過酷な夜勤は職員と利用者を危機に晒す

2015-03-04

日本医療労働組合連合会が、介護施設等における「夜勤実態調査」を公表しました。全体の8割以上が「2交代制」で、そのうちの66%以上が「16時間以上の勤務」など、厳しい実態が明らかになっています。介護保険スタート以降、介護職員の夜勤は大きな問題点の一つとして指摘されてきました。改めて「夜勤負担の改善」の必要性を考えてみます。

特に厳しい「小規模多機能とグループホーム」の夜勤

今回の調査では、特養や老健などと比べて、グループホームや小規模多機能型などの地域密着型サービスにおける夜勤実態の厳しさが目立っています。後者は、母体法人の規模が比較的小さいゆえに「職員1人あたりにかかる負担」がどうしても大きくなりがちです。一方で、後者の利用者はすべて「認知症である」ことが前提であり、見当識障害から昼夜逆転の状態にある人も少なくありません。

平成18年度に、グループホームの「夜間ケア加算」がいったん廃止されました。その頃、深夜帯におけるホームの状況をいくつか視察したことがあります。深夜になっても、「もうすぐ家族が迎えに来る」と思ってユニットのリビングでずっとお茶を飲んでいる利用者。夜間に目が覚めて「ここはどこですか」と、居室から出てくる人。かつては、まだ暗いうちから仕事に出かけたり、ご飯の支度をする習慣があった人は、夜中の2時くらいからそわそわと起きてくるケースもあります。

そのたびに、たった一人の夜勤職員が、多様な入居者の心理状況に合わせて対応をしていきます。寝起きでふらついたりする人を、緊張感をもって見守る様子などを見ていると、夜勤を体験した者でなければ分からない大変さがひしひしと伝わってきます。

夜勤が続けば職員の集中力・判断力も低下

その後、精神科の医師に取材をしました。すると、「継続的な夜勤が過重になってくると、体内リズムが崩れる危険が増す」としたうえで、「交感神経と副交換神経の切り替えがうまく行かなくなり、判断力や集中力の低下も起きかねない」という指摘を受けました。

問題なのは、職員の健康不安もさることながら、先に述べた集中力や判断力の低下によって、「利用者の夜間の事故を防ぐ」ことが難しくなる点です。それでなくても、認知症の人の場合、「日中は穏やかでも、夜間になると不穏になる」というケースがあります。不安定な心理状態から反射的な行動が強まれば、転倒などのリスクも高まっていきます。

つまり、職員側の不健康な状態と認知症の人の不穏状態が積み重なる中で、利用者の安全性が脅かされることになります。これを防ぐには、最低でも「夜勤に入る職員」の勤務時間を抑えて3交代制とし、「判断力の低下」をカバーしあえる夜勤人数を確保することが必要でしょう。それさえもクリアできないようであれば、国がかかげた新オレンジプランも看板倒れに終わってしまいます。

何のための基金&人材確保策なのか?

そもそも今回の報酬改定で、国は「認知症対応」を重点化策の一つとしてかかげたはずです。ところが、グループホームや小規模多機能型といった「認知症対応のカギ」となるサービスは軒並み基本報酬が引き下げられました。ケアの質が低い事業者の安易な参入を防ぐ狙いもあるのでしょうが、質の高いケアを行なう事業所ほど経営コストがかかるという面もあり、むしろ良質な事業者が撤退してしまう危険と背中合わせになるといえます。

国としては、夜間から深夜の時間帯にかけての人員配置基準をもう一度見直し、基準を引き上げたうえで相応の基本報酬を付けることが望まれます。ケアの質が低い事業者に対しては、国の責任で指導者派遣などを行なったりすることで底上げを図るべきでしょう。そうしたコスト補填のための「地域医療・介護総合確保基金」なのではないでしょうか。

過酷な夜勤は、働く人の気力を奪います。「賃金は低くても、介護の仕事で頑張る」という人の最後の砦を奪ってしまえば、どんな介護人材確保策も意味をなしません。

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