【New me!Well me!】
連載「ベテラン保育士が教える!こんな時、どうする?」で、日々保育士さんの悩みに寄り添う言葉を届けてくれているmisaさん。保育士としての経験に加え、料理家としても活動の幅を広げています。今回は、そんなmisaさんのこれまでの歩みを振り返りながら、保育士時代のエピソードや思い出の一皿、そして「自分の強みをどう活かしていくか」について伺いました。
misaさん
保育士歴12年。保育士、幼稚園教諭、児童相談員、リトミック2級の資格を保有。0~5歳児までの学年担任を経験し、支援保育士としても約3年間勤務。現在は保育士を続けながら、料理家としても活動している。著書も人気を博し、お菓子部門で「料理レシピ本大賞」を受賞するなど、活動の幅を広げている。
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「向いていると思うよ」母の言葉から始まった、保育士への道
― まずは、保育士を目指すようになったきっかけを聞かせてください。
misaさん:きっかけは、保育士をしていた母の言葉でした。実は高校生の頃までは子どもとの関わり方がよくわからず、あまり得意ではなかったんです。近所の子どもとも、どう関わればいいのか戸惑うことも多くて……。でも母が「みさはピアノも弾けるし、絵も描けるし、物作りも好きだから保育士に向いていると思うよ」と勧めてくれて。今思うと、母は私の得意なことや好きなことをちゃんと見てくれていたんだなと感じます。
実際に実習生として保育の現場に入ってみると、子どもたちを好きになるまでに時間はかかりませんでした。関わり方がわかってからはどんどん楽しくなって、今ではこの仕事を選んで本当に良かったと思っています。
― 日々の保育の中で特に「やっていてよかったな」と感じるのはどんな瞬間ですか?
misaさん:子どもたちの「できた!」という瞬間に立ち会えたときです。最初はうまくいかず不安な表情を浮かべていた子が、関わりを重ねる中で少しずつできるようになっていく。その変化をすぐそばで見守れたとき、この仕事のやりがいや喜びを強く感じます。
また保護者の方から「ハサミを上手に扱えるようになりました!」「お箸を上手に持てるようになりました!」と声をかけていただくこともあります。保育園での関わりが家庭へとつながっていると実感できたとき、この仕事の意味をあらためて感じます。
(愛用の保育エプロンをつけて製作に励むmisaさん)
朝起きると涙がでた。自分の力不足を感じた20代
― 保育士としてのこれまでの経験を振り返って、いちばんしんどかった時期のことを聞いてもいいですか?
misaさん:実はクラス担任を受け持っていた20代半ばの頃、自分の能力不足を感じてつらかった時期がありました。「私より他の先生のほうがこの子たちの力を伸ばしてあげられるんじゃないかな、そのほうがこの子たちも幸せなんじゃないかな」ってぐるぐる考えてしまって……。
― そのしんどさの中で、どんな気持ちで過ごされていたのでしょうか。
misaさん:そうですね……乗り越えようとか、そういった気持ちはなかったですね。つらいときはつらいし、無理なときは無理。そんな自分を「それでいいんだ」と認めて、とにかく人を頼りました。
一人で抱え込まないこと。「自分は一人じゃない」と知ることが、あの時の私にはいちばん大切でした。
いろいろなことがありましたが、たくさんの方に支えていただきながら、卒園式までやりきることができました。その中でも、同僚の存在がとても大きかったです。「あの子たちはみさ先生じゃなきゃだめだよ」と、何度も声をかけてもらいました。その言葉を思い出すと、今でもいろいろな感情が込み上げてきて、涙が出そうになります。
― その後、一度ご退職をされたと聞きました。何か思うところがあったのでしょうか。
misaさん:はい、一度その園を退職しました。保育士という仕事そのものが嫌になったわけではなく、あの頃は正直、“責任の重さ”から少し離れたかったんです。
保育士は続けたい。でも、少し違う環境で働いてみたい。そう思い、歯科医院で保育士兼歯科助手として約2年間働きました。
― 歯科でのお仕事はどんな時間でしたか。
misaさん:とても新鮮で良い時間でした。歯科の仕事は、保育園のように毎日の積み重ねで関係性を築いていくというより、その時々の対応が中心です。だからこそ、気持ちの面ではとても救われました。
また、口の中のことや食育に関わることをたくさん学んで知識を身につけることができて、その経験は今の料理研究家としての活動にもつながっています。本当にありがたい時間でした。
― そこから、もう一度保育の現場に戻ろうと思われたのはなぜだったのでしょうか。
misaさん:しばらくすると、ふと物足りなさを感じるようになったんです。「ああ、やっぱり毎日過ごす中で子どもとの関わりを積み重ねていきたいな」と思うようになりました。
子どもたちと毎日関わり、少しずつ変化を見守っていくあの時間。うまくいかない日も含めて積み重なっていく感覚。それが、やっぱり私には必要なんだと気づきました。
そんなとき、今の園長先生とのご縁があり、再び保育の現場に戻ることになりました。
子どもたちを支えているつもりで、実は支えられていた
― 子どもたちと関わる中で「私のほうが救われているな」と感じる瞬間はありますか?
