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現場のマネジメント負担を考えるべき

2016-07-04

厚労省が、中高年齢層を介護の担い手として現場に呼び込む施策を強化しようとしています。労働力人口が中長期的に減少の傾向をたどる中、労働市場への「中高年層の呼び込み」は、介護に限らず多くの業種でも模索されています。では、この施策方針において、介護業種特有の課題はどこにあるのでしょうか。

元気な高齢者の人材参入を狙ったモデル事業

先の介護保険部会における「介護人材の確保」をテーマとした資料の中に、三重県老人保健施設協会による「元気な高齢者(60〜75歳くらい)に介護助手として参入してもらう」というモデル事業が紹介されています。このモデル事業における介護助手の業務とは、クラス別に以下の3つに分類されています。

(1)Aクラス…一定程度の専門的知識・技術・経験を要する比較的高度な業務(認知症の人への対応、見守り、話し相手など)

(2)Bクラス…短期間の研修で習得可能な専門的知識・技術が必要となる業務(ADLに応じたベッドメイキング、配膳時の注意など)

(3)Cクラス…マニュアル化・パターン化が容易で専門的知識・技術がほとんどない人でも行える業務(清掃、片付け、備品の準備など)

ニュースでは「非常に高度な専門性を有しない部分を切り出したうえで、それを担ってもらう」ことが提案されています。上記では、B、Cクラスが該当すると考えられます。

介護業務は「工場のライン」とは大違い

まず注意したいのは、介護業務は、「工場のライン」のように一つひとつの業務範囲がはっきりと線引きできない点です。たとえば、配膳業務一つとっても、そこで認知症の利用者とのコミュニケーションを取らなければならない場面なども生じます。その対応によっては、その人の不穏状態などを強めるリスクも浮上します。また、配膳時も利用者の状態観察における重要なタイミングである点を考えれば、一言二言言葉を交わす中で何らかの異変を早期に察知できたりすることもあります。健康悪化リスクが高い利用者も多い中、ちょっとした気づきの差がその後の結果の重大性を左右することもあるわけです。

さらに、「配膳」でいえば、たとえば本人のアレルギー体質や疾患・服薬との兼ね合いで、「特別な献立」を用意することもあります。仮にその配膳を間違えてしまえば、最悪の事態も起こりえます。「そうした利用者への配膳は任せない」とは言っても、仕分けなどの管理が整っていなければ、万が一にも「紛れてしまう」ことが起こらないとも限りません。それだけ介護現場は緊張感の連続であり、そこに現場スタッフの「外からは見えにくい負担」があることを理解しなければなりません。

現場のリーダークラスの負担は増加する!?

この点を考えたとき、介護業務というのは、介護助手のような人材の頭数だけを揃えても、多様なリスクを回避するためのマネジメントの厚さに変わりはないわけです。むしろ、短期時間勤務体制などを増やせば、それだけ申し送りの機会が増え、情報共有を確実に行なうための管理ノウハウは今以上の手厚さが求められることになります。先の「配膳時のちょっとした気づき」の共有などは、普段から情報を吸い上げるしくみ作りが欠かせません。

仮にこうした「申し送り」などをICTで効率化すると言っても、そのためにはすべてのスタッフ(先の介護助手も含めて)が確実に使いこなせるよう、事前研修やフォローアップ体制を整える必要があります。そこでも質の高い管理業務が求められ、それを担うのは現場のリーダー以上ということになります。

当然、そうした人材の「負担増」に見合うだけの昇給等の処遇、あるいは管理業務をシェアできるだけの人材数は欠かせません。それだけのコストを担うには、ベースとなる基本報酬のアップが必須です。もちろん、中高年人材の受け入れは労働力人口減への対応であり、「介護報酬が抑えられる」という理屈とは別のこと(のはず)です。国の認識も当然そこにあるでしょうが、仮に「社会保障費が削減できる」という考えが根底にあるなら、とんでもない見当違いと考えるべきでしょう。

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