【New me!Well me!】
前編では、子どもたちの「一番」を見つけるスポーツ共育プログラム「スマイルシップスポーツ(SSS)」の全体像をSMILE協会主任研究員である杉山舞さんにお話しいただきました。後編では、杉山さんの幼少期の経験を振り返りながら、同じく主任研究員で渋谷スポーツ共育プラザ&ラボ “すぽっと” 施設長の小林さんも交え、SSSの基盤となる「10ヶ条」という考え方について深掘りしていきます。
杉山 舞
一般社団法人次世代SMILE協会 主任研究員
小林 亜矢
一般社団法人次世代SMILE協会 主任研究員 / 渋谷スポーツ共育プラザ&ラボ “すぽっと” 施設長
「一般社団法人次世代SMILE協会」とは : 子どもと、子どもに関わる保育士や保護者たち(アントラージュ)が、プログラムやセミナーを通して、自分にとっての幸せを見つけられるよう活動中。大人が子どもと共に学び、成長する【共育】を目指している。渋谷区より委託を受け、スポーツを通した子育てを発信する渋谷スポーツ共育プラザ&ラボ “すぽっと”なども運営。
10ヶ条がくれた視点──「比較しない」関わりが、可能性をひらく
ー 杉山さんは、お母様がスマイルシップスポーツ(以下、SSS)の開発者でいらっしゃいますよね。幼少期から10ヶ条をもとにした教育を受けられていたのでしょうか。
杉山さん:そうですね。私の姉(元プロテニスプレイヤーの杉山愛さん)は小さい頃からすごくテニスがうまく、どんどん有名になって、周りがそれを認識して、いつも「姉がすごい」という構図があったのですが、私自身はそれをずっと感じずに過ごしてきました。それは、姉と比較されることなく、両親にのびのびと育ててもらえたからだと思います。これはまさしく、先ほどお話しした絶対評価ですよね。(→前編はこちら)
幼い頃、母から「あなたはどうしたいの?」「何が好きなの?」と問いかけられることが多かったのですが、当時は少し面倒に感じて「決めてくれればいいのに」と思っていました(笑)。けれど大人になり、10ヶ条という考え方を体系的に学んだ今は、あの問いかけが私の可能性を引き出す大切な関わりだったのだと実感しています。
(笑顔が素敵な杉山さん)
ー 小林さんは、SSSが掲げる10ヶ条とはどのように出会われたのでしょうか?
小林さん:大学卒業後にIT企業で働く中で体調を崩してしまったのですが、その時に初めてこの10ヶ条というものに出会いました。私は理系出身なので、振り返ると割と答えが決まっている物事に関わることが多かったので、10ヶ条は自分にとってまったく新しい考え方で、「これに則って行動するとはどういうことだろう…?」という戸惑いからのスタートでした。
少しずつ言葉の意味を行動に落とし込み、試行錯誤を繰り返すなかで、その内容が腑に落ちてきました。すると、肩の荷が降りるというか、すごく気持ちが楽になって生活できるようになり、これまで以上に人に感謝の心を持って接することができるようになりました。
(SSSと出会った当時のことを思い返しながら話してくださる小林さん)
ー おふたりがこのプログラムの軸である10ヶ条の中で、特に共感できる項目を教えてください。
杉山さん:私は『互いを尊重し合うことの大切さ』ですね。子どもの育成に関わる中で、この考え方を持つと自分自身がとても楽になるんです。経験を重ねると「知っていて当然」「答えを出さなければならない」という気持ちになりがちですが、そうではなく、関わる相手とは常に対等。「あなたのことを知りたい、私のことも知ってほしい」という姿勢で、一緒に積み重ねていける関係性が大切だと思っています。
小林さん:私が大切にしているのは2つあります。一つ目は『気づくこと』。まずは自分が何を好きで、何が得意で、どんなことが苦手で助けが必要かに気づくことです。自分を知ることで、自然と「相手はどうだろう?」と視野が広がっていきます。二つ目は『絶対評価』。誰かと比べるのではなく、その人自身の得意や素敵な部分を見ることです。そうすることで、お互いに気持ちよくコミュニケーションがとれると感じています。
(画像提供/「一般社団法人次世代SMILE協会」)
子どもと向き合う毎日に効く、「気づく力」と「言葉の引き出し」の育て方
ー 杉山さんは現場でプログラムを実践し、小林さんは運営側からサポートされています。それぞれの立場だからこそ得られる教育の気づきはあるのでしょうか。
杉山さん:世の中では兄弟姉妹の間で優劣を比べられることが多いのだと、この仕事を始めて実感しました。だからこそ、子ども一人ひとりの個性や面白さを尊重すべきだということを伝えていきたいと思っています。また、「やらない」と言う子どもに対して保護者が不安になる場面もあります。「この子は今できなくて大丈夫か」「この先、秩序を守れないのではないか」と心配されるのですが、私は「私自身もそういう子どもでしたよ」と話しています(笑)。好きなことが見つかれば必ずやる時が来る。だから「今の姿だけで心配する必要はありませんよ」とお伝えしています。
