こんにちは! ウェルミ―ジョブ編集部員の田上です。
「保育の味方!子どももおとなも“共に育つ”ための10ヶ条」では、一般社団法人次世代SMILE協会の杉山舞さんをお迎えし”保育のヒント”を探っていきます。
第九回目のテーマは、「ほめることの大切さ」。これは、次世代SMILE協会が提唱する「人の可能性を伸ばす10の黄金法則」(以下、10ヶ条)の9つ目に掲げられています。
「ほめる」=「評価する」ではない
ー 子どもにとって「ほめること」はなぜ大切なのでしょうか?
杉山さん: 保育士の先生方に「褒める」とはどのようなイメージかを伺うと、何か新しいことができるようになった時や、他と比較して秀でている時などに言葉をかけること、と捉えていらっしゃる方が多いようです。そして「子どもを褒めることって難しい」と感じている方もいらっしゃいます。
たしかに「褒める」という言葉の意味を調べると、「人のしたこと・行いをすぐれていると評価して、そのことを言う。たたえる。」とあります。つまり「褒める」には、相手の行いや結果に対して、褒める側が「優れている」「良い」と評価する側面が含まれているということです。
そう考えると、何かができるようになったり、一定の基準に達したりしなければ「褒められない」と感じてしまうのも無理はありません。それでは、褒めることのハードルがとても高くなってしまいますよね。
10ヶ条での「ほめること」とは、自分や他者の変化に気づき、その事実を伝えることを表しています。つまり、できた・できないを評価するのではなく、一人ひとりの小さな変化や成長に目を向け、気づいたことを言葉にして伝えるということです。
「前よりも丁寧にできるようになったね」「今日はこんなことに挑戦していたね」と、その人自身を見て気づいたことを伝えます。こうしたやり取りを重ねることで「自分のことを見てもらえている」という安心感が生まれ、子どもと大人の関係性やコミュニケーションを深めるきっかけになると感じています。
ー 「ほめること」においても「絶対評価」は大切なのでしょうか?
杉山さん: 先ほどお話ししたように、10ヶ条の「ほめる」は、一般的な「褒める」が持つ“評価する”という意味合いとは少し異なります。
10ヶ条で大切にしている「絶対評価」も、他者と比較するのではなく、その人自身の変化や成長を見るという考え方です。つまり「ほめる」ことと「絶対評価」には、その人自身を見るという共通した視点があります。
そのため、「ほめる」ために何か特別な結果を出したり、誰かより秀でていたりする必要はありません。また、無理に良いところを探して、思ってもいないことを伝える必要もありません。まずはその人が前と比べて変化したところや、今できているところに気づけることが、「ほめる」ことの第一歩になると考えています。
■10ヶ条が意味する「ほめる」とは?
①誰かと比べない
→他者と比較するのではなく、その子自身の変化や成長を見る。
②特別な成果がなくてもいい
→何かができた時だけでなく、小さな変化にも目を向ける。
③その子自身の変化や「今できていること」に気づく
→気づいたことを具体的な言葉にして伝える。
「上手!」「すごい!」だけでは伝わらない?良いほめ方のコツ
ー 子どもには、具体的にどのような言葉をかければよいのでしょうか?
杉山さん: 「褒める」というと、できていることに対して肯定的な言葉をかけることと思われがちですが、10ヶ条の「ほめる」で大切にしているのは、何でも肯定的に言い換えることとは少し異なります。
まずはその子の姿をよく見て、できていることも、まだできていないことも事実として受け止め、それを言葉にして返していくことが大切だと感じています。
その意味では、10ヶ条の「ほめる」は、承認やフィードバックといった感覚に近いのかもしれません。できていることばかりでなく、「こうしたらもっと良くなりそう」ということも含めて、次につながる言葉を伝えられることが、良い「ほめ方」につながるのではないかと思います。
ー 子どもをほめるときは、「上手!」「すごい!」だけでなく、具体的に伝えることも大切なのでしょうか?
杉山さん: 私たちが先生方とスマイルシップスポーツ(以下、SSS)を実践する中でよく起こる勘違いに、「できていないことをできているように伝えてしまうこと」があげられます。
例えば、テニスのワンバウンドヒットに挑戦した際、ボールに当たっていないのに「いいね!上手!」と伝えてしまうことがあります。このとき、何が上手くできているのかが子どもに伝わらないままだと、ラケットの正しい面の向きや振り方、ボールが当たる感覚など、本来そのスポーツが持つ楽しさを知ることなく終わってしまう可能性があります。
そのため「思いっきりスイングできているね」「よくボールを見ているね」、または「振るタイミングが少し早いかもね」「こうやって持ってみようか」といった具体的なフィードバックを伝えられると、その子自身が一球ごとに自分の動きに気づき、次に何をしたら良いかがわかるようになります。
こうしたやり取りを重ねることが、子ども自身の「できた!」という実感や、そのスポーツを「もっとやってみたい!」と感じる楽しさにつながっていくと感じています。
■子どもに伝わる「ほめ方」の3つのポイント
①見えた事実を具体的に伝える
→「上手!」だけでなく「よくボールを見ていたね」など。
②できていないことを無理にほめない
→何でも肯定的に言い換える必要はない。
③次の行動につながる言葉を添える
→「こうしてみたらどうかな?」と具体的に伝える。
“ほめ上手”になるための「気づきのアンテナ」と「言葉の引き出し」
ー 保育者が“ほめ上手”になるために大切なことは何でしょうか?
