保育の味方!子どももおとなも“共に育つ”ための10ヶ条【#7 何でも楽しくしてしまうことの大切さ】

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保育の味方!子どももおとなも“共に育つ”ための10ヶ条【#7 何でも楽しくしてしまうことの大切さ】

こんにちは! ウェルミ―ジョブ編集部員の田上です。

「保育の味方!子どももおとなも“共に育つ”ための10ヶ条」では、一般社団法人次世代SMILE協会の杉山舞さんをお迎えし”保育のヒント”を探っていきます。

第七回目のテーマは、「何でも楽しくしてしまうことの大切さ」。これは、次世代SMILE協会が提唱する「人の可能性を伸ばす10の黄金法則」(以下、10ヶ条)の七つ目に掲げられています。


人の可能性を伸ばす10の黄金法則

「何でも楽しくしてしまう」とは?見方や関わり方で変わる“楽しさ”の考え方

ー 「何でも楽しくしてしまう」とは、具体的にどのようなことを指すのでしょうか。

杉山さん:「何でも楽しくしてしまう」という考え方は、目の前の出来事そのものを変えるのではなく、自分の見方や関わり方によって感じ方が変わっていくことを表しています。

私たちの日常には、好きなことや楽しいことばかりではなく面倒に感じることや苦手なこともやらなければならない時がありますよね。そうした時に嫌々取り組んでいるとなかなか発想が広がらず、時間だけが過ぎてしまうこともあります。しかし、少しだけ捉え方を変えてみると同じ出来事の中にも新しい発見や面白さを見出せることがあります。

禅の言葉に「遊戯三昧(ゆげざんまい)」という言葉があります。これは「楽しいことをするのではなく、することを楽しくしてしまう」という意味を持ち、人生のあらゆる瞬間を遊ぶように味わい尽くすあり方として捉えられています。

子どもたち

スマイルシップスポーツ(以下、SSS)が大切にしている「楽しさ」も、この“遊戯三昧”に近い感覚です。単に笑ったり盛り上がったりすることではなく、子どもがその瞬間に夢中になり自分らしく関わっている状態そのものを「楽しさ」と捉えています。

私自身や周囲の方の経験を通しても、この「何でも楽しくしてしまう」という考え方は、自分の状態や感じ方に気づくきっかけを与えてくれるものだと感じています。そして、その気づきをもとに関わり方を変えていくことで、物事に主体的に向き合い、結果的に“楽しみながら進める”ことにつながっていくのではないかと思います。

ー “楽しくする”ではなく“楽しくしてしまう”としているのは、特別な意味が込められているのでしょうか。

 

杉山さん:日本語の「~してしまう」という言い方には、「する」に含まれる「意図して行う」というよりも、「気づいたらそうなっていた」という自然なニュアンスが含まれています。

「楽しくする」と言うと、楽しさを頑張ってつくり出そうとする意図や工夫が前面に出てきますが、「楽しくしてしまう」という表現には、関わり方によって自然と楽しさが沸き上がってくる、という感覚が含まれているように思います。

それは何か特別なことを加え続けるというよりも、今ある状況や人との関わり方を少し見つめ直すことでその場の質そのものが変わっていくというあり方なのかもしれません。

子どもの“夢中”を大切にするために、意識していること

ー 子どもの“楽しさ”を大切にするうえで、関わる際に意識されていることはありますか。

杉山さん:SSSの中で子どもが「自分らしく」いられるよう、一人ひとりの特性や表情に着目しながら関わることが大切だと感じています。例えば新しいスポーツに取り組んだり、あまり好きでないことを行ったりする際、子どもたちの中には少し戸惑い、緊張した表情が見られることがあります。また、難しいスポーツに挑戦する際には、その出来に納得できず、表情が曇ってくることもあります。

「楽しい」を一緒に見つけていったAくんとのエピソード

以前、SSSでゴルフに挑戦した際、クラブに当たってはいるものの、Aくん自身はうまくいっていないと感じている様子が伺えました。そのため「当たったね。どうかな?Aくんはどう思う?」と聞くと、首を傾げていました。

私は「そうか。今よりももう少し上の方に当たると、ボールがもっと上手に飛ぶかもしれないね。」と伝えると、Aくんは自分でそれをイメージしてクラブを振り、ボールが高く飛んでいきました。Aくんはそれをじっと真顔で見つめていたので、「今のはどうだった?」と聞くと、大きく頷き納得していることが伝わってきました。

男の子が、ゴルフ練習場でスイングの練習をしています。

このような場面では、大人が「楽しませよう」とするあまり、子どもの気持ちを置き去りにしてしまうことがあります。例えば、子どもに成功させてあげたい、楽しいと思ってほしい一心で、子どもの反応や表情を十分に捉えないまま「いいね!」と言ったり、できていないのに「ナイス!」等と言ったりすることです。

SSSでは、コーチも勇気をもち、子どもの表情や出来具合を一旦受け止め、一緒にそれぞれが感じる“楽しさ”を見出していくことを大切にしています。

子どもが挑戦する際、このAくんのように、必ずしもはじめから“楽しい”と感じられることばかりではないかもしれません。そうした時に、その状況を共に確認したり、どう工夫したらうまくいくかを考えたりすることで、今まで知らなかった楽しさを見出すことにつながる可能性があると感じています。