misaさん:やっぱり子どもたちの笑顔を見た時ですね。どんなに気持ちが沈んでいても、子どもたちの屈託のない笑顔に何度も元気をもらってきました。
別に私を励まそうとしてくれているわけじゃないんですよ。でも気づいたら子どもたちの存在そのものに救われているという感覚があって。
保育士って、こちらが支えているつもりで実は支えられている瞬間がたくさんある仕事だなと感じています。
― misaさんが保育士を続ける中で一番大事にしていることがあれば教えてください。
misaさん:やっぱり「一人で抱え込まないこと」です。
完璧な保育士である必要はないと思っています。迷ったり立ち止まったり時にはリフレッシュしたり、弱音を吐いたりしながらでもいい。周りと支え合いながらチームで子どもを見ていくことが、結果的にいちばん良い保育につながると感じています。
祖父との思い出が詰まった“ジャーマンポテト”
― 料理家としての活動についても聞かせてください。そもそも料理を始められたきっかけは何だったんでしょうか?
misaさん:料理を始めたきっかけも母の存在が大きかったと思います。母が料理好きで、いつも台所に立っている姿を見て育ったので私も自然とやるようになったんですよね。
そして、「誰かのために作る楽しさ」や「食べてもらう喜び」を強く実感したのがこのジャーマンポテトでした。
― 先ほど作ってくださったお料理ですね!とってもいい香りがします!
misaさん:小学生の頃に初めて一人で作った料理で、大好きだった祖父が「おいしいね、本当においしい」と言いながら食べてくれて。その言葉が嬉しくて、気づけば何度も作るようになっていました。
このジャーマンポテトは祖父との思い出の味でもあり、「誰かのために作る楽しさ」や「食べてもらう喜び」を教えてくれたひと皿です。今でも私を支え続けてくれています。
(おじい様との思い出の一皿、いい香りが部屋中に広がる)
好きだから続けている、ふたつの大切な仕事
― 保育士として現場に立ちながら、料理家としての活動も精力的に続けていらっしゃいますよね。体力的にも時間的にも大変な面があると思いますが、それでも両方を続けている理由を教えていただけますか?
misaさん:シンプルにどちらも大好きな仕事だからです。あと、SNSで子育てや食に関するお悩みをいただくことも多いので、「”今”の保育をちゃんと知りたい」というのも理由のひとつですね。子育てをされている方々と「感覚のズレ」が生まれないようにしたい。だからこそ、現場を離れずに今の保育を自分の言葉で伝え続けたいと思っています。
それに、子どもたちと過ごす時間は私自身の気持ちをリセットしてくれる時間でもあります。子どもたちといると物事をまっすぐに受け取れるようになって、取り繕わない自分でいられるんですよね。
― 保育の経験が料理につながっているな、と感じる瞬間はありますか?
misaさん:すごくあります! 子どもたちとの砂遊びや泥遊び、製作の時間など、何気ない遊びの中からレシピのヒントをもらうことがよくあるんです。
たとえば以前、泥を”溶かしたチョコレート”に見立ててケーキを作ってる子どもたちがいたんですよね。その自由で柔らかな発想に触れて生まれたのが、私のレシピにある「ザクザク生チョコケーキ」でした。
「好き」や「得意」は、その人らしい保育につながる
― misaさんのご経験から、保育の仕事は「好き」や「得意」が活かされる場面は多いと思われますか?
