財務省の「通所叩き」の落とし穴

2016-10-21

財務省の財政制度等分科会が10月4日に開かれ、社会保障改革に向けた議論を行ないました。政府のかかげる経済・財政再生計画等にもとづいて何をどのように見直すかという項目が示されています。介護分野では、特に軽度者給付のあり方が焦点となっています。

介護保険部会の議論にもプレッシャーが?

軽度者への給付といえば、今月12日の厚労省側の介護保険部会で、「軽度者支援のあり方」が話し合われる予定です。このタイミングで財務省側から改革の方向性が示されたことは、厚労省側には大きなプレッシャーとなるでしょう。介護保険部会としても、当日は財務省側の提案に対して、どのような対応を図っていくのかが問われることになります。

それはさておき、現段階で財務省が示している「軽度者給付の見直し」の中身をもう一度整理してみましょう。(1)生活援助サービス、(2)福祉用具貸与等(「等」には、福祉用具販売や住宅改修の費用給付も含まれています)、そして(3)その他の給付のあり方として、軽度者に対する通所介護も取り上げています。

小規模型通所に向けられた財務省のナタ振り

今回は、この(3)にスポットを当てます。通所介護については、要支援者のサービスが地域支援事業へと移行しています。この対象を軽度者(要介護1・2)まで広げるというのが第一のポイントです。そして、今回もう一つやり玉に上がったのが、「小規模型」です。

小規模型については、その約85%が今年4月から地域密着型や大規模・通常規模のサテライトへと移行しています。と同時に、2015年度改定で基本報酬が9〜10%の大幅な引き下げとなりました。財務省としては、小規模型の管理的経費の高さや、その事業所数の割合の高さを問題としていましたが、今回の報酬改定を経ても事業所数の増加に歯止めがかかっていないデータが明らかになっています。

ここで、財務省が目をつけたのは、小規模型における「個別機能訓練加算」の取得率の低さです。この数字をもって「小規模型では機能訓練が行われていない」として、減算措置などを求めています。もっとも、基本報酬の大幅な引き下げで「個別機能訓練」のための人材確保が困難になっている状況もあります。その中で「個別訓練加算をとっていない」=「機能訓練を行なっていない」という分析はやや荒っぽいと言わざるをえません。

6割強の認知症者への機能訓練はどうなる?

介護保険の目的は、利用者の「している生活」を広げ、「していた生活」を取り戻すという道筋をもって達成する自立支援です。機能訓練は、あくまでその手段の一つにすぎません。逆に言えば、その部分だけの締め付けを強化した場合に、自立支援に向けた道筋がゆがめられてしまう恐れも出てきます。

たとえば、要介護1・2で認知症日常生活自立度II以上の人は、ともに65%を超えています。それらの人にADL向上を目的とした機能訓練をほどこすなら、BPSDの改善をていねいに図ることが必要です(ちなみに、通所リハでは、そのあたりを考慮した報酬体系となっています)。そのためには、本人がスタッフとの信頼関係を築き、「そこが自分の居場所である」という安心感をていねいに築くことが必要です。安易な減算措置は、その本人のペースを崩す危険も生じ、そうなれば「BPSDは改善しない」「機能訓練も進まない」という本末転倒に陥りかねません。

認知症の人に限らず、自立に向けた機能訓練は、本人が「自らそれをやる」という意向に向けた環境を整えることが必要です。そのためには、財務省が問題視する「居場所づくり」も一時的には必要になることがあります。それは介護現場が「心と体が切り離せない」という人間を相手にしているからであり、訓練の形だけを要件とした減算措置が適用されれば、その根本も崩れる恐れがあります。

まさか財務省は、人間を機械的なメンテナンスで事足りるロボットと勘違いしているわけではないでしょう。厚労省側の介護保険部会としては、財務省側の議論に惑わされず粛々と議論を行なってもらいたいものです。

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