認知症の妻の介護でみえたこと−介護家族と医師の視点から その後 vol.5 ショートステイ

2015-05-25

ショートステイ(注1)は、デイサービスと同様に、あるいはそれ以上に介護者のレスパイトケアとしての役割が強く、私の場合も、認知症の妻のためというより、明らかに介護者である私のためにショートステイを利用してきました。しかし介護保険制度上は利用者である認知症の妻への給付です。介護保険上、ショートステイとしては「短期入所療養介護」「短期入所療養介護」の2種類の給付がありますが、既存の施設内で提供する場合と専用の施設で提供する場合など異なるタイプのショートステイサービスがあります。この間、すべてのタイプのショートステイを利用しました。

転居前

認知症の妻の在宅介護を始めて、当初はデイサービスのみを利用し、ショートステイを利用することは念頭になかったのです。しかし、その後妻の実父が突然死亡し、慣例にしたがい私が喪主を務めることになるのですが、妻を同伴するわけにもいかず、ショートステイの利用を考えました。担当のケアマネジャーに事情を話したところ、ただちに市内の緊急にショートステイが利用できそうな施設をあたってくれました(注2)。

利用できないことはなかったのですが、認知症の妻がその施設で穏やかに過ごせるという確証もなく、「迷惑行為」で利用が中断されるおそれもあり、さらに入院と異なり利用経験がない場合、手続きが必要なのです。こうした手間も考えると、このときはショートステイの利用を諦め、葬儀に出席しないことにしました。

この経験から、日ごろからショートステイを利用して、その施設での介護の実態を知り、施設の職員に認知症の妻のことを知ってもらう必要があると、定期的に利用することにしました(注3)。

ケアマネジャーが紹介してくれたショートステイの施設は、すでにデイサービスで利用していた介護老人福祉施設でした。長期入所施設のなかの一室4床がショートステイに提供されていました。そこで1泊2日のショートステイを初めて利用しました。当初、1泊2日でも夜間、認知症の妻が居ない自宅でひとときを過ごすことができ安堵したものです。

月1回、1泊2日のショートステイを利用するときは、初日に私が施設に連れていき、翌日迎えにいくといった慌ただしい日程でした。また4床の部屋でしたので、認知症の妻の「迷惑行為」で利用できなくなるおそれもありました。さらに緊急時、この施設で利用できるという保証はなかったのです。もう少し長い期間、ショートステイを利用する必要があると思い、ケアマネジャーに相談しました。

隣接する市にある、病院などを経営する医療法人の比較的新しい「介護老人保健施設」(全室個室)を紹介されました。この施設には併設するショートステイ専用施設があるのですが、常に満室状態で、介護老人保健施設の空き部屋を利用する形でのショートステイを利用することにしました。前もって見学しましたが、施設内の雰囲気は明るく職員の対応もよかったので、初めから1週間、利用することにしました。

送迎サービスはなく、往路復路ともタクシーを利用しました。施設の行き帰りに認知症の妻がどのような行動にでるか予測できなかったからです。その後、試しに自家用車で送迎して問題ないことを確認してからは、タクシーを利用することはありませんでした。

転居までもっぱらこの施設でショートステイを利用しました。

転居後

転居後、ケアマネジャーも変わり、デイサービスと同様にショートステイの利用施設も変わりました。それまでの施設でショートステイを利用できないことはなかったのですが、遠すぎるのです。ケアマネジャーから比較的近くて新しく開業したショートステイ専用施設を紹介されました。施設の職員が自宅を訪問し認知症の妻の状態を知り、施設利用の説明も受け、契約しました。

前もって施設を見学しました。この施設もすべて個室で開業して間がなく、職員は少なく、どのように介護を提供するか模索しているとの印象でした。もっとも関東に本部がある全国展開している介護企業が運営するショートステイ専用施設でしたので、運営経験も豊富との印象で信頼して利用できると判断しました。

新しい施設でのショートステイはデイサービスと同様に利用日数を減らして、6泊7日から3泊4日としました。個室を利用するショートステイで金銭的な負担を減らすためです。この施設は、ショートステイ利用者に送迎サービスがあることも助かりました。前の施設では初日は午前10時ごろに妻を連れて行き、最終日も同じ時間に迎えにいっていましたが、この施設では初日は午前10時ごろ迎えがあり、最終日は夕方の4時ごろに送ってくれるので、4日間が十二分に利用できるのです。