小林さん:私はプログラムそのものの設計には関わっていませんが、現場を俯瞰的に見ていて感じるのは「言葉の引き出しを増やすこと」の大切さです。たとえば「ほめる」ひとつをとっても、最初は「すごいね」くらいしか言葉が出ないことが多いのですが、回を重ねるうちに子どもの小さな変化に気づけるようになり、「前よりできたね」「ここが得意なんだね」と、自然に具体的な声かけが増えていきます。これには声をかける側も、いろいろな経験を通して、少しずつ引き出しを増やしていくことが大事なのではないかと思っています。
(SSSを導入している子ども園の様子)
ー 忙しい毎日の中で、子どもの小さな変化に気づいたり、それを言葉で伝えたりするのが難しいという保育士さんもいると思います。何かアドバイスがあればお願いします。
杉山さん:同じものを見ていても、すぐに気づける人と、それを素通りしてしまう人がいるように、「気づく」というのは、自分自身のアンテナがないと引っかからないですよね。ですので、ぜひ保育の先生方にも自分の感性を見つめるための時間を作ってほしいと思っています。たとえば、自分自身が何を見てどう感じるのか、何が好きなのか、何を大事にしたくて、子どもたちに何を伝えたいのかなどです。それが、目の前の景色を変えるきっかけになると思います。
小林さん:やはり先生方がハッピーでいられるかどうかが、とても大事だと思います。先生がハッピーでいることで、その気持ちは自然と子どもたちにも伝わっていくと思います。だからこそ、先生ご自身「好き」や「得意」に気づいて、それを大事にしていただきたいです。
ー おふたりにとって保育士さんとはどのような存在ですか?
杉山さん:保育士さんは子どもの成長に欠かせない存在だと思います。親は日常的に自分の子どもと過ごしますが、どうしても視点は自分の子どもに限られてしまいますよね。でも保育士さんは多くの子どもと接しているからこそ、幅広い視点を持ち、専門的な学びを活かしてその子を捉えてくれる。本当にエキスパートだと思います。だからこそ、働き方や待遇も含め、社会全体でさらにしっかりと評価されていってほしいです。
小林さん:私は共働きなので、子どもを朝から夕方まで先生方に見ていただいているので、どうしても子どもの変化に気づけない瞬間はあります。そのため、子どもの成長や変化を丁寧に伝えていただけるのが、何よりの安心につながっています。子どもにとってはもちろん、私のような親にとっても先生方の存在が心の支えです。
ー では最後に、おふたりにとって「共育」とは何かを教えてください。
杉山さん:私にとっての「共育」とは、子どもと一緒に考え、共に成長していくことです。子どもにとって何が一番良いかを考えるには、まず教える立場の大人自身が「自分にとって何が良いのか」を問い直すことが大切です。もし大人がすべての正解を知っているとしたら、それはとても小さな世界で終わってしまいます。しかし、子どもたちと一緒に考え、共に成長していくという姿勢を持つことで、想像もしていなかったような新しい世界が広がっていくと実感しています。
だからこそ、まずは自分の気持ちを大切にし、探究してみることです。普段なら答えを出さなければいけない場面でも、「なんでだろうね?」と子どもたちと一緒に考えてみることから始めてみてはどうでしょうか。
小林さん:杉山さんと同じく、私も常に学び続けることが大切だと思います。そして正解は一つではないという考え方、何でも楽しむ姿勢を持つことで、「自分がすべての答えを持っている必要はないのだ」と、心が本当に軽くなるはずです。「この子を私が教え導かなければならない」という考えは、やがて限界を迎え、大きな重荷となってしまいます。しかし、子どもや同僚、年齢や立場に関係なく、どんな人からも学び取ろうとアンテナを張ることで、自分自身が成長できます。だからこそ、「共育」とは、実は自分自身を楽にしてくれるものなのだということを、お伝えしたいです。
保育のヒント「10ヶ条」について詳しく説明している 杉山さんの連載記事も是非ご覧ください!
編集後記
SSSの基盤となる10ヶ条から、「共育」の本質に触れ、私たち大人もまた成長できるのだと、大きな喜びを感じました。日々子どもたちと真摯に向き合っている保育士というお仕事は、実は自分自身を成長させる「共育」の場でもあります。この記事が、日々の保育に新しい気づきと、さらなる喜びをもたらすことを願っています。
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執筆者:ウェルミーマガジン編集部
介護・医療・障害福祉・保育に関連するお役立ち情報や楽しいコンテンツを随時発信中!みなさんの『自分に合った「ここで働きたい!」に出会える』を目指します。求人サイト<ウェルミージョブ>は会員登録数180万!
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