認知症の妻の介護でみえたこと−介護家族と医師の視点から その後 vol.4 デイサービス−

2015-05-08

転居先で妻が利用しているデイサービスも、転居前同様、認知症に特化したデイサービスではないが、利用し始めて1年が経った。職員は、妻の認知症の状態や嗜好について少しずつ理解を深め、支援の工夫をしてくれている。

転居前

「要介護3」の認定を受けていた認知症の妻の在宅介護を始め、しばらくしてからケアマネジャーの勧める「デイサービス(通所介護)」(注1)を利用しました。デイサービスは当初、医院の医療法人が行う小規模の認知症対応型デイサービス(「認知症対応型通所介護」)でした。しかし施設から外出する妻を職員が後を追うことが度々あり、負担をかけました。

さらに妻は自宅の2階から転落して腰椎を骨折し、手術を受けました。車椅子の生活となり、そうした利用者への対応が難しい、とケアマネジャーを通して利用を断られました。

このため、近くにある特別養護老人ホームを運営する社会福祉法人が行うデイサービスに変わり、転居までここに通いました。

利用頻度は1週間4日でした。このデイサービスは、認知症にも若年期認知症(注2)にも特化した通所介護ではなく、高齢者が多く通所していました。

転居して通所施設を変える

転居したのは隣接する区ですが、送迎範囲を超えていると、新たなケアマネジャーが新たなデイサービスセンターの利用を勧めました。社会福祉協議会が長く運営してきた京都市内でも古い通所施設です。

利用するに際して、施設の担当者が訪問調査と契約の手続きのため自宅で認知症の妻と面接しました。

私は、そこがどのような施設か、前もって見学しました。自宅から車で5分ほどの住宅地にあり、施設内は古さが目立ち、利用者で混雑しているという印象でした。ここも認知症にも若年期認知症にも特別な介護を提供するものではありませんでしたが、利用することにしました。

利用頻度を減らす

利用頻度を1週間に4回から3回に減らしました。利用時の自己負担を少しでも減らしたいためと、週3回に減らしても私の生活に大きな影響はないと考えたからです。

デイサービスの日は、朝夕の送迎の時間帯はほぼ決まっています。朝は午前8時半から9時半まで、夕方は午後4時半から5時半までです。この時間帯が私の拘束時間となり、自宅待機し、携帯電話に送迎担当の職員から連絡が入り、朝は妻を車椅子に乗せてマンションの玄関の前で待ち、夕方は車の来るのを待ちます。

通所の朝は、妻を起こして、紙パンツをはき替えさせ、朝食の準備をして妻が食べ終わると、着替え、タオル、紙パンツを大きな手提げ袋に入れておきます。通所のない朝はこうした慌ただしい日課をこなす必要がなく、かえって楽に思うことがあります。とくに私が疲れているときは、紙パンツを替えること以外は時間が遅くなってもかまわないのです。

妻を送り出す「ことばがけ」

妻に「デイサービスに行こう」と話しても理解できません。迎えの電話が入ると、単に「迎えの車が来た」と話しかけるだけで外出する行動に出ます。

このことばがけでは納得できないようなとき、理由を聞かれると「整形外科に行こう。足が悪いから車で迎えに来てくれた」などと話します。腰椎骨折の後遺症で、車椅子なしで移動はできますが、歩行は不安定な状態があるので、このことばがけが有効なようです。「受診する」と明らかに「嘘」を言って外出を促すのです。この程度の嘘は認知症介護では許されるでしょう。

どうしても外出したくないと拒むこともあります。この1年間で数回です。一度拒む姿勢になると、何を話してもその行動は変わりません。力ずくで、無理矢理に連れ出そうとしてもうまくいきません。そうした日は、デイサービスを休むことにしています。たとえ拒んでいても1時間後に何もなかったかのように話かけると、外出する気になることはあるのです。デイサービスセンターの職員はそのとき、迎えに行くと言われますが、迷惑をかけることになるので再度試みて出かけることはしません。

デイサービスの日の一番の心配事は、送迎車がマンションの前で待機していても妻が「行かない」と言わないか、ということです。ほとんど出かけるのですが、そのときになってみないとわからないのです。

デイサービスセンターから帰宅するときですが、拒んだのは一度だけのようで、職員の適切な対応で1時間後に自宅まで車で送ってくれました。

外出する妻をみていると、むしろ、どうして外出することに応じるのかが今もって不思議でよく理解できません。何を期待して外出するのかよくわからないのです。本人に聞いても返事はないのです。妻が、認知症であることで私の想像を超えた不可思議な世界に生きているのだろうと思うのです。

