平成27年度介護報酬改定解説vol.1−報酬改定で「重度化防止」が崩れる!?

2015-02-11

2月6日の介護給付費分科会で、平成27年度の介護報酬改定案が諮問・答申されました。示された報酬単価は、予想通り多くのサービスで厳しい引き下げがなされています。注目したいポイントを随時あげていく予定ですが、まずは在宅系で利用者数の大半を占める訪問介護と通所介護にスポットを当てます。

訪問・通所介護の3割に経営危機が訪れる!?

まず基本報酬ですが、訪問介護で4〜4.5%の引き下げがなされています。通所介護では、通常規模・大規模型でおおむねマイナス4.5〜5.5%という一方、来年度から地域密着型などに移行する小規模型はマイナス8.8〜9.8と10%近い引き下げが行われました。

中でも「長時間利用」や、通所の場合であれば「要介護1・2などの軽度者」へのサービス提供に軸足を置く事業所にとっては、マイナス幅が拡大します。ここでまず、「中重度者」を対象に「短時間で効率的に」という方向への誘導がなされています。

両サービスとも、平均的な収支差率は高いと指摘されてきました。しかし、収支差率がマイナスという事業所も共に3割程度ある中で、これだけの引き下げがなされれば、基本報酬に頼るだけでは「事業の継続は不可能」という事業所も続出するでしょう。となれば、訪問介護であれば増設された特定事業所加算、通所介護であれば認知症加算・中重度ケア加算に頼らざるを得なくなります。

たとえば、認知症IIbの人の「切り捨て」も

一見すると、国が示す「重点化」策に沿っているようです。問題は、本当に「重点化しただけの効果を上げるのか」という点です。

まず、訪問介護の新しい特定事業所加算ですが、重度対応要件が「要介護3以上、認知症日常生活自立度III以上が6割以上」と、ハードルは極めて高くなっています。利用者数が80人未満という規模が対象ですが、重度者対応要件をクリアするため、利用者の分母をさらに縮める事業所も出てくるでしょう。

そこに認知症日常生活自立度III以上という基準が設けられたことで、IIbの人では「受けない」という事業所も増えることが予想されます。IIbの場合、症状・行動例として「服薬管理ができない」ことがあげられますが、適切な服薬管理ができないことがBPSDを悪化させるケースも数多く見られます。

訪問介護で服薬介助はできませんが、「お薬は飲まれましたか?」という一声をかけることはできます。ゴミ箱内の薬袋をチェックして過剰服薬の疑いがあれば、事業所に報告することで、その後の対処に結びつけることも可能でしょう。こうした認知症が悪化するかどうかという「ボーダーラインへの対処」が、今回の改定で手薄になる可能性があります。

これは、通所介護の認知症加算でも同様です。これまでも認知症関連の加算では、日常生活自立度IIIが一つの基準にはなっていました。しかし、基本報酬が下げられる中、「悪化を防ぐ」という視点でボーダーラインへの対処を手厚くすることが欠かせません。国は「予後予測」という言葉をよく使いますが、当の国自身がそれを軽視していないでしょうか。

新オレンジプランへの本気度も疑われる

中重度者への重点化が、財政的にひっ迫する介護保険の持続可能性を高め、介護保険料の高騰を防ぐというのが国の主張です。しかし、本当にそれをめざすなら、ボーダーラインの利用者へのサービス資源を同時に充実させ、「中重度者を増やさない」という施策との両輪で進めなければ意味がありません。

今回は、認知症のIIとIIIのボーダーラインに力点を置きましたが、折しも国は新オレンジプランをもって認知症対策を国家戦略の上位に持ってこようとしています。しかし、今回の報酬改定を見る限り、認知症ケアの流れへの理解が本物なのか疑われてなりません。

認知症ケアは先のボーダーラインが、実はもっとも難しくプロの技能を必要とします。その支援が手薄になり家族の負担が集中すれば、仕事を犠牲にする人も増え、国がめざす経済成長にも悪影響を与えかねません。

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