杉山舞さんインタビュー:他の子と比べない~子どもを育てるスポーツ共育編~(#1)

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杉山舞さんインタビュー:他の子と比べない~子どもを育てるスポーツ共育編~(#1)

【New me!Well me!】

「うちの子の一番ってなんだろう?」そんな問いに、スポーツを通して向き合うのが「スマイルシップスポーツ」です。運動能力だけでなく、コミュニケーションを通じて子どもの良さを見つけていくこのプログラムについて、次世代SMILE協会主任研究員の杉山舞さんに、そのねらいや実際の取り組みの様子を伺いました。 前編の<誰かと比べない~子どもを育てるスポーツ共育編~(#1)>では、スマイルシップスポーツの考え方と、誰かと比べない子どもとの向き合い方に迫ります。

後編の記事はこちら。


杉山 舞

一般社団法人次世代SMILE協会 主任研究員

「一般社団法人次世代SMILE協会」とは :子どもと、子どもに関わる保育士や保護者たち(アントラージュ)が、プログラムやセミナーを通して、自分にとっての幸せを見つけられるよう活動中。大人が子どもと共に学び、成長する【共育】を目指している。渋谷区より委託を受け、スポーツを通した子育てを発信する渋谷スポーツ共育プラザ&ラボ “すぽっと”なども運営。


スポーツを通して「その子の一番」を見つける、スマイルシップスポーツの考え方

ー 「スマイルシップスポーツ(以下、SSS)」とは一体どういうものなのか、教えてください。

杉山さん:SSSは、元プロテニスプレイヤー杉山愛の母であり、コーチを務めた杉山芙沙子によって開発されました。トップアスリートが幼少期にどのように親と関わっていたかというコミュニケーションの部分に着目し、その共通点をもとに作られたプログラムなんです。

共通点の例としては、そのスポーツが大好きである点や、スポーツを通して家族のコミュニケーションが非常に活発に行われていたという点がありました。そういったことから、単にスポーツを行うだけでなく、スポーツを通したコミュニケーションを大切にしながら、子どもの一番を見つけていくという内容になっています。スポーツをすることで身につく「諦めない力」や「人を応援する力」、「自分自身を上手に表現する力」というのは、アスリートになるだけでなく、どんな子どもにも、そして私たち大人にとっても必要な力だと考えています。

ー 一般的なスポーツ教室との違いについて具体的に教えてください。

杉山さん:一般的なスポーツプログラムというと、跳び箱が何段跳べるかや、何メートルを何秒で走れるかといったことに目を向けることも多いかもしれません。一方で、SSSは先ほどお話したコミュニケーションの部分を特に大切にしているので、スポーツプログラムの合間に、コーチと対話する機会が多くあります。また、子どもが自分の考えを表現しやすいように、自分自身と向き合う時間をしっかり確保することもSSSならではだと思います。

(渋谷区にあるSSSの教室での様子)

ー 「共育」というコンセプトを掲げていますが、なぜ大人と子どもが「共に育む」ことを重視されているのでしょうか。

杉山さん:代表がこの考え方を持ったのは、教育者でも親でも、100人いれば100通りの考え方があるということが大きいと思います。人によって様々な背景や経験を持っている中で、「子どもにとってこれが正しい」という答えは1つではないですよね。その中で、子どもにとって大切なことは何だろうということを考えるために、「(大人も)一緒に考える」というスタンスが大切だと思っています。共に話し合ったり、考えたりする中で、子どもにとって一番良いことが見つかっていく。その姿勢を持ち続けることが一番の解決策であり、子どもへの寄り添いに繋がるのではないかという考えから、「教育」ではなく「共育」という想いを大切にしています。

ー SSSは渋谷区の保育園などでも導入されています。保護者から支持されている点はどんなところにあるのでしょう?

杉山さん:たとえば渋谷区のように情報感度の高い地域ではもちろん、全国的にも保護者の方々はいろいろな情報を比較・検討されています。その中で、SSSは科学的根拠があり、さらに情報に偏りがないので、多くの方に安心感を持っていただけているのだと考えています。それに加えて、スポーツを通して子どもの成長を一緒に見ることができるという点が新しかったのではないでしょうか。コーチは保護者に対し、子どもが前回よりできるようになったことや、保護者がまだ気づいていなかった良さなどを共有させていただき、「(こんな風に)素晴らしいですね」と、保護者とは違う角度でその子の良さをお伝えしたりします。「親としても一緒に成長できる」といった感想をいただけることもあります。そういった「大人も一緒に共有できる」部分は、スポーツ教育という分野では新しい視点だったのではないかと考えています。

ー SSSが保育の先生方からも受け入れられている理由はなんだと思いますか?

