えぬくんママ(麻希さん)インタビュー:ありのままの毎日が、誰かを勇気づける編(#1)

最終更新日
えぬくんママ(麻希さん)インタビュー:ありのままの毎日が、誰かを勇気づける編(#1)

【New me!Well me!】

SNSでの発信を通じて、多くの人に勇気を届けてきた、えぬくんママ(以下、麻希さん)。飾らない言葉と 笑顔の裏には、迷い、悩み、時に立ち止まる日々もありました。不安と希望のあいだで、少しずつ自分らしい生き方を見つけてきた麻希さんに、その“原点”を伺います。
前編の<ありのままの毎日が、誰かを勇気づける編(#1)>では、障害のある息子(えぬくん)と向き合いながら、“母”であり“一人の人”として生きる麻希さんの言葉と歩みに迫ります。

後編の記事はこちら。

“えぬくんママ”として、ありのままを届けたい

ー ようこそ来てくださいました。まずは自己紹介をお願いします。

麻希さん: 初めまして。SNSでは「えぬくんママ」として活動しています。普段はごく普通のシングルマザーなんですが、InstagramやYouTubeで、知的障害と自閉症をもつ息子・えぬとの日常を発信しています。

(麻希さん:SNS「えぬくんちゃんねる」で、重度知的障害と自閉症をもつ息子(えぬくん)との日常を発信。飾らない言葉とやさしいまなざしで、“ありのまま”を届ける投稿が多くの共感を集めている。)

ー Instagramのフォロワー数約10万人、YouTube「えぬくんちゃんねる」も登録者17万人以上(2026年1月)と、多くの人に支持されていますね。

麻希さん:はい、ありがたいことにここまで広がるとは思っていませんでした。最初は記録のような気持ちで始めたんですが……。「見て元気をもらいました」とか「同じような悩みを抱えていたけど、少し楽になりました」という声をいただくことが増えて、続ける励みになっています。

(写真提供/「えぬくんちゃんねる」)

ー 発信を始める前の麻希さんご自身についても教えてくださいますか?

麻希さん:結婚前は、ウエディングプランナーをしていました。「誰かの心に残る人間になりたい」と思って選んだ、大好きな仕事です。高校の頃からずっと憧れて、専門学校に通って夢を叶えたんですけど、妊娠と結婚を機に、1年ほどで退職しました。

あの頃は、せっかくの夢を中途半端に終わらせてしまったような気がして、ずっと心のどこかに引っかかっていました。でも今、発信を通して自分の活動を振り返ると、若いころになりたかった“人の心に残る人”“人に影響を与えられる人”に少しだけでも近づけているのかもしれないと思うんです。そう思うと、きっとえぬが導いてくれたのかなって感じます。

ー 実は今回このインタビューを受けるのを少し迷われたとか……?

麻希さん: そうなんです、正直、ちょっと迷いました。私は“福祉の専門家”でもなければ、立派な肩書があるわけでもなくて。「私なんかでいいのかな」って。でもYouTubeを続ける中で、「えぬくんちゃんねるを見て福祉の仕事を志しました」とか「支援学校の先生になりたいと思いました」っていう声をいただくことがあって。そのことがすごく嬉しくて。今回のインタビューも、もし私の話が誰かの背中を少しでも押せるならと思ってお受けしました。

孤独のなかで見つけた“つながり”と“気づき”

ー そもそも発信を始めようと思ったきっかけは何だったのでしょうか?

麻希さん: 最初は、ただの情報収集でした。えぬの特性を理解したくて、同じような状況の人とつながりたくて。でも当時は、障害児の子育てを発信している人がほとんどいなかったんです。「自分が見たい世界を、自分でつくるしかないかも」—そう思って発信を始めました。

そのうち「見てるよ」「共感しました」と言ってもらえるようになって。“誰かが見てくれている”と感じた瞬間、世界が少し広がった気がしました。実は発信を始める前は、将来への不安で泣くことも多くて……。誰かの言葉に傷ついたり、自分にかける時間もなく、ただ必死に毎日を過ごしていました。だからこそ、発信を通じて“気持ちを言葉にできる場所”を見つけられたことは、大きな救いでした。

ー 発信を続けることで、気づいたことや変わったことはありますか?

麻希さん: いっぱいありますね。当時の私は、えぬに出会うまで、すごく狭い視野で物事を見ていたと思います。たとえばベビーカーに大きい子が乗っているのを見ると「なんで歩かせへんのかな」って思ってたと思う。でも今はちゃんと背景を想像できる。現に9歳のえぬもまだベビーカーに乗ることがあります(笑)。

理解される努力を忘れないこと、そして自分も“わからなかった側”だったことを忘れないこと。これはえぬが教えてくれた大事な視点です。

YouTubeを通してえぬの世界が少しずつ広がってきたことも感じています。自分が登場する動画を見て画面のテロップを読み、そこから「かわいい」「かっこいい」といった言葉をまねして自然と発語が増えて。 最初はただの遊びのように見えていた時間が、いつの間にか “ことばを好きになるきっかけ”になっていたんです。

ー 動画を拝見するといつも明るく笑う麻希さんがいらっしゃいますよね。日常も笑いが絶えないのでしょうか?

