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介護福祉士、受験料値上げで何が起こるか?

2015-05-15

厚労省が、介護福祉士と精神保健福祉士の国家試験受験料の値上げに踏み切ろうとしています。社会福祉振興・試験センターの積立金が底をついたことが理由ですが、介護人材の確保やキャリアアップを政策の重要課題と位置づけている中では、矛盾を感じざるをえません。何らかの方策はとれないのでしょうか。

創設された基金はあてられないのか?

平成27年度予算が成立し、厚労省の老健局分予算には、「地域医療介護総合確保基金」(介護分で公費724億円)が設けられました。このうち「介護従事者の確保」について、公費90億円があてられます。これを受験料値上げ分の穴埋めに活用できないのでしょうか。

ちなみに、平成27年度の介護福祉士国家試験の受験者数は15万3,808人です。1人あたりの値上げ分が2,490円ですから、トータルで必要な予算は3億8,298万円。上記の90億円のうちのわずか4%強に過ぎません。

確かに、基金活用の対象事業は決められています。しかし、その中には「介護人材キャリアアップ研修支援」があるわけで、補正予算などで微調整を行えば、決して「値上げ分の穴埋め」は不可能ではないはずです。

そもそも介護人材確保が重要課題としてかかげられる中、これほどストレートに参入意欲を左右する施策はありません。対象事業には、介護人材確保のための都道府県での協議会設置もありますが、こうした運営費などにあてるより数値的効果は出やすいはずです。

サービス事業所・施設間の格差が拡大?

今回の値上げが予定とおり行われた場合、短期的にも大きな影響がおよぶことが考えられます。それは、サービス提供体制強化加算など、介護福祉士の配置を手厚くする要件のもとで加算の拡充がなされたことです。基本報酬の多くが引き下げとなる中、現場の処遇改善のためには、こうした拡充部分の取得を目指すことが、事業所や施設にとっては大きなポイントになるのは間違いありません。

そうした中で、受験料の値上げにともなう受験意欲の低下が進めば、「介護福祉士の確保が進まず、加算をとりたくてもとれない」という現場も出てくるでしょう。資金的に余裕のある大規模法人などは、受験料値上げ分を補てんしたりするケースも考えられます。

そうなれば、大規模法人は「介護福祉士を確保→加算の拡充」が可能となります。一方、受験料補てんなどを行なう余裕のない中小規模法人などは、「加算の拡充にあずかれない」という悪循環におちいりかねません。結局、大手と中小の間の格差はさらに広がります。

自治体職員の当事者意識がカギを握る

今回の報酬改定が「事業所格差を進める」ことは、当コーナーでも何度か指摘してきました。実際、地域の実情をヒアリングすると、小規模事業所の撤退が見られ始めています。しかも、採算を度外視して「真摯に利用者と向き合おう」とする事業所ほど「経営状況が厳しい」という声を聞きます。

そうした中で、今回の介護福祉士受験料の値上げは、地域のサービス資源にとってダブルパンチとなりかねません。自治体にとっても、足元のサービスが脆弱化することへの危機感が生じ始めているのではないでしょうか。

そうなった場合、カギを握るのは「当事者となりうる自治体」の対応です。地域医療介護総合確保基金は、対象事業の枠が決められているとはいえ、自治体の計画立案によって柔軟な使いみちを設定していくことも不可能というわけではありません。つまり、独自に「値上げ分の補てん」などを行なう自治体も出てくることが考えられます。

ただし、そのあたりの実現性は、自治体職員がいかに当事者意識のもと「地域の介護人材・資源不足への危機感」を持てるかどうかにかかっています。仮に介護福祉士を目指す人材が、意識の低い自治体から意識の高い自治体へと流れて行けば、今度は地域単位でのサービス格差も広がるでしょう。そうした状況が近づいていることを、すべての自治体職員が頭に入れなければなりません。

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