杉山さん:SSSには、保育の先生のスキルの基盤である文科省の『幼児期の終わりまでに育ってほしい姿』の内容に通じる部分があります。SSSを行うことで「普段の保育業務がうまくいくようになった」という声もいただくので、現場のスキル向上に繋がるところが受け入れられている理由なのかなと思っています。あとは何より、保育の先生方は日々現場で目まぐるしく働いていらっしゃる中で、自分自身と向き合う時間をなかなか取れないですよね。私たちがプログラムを実施することで、先生にはそういった時間を少しでも作ってほしいなと考えています。

(SSSを導入している子ども園での様子)

「教育」ではなく「共育」へ──大人と子どもが共に育つための10ヶ条

ー SSSには10ヶ条という考え方があるそうですが、どういったものなのでしょうか?

杉山さん:10ヶ条というのは、私たちがこのスポーツ共育プログラムを提供する中でとても大切にしている考え方をまとめたものです。その根底にあるのは「子どもは社会からの預かりもの」という視点です。一人ひとりの子どもは生まれたときから社会の一員です。だからこそ、大人が一方的に教えるのではなく対等な関わりの中で子どもの長所を最大限に引き出していくことを目指しています。10ヶ条には日々の関わりの中で実践するためのヒントが詰まっています。一見するととてもシンプルで、「当たり前では?」と感じる内容も多いかもしれませんが、実際に意識して取り組んでみると奥が深く、さまざまな場面に当てはめて考えることで「そういうことか」と大人自身も毎回新たな学びを得られる内容になっています。

(画像提供/「一般社団法人次世代SMILE協会」)

ー 先ほど「子どもの一番を見つける」というお話がありましたが、その見つけ方や声かけの仕方について意識されていることはありますか?

杉山さん:10ヶ条の1つに「絶対評価」という考え方があるのですが、絶対評価の反対は「相対評価」で、人と比べて自分がどの位置にいるかという考え方です。相対評価ではなく、その子自身が昨日より今日、今日より明日どんな風に成長や変化をしているかというプロセスに着目する絶対評価が大切だと考えています。保育士に限らず親もそうですが、子どもの状態を完全にニュートラルな状態で見るのは結構難しいことだと思います。実際、兄弟がいたらその子たちと比べてしまったり、自分の若い頃と比べてしまうことは多くあります。そのため、まっさらな気持ちでその子の変化や強み、弱みに着目できるように、その子自身を絶対評価で見てあげられるとよいのではないかと思います。

ー 杉山さんがプログラムを実践されているとき、終始笑顔で素敵でした。あのときも絶対評価の視点で子どもたちと向き合われていたのですね。

杉山さん:ありがとうございます(笑)。これだけ長い時間、子どもたちへの指導に携わらせてもらっていても、毎回ゼロからのスタートだなと思うんです。自分が積み上げてきた固定観念にとらわれず、その日その瞬間の子どもに目を向けるからこそ、小さな「できた」にも気づけると思っています。「できた」にはいろいろなレベルがありますが、本当に日々いろいろな変化があり、それを見つけるのが楽しいという想いが一番にあるので、それが私自身の笑顔に繋がっているのかもしれません。

(SSSを導入しているこども園での様子)

ー ありがとうございます。前編の最後に、日々現場で頑張っている保育士さんへメッセージをいただけますか。

杉山さん:先ほども申し上げた通り、目まぐるしく忙しい中で働かれている保育の先生たちには、ぜひ自分の幸せ、そして楽しさをどんどん見つけて、まずはご自身がハッピーになってもらいたいなと心から思っています。私はいろいろな保育士の先生方とお話しさせていただいており、皆さん本当に子どもが大好きで素敵な方ばかりですが、業務や人間関係でご自身を追い込みすぎてしまうこともあるように感じます。だからこそ、まずは自分を大切にし、内なる声に耳を傾けてほしいと思います。そうすることで、子どもたちへの愛情もより豊かに届けられるのではないかと思います。


編集後記

スポーツを通して子どもの「一番」を見つけ、大人も共に成長するという「共育」という理念。杉山さんが子どもたちに向けて注ぐ情熱と笑顔を見つめる「大人」の私もまた、いま成長させてもらっているのだと感じました。次回後編では、杉山さんご自身が受けた幼少期のエピソードを起点に、プログラムを象徴する「10ヶ条」をさらに深堀りします。子どもとの関わりに迷ったとき、きっと背中を押してくれるヒントが見つかるはずです。

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ウェルミーマガジン編集部

執筆者:ウェルミーマガジン編集部

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