成年後見制度のこれからを考える

2016-05-09

2000年にスタートした成年後見制度は、保佐・補助などを含めた利用人数がのべ18万人に達しています。ただし、認知症者の数(約500万人)と比較した場合、3%(知的・精神障害がある人まで含めた場合、その2%)程度に過ぎません。課題はどこにあるのか。後見人等による不正問題や、今般成立した成年後見制度の関連法なども含めて考えます。

後見制度支援信託というしくみはあるが……

公表されている不正件数の推移を見ると、2011〜2014年で500件以上の増加が認められます。被後見人の財産保全を強化するべく、後見制度支援信託というしくみもあり、導入された2012年以降に申立件数が急増しました。ところが、皮肉なことに、不正もそれに合わせて増えたという状況になっています。

ちなみに、後見制度支援信託とは、被後見人の財産のうち、日常的な支払いをするのに必要な金銭を預貯金として後見人が管理し、通常使用しない金銭を信託銀行等に信託するしくみです。信託財産を払い戻したり、解約する場合には、家庭裁判所が発行する指示書を必要とします。また、本人に臨時収入などがあって後見人が管理する金銭が多額になった場合は、後見人から追加信託の報告がなくても、家庭裁判所が追加信託を指示できます。

しかし、先に述べたように、この後見制度支援信託で制度利用者が増える一方で、不正への十分な抑止効果となるわけではありません。不正による被害額の1件あたり平均は約570万円なので、信託金額の平均約3,600万円からすると、「信託されていない預貯金」が狙われるという可能性もあるでしょう。

今国会で成立した2つの制度関連法案

そうした中、現在開会中の国会では成年後見制度にかかる2つの法案が可決・成立しました。1つは「成年後見制度の利用の促進にかかる法律」、もう1つは「成年後見の事務の円滑化を図るための民法および家事事件手続法の一部を改正する法律」です。

前者は、成年後見制度の利用を促進するために、政府に「成年後見制度利用促進計画」の策定を義務づけ、地方自治体に対してもこの計画にもとづいた「地域における基本的な計画」に努めることを求めています。また、内閣府に「成年後見制度利用促進委員会」を設けることも定められました。

後者については、大きくは2つのポイントがあります。(1)被後見人にあてた郵便物について後見人が転送を受けたり、被後見人に代わって開封する権限を明らかにしたこと(ただし、家庭裁判所による嘱託審判が必要)。(2)被後見人が死亡した後の死亡届けの提出や火葬許可証の取得、相続財産の保存に必要な行為ができるようにしたこと(相続人が相続財産を管理することができるまで)です。

いずれも、後見人がその業務を進めるうえでの課題となっていた点です。たとえば、(1)であれば被後見人の財産調査や目録作成に際して「被後見人あての郵便物」が手がかりにこともあります。その開封権限をはっきりさせたことで、業務が進めやすくなるわけです。

後見監督人のしくみ強化なども必要では?

いずれの法案も、成年後見制度の利用を進め、その業務を円滑にするという点では必要なものでしょう。ただし、利用の進ちょくや円滑化が進めば、すそ野が広がる中で冒頭のような不正件数も増える恐れがあります。その歯止め策をどう考えるべきでしょうか。

たとえば、後見人の事務を監督する立場として後見監督人がいて、任意後見の場合は家庭裁判所が監督人を選任することで効力が生じます。しかし、法定後見の場合は裁判所の判断によっては選任されないこともあります。チェック機能ということからすれば、後見制度を進めると同時に、必ず監督人が付くようなしくみの強化も必要ではないでしょうか。

また、制度利用者が今後何倍ものスピードで増えたとき、審判がスムーズかつ適正に行われるだけの家庭裁判所の人員体制の強化なども必要でしょう。そうした課題も、今後は国の促進計画で検討することが求められます。

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