この施設も次第に利用者が増えたようで、私が希望する期間に利用できないことも生じ、先に利用した遠方の施設を利用することもありました。ショートステイの利用に際しては利用者本人と介護家族のことをよく知ってくれた複数の施設を利用することが望ましいです。

私のリフレッシュ−旅−

現在、認知症の妻は1週間3日間のデイサービスと月1回3泊4日のショートステイを利用しています。デイサービス利用中は1日約8時間の私の時間が取れ貴重です。しかし週に1度休んでも私の介護生活にさほど影響しませんが、月1回3泊4日のショートステイは、介護する私にとってはとても貴重なひとときなのです。この間、認知症の妻と暮らす自宅に居たくない、家から離れたいとの思いが強く、いつとはなしに1泊旅行を始めるようになったのです。とても貴重な心身のリフレッシュになる旅です。

1泊2日の国内旅行は、私の、あるいは妻との思い出の場所を選び訪れました(注4)。現在は、旅先で知った北前船に関連した寄港地を訪ねています。

月1回の旅行には、訪問先を選び、日程、宿、移動方法(飛行機、電車、レンタカーなど)を組み合わせて計画を立てる楽しみもあるのです。さらに旅行後、旅の報告をブログに書いています。旅の経験や初めて知ったことをまとめ綴るという「知的な作業」も楽しんでいます(注5)。

旅先では認知症の妻のことを思うことはほとんどなく、介護のリフレッシュにおおいに役立っています。もっとも旅行に伴う出費もかさみ、少し贅沢な旅を近々諦めることになるでしょう。

説明と私見−介護保険給付とレスパイトケア−

前回の「vol.4 デイサービス」で「レスパイトケア」について述べました。ショートステイはデイサービス以上のレスパイトケアであり、介護保険給付なのです。利用者本人である認知症の妻にとってデイサービスは、楽しむひとときでもあり、さらにサービスの一部である入浴も本人に貴重です。

これに対してショートステイは、本人のためのサービスとは思えません。月に数日、知らない空間で知らない人たちに囲まれた生活が認知症の妻に何か役立っているように思えないのです。ショートステイ中に入浴することはありますが、必須のサービスではありません。

介護保険制度は基本的考え方からして、介護給付は利用者本人だけのものです。しかし制度の導入時からショートステイという給付が組み込まれていました。制度の枠組みを超えてはいるが、導入前からあった高齢者福祉の一環として有効だったショートステイの経験から介護保険制度にも例外的に導入されたと理解しています(注7)。

厚生労働省の介護保険解説サイトに短期入所生活介護(ショートステイ)の場合として以下の利用要件を挙げています(注6)。

私が現在の「認知症の人と家族の会」の設立に関わった1980年代初めごろ、在宅介護を支える給付として「短期保護事業」がありました。当時の特別養護老人ホームのベッドの一部を高齢者介護の家族のために利用しようとするものでした。しかし利用要件が「冠婚葬祭」に限定され、さらに対象者が当時の用語でいう「寝たきり老人」に限定され、認知症高齢者がその制度の対象になったのはさらに後のことです。

現在はショートステイでは、利用要件は緩やかでなきに等しく、要介護認定を受けた人の介護家族がショートステイを利用したいと申請すれば、無条件に利用できます。私の場合、ケアマネジャーに「この期間休みたい」と伝えれば、何のために休むかを問われることはありません。

個室

認知症の妻のショートステイ利用に関しては、「短期入所療養介護」を介護老人保健施設で、「短期入所生活介護」を介護老人福祉施設と短期入所専用施設で、経験しました。また既存の施設でのショートステイと専用施設でのショートステイも利用しました。さらに個室と多床室(総室)でも利用しました。これらの経験からして、認知症の人の場合、ショートステイは個室がある施設が望ましいと考えます。

妻のように動ける認知症の場合、同じ施設内の入所者への「迷惑行為」が起こることは十分に予測されます。このことで施設側の都合でショートステイが中断さえるおそれがあります(注9)。また見当識障害などが顕著な認知症の人が不安や不穏になった場合の本人の居場所を確保するためにも個室が提供されるべきです。

しかし異なる施設での個室利用料は1日3,000円ほどで全額自己負担です。短期間のショートステイであれば負担できないことはないですが、30日といった長期になると家族にとって経済的負担は軽くありません(注10)。

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