麻希さん: そうですね、日々ほんとにいろんなことが起こるので(笑)。最近の話で言うと、私がえぬにうっかり「うるさい!」と言いすぎてしまってるのか、えぬが大きな声を出した後に「うるさ、うるさ、うるさ〜」って自分にツッコミを入れてて(笑)。思わず「わかってるや ん!」って。

私以外の誰にでも“ママ”って呼んだり、えぬにしか見えてない蚊をパチンと捕まえていたり(笑)。しんどいこともあるけど、笑いながら過ごせるのはこの子のおかげやなと思います。

(写真提供/「えぬくんちゃんねる」)

“やけクソポジティブ”という生き方

ー 発信を続ける中で、大変なことも多いと思います。どのように乗り越えてこられたのでしょうか。

麻希さん: 「もう、心が折れたことは何度もあります(笑)。それでも続けてこられたのは、応援してくれる人たちのおかげです。「えぬくんちゃんねるを見て元気が出ました」とか「共感しました」という言葉に、何度も救われてきました。

発信を始めるまでは、自分が“母親”という役割だけの存在になっていくようで、“麻希”としての自分が少しずつ薄れていくように感じていたんです。でも、誰かの言葉に支えられながら発信を続けるうちに、もう一度“自分”を取り戻せた気がします。

私たちの動画を見て「ありのままでいい」と思ってもらえるなら、それだけで続ける意味があるなと思っています。

ー お話を聞いていると、麻希さんの前向きさにこちらまで明るい気持ちになります。そんな麻希さんにとって、“自分らしさ”とはどんなものだと思いますか?

麻希さん: うーん、難しいけど……最近ようやく分かってきた気がします。私、ほんまに“やけクソポジティブ”なんです(笑)。毎日いろんなことが起きて、落ち込むことも多い。でも「どうせ一日は過ぎるんやから、ちょっとでも笑ってたいな」って思うようにしてて。たぶんそれ が私らしさ。ポジティブというより、もはや“開き直り”に近いけど(笑)。それでも、笑える時間を少しでも増やしたいなって思ってます。

ー そうやって前を向けるようになったのには、何かきっかけがあったんでしょうか?

麻希さん: えぬって感受性がすごく強くて、私の感情がそのまま伝わっちゃうんですよ。私が笑うとめっちゃ笑うし、私がイライラすると一緒にイライラする。だからあるとき、「私が笑ってないと、この子も笑えへんな」って気づいたんです。

それ以来、「自分を整えることは、子どもを笑顔にすること」やと思ってます。今はそれを言い訳に、美容院も行くしネイルもするし、自分を甘やかすようにしてます(笑)。

未来は怖くない。“いま”を生きる

ー 子育てと仕事の両立については、どうお考えですか?

麻希さん: 障害児を育てながらフルタイムはみんな難しいと思います。支援学校には学童がないので、放課後デイがなければ働けない現実もあって。だから私は「外で働く」より、「家でできること」を選んできました。でも最近は「もう少し自分のやりたいことにも挑戦してみたいな」って思うようになりました。ずっと“えぬ中心”で生きてきたけど、いつかは少しずつ“自分”の時間を取り戻してもいいのかなって。

ー 最近、“子離れ”についても考えるようになったとか。

麻希さん: そうなんです。障害を持っているからこそ、人との距離感みたいなものを教えないといけないし、ずっとえぬとベタベタしていられるわけでもない。そんなことを考えると、「私の人生って、えぬしかないやん」って焦ってしまって。それくらい、この子のことが大好きなんですよね。

“子離れ”って、言葉にすると簡単やけど、心がついていかなくて。どこまで手を出していいのか、離れることが正解なのか、いまも迷います。 でも、“えぬくんの母”としてだけじゃなく、一人の人間としても生きていきたい。フルタイムは難しくても、少しずつ外に出て、自分の時間を取り戻したい。いつかえぬに「お母さんもちゃんと生きてるよ」って胸を張って言えるように、その一歩を踏み出していけたらと思っています。

(写真提供/「えぬくんちゃんねる」)



編集後記

麻希さんの話には、飾らない言葉の中に“生きる強さ”がありました。誰かを励まそうと力むのではなく、ただありのままの日々を重ねる姿そのものが、見る人の心をあたたかくしてくれます。後編では、えぬくんと共に歩む中で出会った“福祉”という世界、そして支えてくれる人たちへの想いを伺います。

関連キーワード

ウェルミーマガジン編集部

執筆者:ウェルミーマガジン編集部

介護・医療・障害福祉・保育に関連するお役立ち情報や楽しいコンテンツを随時発信中!みなさんの『自分に合った「ここで働きたい!」に出会える』を目指します。求人サイト<ウェルミージョブ>は会員登録数180万!

関連記事