「どうしたら少し楽しくできるだろう?」問い直すことで見えてくるもの

ー 取り立てて楽しいことでなくとも“楽しくしてしまう”ためのコツがあれば教えてください。

杉山さん:私たちの日々の生活は楽しいことばかりではありませんよね。少し面倒や苦手と感じた際に“楽しくしてしまう”ことは、決して簡単なことではないと思います。

そんなときこそ、「どうしたら少し楽しくできるだろう」と問い直してみることが、一つのヒントになると感じています。

私が関わる保育園で、「何でも楽しくしてしまうことの大切さ」についてお話しした際、主任のB先生が、他の先生とのコミュニケーションに苦手意識を持っていることを話してくれました。

というのも、元々B先生は業務を単独で効率的に行うことが得意であったため、他の先生とはなるべく距離を置きながら業務に当たっていたようなのです。しかし、主任として他の先生方の育成も任されるようになり、職員間の関係性構築が保育の連携、ひいては子どもたちの居心地の良さにつながっていくことに気づかれました。

このようなあまり気が進まない「ちょっと面倒だな、でも変えた方がいいのかな」と思うような場面で、本来ありたい姿と現状を見つめ、その差を埋めていくことは「何でも楽しくしてしまう」ことにつながる方法の一つであると思っています。

保育士2人がテーブルを囲み、園内で穏やかに話し合いをしている様子。

私はその当時、どのようにするとB先生にとっての“楽しさ”につながるかを、下記のように一緒に考えました。

■B先生と整理したこと

①B先生の望む“楽しさ”と現状のギャップを把握する
→子どもたちにとって居心地の良い空間をつくるためには、先生同士が良いコミュニケーションを取れていた方が良いと思っている。でも今は少し面倒でもあり、距離を置いている。

②ギャップに対して、何を変える必要があるのか
→自分とは違う意見や発想にも耳を傾ける必要がある。風通しの良い環境をつくる必要がある。

③“楽しさ”のためにできることを考えてみる
→まずは先生の話や意見に興味を持って、耳を傾けてみることから始める。


このように段階にわけて具体化したことで、B先生は「こういう人もいるんだ」、「こんな考えがあるんだ」、「自分にはない発想だな」と価値観や考えの違いを楽しみ、楽になることができたと教えてくれました。

日々忙しく業務に取り組む中で、自分の望んでいる楽しさと実際の行動との間に少しずつズレが生じてしまうことは、誰にでも起こり得ることだと感じます。そうした小さなズレが積み重なっていくと、本来望んでいた自分自身の保育観・保育理念を見失ってしまう可能性もあるのではないかと思います。

B先生とのやり取りを通して、見方や関わり方を少し変えることで、その時間の質が変わり本来大切にしたかった“楽しさ”につながるのだと、改めて感じた経験となりました。

先生方や保護者の方々の中で、今ご自分の置かれている状況を楽しめていないと感じられるときは、「自分はどうなると楽しい?」「どうなることを望んでいる?」と問うところから始めてみてはいかがでしょうか。

ー 「どうしたら少し楽しくできるだろう?」と問い直すことが、“楽しさ”につながっていくのですね。杉山さんご自身もそうした考え方を意識されることはありますか?

杉山さん:はい、私自身も日頃から意識するようにしています。例えばセミナーに初挑戦することになった時、「うまく話さなければ」「全員に満足してもらわなければ」と考えるあまり、とても憂鬱な気持ちになっていました。

その時、「なぜこんな嫌な気持ちになってしまうのだろう。楽しめていないのはなぜだろう?」と立ち止まって考えてみました。すると、「全員に満足してもらいたい」、「上手く見せたい」といった、自分ではコントロールできない評価を求めていることに気づいたのです。

また「すべての質問に完璧に答えられる人でなければならない」と、自分自身で必要以上にハードルを上げていたことにも気づきました。

そこで立ち返り、「伝えたいことを丁寧に届けること」、「答えがない質問にはその方と一緒に考えること」が自分の役割であり、楽しさなのだと捉え直した時、ようやく気持ちが軽くなり、セミナー当日までプロセスを楽しめるようになりました。

この経験以降、あまり気の乗らないことと出会った時には、「どうなったら楽しくなりそう?」と自分に問いかけることが習慣となり、その場を楽しめるようになってきました。

「どうやったら楽しくできるか」と問うことは、自分の中にある不安やこだわりに気づき、それらを手放すきっかけにもなります。日々の中でこの問いを持ち続けること自体が、「何でも楽しくしてしまう力」を少しずつ育てていくのだと感じています。

【編集後記】
「楽しいことをする」のではなく、「することを楽しくしてしまう」。今回、杉山さんのお話を伺いながら、“楽しさ”とは単に笑ったり盛り上がったりすることだけではないのだと改めて感じました。保育の現場には、思うようにいかないことや、少し気が重くなるような場面もありますよね。そんな中で「どうしたら少し楽しくできるだろう?」と問い直してみることが、自分自身の気持ちや子どもとの関わり方を見つめ直すきっかけになるのかもしれません。
次回は10ヶ条の「励ますことの大切さ」をテーマにお届けします。どうぞお楽しみに!

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杉山 舞(すぎやま まい)

インタビュイー:杉山 舞(すぎやま まい)

一般社団法人 次世代SMILE協会 主任研究員。社会福祉士。国際バカロレア教員資格(初等教育プログラム:PYP)保有。「共に育つ=共育」を理念に、保育者や保護者、子どもたちが互いに学び合うプログラムを企画・運営。スポーツを通じて“生きる力=人間力”を育む「スマイルシップスポーツ」を実践し、保育や子育て現場への応用にも力を注いでいる。母は元プロテニスプレーヤー・杉山愛さんのコーチを務めた杉山芙沙子さん。

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