misaさん:はい、多いと思います。私自身もそうですが「好きなこと」と「得意なこと」って、必ずしも同じじゃないと思うんです。でも保育って、その人それぞれの「好き」や「得意」を活かしやすい仕事だなと感じています。子どもたちも一人ひとり違うように、先生たちもそれぞれ違っていい。
たとえばお花が好きな先生は色水遊びに使える「色が出やすい花」を知っていたり、種から育てるところから一緒に楽しめたりしますよね。スポーツが得意な先生ならサッカーでボールをどう蹴ったらまっすぐ飛ぶかとか、体操が好きな先生は私たちが知らない動きを教えてくれたり。
そうやって自分の「好き」や「得意」を通して、子どもたちの世界を広げてあげられる仕事だと思います。
― 保育士さんが「好き」や「得意」を保育に活かすためのコツはありますか?
misaさん:特別なコツがあるというよりは、まず「自分は何に興味があるのか」を自分自身が分かっていることが大事かなと思います。「得意」や「好き」までいかなくても「ちょっと興味がある」くらいでも十分です。
あと大事なのは、周りの先生と比べて「私はあそこまでできていない」とか「私には何もない」とか思わなくて大丈夫!ってことです。その先生にはその先生の良さがあって、それがその人らしい保育につながっていくんですよね。
だからこそ、日常の中で自分が自然と惹かれているものや大切にしている感覚をぜひ大事にしてほしいなと思います。
(思い出の一皿完成♪)
自分の胸が高鳴るほうへ
― これから先、misaさんが目指したい保育士の姿があれば教えてください。
misaさん:自分ならではの保育の知識を料理ともう少しリンクさせていけたらいいなと思っています。それで悩んでいる保護者の方々の肩の力を抜くお手伝いができたら嬉しいですね。
理想の保育士像は正直ひとつには決められなくて。これまで出会ってきた先生たちの「良いところ」を、少しずつつまみ食いしたいです(笑)。
― 将来に迷っている保育士さんへメッセージをお願いします
misaさん:もし悩んでいるなら「自分はどこに貢献していきたいのか」を考えてみると進む道が見えやすくなるかもしれません。
それと、自分が自分の一番の味方でいてほしい。自分の力を、まずは自分が信じてあげてほしいなと思います。
答えを探そうとしすぎなくても大丈夫。自分の胸がちょっと高鳴る場所に足を運んでみると、ヒントが見つかることもあります。私にとって料理がそうだったように。
― 最後に、misaさんの“思い出の一皿”、ひと口召し上がっていただいても良いですか?
misaさん:(もぐもぐ)……うん、おいしい。じゃがいもの食感がすごくちょうどいい。ホクホク感もしっかり感じられるし、塩加減もちょうどいい。我ながらおいしいです(笑)。
ジャーマンポテトのレシピ
misaさん思い出の一皿「ジャーマンポテト」のレシピをご紹介します♪
【材料】
・じゃがいも(小)2つ260g
・厚切りベーコン 70g
・玉ねぎ(小)1つ150g
・にんにく1片
・オリーブオイル 大さじ1
・<A>バター10g
・<A>塩コショウ適量
・<A>粒マスタード小さじ1お好みで
・<A>パセリお好みで適量
【作り方】
①じゃがいもは皮を剥き新じゃがであれば(新じゃがであれば皮ごと)5mm幅の輪切りに。ベーコンは5mm幅に切る。玉ねぎは薄切りorくし切りにする。
②フライパンにオリーブオイルと半分に切って潰したにんにくを入れ中火にかける。
③香りが出てきたら、じゃがいもの焼き色がしっかりつくまで、両面焼いていく。その間、にんにくは焦げないように焼いているじゃがいもの上に置いておく。
④じゃがいもに火が通ったら、玉ねぎとベーコンを入れ玉ねぎがしんなりするまで炒める。
⑤④にAを加え、炒めて味がなじんだら完成!
編集後記
「私には何もない」と思わなくて大丈夫――misaさんのお話には、そんな優しいメッセージが込められていました。保育も料理も、自分の「好き」を大切にしながら歩み続けるmisaさん。その姿からは、自分らしさを活かすことの素晴らしさを教えてもらえます。迷ったときこそ、自分の胸が少し高鳴るほうへ。その言葉がそっと背中を押してくれるインタビューでした。
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執筆者:ウェルミーマガジン編集部
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