杉山さん: ほめ上手になるためのポイントとして、「気づきのアンテナ」をたくさん持つこと、そして、気づいたことを様々な言葉で伝えられる「引き出し」を持っていることがあげられます。
まず、気づきのアンテナを持つことは、第3回の【#3 気づくことの大切さ】でもお話ししましたが、私たち大人が様々なことに興味を持ったり、学んだりすることが大切であると感じています。
例えば、保護者の方は、日々わが子の成長を見ているからこそ、その姿が自分の中での「当たり前」になっていることがあります。そんな中、同じくらいの年齢の子どもと遊ぶ機会などに、さまざまな言動や様子を見聞きするなかで、これまで何気なく見ていたわが子のジャンプの仕方や言葉の使い方などにも「こんな特徴があったんだ」と、改めて気づくことがあるのではないでしょうか。
こうして、自分がこれまで持っていた「当たり前」とは異なる環境や姿に出会うことは、子どもを見る観点を増やすことにつながるように感じます。
ー 子どもの「できていないところ」に目が行ってしまう場合は、どうすればよいのでしょうか?
杉山さん: 「ほめる」で大切なことは、気づいた時にそれを伝える言葉の引き出しを持っていることだと思います。
ほめることは承認に近いとお伝えしたように、まずは目の前の子どもの姿に気づき、それをどのような言葉で伝えるかが大切です。
保護者の方の中には「どうしても、子どものできていないところばかりに目が行ってしまう…」という方もいらっしゃいますが、私はそれ自体が悪いことだとは思っていません。なぜなら、できていないところであっても、まずはその子の姿を見て、変化や状態に「気づいている」からです。
大切なのは、その少しネガティブな気づきをそのまま否定的な言葉として伝えるのではなく、どのような言葉にして相手に返すかということなのだと思います。
例えば、以前SSSに参加している子どもを見て、「うちの子は落ち着きがないし、全然先生の話を聞いていないですね……」と心配された保護者の方がいらっしゃいました。
その子の状態をネガティブなまま伝えると、「少しは落ち着いて、先生の話を聞きなさい!」となってしまいますね。一方で、その子の今の状態を受け止めたうえで「どうすると良いか」を具体的に伝えると、「今先生がお話ししているね。白い線に座って先生のお話を聞いてみようか」「先生のお話を聞けたら、次やることがわかるかもしれないね」といった声かけができるかもしれません。
このように、身体の向きや場所、色、数字等の具体的な表現や行動の例を取り入れながら、「どうすると良いか」を言うと、子どもにも伝わりやすいように思います。
「受け止めてもらえた」という経験が、関係性を育てる
ー 言葉の伝え方によって、子どもとの関係性も変わっていくのでしょうか?
杉山さん: 言葉の伝え方でいうと、私自身が母からかけられた言葉が思い出されます。私は、母から「舞ちゃんって面白いわね」「ユニークだね」とよく言われていました。
今思い返すと、それは私が母とは異なる発想や意見を言った時にかけられた言葉であったのですが、私はその言葉によって「自分の考えを受け止めてもらえた」という安心感を得ていたように思います。
その一言があったことで、たとえその後「私はこう思うんだよね」と母に違う意見や考えを言われても、そこに耳を傾けることができたのだと思います。
そして現在に至っても、色々なことを話したいと思う親子関係の構築につながったと感じます。もしも当時、「え、それは違うでしょ」と否定されていたら、その後も自分の考えを素直に話したいと思える関係にはつながっていなかったかもしれません。
自分なりの「ほめ方」を見つけていこう
ー 最後に、“ほめ上手”になるために意識したいことを教えてください。
杉山さん: 気づきのアンテナや言葉の引き出しは、最初からたくさん持っている必要はないと思います。実際に言葉にして伝え、子どもの反応を見ながら、「これは伝わったな」「これは少し違ったかな」と試すことも面白いかもしれません。
その積み重ねによって、自分に合った「ほめ方」が少しずつ見つかっていくのではないかと思います。
ぜひご自分なりの「ほめ方」を、子どもたちとの関わりの中で探してみてはいかがでしょうか。
関連キーワード
インタビュイー:杉山 舞(すぎやま まい)
一般社団法人 次世代SMILE協会 主任研究員。社会福祉士。国際バカロレア教員資格(初等教育プログラム:PYP)保有。「共に育つ=共育」を理念に、保育者や保護者、子どもたちが互いに学び合うプログラムを企画・運営。スポーツを通じて“生きる力=人間力”を育む「スマイルシップスポーツ」を実践し、保育や子育て現場への応用にも力を注いでいる。母は元プロテニスプレーヤー・杉山愛さんのコーチを務めた杉山芙沙子さん。
関連記事
-
毎日の保育からはじめる食育~「食べてみたい!」を育てる10のアイデア~【今回のレシピは“豆腐ハンバーグ”】
特別企画 -
【11月の保育製作アイデア⑨】勤労感謝の日の製作に!お花が開く『お花のメッセージカード』
特別企画 -
【11月の保育製作アイデア⑧】勤労感謝の日の製作に!手形・足形で作る『ぺったん!お仕事図鑑』
特別企画 -
【11月の保育製作アイデア⑦】勤労感謝の日の製作に!気持ちを伝える『ありがとうフォルダー』
特別企画 -
【11月の保育製作アイデア⑥】七五三の製作に!紙コップで作る『七五三メダル』
特別企画 -
【11月の保育製作アイデア⑤】七五三の製作に!葉っぱスタンプで作る『似顔絵ちとせあめ袋』
特別企画