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地域包括ケア病棟は機能しているか

2015-08-12

平成28年度の診療報酬改定に向け、中医協における前回改定の検証作業が続いています。前回の平成26年度改定では、病床再編に向けたさまざまな仕掛けが盛り込まれ、それらは介護現場にも大きな影響を与えています。その中で、新設された地域包括ケア病棟の状況がどうなっているのかに着目しましょう。

一般病床からの転換も目立つ中で

平成26年度の診療報酬改定では、亜急性期入院医療管理料が廃止され、それに代わる病棟として地域包括ケア病棟が誕生しました。平成27年4月1日現在の病床数をみると、3万1,700床に達しています。亜急性期入院医療管理料を届け出ていた病床が1万2,400床なので、一般病棟などからの転換も上乗せされたことになります。転換理由を見ても、「より地域のニーズにあった医療を提供できる」とする回答が半数を超えています。

ただし、この地域包括ケア病棟については、上流にあたる一般病棟に目を向けないと、その位置づけは十分に理解できません。たとえば、昨年度の報酬改定では、看護師配置の手厚い7対1病棟について、退院患者の「行き先」が算定要件に加わっています。

その「行き先」要件の中には、自宅や居住系介護施設、在宅強化型の老健に加え、回復期リハ病棟や地域包括ケア病棟も含まれています。つまり、一般病棟の収益を上げるうえでも、一部を地域包括ケア病棟に転換した方が効率的という図式が浮かぶわけです。

大切なのは真の患者ニーズへの対応

しかし、大切なのは、その中で患者側が求める医療ニーズがきちんと叶えられているのかどうか、また、それに現場がきちんと対応できるしくみになっているかどうかです。地域包括ケア病棟の在宅復帰率(自宅のほか、在宅強化型老健や居住系介護サービスを含む)を見ると、施設要件を大きく上回っています。行き先が「自宅」だけでも、63%に達しています。この数字を見ると、早期の在宅復帰というニーズだけは果たされているようです。

問題なのは、在宅復帰後の医療や介護にきちんとつなげるための退院支援のしくみです。地域包括ケア病棟では、専任の在宅復帰支援担当者を1人以上確保することが要件となっています。その担当者による退院支援の状況を見ると、「退院支援で困難を感じる点」として「患者1人あたりの退院支援に十分な時間を割くことができない」といった悩みが目立っています。このあたりの課題がクリアされないと、「在宅復帰ありき」という病棟側の都合だけが先走り、その後の在宅継続が保障されないというリスクも生じかねません。

退院支援のフォローは本当に万全なのか

今回の調査で感じざるをえないのは、病棟側の在宅復帰支援担当者の悩みなどを取り上げる一方で、「では、それをどうやってフォローしているのか」という部分への切り込みが不足している点です。退院支援の中身としての「多職種カンファレンス」は取り上げられてはいますが、そこで在宅側の職種(たとえばケアマネなど)がどのようにかかわっているのかまでは踏み込んでいません。

在宅での安心を高めるための地域包括ケア病棟であるなら、在宅医療・介護側が同病棟を「本当に頼れる存在」と見ているかどうかが大きなポイントとなります。たとえば、在宅復帰後も病棟側と連携がとれるしくみがあり、在宅療養に必要なケアマネからの相談などにのる機能があるかどうか。「在宅への送り出し」だけがミッションとして先走ってしまえば、「地域包括ケア」という理念が看板倒れになってしまう恐れもあります。そのあたりの検証が今後は求められてくるでしょう。

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