えぬくんママ(麻希さん)インタビュー:優しさって、特別なことじゃない編(#2)

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えぬくんママ(麻希さん)インタビュー:優しさって、特別なことじゃない編(#2)

【New me!Well me!】

飾らない言葉と笑顔で多くの人の共感を集めるえぬくんママ・麻希さん。前後編の2回にわたってお届けするインタビューです。後編の<優しさって、特別なことじゃない編(#2)>では、えぬくんと共に歩む中で出会った“福祉”という世界、そして支えてくれる人たちへの想いを伺いました。

前編の記事はこちら。

最初に触れた「福祉」という言葉

ー 初めて「福祉」という言葉を意識したのは、いつ頃でしたか?

麻希さん : えぬの支援を受けるために初めて役所に行った日です。案内板にあった「障害福祉課」っていう文字を見た瞬間、胸がギュッとなって。“あぁ、うちの子は障害があるんや”って、頭ではわかってたけど、現実を突きつけられたようで。

でも最初に担当してくれた職員さんが本当に丁寧で。「わからないことがあったら、いつでも電話してくださいね」と言ってくれて、その一言で心がふっと軽くなりました。“福祉”って制度の名前や仕組みだけじゃなく、人の優しさそのものなんやなって思えました。

(麻希さん:InstagramやYouTube「えぬくんちゃんねる」で、重度知的障害と自閉症をもつ息子(えぬくん)との日常を発信。飾らない言葉とやさしいまなざしで、“ありのまま”を届ける投稿が多くの共感を集めている。)

ー えぬくんは今どんな支援を受けていらっしゃるのですか?

麻希さん : 最初に支援を受けたのは、えぬが1歳10か月のときです。療育園に通わせてもらって、作業療法や言語療法など、個別の療育を受けていました。小学校に上がってからは支援学校に通い、今は放課後デイサービスと、訪問リハビリを併用しています。

先生たちとは定期的に振り返りもしていて、すごく密に関わらせてもらっています。関わる方たちの「大丈夫ですよ」という言葉や笑顔に、私もえぬも何度も救われてきました。そうやって支えてくれる人たちのおかげで、今の私たちの生活が成り立っていると思います。

支え合う中で見えてきたもの

ー これまでの支援者の方との関わりで、特に心に残っている出来事はありますか?

麻希さん : そうですね、最初の療育園の先生との出会いと別れでしょうか。本当にあたたかくて、初めて信頼した先生で……まだ言葉も少なくて泣くことも多かったえぬを、焦らず、比べず、ゆっくり見守ってくれる姿が本当にありがたくて。でも、ある日その先生が辞めることになり、先生の目の前で思わず大泣きしてしまいました。当たり前のことですが、「私とえぬは一生障害と付き合っていくけど、先生たちは違うんや」と気づいたとき、胸の奥がぽっかり空いたような気がしました。

けど、その経験があったからこそ気づけたこともあります。“支えてもらうこと”は弱さじゃなく、そこから自分の力を育てていくこと。先生がいなくなっても、「今度は私がこの子を支える番や」と思えたんです。そうやって少しずつ、「私がしっかりしないと」という気持ちが強くなっていきました。

ー とても大切な出会いだったのですね…。そうした経験を経て、支える側と支えられる側の関係については、どのように感じていますか?

麻希さん : どっちが上とか下とかじゃなくて、“お互いが支え合ってる”ってことやと思うんです。先生や支援員さんの「大丈夫ですよ」という言葉に救われることもあるし、私が笑っていることで先生たちが少し安心してくれることもある。そうやって優しさが行き来する瞬間があるんです。

息子の自立が難しい場面では、お願いすることも多いけど、いつも穏やかに受け止めてくれる先生たちの存在が、私の支えになっています。

支える・支えられるって、実は一方通行じゃないんですよね。優しさをもらうたびに、自分も誰かの力になりたいと思える。それが、福祉のいちばん素敵なところやと思います。

(写真提供/「えぬくんちゃんねる」)

支援を“必要な人”へ届けるために

ー 福祉の制度を利用する当事者として「もう少しこうだったらいいのに」と感じることはありますか?

