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再就職準備金の効果には前提が必要

2016-09-22

厚労省より2016年度二次補正予算の概要が示されました。介護人材の確保については「再就職準備金貸付事業」の拡充(10億円)、介護離職防止では「職場環境整備などを実現した事業主」への助成金(11億円)、また、処遇改善にともなう「財政安定化基金への特例的積み増し」(20億円)が見られます。

働き続けることへの支障は取り除かれたのか

上記のうち、「再就職準備金貸付事業」については、2015年度補正予算、2016年度当初予算ですでに計上されているものです。当初予算では、この他にも「介護福祉士養成の学生に対する修学資金等の貸付」がありますが、今回の二次補正予算では上がっていません。

用途を問わない1人20万円(地域によっては40万円)の貸付を行ない、2年間の勤務継続で返還を免除するという施策。これだけでは、「果たしてどんな効果を狙っているのか」はなかなかピンと来ません。離職した介護人材にとっては、「働き続けることに支障があった」からの離職であり、その支障をきちんと取り除かなければ、同じこと(再離職)の繰り返しになるのは目に見えるからです。

仮に今回の準備金に狙える効果があるとするなら、「やっぱりもう一度介護現場に戻りたい」という意思が固まっている人に対し、最後に背中をひと押しする要素に限られるでしょう。つまり、この準備金は「やっぱり戻りたい」という意思をきちんと引っ張り出すという施策が前提として必要なわけです。

「サービスありきプラン」と酷似する施策

そうした前提に必要なのは、当たり前のことながら、「かつて働いていた介護業界より先行きは明るくなっている」という実感です。現実はどうでしょうか。基本報酬が大きく引き下げられ、それを補うには重度者などにかかる加算をとることが必要で、それゆえに介護事故リスクなどにそれまでの以上の神経を使う──これでは、百歩譲って「戻りたい」という意思があったとしても、「今は様子見が賢明」という心理になるのが自然でしょう。

この流れを頭に描いたとき、「どこかで聞いたような話だな」と思うことがあります。それは、ケアマネジメントの悪い例として、「サービスありきだけで、利用者の自立支援が進むと考えてしまう」パターンに似ています。

デイサービスがあるから通いましょう、訪問介護があるから来てもらいましょう。サービスを利用すれば、何とかなるでしょう──これでケアマネジメントを進められたら、利用者としてはたまったものではありません。

利用者には、それぞれ「こうありたい」という生活への意向があり、「そのために何が必要か」という個別課題があります。その部分をきちんとアセスメントしたうえで、その課題解決の手段として具体的な支援策を提示しなければ、結局は大きな目標に到達することはできません。本人にとっても、目標に向けてサービスを活用しようという意思を継続させるのは大変に難しい道筋となります。

離職せざるを得なかった事情に寄り添うこと

今回の再就職準備金も同様です。離職者が「こうありたい」と求める道筋を組み立てる中で出てきたというより、「とりあえずお金をかけたのだから、国としての責務は果たしている」というアピールに近くなっています。これでは、「とりあえずサービスを組み合わせてた」というNGケアプランと変わりません。

かつて介護現場で働いていた人は、そのときの実感をもとに「介護現場がこれからどうなっていくのか」を敏感に察知しています。そこから生じる疑念を取り払うには、かつて彼らがしてきた業務について、「介護職でなければできなかった(医療ではできない、家族の代替えでもない)という専門性」をきちんと評価することがまず必要です。その専門性への評価に対して、きちんと報酬をつけるという体系を整えなければなりません。

何より大切なのは、「離職せざるを得なかった」という人々の気持ちにきちんと寄り添うことです。これは、利用者の気持ちに寄り添わなければならないケアマネジメントの基本と何ら変わるものではありません。

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