第6期介護保険改正の危うさ

2015-02-13

2月6日に給付費分科会で、介護報酬改定の概要が出たことを踏まえ、地域包括ケアの行方、医療と介護の連携における影響について考える。

マイナス給付だが、施設給付を絞り込み在宅給付の充実をめざすものに

もどかしい、はがゆい。隔靴掻痒(かっかそうよう)という言葉を思い出した。2015年度からの介護保険改正に基づく第六期介護報酬改定(2015年度〜2017年度末)は2.27%のマイナス改定となった。それに基づき全国の市町村による介護保険事業計画がまとまりつつあるが、増え続ける地域の高齢者を支えられる改正となるのだろうか。市町村の動きをみると、かゆい足の裏を靴の上から掻いているような感じを持つ。

マイナス改定ではあるが、施設給付を絞り込み、在宅給付の充実を図ろうという狙いが明らかである。在宅給付では、とりわけ重度の要介護者や認知症高齢者への加算を手厚くはした。訪問看護や2012年4月からスタートさせた訪問看護と介護の24時間定期巡回・随時対応サービスも加算する。一方で特別養護老人ホームなどの施設は基本サービス費を約6%引き下げた。介護事業全体の平均収支差額は8%あるとして、それに見合う引き下げを図ったものだろう。

さらに介護職員の処遇改善を1万2000円まで上乗せをした施設に介護報酬でカバーするという。個別にみると、認知症のグループホームの基本サービス費も大幅に減額された。認知症対策の強化に逆行しかねない問題点もある。介護職の処遇改善も道半ばである。今回の改正が目論見通りなされたとしても、平均賃金で見ると他産業、他職種との差は大きい。

そうした問題点はあるが、在宅重視を強める方向には異論はない。2015年度から市町村で始まる地域包括ケア計画が徐々に実施されるが、在宅の受け皿づくりは着々と進められつつあるのだろうか。

医療と介護の連携と言っても、担う医師が不足している在宅医療の現実

私が関わってきた東京都多摩地区のいくつかの市町村の進捗状況を見ると、厳しいものがある。2月8日午後、東京都国立市の一橋大学で開かれた、在宅医療に取り組む医師らが中心となっている「多摩在宅医療・地域包括ケア研究会」で、武蔵野赤十字病院の医師がこう発言した。「急性期で運ばれた患者を退院させようとしても、在宅医療を担う医師がいないために、退院させられず、やむなく別の病院に転院させるケースもしばしばある。

私が介護保険運営協議会会長を務める小平市も昨年末、地域包括ケア計画がほぼまとまった段階で市民説明会を開催したところ、「近くに在宅医療をしている医師がいないので不安」という声が相次いだ。

要介護となっても地域で在宅で安心して暮らせるためには、もちろん医療だけが必要十分条件ではない。医療と介護の連携、見守りや配食といった生活を支える支援も欠かせない。しかし、医療なければ、安心して生活できない。

同じ研究会のシンポで、調布市の西田伸一医師から、同市医師会で「ちょうふ在宅医療相談室」を開設、退院の際などに「在宅医」を紹介する仕組みもできつつある、と紹介された。町田市医師会でも、在宅医療を担える医師の研修を本格的に取り組みつつある、との報告もあった。在宅医療に向けてようやく医師会が動き出したところもあるが、しかし全体の動きにはなっていない。

地域包括ケアを構築するうえで求められる一つは「規範的統合」である。医師会、歯科医師会、薬剤師会の三師会をはじめとした専門職、その団体がきちんと参画する仕組みを作っていかないと、市町村のばらつきが出てしまう。それが未だ掛け声だけに終わっていないか。

多摩地区も今年度から介護予防・日常生活支援総合事業に取り組むのは2市のみ

行政の動きも鈍い。各市の地域包括ケア計画をみると、多摩地区でも2015年度から介護予防・日常生活支援総合事業に取り組むのは26市のうち稲城市と国立市のみである。地域包括ケアは行政が住民と手を携えて、地域で自立困難な高齢者、家族を支えていく取り組みを新たに構築する、という強いメッセージを出していかないと達成は難しい。

地域包括ケア計画という作文はできた。しかし、これまでの行政の手法やマインドを転換させ、住民の力を取り入れていく行政に脱皮できるか。それが行政の実態を見ると、心もとない。もちろんそれは行政だけの責任ではない。地域住民が行政を変えられるか。

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