うきっかけになれば幸いです。
“気を張る”毎日を解きほぐすヒント
先ほど、福本さんから「お医者さんも看護師さんも、命を預かっているお仕事なので、日々気を張りながら生活しているのだろうなと実感しました。」との言葉がありました。おふたりは気が張ったとき、どのようにそれを緩めるようにしていますか?
福本さん:私は毎日必ずお風呂に浸かることを大切にしています。自分にとってのオン・オフのスイッチなんです。入り方も決まっていて、首まで5分浸かって、その後10分間、お腹から下だけ湯船に浸かるようにしています。あとは、睡眠にはこだわっているので、枕とヘッドマッサージ機は長野でのロケの際にも、全部持っていきました。
菅生さん:あれ?入浴剤とパジャマも持ってきているって言ってなかった?
福本さん:持っていってました!パジャマはコットン100%がいいとか、いろいろこだわりがあって(笑)。
菅生さん:すごいな、僕はどこでも寝られるから(笑)。
福本さん:羨ましいです!あとは、毎日その日にあった良いことを3つ書いてから眠るようにしています。そうすることで、ポジティブに1日を終えられるのでおすすめです。
菅生さん:僕はゲームがすごく好きなので、ゲームをしたり、サウナに行ったりして、頭の中を仕事から解放するようにしています。そうすることで、少しでも仕事を考えない時間を作って、リセットするようにしています。
読者には医療従事者の方も多くいらっしゃいます。医療従事者の皆さんへのメッセージもいただけますでしょうか?
福本さん:私たちは今回ドラマで、終末期医療や高齢者医療に向き合う機会をいただいたのですが、皆さんにとってはこれが日常で、ずっと向き合い続けていることだと思います。そういう皆さんから見たら、どのようにこの作品が映るのかを想像するのは少し難しいのですが、舞台である長野の大自然に癒されながら日々の仕事のちょっとした原動力になったら嬉しいです。
菅生さん:一人じゃないって思ってほしいです。僕らはあくまでもエンタメとして演じさせていただきましたが、今回、テーマとして取り扱っている人生会議や終末期の話、延命について、一人でも多くの方に知っていただくきっかけになればという思いで作品に向き合いました。
日々、医療現場で働いている皆さんからしたら、もしかしたら違うって思われるところもあるかもしれませんし、皆さんが抱えている問題を僕らが聞くことは難しいですけど、美琴や正太郎の周りには同じ方向を向いている仲間がいます。それと同じように、きっと皆さんの周りにも、そういった存在の人がいるのではないかと思うので、「自分は一人だ」と思わずに「仲間に頼りながら頑張ろう」と思っていただければ嬉しいです。
【プロフィール】
福本莉子
2000年11月25日生まれ。大阪府出身。16年、第8回「東宝シンデレラ」オーディションでグランプリとセブンティーン賞をダブル受賞。2018年に、映画「のみとり侍」でスクリーンデビュー。以降、映画『今夜、世界からこの恋が消えても』『ディア・ファミリー』、『室井慎次 敗れざる者/生き続ける者』、劇場版『トリリオンゲーム』、『お嬢と番犬くん』、『#真相をお話しします』、『隣のステラ』などに出演。ドラマでは、TBS「トリリオンゲーム」、フジテレビ「ONE DAY~聖夜のから騒ぎ~」、フジテレビ「全領域異常解決室」、WOWOW「ストロボ・エッジ」Season1・2、フジテレビ「ラムネモンキー」などに出演し、初めての冠レギュラーラジオ番組「福本莉子 まったり幕間らじお」がニッポン放送にて放送中。また、主演を務める映画「時給三〇〇円の死神」が今年10月に公開される。
菅生新樹
1999年8月26日生まれ。大阪府出身。特技:アコースティックギター、ドラム、バスケットボール。2022年、本格的に俳優活動を開始。ドラマ『初恋の悪魔』(日本テレビ)で注目され、『凋落ゲーム』(フジテレビ)で初主演。メフィスト賞受賞作『死んだ山田と教室』の表紙カバーモデルに抜擢。これまでの出演作には、日曜劇場『下剋上球児』(TBS)、金曜ナイトドラマ『伝説の頭 翔』(テレビ朝日)、連続テレビ小説『おむすび』(NHK)、ドラマ9『失踪人捜査班 消えた真実』(テレビ東京)などがあり、連続ドラマW 池井戸潤スペシャル『かばん屋の相続/芥のごとく』(WOWOW)や『人は見た目じゃないと思ってた。』(テレビ東京)では主演を務めた。現在Netflixで『喧嘩独学』が配信中。今後は10月から放送予定のドラマ『俺たちの箱根駅伝』(日本テレビ)が待機中。
【作品情報】
6月28日(日) 放送開始 プレミアムドラマ「勿忘草の咲く町で~安曇野診療記~」
【放送予定】
[BS] 2026年6月28日(日) 夜10:00スタート <全8話>
[BSP4K] 2026年7月26日(日) 夜10:00スタート<全8話>
※サッカーワールドカップ編成のためBSが先行放送となります。
【原作】夏川草介
【脚本】羽原大介
【音楽】コトリンゴ
【出演】福本莉子・菅生新樹/土村芳 田辺桃子 白河れい おかやまはじめ 広岡由里子
沢栁優大 瀬戸利樹 村岡希美 中山翔貴 糸瀬七葉
野波麻帆 山下容莉枝/本田博太郎 富田靖子/吹越満・内藤剛志 ほか
【制作統括】石井満梨奈(AX-ON) 樋口俊一(NHK)
【プロデューサー】元信克則(ユニオン映画)
【演出】池澤辰也 長沼誠 長尾くみこ
記事クレジット
取材・文/於ありさ 撮影/長谷川直紀
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執筆者:於ありさ
ライター・インタビュアー。エンタメウォッチャー。マイメロディに囲まれて暮らしている。
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