麻希さん : 正直、めちゃくちゃあります(笑)。まず、放課後デイサービスの空きが全然ない。「ここがいいな」と思っても、定員いっぱいで断られることなんてしょっちゅう。“必要な人に必要な支援が届いていない”という現実を、日々感じています。

情報を得る難しさもあります。最初は右も左も分からなくて、ネットで調べたり先輩ママさんにいろいろ教えてもらったり……の繰り返しでした。そうやって一つずつ学んでいったけど、全部の家庭が同じように動けるわけじゃない。

だから、もっと“誰もが自然に必要な情報を受け取れる社会”になってほしい。必要なときに、必要な支援がちゃんと届く。それが、私のいまの願いです。

ー 制度と向き合う中で、ご自身の考え方にも変化があったそうですね。どんなきっかけでそう思えるようになったんでしょうか?

麻希さん : “福祉を利用する”ことに、最初はどこか負い目があったんです。「助けてもらう=迷惑をかけること」みたいに思ってしまっていて。でも、いろんな人に支えてもらううちに気づいたんです。制度を使うことって、甘えることじゃなくて、“自分や子どもを大切にすること”なんやなって。

遠慮しなくていいし、助けてもらうことは悪いことじゃない。そう思えるようになってから、気持ちがずいぶん楽になりました。むしろ今は、「ちゃんと支援を受けることも親の仕事」って思えるようになりました。

(写真提供/「えぬくんちゃんねる」)

これからの私と、福祉との関わり方

ー 今後、福祉の世界とどんなふうに関わっていきたいと考えていますか?

麻希さん : いつか、福祉の仕事に携わってみたいです。今の私にできることはまだ小さいけど、“当事者の気持ちを少しでも分かる人”として、現場の力になれたらいいなと思っています。私にとって福祉は一緒に生きていくもの。えぬが安心して過ごせる居場所や、将来働ける場所を、自分の手でつくるのも夢のひとつです。

ー 今後の発信を楽しみにしている方もたくさんいらっしゃいます。これから、えぬくんとどんな時間を過ごしていきたいですか?

麻希さん : えぬと一緒にたくさん笑って過ごしたいです。きっとこの先も、誰かを羨ましく思ったり、何かを諦めながら生きていく瞬間もあると思います。でも、それも私たちの人生のかたちなんやと思っていて。

えぬに障害があったからこそ見える景色があって、その中で見つける小さな幸せを、これからも大切にしていきたいと思っています。

ー 最後に、福祉の現場で働く方々、そして同じように悩みながら子育てをしているご家族へ、メッセージをお願いします。

麻希さん : 福祉職のみなさんには、ただただ、「この仕事を選んでくれてありがとう」しか出てこないくらい感謝しています。たくさんいる利用者の中のひとりかもしれないけど、受ける側は想像以上に出会いを大切に感じています。

そして、同じように悩みながら日々を過ごしているお父さん・お母さんへ。スマホを開けば、いろんな子育てや“理想の姿”が目に入ってきて、「私はこれでいいのかな……」と不安になることもありますよね。でも、やり方もペースも、ほんまにそれぞれでいいんだと思います。無理に正解を探さなくても、その家の形でゆっくり進んでいけたら。それだけで十分だと思います。

(写真提供/「えぬくんちゃんねる」)



編集後記

取材を終えて感じたのは、「優しさ」は誰かを助けるためだけの力ではないということ。麻希さんの言葉には、支え合う人たちへの感謝と、日々を懸命に生きるすべての人へのまなざしがありました。誰かの「ありがとう」に救われ、また自分の「ありがとう」で誰かを支える―そんな優しさの循環の中で、福祉も、私たちの社会も少しずつ前へ進んでいくのだと思います。

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ウェルミーマガジン編集部

執筆者:ウェルミーマガジン編集部

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