デイサービスの利点

デイサービスの日は、午前10時ごろから午後5時ごろまでが私の「自由時間」で、大阪や神戸に遠出できる時間帯です。これが私にとって貴重な息抜きの介護休息の時間です。

レストランや喫茶店で一人昼食を摂り、本を読みます。その日の夕食と翌日の朝食の食材を買って4時ごろまでに帰宅します。これがデイサービス利用の利点の一つです。

デイサービスセンターに妻が行かなければ、その日の予定を変えなければなりません。もっとも「鍵」のおかげで妻を家に置いて2時間ほどの外出は可能です。デイサービスに行かないからと言って、私の生活に大きな影響があるわけではありません。

デイサービスで妻がどのように過ごしているか、ほとんど観てはいませんが、デイサービスセンターの「連絡ノート」にはカラオケを楽しんだとか、ゲームに参加したなどとあります。自宅では食事の他は夫婦で単調な日課で過ごしています。

もともと賑やかなところが好きな妻にとって、デイサービスセンターで過ごすことが、気分的によいと思っています。もっとも帰宅すればデイサービスのことはすっかり忘れていますが、これが利用の二つ目の利点です。

デイサービス利用のもう一つの利点は、センターでの入浴です。妻はタオルや洗剤を用意すれば、自分で身体を洗うことはできます。

在宅介護を始めたころ、衣類が尿や便で汚れて着替えをするときに、汚れた身体の部分だけをタオルで拭いたりするだけで、家で入浴することはありません。転居しても同様で、一段と狭くなった浴室は、便で汚れたときにシャワーを使う以外に利用することはありません。デイサービスで入浴があることはとても助かるのです。

<説明と私見>認知症に特化してない通所介護

介護保険給付のなかで在宅生活支援の主なサービスと、「訪問系」と「通所系」と「短期生活系」があります。妻が利用したデイサービスは通所系の「通所介護」です。しかし現在利用しているデイサービスは認知症の人の通所を念頭においたものではなく、主に身体障害のある高齢者を対象とした通所介護です。

利用しているデイサービスの通所者はほとんどが高齢者で、認知症高齢者も少なくないと聞いています。もっとも若年期認知症の人はほとんどいないそうです。

こうした通所介護施設の介護環境が、認知症の妻に相応しくないとは言えません。転居後おおよそ1年間利用することができました。センターの職員が、妻の認知症の状態や嗜好について少しずつ理解を深め、支援の工夫をしてくれているのです。

認知症対応型の通所施設、さらにはもっぱら若年期認知症の人を対象にした通所施設が妻に相応しいと思われますが、そうした施設は私たちが住む地域にはなく、あったとしても、遠くて通所に要する時間が長くなり、不可能でしょう。

またデイサービスを利用する理由からしてみれば、現在の認知症に特化してないデイサービスでも利用する価値はあります。

通所介護の介護保険施設として最も多いタイプの通所施設で、認知症のない高齢者と認知症のある高齢者、さらには若年期認知症の人が共に利用できるような施設を工夫―認知症症状によるが―をすることが現実的だと考えます。

レスパイトケア

我が国の介護保険制度は、公的医療保険制度と同様に基本的に要介護の被保険者に給付を提供することとなっています。デイサービスについても同様で、サービスを利用するのは要介護認定を受けた妻であって、介護家族の私ではありません。

しかし、実態として介護給付は介護する家族の介護や生活も支えている一面があります。絶え間なしに在宅で介護を続けなければならない家族の息抜きは、在宅介護に不可欠な支援です。さらに介護者の「燃え尽き」を防ぎ、介護疲れを背景とした介護者による被介護者への暴力や虐待を避ける息抜きはとても重要です。

こうした在宅介護者の息抜きや休息をカタカナ英語で「レスパイトケア」(注3)あるいは「休息ケア」と呼びます。

介護保険給付のなかで、こうした支援を含むサービスは、訪問系と通所系と短期生活系のすべてにあります。訪問系の場合、ヘルパーの訪問時、介護家族が苦労話をしたり、買い物の時間を提供することが短時間ながらレスパイトケアになり得ます。またショートステイでは数日間から1週間さらにそれ以上の期間、被介護者が在宅を離れることでレスパイトケアの提供になります。

デイサービスでもショートステイでも認知症の本人にとって環境が変わることで悪い影響を及ぼすことがないとは言えませんが、こうしたサービスが、介護家族のレスパイトケアになり、在宅介護を続けるうえで不可欠と割り切って利用されるべきでしょう。

また、介護サービスを提供する介護職員もその意義を認識しておく必要があると考えます(注4)。

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